第五章 行政
第五三条 行政院は、国家の最高行政機関である。
第五四条 行政院に院長、副院長各一人、各部会首長若干人及び部会を主管しない政務委員若干人を置く。
第五五条 行政院院長は、総統が指名し、立法院の同意を経て任命する。 A立法院の休会期間中に行政院院長が辞職又は欠員になったときは、 行政院副院長がその職務を代理する。但し総統は、四十日内に立法院に会議の召集を要請し、 行政院院長の人選を提出して、その同意を求めなければならない。 行政院院長の職務は、総統の提出した行政院院長の人選が立法院の同意を得るまでは、 行政院副院長が暫時代理する。
第五六条 行政院副院長、各部会首長及び部会を主管しない政務委員は、行政院院長の推薦により総統が任命する。
第五七条 行政院は、次の規定により立法院に対して責任を負う。
一 行政院は、立法院に施政方針及び施政報告を提出する責任がある。 立法委員は、開会中行政院院長及び行政院各部会首長に対して質問する権限を有する。
二 立法院が、行政院の重要政策に賛同しないときは、決議を以て行政院に その変更を要求することができる。行政院は、立法院の決議に対して総統の 裁可を経て立法院に再議を要求することができる。再議の場合に、 出席立法委員の三分の二が原決議を維持したときは、行政院院長は直ちに その決議を受諾するか、又は辞職しなければならない。
三 行政院が立法院で決議した法律案、予算案、条約案について執行困難と 認めた場合は、総統の許可を経て、その決議案が行政院に送達されてから 十日内に立法院に再議を要求することができる。再議のときに出席立法委員の 三分の二が原案を維持したときは、行政院院長は直ちにその決議を受諾するか、 又は辞職しなければならない。
第五八条 行政院に行政院会議を設け、行政院院長、副院長、各部会首長及び部会を主管しない政務委員がこれを組織し、院長が主席となる。 A行政院院長、各部会首長は、立法院に提出すべき法律案、予算案、 戒厳案、大赦案、宣戦案、講和案、条約案及びその他の重要事項又は 各部会に渉る共同関係事項を、行政院会議に提出して議決しなければならない。
第五九条 行政院は、会計年度開始三箇月前に翌年度の予算案を立法院に提出しなければならない。
第六〇条 行政院は、会計年度終了後四箇月内に、決算を監察院に提出しなければならない。
第六一条 行政院の組織は、法律で定める。
第六章 立法
第六二条 立法院は、国家最高の立法機関であり、人民の選挙した立法委員によって組織し、人民を代表して立法権を行使する。
第六三条 立法院は、法律案、予算案、戒厳案、大赦案、宣戦案、講和案、条約案及び国家のその他の重要事項を議決する権限を有する。
第六四条 立法院の立法委員は、次の規定によって選出する。
一 各省、各直轄市の選出者。その人口が三百万以下のときは五人、 その人口が三百万を超えるときは、百万人を増す毎に一人増加して選出する。
二 蒙古各盟旗の選出者
三 西蔵の選出者
四 各民族の辺境地区選出者
五 国外に居留する国民の選出者
六 職業団体の選出者 A立法委員の選挙及び前項第二号乃至第六号の立法委員の定数の分配は、 法律で定める。第一項各号における婦女の定数は、法律で定める。
第六五条 立法委員の任期は三年とし、連選された者は重任することができる。 その選挙は、毎任期満了前三箇月内にこれを完成する。
第六六条 立法院に院長、副院長各一人を置き、立法委員が互選する。
第六七条 立法院は、各種委員会を設けることができる。 A各種委員会は、諮問のために政府の職員及び社会的に関係がある人士を会に招請することができる。
第六八条 立法院の会期は毎年二回とし、自ら集会を行う。 第一回は、二月から五月末、第二回は、九月から十二月末までとし、必要があるときは、延長することができる。
第六九条 立法院は、次の事由の一があるときは、臨時会を開くことができる。 一 総統の要請 二 立法委員の四分の一以上の請求
第七〇条 立法院は、行政院の提出した予算案に対して、支出増加の提議をしてはならない。
第七一条 立法院開会の時には、関係院院長及び各部会首長は、列席して意見を陳述することができる。
第七二条 立法院は、法律案通過後これを総統及び行政院に移送し、総統は、 受領後十日内にこれを公布しなければならない。 但し総統はこの憲法第五十七条の規定によって処理することができる。
第七三条 立法委員は、院内において行った言論及び表決について院外に対して責任を負わない。
