第一章 総則
第一条 中華民国は、三民主義に基づく民有、民治、民享の民主共和国とする。
第二条 中華民国の主権は、国民全体に属する。
第三条 中華民国の国籍を有する者は、中華民国国民とする。
第四条 中華民国の領土は、その固有の領域による。国民大会の決議を経なければ変更することができない。
第五条 中華民国の各民族は、一律に平等である。
第六条 中華民国の国旗は、紅地の左方上角に青天白日をしるしたものと定める。
第二章 人民の権利義務
第七条 中華民国の人民は、男女、宗教、種族、階級、党派の区別なく、法律上一律に平等である。
第八条 人民の身体の自由は、保障されるべきであり、現行犯の逮捕について 法律に別段の定めがある場合を除いて、司法又は警察機関が法定手続に よらなければ、逮捕拘禁することができない。法院の法定手続によらなければ、 審問、処罰することができない。法定手続によらない逮捕、拘禁、審問、 処罰に対しては、拒絶することができる。
A人民が犯罪の嫌疑により逮捕拘禁されたときは、その逮捕拘禁機関は、 逮捕拘禁の原因を書面で本人及び本人指定の親類友人に告知し、且つ遅くとも 二十四時間内に管轄法院に移送して尋問しなければならない。本人又は第三者も また管轄法院に対して二十四時間内に逮捕した機関より移送させ審問することを 申請することができる。
B法院は、前項の申請に対して拒絶することができず、且つ先に逮捕拘禁機関に 調査報告を命ずることもできない。逮捕拘禁機関は、法院の移送審問に対して 拒絶又は遅延ができない。
C如何なる機関によるかを問わず、人民が不法に逮捕拘禁されたときは、 その本人又は第三者は、法院に対して追究することを申請することができる。 法院は、これを拒絶することができず、且つ二十四時間内に逮捕拘禁した機関に 対して追究し、法律によって処理しなければならない。
第九条 人民は、現役軍人を除いて、軍事裁判を受けない。
第一〇条 人民は、居住及び移転の自由を有する。
第一一条 人民は言論、研究、著作及び出版の自由を有する。
第一二条 人民は、秘密通信の自由を有する。
第一三条 人民は、宗教信仰の自由を有する。
第一四条 人民は、集会及び結社の自由を有する。
第一五条 人民の生存権、労働権及び財産権は保障する。
第一六条 人民は、請願、行政訴願及び訴訟の権利を有する。
第一七条 人民は、選挙、罷免、創制、複決の権利を有する。
第一八条 人民は、試験を受け、公職に就く権利を有する。
第一九条 人民は、法律の定めるところにより納税の義務を負う。
第二〇条 人民は、法律の定めるところにより兵役に服する義務を負う。
第二一条 人民は、国民教育を受ける権利及び義務を有する。
第二二条 およそ人民のその他の自由及び権利は、社会秩序及び公共の利益を妨げない限り、 均しく憲法の保障を受ける。
第二三条 以上の各条に列挙した自由及び権利は、他人の自由を妨害することを防止し、 緊急危難を回避し、社会秩序を維持し、又は公共利益を増進するために 必要がある場合を除いて、法律を以て制限することができない。
第二四条 およそ公務員が違法に人民の自由又は権利を侵害したときは、 法律によって懲戒を受けることを除いて、刑事及び民事責任を 負わなければならない。被害人民は、その受けた損害について 法律の定めるところにより、国家に対して賠償を請求することができる。
第三章 国民大会
第二五条 国民大会は、この憲法の規定により全国の国民を代表して政権を行使する。
第二六条 国民大会は、次に掲げる代表を以て組織する。一 各県市及びこれと同等の区域は、それぞれ代表一人を選出する。但しその人口が五十万人を超えるときは五十万人を増す毎に代表一人を増加選出する。県市と同等の区域は、法律で定める。 二 蒙古選出の代表は盟毎に四人、特別旗毎に一人とする。 三 西蔵選出の代表の定数は、法律で定める。 四 各民族が辺境地区で選出する代表の定数は、法律で定める。 五 国外に居留する国民の選出する代表の定数は、法律で定める。 六 職業団体が選出する代表の定数は、法律で定める。 七 婦女団体が選出する代表の定数は、法律で定める。
第二七条 国民大会の職権は、次の通りである。 一 総統、副総統の選挙 二 総統、副総統の罷免 三 憲法の改正 四 立法院が提出する憲法改正案の複決 A創制、複決の両権は、前項第三、第四号の規定を除いて、 全国半数の県市が創制、複決の両権を行使するに至るときを俟って 国民大会が規則を制定し、且つこれを行使する。
