譽田天皇御世(ほむたのすめらぎのみよ)，王仁(わに)自百濟(くだら)來。太子菟道志郎子(みこうちのわかこ)師之(これをしとして)，習諸典籍(もろもろのふみをならふ)云。【應神紀】

從五位下行大內記兼近江權少掾橘朝臣直韓　【橘直幹】　043

　高皇產靈尊(たかみむすびのみこと)，欲立皇孫(すめみま)為葦原中國之主(あしはらのなかつくにのきみ)。時彼地(かのくに)多有邪神(あしきかみ)。故高皇產靈尊(たかみむすびのみこと)召集八百萬神等(やほよろづのかみたち)，問曰：「吾欲撥平彼邪鬼(かのあしきものをはらひ)，當遣(つかはすべき)誰者為宜？」皆曰(みなまうさく)：「天國玉(あまつくにたま)之子天稚彥(あめわかひこ)，是壯士(たけきもの)也。宜試之(こころみるべし)。」於是高皇產靈尊(たかみむすびのみこと)，賜以天鹿兒弓(あまのかごゆみ)與天羽羽矢(あまのはばや)而遣之(つかはす)。此神亦不忠誠，來到彼地(かしこにいたり)即娶顯國玉之女下照姬(うつしくにたまのむすめしたてるひめ)，因留住之曰(とどまりていはく)：「 吾亦(われも)欲馭葦原中國(あしはらのなかつくにをばをさめてむ)。」遂不復命(かへりごとまうさず)。高皇產靈尊怪之(あやしみ)，乃遣無名雉(ななしのきじ)伺之。其雉飛降(をり)，止於天稚彥門(かど)前之木梢(きのすゑ)。天探女(あまのさぐめ)見之，語於天稚彥(あめわかひこ)曰：「奇鳥(あやしきとり)來居居木梢(きのすゑ)。」天稚彥(あめわかひこ)乃取高皇產靈尊(たかみむすびのみこと)所賜弓矢(ゆみや)射之。其矢洞達稚胸(きじのむねよりとほり)，而至高皇產靈尊(たかみむすびのみこと)之座前(みまへ)也。尊見其矢曰：「是矢(このや)則昔我賜天稚彥之矢也(わがあめわかひこにたまひしやなり)。血染其矢(そのやちにこけり)，蓋與國神相戰(くにつかみとたたかへる)而然歟？」遂取矢投下(くだり)，立中天稚彥(あまわかひこ)之胸上(むなさき)而死(しぬ)也。【神代紀】

學生蔭子正七位上藤原朝臣利博　【藤原利博】　044

　【神代紀】

明經得業生從六位下行伊豫權大目秦宿禰敦光　【秦敦光】　046

　此二首之意(こころ)，已見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

秦敦光　047

　見於上述太玉命之詞(かみのふとだまのみことのことばにみえり)。【神代紀】

源仲遠　049

　幼武(わかたけ)天皇命木工(ひだのたくみ)鬥雞御田(つげのみた)，始起樓閣(たかどのをつくらしめたまふ)。於是御田登樓(みかたかどのにのぼり)，疾走如飛行(とくはしることとぶがごとし)。時有伊勢采女(いせのうねへ)，怪之仰觀(あやしみみるほどに)，顛仆於庭(にはにたふれて)，覆所擎饌(ささげたるみつけつものをこぼしつ)。天皇疑御田姦通采女(うねへをみたがをかせるかとうたがひ)，將殺之(ころさんとする)。時酒公彈琴(さけのきみことをひき)，欲使聲悟天皇(そのこゑをすめらにさとらしめ)。天皇聞琴，而赦其罪(つみをゆるさしめたり)。【雄略紀】

外從五位下行造酒正葛井宿禰清鑒　【葛井清鑒】　050

　已見於上(かみにみえたり)。【繼體紀】

勘解由次官從五位下三善朝臣文明　【三善文明】　051

　已見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

從五位下行大外記兼近江少掾三統宿禰公忠　【三統公忠】　052

　幼武(わかたけ)天皇御世(みよ)，丹波國余射郡管川人(よさのこほりのつつかはのひと)水江浦島子(みづえのうらしまのこ)，乘舟釣(ふねにのりてつりする)時，遂得大龜(おほいなるかめ)，便化為女(をむなとなれり)。於是浦島子(うらしまのこ)感(めで)以為婦(めとし)，相逐入海(ともにわたにいり)，到常世國(とこよのくににいたり)，歷睹仙聖(ひじりにあふ)。仙聖(ひじり)者，仙之謂也(いふなり)。【雄略紀】