第七四条 立法委員は、現行犯を除いて、立法院の許諾を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第七五条 立法委員は、官吏を兼任することができない。
第七六条 立法院の組織は、法律で定める。
第七章 司法
第七七条 司法院は、国家最高の司法機関であり、民事、刑事、行政訴訟の審判及び公務員の懲戒を掌理する。
第七八条 司法院は、憲法を解釈し、且つ法律及び命令を統一解釈する権限を有する。
第七九条 司法院に院長、副院長各一人を置き、総統が指名し、監察院の同意を経て任命する。 A司法院に、大法官若干名を置き、この憲法第七十八条に規定する 事項を掌理し、総統の指名により監察院の同意を経て任命する。
第八〇条 法官は、党派を超越し、法律により独立して審判をし、如何なる干渉をも受けない。
第八一条 法官は、終身職とし、刑事又は懲戒処分若しくは禁治産の宣告を受けるので なければ免職されない。法律によらなければ停職、転任又は減俸されない。
第八二条 司法院及び各級法院の組織は、法律で定める。
第八章 考試
第八三条 考試院は、国家最高の考試機関であり、考試、任用、選考昇任、考課、俸給、昇格転任、保障、褒奨、慰謝、退職、養老等の事項を掌理する。
第八四条 考試院に院長、副院長各一人及び考試委員若干名を置き、総統が指名し監察院の同意を経て任命する。
第八五条 公務員の選抜は、公開競争による考試制度を実行し、且つ省区により個別的に定数を規定した上、区域を分けて試験を行い、試験を経た合格者でなければ任用することができない。
第八六条 次の資格は、考試院の法による選考を経て調査決定しなければならない。
一 公務人員の任用資格
二 専門職業及び技術人員の開業資格
第八七条 考試院は、所管事項に関して立法院に法律案を提出することができる。
第八八条 考試委員は、党派を超越し、法律により独立して職権を行使しなければならない。
第八九条 考試院の組織は、法律で定める。
第九章 監察
第九〇条 監察院は、国家最高の監察機関であり、同意、弾劾、糾弾及び会計監査権を行使する。
第九一条 監察院に監察委員を置き、各省市議会、蒙古、西蔵の地方議会及び華僑団体が選挙する。その定数の分配は、次の規定による。
一 各省五人
二 各直轄市二人
三 蒙古各盟旗合計八人
四 西蔵八人
五 国外居留の国民八人
第九二条 監察院に院長、副院長各一人を置き、監察委員が互選する。
第九三条 監察委員の任期は六年とし、連選された者は、重任することができる。
第九四条 監察院がこの憲法により同意権を行使するときは、出席委員の過半数の議決により行う。
第九五条 監察院は、監察権を行使するために、行政院及びその各部会に対してその発布する命令及び各種関係文書を調査閲覧することができる。
第九六条 監察院は、行政院及びその各部会の所管事項に応じて若干の委員会を設け、一切の施設を調査し、その違法又は職務怠慢の有無を注意することができる。
第九七条 監察院は、それぞれの委員会の審査及び決議を経て是正案を提出し、 行政院及びその関係部会に移送してその注意、改善を促すことができる。 A監察院は、中央及び地方の公務員に対し、職務怠慢又は違法の事実があると 認めたときは、糾弾案又は弾劾案を提出することができる。刑事に係るときは、 法院に移送して処理させなければならない。
第九八条 監察院の中央及び地方の公務員に対する弾劾案は、監察委員一人以上が提議し、 九人以上の審査及び決定を経て初めて提出することができる。
第九九条 監察院の司法院又は考試院に所属する者の職務怠慢又は違法に対する 弾劾については、この憲法の第九十五条、第九十七条及び第九十八条の規定を適用する。
第一〇〇条 監察院の総統、副総統に対する弾劾案については、監察委員全体の四分の一以上の 提議と監察委員全体の過半数の審査及び決議があるとき初めて国民大会に提出することができる。
第一〇一条 監察委員は、院内で行った言論及び表決について院外に対して責任を負わない。
第一〇二条 監察委員は、現行犯を除いて、監察院の許可を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第一〇三条 監察委員は、他の公職を兼任し、又は他の業務を執行することができない。
第一〇四条 監察院に審査長を置く。総統が指名し、立法院の同意を経て任命する。
第一〇五条 審査長は、行政院が決算を提出した後三箇月内に法によりその審査を完了し、 且つ審査報告を立法院に提出しなければならない。
第一〇六条 監察院の組織は、法律で定める。
|