第二八条 国民大会代表は、六年毎に一回改選する。 A毎期の国民大会代表の任期は、次期国民大会開会の日までとする。 B 現職の官吏は、その任地所在の選挙区において国民大会代表として当選することができない。
第二九条 国民大会は、毎期の総統任期満了の九十日前に集会する。これは総統が召集する。
第三〇条 国民大会は、次の事由の一があるときに臨時会を召集する。 一 本憲法第四十九条の規定により、総統、副総統を補選すべきとき 二 監察院の決議により、総統、副総統に対する弾劾案が提出されたとき 三 立法院の決議により憲法改正案が提出されたとき 四 国民大会の代表五分の二以上が召集を請求したとき A国民大会臨時会を前項第一号又は第二号により召集すべきときは、 立法院院長が集会を通告し、第三号又は第四号により召集すべきときは、総統が召集する。
第三一条 国民大会の開催地点は、中央政府所在地とする。
第三二条 国民大会代表は、会議において行った言論及び表決について大会外に対して責任を負わない。
第三三条 国民大会代表は、現行犯を除いて、会期中、国民大会の許可を経なければ逮捕又は拘禁されない。
第三四条 国民大会の組織、国民大会代表の選挙、罷免及び国民大会の職権行使手続は、 法律でこれを定める。
第四章 総統
第三五条 総統は、国家元首であって、外に対して中華民国を代表する。
第三六条 総統は、全国の陸海空軍を統率する。
第三七条 総統が法により法律を公布し命令を発布するときは、行政院院長の副署又は行政院院長及び関係ある部、会の首長の副署を経なければならない。
第三八条 総統は、この憲法の規定により条約締結及び宣戦、講和の権限を行使する。
第三九条 総統は、法により戒厳令を宣布する。但し立法院の可決又は追認を経なければならない。立法院が必要と認めたときは、決議により総統に戒厳の解除を要請することができる。
第四〇条 総統は、法により大赦、特赦、減刑及び復権の権限を行使する。
第四一条 総統は、法により文武官吏を任免する。
第四二条 総統は、法により栄典を授与する。
第四三条 国家に天災、疫病が発生し、又は国家財政経済上重大な変動があり急速な処分を必要とする場合は、総統は、立法院休会期間中にあっては、行政院会議の決議を経て緊急命令法により、緊急命令を発布し、必要な処置をとることができる。但し命令発布後一箇月内に立法院に提出して追認を求めなければならない。立法院が同意しないときは、その緊急命令は、直ちに効力を失う。
第四四条 総統は、院と院との間の紛争に対して、この憲法に規定がある場合を除いて、関係各院院長を召集し協議解決することができる。
第四五条 中華民国国民は、満四十歳に達したときは、総統又は副総統に選ばれることができる。
第四六条 総統、副総統の選挙は、法律で定める。
第四七条 総統、副総統の任期は六年とし、連選されたときは一期重任することができる。
第四八条 総統は就任時に宣誓しなければならない。その誓詞は、次の通りである。 「余は謹んで至誠を以て全国人民に対し宣誓する。余は必ず憲法を遵守し、職務を忠実に行い、人民の福利を増進し、国家を防衛して国民の付託に決して背かない。もし誓言に相違することがあれば、国家の最も厳しい制裁を甘んじて受けるものである。ここに謹んで誓う。」
第四九条 総統欠位のときは、副総統が総統の任期満了までその任を継ぐ。総統、副総統が共に欠位したときは、行政院院長がその職権を代行し、旦つこの憲法第三十条の規定により国民大会臨時会を召集して総統、副総統を補選する。その任期は、前任総統の残任期間とする。総統が事故により職権を行うことができないときは、副総統がその職権を代行する。総統、副総統が、共にその職権を行うことができないときは、行政院院長が代行する。
第五〇条 総統は、任期満了の日に解職される。もし任期満了による後任総統が未だ選出されていないとき、又は選出後総統、副総統が共に未だ就任していないときは、行政院院長が総統の職権を代行する。
第五一条 行政院院長が総統の職権を代行するときは、その期限は三箇月を超えることができない。
第五二条 総統は、内乱又は外患罪を犯した場合を除いて、罷免又は解職を経た後でなければ刑事上の訴追を受けない。 |