少納言兼侍從從五位下大江朝臣朝望　【大江朝望】　053

　已見伊弉諾尊(いざなぎのみこと)之處どころ。【神代紀】

縫殿頭從五位下源朝臣公輔　【源公輔】　054

　幼武(わかたけ)天皇御世(みよ)，河內國(かふちのくに)言：「飛鳥戶郡(あすかべのこほり)人田邊伯孫(たなべはくそん)，聞女產子(むすめこうむときき)，遂往婿家(むこのいへにゆき)，而月夜還(つきよにかへる)。時於譽田陵下(ほんだのみささぎ)，逢騎赤駿者(あかきむまにのれるひとあへり)。其馬如龍而沖(たつのごとくにひひる)，伯孫視而心欲之(これをみてこころにねがひ)。乃鞭所乘驄馬(のれるみだらをのむまにむちうちて)，齊頭並轡(ならべはしらしむる)。爾乃赤駿超攄(あかむまこえのび)，不可復追(をよびがたし)。其乘駿者知伯孫所欲(そののれるものはくそんがこころをしり)，乃換馬辭別(むまをかへてわかれさりぬ)。伯孫甚歡(よろこび)，驟而入廄(うまやにいり)，解鞍秣馬眠之(くらをおろしまぐさをかひてねぬ)。其明旦(そのあした)，赤駿變為土馬(あかむまはにむまになれり)。伯孫心異之(あやしみて)，還覓譽田陵(さらにほむだのみささぎにもとむる)，我驄馬(あがみだらをのむま)在之，取代而歸(とがへてかへれり)云。」此後(こののち)同帝詔土師連(はにしのむらじにしみことのりし)，使進應盛朝夕御膳清器者(あしたゆふべのみけつものもるべききよきうつはものをたてまつらしむ)。於是土師連(はにしのむらじ)，仍進攝津(つのくに)、山背(やましろ)、伊勢(いせ)、丹波(たには)、但馬(たちま)、因幡(いなば)私民部(わたくしのたみ)，曰贄土師部云(にへのはしべといへり)。【雄略紀】

從五位下守治部大輔藤原朝臣近相　【藤原近相】　055

　已見伊弉諾尊(いざなぎのみこと)之處どころ。【神代紀】

兵庫頭從五位下平朝臣齊章　【平齊章】　056

　玉依姬(たまよりひめ)者，彥火火出見尊妻(ひこほほでみのみことのよめ)也。彥火火出見尊(ひこほほでみのみこと)，一名山幸彥(ひとつのなはやまさちひこ)云。【神代紀】

從五位上少納言源朝臣泉　【源泉】　057

　已見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

從五位上守權右少辨源朝臣俊　【源俊】　058

　高麗(こま)貢表疏，字(もじ)書烏羽(からすのは)，迄(まで)於三日，既無識者(ひとびとわきまへしらざり)。惟此王辰爾，能奉讀譯(よめり)云。【敏達紀】

從五位上守右少辨菅原朝臣在躬　【菅原在躬】　059

　雄朝津嬬稚子宿禰(をあさつまわかごそにね)天皇，讌于新室(にひみやにあそびたまふ)。時天皇撫琴(すめらみことをひき)，皇后起舞(きさきたちてまひたまふ)。舞終而言(まひをはりてまうしたまはく)：「奉娘子(をんなごたてまつる)。」天皇(すめら)謂：「誰也(だれぞ)？」再奏言(またまうしたまはく)：「妾弟(おのがおとうと)，名弟姬(おとひめ)焉。」容姿絕妙(かたちすぐれ)，徹衣而晃之(ころもよりとほりてみゆる)。時人(ときのひと)號衣通姬(そとほりひめ)也。【允恭紀】

從五位上行少納言兼侍從紀伊介橘朝臣實利　【橘實利】　060

　已見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

從五位上守左少辨藤原朝臣有和　【藤原有和】　062

　已見於上(かみにみえたり)。【仁德紀】

從五位上行前參河守源朝臣治　【源治】　063

　桃華宴之旦(はるもものはなのあした)，父皇子(ちちのみこ)與妃，率太子，遊於後園(そのにあそびたまふ)。皇子問曰(みことひてたまはく)：「吾兒何謂？樂桃花乎(もものはなをやたのしびとする)？翫松葉乎(まつのはをやおもしろしとする)？」太子答曰(こたへたまはく)：「松葉為賞(まつのはをおもしろしとする)。」皇子復問之(みこまたとひたまふ)：「何以(いかなればぞ)？」太子答曰：「桃華(もものは)，一旦之詠物(しばらくのもの)。而松葉(まつのは)，萬年之壽木也(ひさしききなり)。故為可賞之(ゆへにおもしろし)。」【太子傳曆】

