日本巫女史 第一篇:固有咒法時代


  • 第二章、巫女の呪術の目的と憑神

     我が古代に於いて、巫女が行うた呪術は、其目的にも、種類にも、更に方法にも、幾多の異つた物が有つた樣に想はれるが、今日からは、文獻學的にも、民俗學的にも、其を詳しく知る事の出來ぬのは誠に遺憾である。記・紀其古典を讀んで見ても、原始神道なる物には、幾つかの異流と分化とが在つた樣に考へられるが、國家が、民族統一の目的を以て、神道を固定させ、代代の神祇官や、和學者なる者が、此意を承けて、專ら神道の整理と、神祇の淘汰を行ひ、祭儀中から呪術的の分子を除去し、此れに代へるに合理的の事由を補足するに努めたので、遂に斯かる結果を見る樣に成つたのである。而して茲には、原始期に行はれた巫女の呪術の目的、及び巫女が其目的を遂行するに必要であつた憑神に就いて記述する。

  • [久遠の絆] [再臨ノ詔]