一夜官女(いちやかんじょ)とは、野里住吉神社にて毎年2月20日におこなわれる、一風変わった神事です。
一夜官女は、「神の名を騙る猿—狒々神(ひひがみ)に人身御供(ひとみごくう)を捧げていた」という伝説に由来しており、つまるところ、「生贄の儀式」を神事としたものなのです。(Ref. 野里住吉神社一夜官女の祭(乙女塚)の由来)
神事を始めるにあたって、まず生贄役となる七人の「官女」を迎えるための行列が社を出発し、正装した童女たちを伴って戻ります。
その後、神前にて祝詞奏上、および神楽舞が執りおこなわれます。
祝詞の内容としては「これら七人の童女が持つ、美しく清らかな"真心"を神に捧げることで、地域の平穏無事を祈願する」ということになっており、生贄の儀式としての、血なまぐさい面は極力取り除かれているようです。
童女の数は、かつて犠牲となった乙女の数を示しているといいます。また、伝説では豪傑、岩見重太郎が乙女の代わりとなって櫃に入り、狒々の現れたところを退治するのですが、このあたりは八岐大蛇伝説のモチーフとの類似が認められ、興味深いところです。
娘が官女に選ばれること—。かつてそれは、永遠の別れを意味し、悲壮極まりないことだったのかも知れません。しかし現在のそれは、娘の純潔が神に認められることを意味しており、この地域ではポジティブに、大変名誉なこととしてとらえられています。
一夜官女での神楽舞は、剣と矛の舞/里神楽からなります。荒々しくも優雅に美しく舞われるそれは、乙女塚伝説のもつ悲哀の情と溶けあい、一夜官女ならではの、大きな感動を紡ぎ出すこととなります。
踏歌(とうか)神事とは、かつて宮中において、歌舞に巧みな男女を招き、年始の祝詞を歌い舞わせた故事に由来するおまつりです。神事としての踏歌はそれほど一般的なものではなく、現在は住吉大社と熱田神宮でおこなわれるのみです。
住吉大社での踏歌神事は、毎年1月4日に第一本宮前にてとりおこなわれます。催馬楽(さいばら)にあわせ、神楽女(かぐらめ)による「白拍子の舞」と「熊野舞」が奉納されます。
「白拍子の舞」は、扇を巧みに使った独舞(ひとりまい)、「熊野舞」は、四人舞の形態をとります。
今でこそ日中に舞われますが、かつては日没後、篝火の中でおこなわれたといいます。炎ゆらめくなかで舞われるそれは、このうえなく神秘的・幻想的なものとして人々の目に映ったことでしょう。
住吉大社からのご要望により、現在、閲覧を研究目的にのみ限らせて頂いております。閲覧をご希望のかたは別途ご連絡ください。
湯立(ゆだて)は、裁判の一形態であった「探湯(くがだち)」を模したものであるとされ、 釜に湯を煮立てた前で両手に笹を携えた巫女が舞い、邪を払う神事とされています。 笹を浸し、釜湯を撒き上げるその躍動感には、素晴らしいものがあります。
その後、岩戸舞が披露されます。腕の振りが特徴的であり、朝の到来を告げる鳥の羽ばたく様を連想させるかのようです。
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平安時代の装束をまとった女性たちが歌留多取りに興じるという趣向のもので、毎年1月3日に八坂神社(京都府)にて催されているものです。