從四位下行右中辨藤原朝臣師尹　【藤原師尹】　064

　男太迹(をほと)天皇御世(みよ)，筑紫(つくし)國造磐井(いはゐ)反(そむけり)。天皇(すめら)遣物部麤鹿火大連(あらかひのむらじ)討平矣(うちたひらけしめたり)。【繼體紀】

從四位下行左中辨小野朝臣好古　 【小野好古】　065

　蛭兒之事(ひるのこのこと)，既見於上(かみにみえたり)。父母(かぞいろは)者，父(ちち)、母(はは)之謂也(いふなるべし)。【神代紀】

從四位下行民部大輔兼文章博士大江朝臣朝綱　【大江朝綱】　066

　兄(このかみ)火酢芹命(ほのすせりのみこと)，能得海幸(よくわたのさちものをえ)。弟(おとうと)彥火火出見尊(ひこほほでみのみこと)，能得山幸(よくやまのさちをう)。兄弟欲互易幸(ともにそのさちものをかへんとおもひ)，取換弓鉤(ゆみとつりとをとりかへたり)，殊無所獲(ともにうることなうす)。彥火火出見尊(ひこほほでみのみこと)，遂失其鉤(つひにそのつりをうしなひ)，為火酢芹命(ほのすせりのみこと)所責(せめられ)。於是彥火火出見尊行至海邊(わたのへだにいたり)，彷徨嗟嘆(たたずみなげく)。時有一人(ひとりのひとあり)，自稱鹽土老翁(しほつちのおきなとなのり)，送尊至海神豐玉彥宮(わたつかみとよたまびこのみや)。海神迎拜(むかへをがみ)延入，殷勤奉慰(ねむごろにつかうまつり)，因以女豐玉姬妻之(むすめとよたまひめをあはす)。故留住海宮(わたつみやにとどまれる)，經三載(みとせをへて)，遂乘(のせ)火火出見尊於大鱷(おほいなるわに)，以送致(おくりまつる)本鄉。先是(これよりさき)，豐玉姬(とよたまひめ)曰：「妾已有身矣(われすでにはらめり)。當以風濤壯日(なみのたかからあんひ)，出到海邊(わたのへだにいでむ)。請造產屋以待(うぶやをつくりてまて)。」是後(そののち)豐玉姬來至(きたり)，謂火火出見尊(ほほでみのみこと)曰：「今宵當產(こよひこうむべし)。請勿臨之(なみましぞ)。」尊不聽(ききたまはず)，猶以櫛燃火視之(くしをひにともしてみそなはす)。時豐玉姬化八尋鱷(やひろのわにとなり)，匍匐逶迤(はらばひもごよふ)。遂以見辱為恨(さてはぢしめられぬることをうらみ)，則徑歸海鄉(わたのさとにかへりぬ)。留其女弟玉依姬(おとうとたまよりひめ)，持養兒焉(やしなはしむ)。其稚兒名(そのちごのなをば)，稱彥波瀲武鸕鶿草葺不合尊(ひこなぎさたけうがやふきあはせずのみこと)者，以產屋(うぶや)用鸕鶿羽(うのは)葺之(ふけりける)而葺未合焉(ふきあはせられざりければ)，故以為名(なづく)矣。【神代紀】

備中權守從四位下藤原朝臣俊房　【藤原俊房】　067

　既見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

從四位下行大學頭兼文章博士備前守大江朝臣維時　【大江維時】　068

　伊弉諾尊(いざなぎのみこと)曰：「吾欲生御寓天下之珍子(われあめのしたしるべきうづのこをむまむ)。」乃以右手(みぎのて)持真澄鏡(ますみのかがみ)，則月弓尊(つくよみのみこと)化生。其質性明麗(そのひととなりてりうるはしく)，故使照臨天下(あめのしたにてりのぞむ)。珍(うづ)者，善美之謂也(よきといふなるべし)。【神代紀】

