このページは巫女装束の構造がよくわからない絵師様を対象とした巫女装束を描く上でのポイントを記したページです。
巫女装束とひとくくりにしましても種類は様々で、それにより若干の違いが生じます。今回は以下の種類の構造について解説しております。
袖 (そで) … 衣服の左右の腕を覆う部分。和服では袂を含めていう
袂 (たもと) … 和服の袖の袖付けより下の垂れ下がった部分
裾 (すそ) … 衣服の下の縁(へり)
ひだ (襞) … スカートなどで用いられる布を折りたたんだ部分
白衣 (はくい/びゃくえ)
主に上半身を装飾・保護する着物。この白衣は通常の和服同様に袴の裾近くまであります。よって袴をたくしあげると肌ではなく、主にこの白衣が見えます。
緋袴/袴 (ひばかま/はかま)
下半身に着用する緋色の袴。神社によっては深緑色や白色、形状もスカート状の行灯袴や襠有り袴など様々な種類があります。
今回の緋袴は尻の下辺りまで前後に分かれており、前後で別々の帯がついています。前帯は先に白衣の上に付けて後ろ側で結びます。後帯は結んだ前帯を隠すように着用し、前でリボン状に結びます。その時に白色の飾りの紐である『上指糸』が見えるように着るとより美しく見えます。この袴の構造によって、横から白衣が見えているのです。
足袋 (たび)
和服の靴下のことです。先端が親指と他の四本の指を入れる二つの部分に分かれています。足袋の長さはあまり長くなく、踝の上辺りまでしかありません。
草履 (ぞうり)
鼻緒がついた平底の履物です。鼻緒は白色が多く、緋色の袴の場合は緋色もあります。
襦袢 (じゅばん)
白衣の下に着る着物。上半身のみを覆う半襦袢、白衣と同じく袴の裾近くまである長襦袢の2種類があります。 色は白色です。
襟は白衣に隠れないよう見えるように着るのがポイントです。
掛襟 (かけえり)
襦袢の上、白衣の下に着る飾りの襟です。
見えない部分では肌襦袢や裾よけなど和装特有の下着も着ていますが、絵には直接関係が無いので割愛します
難易度
★☆☆…基本中の基本。これを知らなかったら巫女装束に見えない
★★☆…知っておくと巫女好きに「ぉ」と思われるポイント
★★★…これを上手に使えれば一人前! つまりはマニアックなところ
@★☆☆ 襟の色
掛襟はつけないことがあるので(襦袢の)白→(白衣の)白のように襟を見せるか、(襦袢の)白→(掛襟の)赤→(白衣の)白の順番で見えるということを心に留めておきましょう。逆に白衣の襟しか見せないと簡素になってしまい、和服の重ね着の美が損なわれるので避けた方がいいです。
A★☆☆ 襦袢の色
首に赤色の襟が見えるのは掛襟の赤色が見えているからであって、襦袢が赤色なことはありません。よって袖口から見える襦袢は絶対に白色です。よく間違うポイントなので注意しましょう。
B★☆☆ 襟幅
襟幅はある程度太目の方が細く描くよりも巫女装束っぽく見えます。
C★★☆ 和服の縫い目
和服にも縫い目が存在します。和服の袖の縫い目は洋服(通常肩の辺りにあるかと…)と違い半袖のTシャツの袖先の少し上辺りに存在します。また袂はこの縫い目から出てきます。
D★☆☆ 袖先は閉じている
白衣の袖先は手を通す部分+少しが開いており、あとは閉じています。
E★★★ 巫女さんの絶対領域
女性用の白衣と襦袢の袂の後ろ側は開いています。
ですから、運良く白衣・襦袢共に開いている部分重なれば後ろから生腕が見えることがあるのです! これを俗に巫女さんの絶対領域といいます(笑
F★★★ 身八つ口
女性用の白衣には側面に身八つ口と呼ばれる穴が開いています。ここから手を入れて崩れてしまった襟を正すのです。
つまり通常は袂に隠れてしまい見えませんが、手を上げた時にはこの穴から襦袢が見えることがあるのです。
G★★☆ 和服の縫い目2
和服にはここにも縫い目(厚くなっている部分)が存在します。襟の途中から出て垂直に下まであります。 袴に隠れるので見えるのは実質これぐらい。
若干襟側の方が高い段になっています。
H★★☆ 襟の二重構造
襟は上からこの辺りまで二重になっており、ここから一枚になるので段ができます。
この目印は隠れている右側の襟にもついており、この印を同じ高さにそろえて白衣を着ます。
I★☆☆ 袴をつける位置
女性は必ず胸のすぐ下ぐらいに袴をつけます。
袴が上すぎるとチマチョゴリのようになったり、下すぎるとだらしなく見えたりと巫女絵を左右する重要なポイントです。
個人的な描き方ですが私は頭:白衣は大体1:1の割合で描くようにしています。参考にしてみてください。
J★★☆ 上指糸(左右紐)
袴の腰当の部分は硬めに作られており、正面と後側には上指糸、または左右紐と呼ばれる縄状の白色の細い飾り糸が二本通されています。間隔は短長交互に見えるように作られています。
K★★☆ リボン
後帯で前に蝶結びを作ります。蝶結びをすると一方はリボンの裏側から紐の先端が垂れ、もう一方のリボンの先端は輪の上を通って垂れます。
L★★☆ 袴の縫い目
前後の分かれている部分の縁には生地が若干厚くなっています。前後共に白衣が見える側の方が若干高めの段があります。
M★★☆ 袴の縫い目2
袴の前後が合わさった部分から下まで縫い目があります。よって両側面に存在します。
N★★★ 袴の縫い目3
通常は袴のひだに隠れて見えませんが袴の中心に縫い目があります。
O★☆☆ 袴のひだ
緋袴のひだの数は前は左右2本ずつの4本です。5本は振袖等のものなので注意しましょう。
また、いずれも真正面にあり、真横にはひだはありません。よって巫女装束を真横から見ると縫い目も上記の一箇所しか無く平面で、非常にシンプルになってしまい、魅力を表現しにくいのです。
P★★☆ 足袋の縫い目
親指と他の四本の指を入れる分かれ目から上まで縫い目があります。
絵は現実には無いことも表現できるというのが大きな魅力だと考えます。今書いたことを参考に描くと巫女好きの間では「ぉ」と思われますが、絵に魅力を持たせるための工夫が必要になってきます。特に上半身のみを描くとほとんどが白色になるので色彩の面白みに欠けるという問題も出てきます。
よって本物に近い巫女装束を描くには全身(またはそれに近い絵)を描くことが効果的だと思います。単純な色彩ながら、魅力を持たせる為に計算尽くされた美しさを表現することが巫女絵師にとっては永遠の課題なのです!
また本物(巫女装束)を描くことは大切ですが、ある程度のアレンジをした着物を描く(巫女服)ということも簡単に魅力を持たせるという意味では有効です。本物という概念に押しつぶされること無く、しっかりと構造を理解した上で自分が良いと思う巫女装束・巫女服を描きましょう!
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