拾遺和歌集 卷第九 雜歌下
雜歌 旋歌頭 長歌
雜歌
0509 或所に、春秋孰勝ると、問はせ給ひけるに、詠みて奉ける
0510 元良親王、承香殿俊子に春秋孰勝ると問侍ければ、秋もをかしうはべりと言ひければ、面白き櫻を、茲は如何と言ひて侍ければ
0511 題知らず
0512 圓融院の上、鶯と郭公と孰勝ると申せと仰せられければ
0513 躬恒、忠岑に問侍ける
0514 答ふ
0515 【○承前。答歌。】
0516 又問ふ
0517 答ふ
0518 又問ふ
0519 答ふ
0520 又問ふ
0521 答ふ
0522 又問ふ
0523 答ふ
0524 歌合の合せずなりにけるに
0525 草合し侍ける所に
0526 謎謎物語しける所に
0527 題知らず
0528 健守法師、佛名野伏にて罷出て侍ける年、言遣はしける
0529 返し
0530 屏風に、法師舟に乘りて漕出たる所
0531 內より人家に侍ける紅梅を掘らせ給ひけるに、鶯巢食ひて侍ければ、家主の女先づ如斯奏せさせ侍ける
0532 或所に說經し侍ける法師の從僧ばらのゐて侍けるに、簾垂內より、「花を折りて。」と言侍ければ
0533 月を見侍て
0534 賀茂に詣侍ける男の見侍て、「今は莫隱れそ。甚良く見てき。」と言遣せて侍ければ
0535 能宣に車釭を乞ひに遣はして侍けるに、侍らずと言ひて侍ければ
0536 返し
0537 廉義公家紙繪に、青馬在所に葦花毛馬在所
0538 攝津守に侍ける人許にて
0539 攝津國に罷れりけるに、知りたる人に逢侍て
0540 難波に祓しに、或女罷りたりけるに、元親く侍ける男の葦を苅りて怪しき樣に成りて道に會て侍けるに、然氣無くて年頃榮合はざりつる事等言遣はしたりければ、男の詠侍ける
0541 返し
0542 伊勢御息所生奉たりける親王の亡くなりにけるが、描置きたりける繪を藤壺より麗景殿女御方に遣はしたりければ、此繪を返すとて
0543 地獄形書きたるを見て
0544 去年秋、女に後れて侍けるに、孫の後春の兵衛佐に成りて侍ける喜びを人人言遣はし侍ければ
0545 源重之母の近江國府に侍けるに、孫の東國より夜上りて、急事侍て、え此度逢はで上りぬる事、と言ひて侍ければ、祖母の女の詠侍ける
0546 題知らず 【○萬葉集1342。】
山高み 夕日隱れぬ 淺茅原 後見む為に 標結は益を
以其山高峻 夕日早暮天昏闇 早知如此者 寔宜標結淺茅原 以為日後來苅取
人麿 柿本人麻呂
0547 【○承前。無題。】
0548 【○承前。無題。】
0549 【○承前。無題。】
0550 雨降る日、大原川を罷渡けるに、蛭付きたりければ
0551 冠柳を見て
0552 天曆御時、一條攝政藏人頭にて侍けるに、帶を掛けて御碁遊しける、負奉て御數多く成侍ければ、帶を返給ふとて
0553 內侍馬家に右大將實資が童に侍ける時、碁打ちに罷りたりければ、物書かぬ草子を掛け物にして侍けるを見侍て
0554 返し
0555 題知らず
0556 清原元輔、肥後守に侍ける時、彼國の鼓瀧と云ふ所を見に罷りたりけるに、異樣なる法師の詠侍ける
0557 三位國章小瓜を扇に置きて、藤原兼範に持たせて、大納言朝光が兵衛佐に侍ける時、遣はしたりければ
0558 返し
0559 陸奧國名取郡黑塚と云ふ所に重之が妹數多有りと聞きて言遣はしける
0560 廉義公家紙繪に旅人の盜人に遭ひたる形描ける所
0561 【○承前。廉義公家紙繪,書旅人遇盜人之所。】
0562 高尾に罷通ふ法師に名立侍けるを、少將滋幹が聞付けて、誠かと言遣はしたりければ
0563 御嶽に年老いて詣侍て
0564 大隅守櫻島忠信が國に侍ける時、郡司に頭白き翁の侍けるを召考むとし侍にける時、翁の詠侍ける
旋歌頭
0565 旋歌頭
0566 【○承前。旋歌頭。萬葉集2366。】
真澄鏡 見然と思ふ 妹に逢はむ哉 玉緒の 絕えたる戀の 茂此頃
無曇真澄鏡 吾人由衷寔欲見 可惜伊人不予逢 魂絲命緒矣 情斷覆水誠難收 其戀仍繁比昔時
柿本人麿 柿本人麻呂
0567 【○承前。旋歌頭。萬葉集1291、和漢朗詠0436。】
彼岡に 草苅る男 然莫苅りそ 在つつも 君が來坐さむ 御秣に為む
在於彼岡間 苅草杣夫男丁矣 還欲莫刈如此然 願留此岡草 待於吾君來幸時 以為御馬食料秣
柿本人麿 柿本人麻呂
0568 女許に罷りたりけるに、夙入りにければ、朝に
長歌
0569 吉野宮に奉る歌 【○萬葉集0036。】
千早振る 我が大君の 聞召す 天下なる 草葉も 潤ひに足りと 山川の 澄る河內と 御心を 吉野國の 花盛り 秋津野邊に 宮柱 太敷坐して 百敷の 大宮人は 舟並べ 朝川渡り 舟競べ 夕川渡り 此川の 絕ゆる事無く 此山の 彌高からし 玉水の 瀧京 見れど飽かぬ哉
千早振稜威 經綸恢弘我大君 其所馭聞食 八紘六合普天下 顯見蒼生之 草葉霑潤足皇澤 秀麗而豐榮 山川水清澄河內 御心寄情兮 御吉野兮吉野國 花盛咲絢爛 蜻蛉秋津之野邊 立豎大宮柱 無礎深穴太敷坐 百敷宮闈間 高雅殿上大宮人 列船並進兮 朝日渡川詣宮朝 競船漕槳兮 夕暮渡川詣闕廷 猶彼川蟻通 終日絡繹無絕時 如彼山險峻 美輪美奐彌高知 晶瑩玉水兮 激越瀧京吉野宮 雖見百遍無厭時
人麿 柿本人麻呂
0570 反歌 【○萬葉集0037。】
見れど飽かぬ 吉野川の 流れても 絕ゆる時無く 行歸見む
百見無厭時 源遠流長吉野川 逝水如斯夫 亙古恆久無絕時 再三行返復歸見
人麿 柿本人麻呂
0571 身沈みける事を嘆きて、勘解由判官にて
0572 返し
0573 或男の物言侍ける女の、忍びて逃侍て、年頃有りて消息して侍けるに、男の詠侍ける
0574 圓融院御時、大將離侍て後、久しく參らで奏せさせ侍ける
0575 玆が御返、唯、稻船の、と仰られたりければ、又御返し