從四位下守右大辨兼行近江守源朝臣公忠　【源公忠】　069

　大鷦鷯(おほさざき)天皇御世(みよ)，高麗國(こまのくに)貢鐵盾(くろがねのたて)、鐵的(くろがねのまと)。饗彼國客之日(かのくにのまらうとにあへたまふひ)，集群臣(まちぎむたちをつどへ)，令射其的(そのまとをいさしめたまふ)。眾不得射通(いどほすことなし)。唯盾人宿禰(たてのすくね)射通焉(いどほせり)。高麗客(こまのまらうと)等見之，畏其射之勝巧(ゆみいることのすぐれたる)，共起拜朝(ともにみかどををがみす)。故明日賜姓(これによりてあくるひかばねをたまひ)，曰的戶田宿禰(いくはとだのすくね)云。【仁德紀】

右兵衛督從四位下源朝臣仲宣　【源仲宣】　070

　既見於上(かみにみえたり)。【神代紀】

從四位下行兵部大輔源朝臣由道　【源由道】　071

　譽田(ほむだ)天皇，召大山守命(おほやまもりのみこと)、大鷦鷯尊(おほさざきのみこと)問之曰：「汝等者愛子耶(なんだちこうつくしや)？」對言：「甚愛也(いとうつくし)。」亦問之：「長與少孰尤焉(おいたるとわかきといづれかまされる)？」大山守命(おほやまもり)對言：「不逮于長(おいたるにはおよばず)。」天皇(すめら)時有不悅之色(みおもへりよろこばず)。大鷦鷯察彼色(かのみもへりをみそなはし)言：「長者多經寒暑(おいたるはおほくとしをへて)，既為成人(ひととなり)，更無悒矣(いきとほることなし)。唯少子(わかき)者，未知其成人否(そのひととなりをしらね)。故甚憐之(いとあはれなり)。」天皇大悅(おほきによろこび)，立菟道稚郎子為嗣(うぢのわかこをたててつぎとしたまふ)。即日(そのひ)，任大山守命(おほやまもり)令掌山川(やまかはをつかさどるらしめ)，以大鷦鷯(おほさざき)為太子輔(みこのたすけ)，令知國事(くにのことをしらしむ)。【應神紀】

從四位上式部權大輔藤原朝臣有聲　【藤原有聲】　072

　廣庭(ひろには)天皇幼時(わかくまししとき)，夢有人云(ゆめにひとありていはく)：「天皇寵愛秦大津父者(すめらはたのおほつちをめぐまば)，及壯大(ひととなり)，必有天下(かならずあめのしたをたもたん)。」遣使普求(つかひをしてあまねくもとむる)，得自山背國紀伊郡深草里(やましろのくにのきのこほりのふかくさのさとよりえたり)。其姓字(そのな)果如所夢(ゆめにかなへり)。帝喜問曰(よろこびてとひたまはく)：「汝有何事(なんぢなにことがある)？」答云：「無也(ことなし)。但(ただ)臣向伊勢商價來還(いせにまかりてあきなひしてかへりこし)，山逢二狼相鬥污血(やまにふたつのおほかみのあひいさかひてちにぬれたるにあへり)，乃下馬洗漱口手(むまよりおりててあらひくちすすいで)，祈請曰(いのりていはく)：『汝是貴神(なんぢはこれたふときかみなり)，而樂麤行(あらきわざをこのみ)。儻逢獵士(もしかりびとにあはば)，見禽尤速(とられむことすみやかならん)。』乃抑止相鬥(いさかふことをやめ)，拭洗血毛(ちにぬれたるをのごひあらひ)，遂遣放之(ゆるしてき)。」天皇曰：「此必報也(かならずこのむくひならん)。」乃優寵日新(めぐみたまふことかぎりなく)。及至踐祚(くらゐにつきたまふとき)，拜大藏省(おほくらのつかさにまけたまふ)。【欽明紀】

從四位上左京大夫源朝臣國淵　【源國淵】　073

　探湯瓮(くかべ)事，既見於上(かみにみえたり)。此天皇獦于淡路島時(あはぢのしまにかりしたまふとき)，終日(ひねもす)不獲一獸(ひとつのししをえず)。於是更卜(さらにうらなふ)，島神祟之曰(しまのかみたたりをなしていはく)：「不得獸者(ししをえざることは)，是吾意也(わがこころなり)。海底有真珠(わたのそこにたまあり)，儻其珠祠於我(もしそのたまをわれにまつらば)，則悉當得獸(ししをえてむ)。」爰(そののち)獲真珠(たま)，其大如桃(おほきさもものごとく)。乃祠島神而獦之(かみにまつりしかば)，多獲獸也(おほくししをえたり)。【允恭紀】

參議左大辨從四位上行備中守藤原朝臣在衡　【藤原在衡】　074

　既見於上(かみにみえたり)。異俗(あたしくに)者，異國(ことくに)之謂也。【欽明紀】

參議從四位上左兵衛督兼紀權守源朝臣庶明　【源庶明】　075

　此天皇詔(のたまはく)：「船(ふね)者，天下之要用也(あめのしたのむねつものなり)。今民由無船(おほむたからふねなく)，甚苦步運(あゆみはこぶことくるしめり)。故下宣敕(みことのりし)，俾造船舶(ふねをつくらしむ)。」【崇神紀】

參議大藏卿正四位下兼行播磨守伴朝臣保平　【伴保平】　076

　此天皇為皇太子時(ひつぎのみことまししとき)，躬造漏剋(みづからときはかるうつはものをつくり)。初置近江大津宮(はじめてあふみのおほつのみやにおきたまふ)云也。【天智紀】

參議正四位下兼右衛門督行備前權守源朝臣高明　【源高明】　077

　　既見於上(かみにみえたり)。【雄略紀】

中納言源朝臣清蔭　【源清蔭】　078

　既見於上(かみにみえたり)。【仁德紀】

從三位守大納言兼行中宮大夫藤原朝臣師尹　【藤原師尹】　079

　此天皇都於纏向(まきむくにみやこつくりせり)，是謂珠城宮也(これをたまぎのみやといふ)。同帝御世(おなじきみよ)，遣使(つかひをつかはし)于河內國(かぶちのくに)，令作池溝(いけをつかしむ)。其後(そののち)，詔令諸國(くにぐににみことのりし)：「多開池溝(おほくいけをつかしむ)。」因是百姓富裕(これよりおほむたからとみゆたか)，天下太平也(あめのしたやすらかなり)。【垂仁紀】

大納言正三位兼又近衛大將陸奧出羽按察使藤原朝臣實賴　【藤原實賴】　080

　既見於上(かみにみえたり)。【孝德紀】

中務卿重明　【重明親王】　081

　伊弉諾尊(いざなぎのみこと)，指下天瓊矛(あまのたまほこをさしくだし)，探獲滄溟(あをうなはらをさぐりえて)。後生眾國(くにくにをうみ)，次生大己貴(つぎにおほなむぢのかみをうめり)。御魂振(みたまのふゆ)者，祭名(まつりするな)之謂也。【神代紀】

從五位下行紀伊權介矢田部宿禰公望　【矢田部公望】　082

　天照大神(あまてるのおほかみ)曰：「葦原千五百秋之瑞穗國(あしはらのちほあきのみづほのくに)，吾子孫可王之地也(わがこむまこのきみたるべきどころなり)。」【神代紀】

矢田部公望　083

　此卷，元慶六年竟宴歌，三十七人，【此中四人各詠二首。】合卌一首。

序一首，橘直幹。【上、下序，合二首。】上下合八十三首。
二首猶豫歌三首。合八十八首。
• 養老五年始講
  • 博士從四位下太朝臣安麻呂。【本妙寺本作大江朝臣安麻呂，誤歟。按續類從本、私記等改之。】
• 弘仁四年講
  • 博士從刑部少輔太朝臣人長。【外記日記，繫弘仁三年。】
• 承和十年講
  • 參議博士從四位上滋野朝臣貞主。【外記日記，注博士數位。正六位上菅野高年。】
• 元慶二年講
  • 五年畢，六年宴。助教從五位下善淵朝臣愛成。
• 延喜四年講
  • 六年宴。紀傳博士矢田部公望、明經葛井清鑒。
• 承平六年講
  • 天慶六年宴。





• 補遺歌

  • 　案『西宮記』云：講日本紀博士等例。天長、承和，其人未詳。
    　元慶六年，【右大臣宣奉敕講之例，以假名字書詠句。】講博士伊豫介善淵愛成。序者大內記菅野惟肖，得土倉阿珥古。未得解由者，前三河守菅野高松。其詞曰：

    
    084　日本紀竟宴，各分史，得土倉阿珥古

    　土倉能　網尼駕駕令流　鷹狎哉　繫絆手　無解由
    　土倉(つちくら)の　網(あみ)に掛(かか)れる　鷹是(たかな)れや　繫絆(つなぎほだ)して　解由無(とくるよしな)し
    　【仁德紀】

    前三河守菅野高松　【菅野高松】　084

    　歌體大略如此。云云。
    
    
    
    
  • 　案『續後撰集』神祇部云：

    
    085　元慶六年，日本紀竟宴，彥波瀲武鸕鶿草葺不合尊

    　渡津海(わたつうみ)　波搔別(なみかきわ)けて　現(あらは)れし　武鸕鶿尊(たけうのみこと)　幾世經(いくよへ)ぬらむ
    　【神代紀】

    兵部卿本康親王　【本康親王】　085

  
  
  　右二首，此本所漏歌(もれたるうた)也。
  　又，『古今六帖』第六蘆歌：

  
  086　得國常立尊

  　葦芽(あしづの)の　生出(おひで)し時(とき)に　天地(あめつち)と　人(ひと)との品(しな)は　定(さだ)まりにけり
  　【神代紀】

  佚名　086

  
  
  　此歌亦竟宴歌哉。若元慶六年竟宴得國常立尊所詠(よめる)歌歟。
  　又取古歌：

  
  087　得伊弉諾尊

  　沼矛垂(ぬほこた)れ　磬馭慮島(おのころしま)に　降坐(くだりま)す　神(かみ)ぞ父母(かぞいろ)　國(くに)を產(う)めれば
  　【神代紀】

  佚名　087

  
  　此古歌為者，得伊弉冉尊而詠(よめる)歟。
  　又『續古今』雜中：

  
  088　得伊弉諾尊

  　久方(ひさかた)の　天(あめ)より降(おろ)す　玉鉾(たまほこ)の　道有(みちあ)る國(くに)ぞ　今(いま)の我國(わがくに)
  　【神代紀】

  太上天皇　【後嵯峨院】　088

  
  　按『神代紀』云：「乃以天之瓊矛，【瓊，玉也。此云ぬ(努)。】指下而探之，是獲滄溟。」古事記書(かかれたり)瓊矛作沼矛。瓊，多(おほく)訓(よめる)為に(爾)，瓊為赤玉，故因色(いろにより)云丹矣(なるべし)。音訓(ねがよべば)瓊為ぬ(奴)者，沼矛(ぬほこ)之謂歟。『日本紀』至後宜自注瓊，【此云に(爾)。】而無之，遂讓(ゆづる)於今。以故咸曰沼矛(みなぬほことこそある)。太上天皇後嵯峨院，初訓玉鉾(たまほことよませたまへる)矣。書寫(かかせたまへる)此本之宗尊親王之御父也。此本假名(かな)，書玉鉾(たまほこ)者有二處，宜御覽詠讀(よませたまへる)兮。
  　又取『新古今集』賀部，仁德天皇御歌：

  
  089　貢物許(みつきものゆる)されて、國富(くにと)めるを御覽(ごらむ)じて

  　高台(たかきや)に　登見(のぼりてみ)れば　煙立(けぶりた)つ　民(たみ)の竈(かまど)は　寬饒(にぎはひ)にけり
  　【仁德紀】

  仁德天皇　089

  
  　此歌體(すかた)，非往古之歌，而元慶竟宴，奉得此帝(このみかど)，而誰某(たれ)之所詠歟。『朗詠集』作刺史歌。刺史者，國守也。以此歌之心(こころ)，故取得其意也(こころをえてとられけるなり)。又(また)此歌者，延喜竟宴藤原左大臣時平所詠(よみたまへる)歌之改(あらたまりたる)歟，大方肖似之詠也(おほかたにたるよめなり)。
  　元慶、延喜、天慶三代竟宴，皆舉(おこなはれける)于六年者，自然之事歟。又三代竟宴，得詠(よめる)土倉阿珥古者，皆未(みないまだ)得解由，亦可疑也(あやしきなり)。
  　元慶六年日本紀竟宴歌：

  
  090　譽田(應神)天皇

  　菱形(ひしがた)の　小倉(をくらのやま)は　遙(はる)けきを　君(きみ)を守(まも)るに　影(かげ)も離(はな)れず

  右大臣多　【源多】　090

  
  
  
  
• 　右此日本紀竟宴歌上下二卷者，鎌倉中書王(宗尊親王)真跡本，藏在肥後國熊本城下本妙寺矣。余不慮得臨寫彼之本。更寫臨摹之本，與今井自閑者則此本也。

  元祿十三年正月　日

  契沖書之

  
  
  
• 　右，日本紀竟宴和歌，以齋藤秀麿校本校合。