0725 建治二年八月、龜山殿にて、始めて松色浮池と云へる題を講ぜられ侍りし序に
萬代と 龜尾山の 松蔭を 移して住める 宿池水
太上天皇 龜山院
0726 【○承前。建治二年八月,於龜山殿,以松色浮池為題,始講之際。】
池水に 松千歲を 移しても 君に二度 逢ふが嬉しさ
攝政前太政大臣 藤原兼平
0727 寳治二年、鳥羽殿にて、池上松と云へる心を
行末を 限らぬ松の 世世を經て 蔭長閑なる 庭池水
冷泉太政大臣 藤原公相 西園寺公相
0728 【○承前。寳治二年,於鳥羽殿,詠池上松之趣。】
池水の 絕えず澄むべき 御代為れば 松千歲も 永久に逢見む
前大納言 藤原為家
0729 同年正月、松色春久と云ふ事を講ぜられける時、序を奉りて
千枝に刺す 松綠は 君が代に 逢ふべき春の 數にぞ有ける
德大寺入道前太政大臣 藤原實基 德大寺實基
0730 正元元年三月、西園寺の一切經供養に行幸し侍りけるに、春宮、中宮同じく行啟有りて次日、人人翫花と云ふ心を仕奉けるに
例無き 數多御幸の 今日に逢ひて 花は八千世の 色に出づらむ
前大納言 藤原顯朝
0731 弘長三年二月、龜山殿に行幸有りて花契遐年と云ふ事を講ぜられけるに、序を奉りて
今年より 御幸に契る 山櫻 思ふも久し 萬代春
山階入道左大臣 藤原實雄 洞院實雄
0732 【○承前。弘長三年二月,行幸龜山殿,講花契遐年,奉序。】
龜尾の 山峽ある 山櫻 萬代經べき 例とぞ見る
冷泉太政大臣 藤原公相 西園寺公相
0733 【○承前。弘長三年二月,行幸龜山殿,講花契遐年,奉序。】
名に立てて 萬代經べき 龜尾の 山櫻は 今日咲きにけり
權大納言 藤原經任
0734 建長六年三首歌合に、櫻を
待たれ來し 三笠山の 櫻花 久しき春の 髻首にぞ插す
萬里小路右大臣 藤原公基 西園寺公基于時右大將
0735 嘉承二年、鳥羽殿にて、池上花と云へる事を
千世を經て 澄むべき池の 水為れば 映れる花の 影も長閑し
富家入道前關白太政大臣 藤原忠實
0736 寳治百首歌奉りける時、松上藤
咲續く 藤榮えむと 春日山 松にぞ君を 祝懸けつる
常磐井入道前太政大臣 藤原實氏 西園寺實氏
0737 文永八年七月、院忍びて鷲尾に御幸侍りける時、女房中より、「君住めば、心有りてや、末遠く、千世松蟲の、聲聞ゆらむ。」と侍りける返事に
昔より 君が為なる 宿為れば 我も千歲を 松蟲聲
兵部卿 藤原隆親
0738 弘長三年九月十三夜、內裏十首歌奉りし時、月前祝
君が住む 同雲居の 月為れば 空に變らぬ 萬代蔭
前大納言 藤原為氏 二條為氏
0739 家に十首歌詠侍りけるに、秋祝
雲上に 影を並べて 久方の 月ぞ千歲の 秋も澄むべき
山階入道左大臣 藤原實雄 洞院實雄
0740 寬治八年、鳥羽殿にて、翫池上月と云へる心を
長閑なる 光を添へて 池水に 千世も澄むべき 秋夜月
權中納言 藤原俊忠
0741 寳治元年十首歌合に、海邊月
和歌浦や 昔に歸る 浪上に 光遍き 秋夜月
正三位 藤原經朝 世尊寺經朝
0742 同二年、鳥羽殿五首歌に、月前祝
君が世に 光を添へよ 末遠き 千歲秋の 山端月
從二位 藤原行家 九條行家
0743 月與秋久と云ふ題を講ぜられ侍りし時
幾秋と 限らぬ月の 光こそ 君が御影の 例也けれ
左大臣 藤原師忠 二條師忠
0744 文永五年八月十五夜內裏歌合に、田家見月
民安き 田面庵の 秋風に 稻葉雲は 月も觸らず
前中納言 藤原資宣
0745 從一位倫子七十賀に詠侍りける
君が為 千世を重ねて 菊花 行末遠く 今日こそは見れ
宇治入道前關白太政大臣 藤原賴通
0746 百首歌中に
結ぶべき 末も限らじ 君が世に 露積れる 菊下水
式子內親王
0747 菊花秋久と云ふ事を
如何許 老いせぬ秋を 累ぬらむ 千世髻首の 白菊花
太宰權帥 藤原為經 吉田為經
0748 正治百首歌に、祝
千歲迄 積れる年の 兆とて 雪を重ぬる 鶴毛衣
前大僧正慈鎮
0749 題知らず
葦鶴 齡し有らば 君が世の 千歲數は 數取りてむ
法成寺入道前攝政太政大臣 藤原道長
0750 寄海祝と云へる心を
海原や 風納まれる 浪上に 思ふも遠し 御代行末
常磐井入道前太政大臣 藤原實氏 西園寺實氏
0751 文永三年三月、續古今集の竟宴歌
數數に 琢く玉藻の 現れて 御代靜かなる 和歌浦浪
後花山院入道前太政大臣 藤原道雅 花山院道雅
0752 建仁三年十一月、和歌所にて釋阿の九十賀賜はせける時、詠侍りける
君に今日 十歲數を 讓置きて 九返りの 萬代や經む
前中納言 藤原定家
0753 【○承前。建仁三年十一月,於和歌所賜釋阿九十賀時侍詠。】
限無き 藐姑射山の 蔭為れば 千歲坂も 猶越えぬべし
前中納言 藤原範光
0754 【○承前。建仁三年十一月,於和歌所賜釋阿九十賀時侍詠。】
老いらくの 坂行く道を 照すなり 藐姑射山の 峯月影
大藏卿 藤原有家
0755 建長五年七月三首歌に
0756 祝心を
大原や 小鹽松ぞ 君が代の 何時も變らぬ 例為るべき
權大納言 藤原長家
0757 建曆二年、豐御禊二度行はれける次日、前中納言定家許に遣はしける
君待ちて 二度澄める 河水に 千世添ふ豐の 御禊をぞ見し
參議 藤原雅經 飛鳥井雅經于時左中將
0758 今上御元服時、大納言に歸りなりて、上壽務侍りて思續侍りける
年長けて 思ひも寄らず 君が代に 復仕ふべき 道在りとは
兵部卿 藤原隆親
0759 建久九年大嘗會主基方御屏風に、備中國神島有神祠所を
神島の 浪白木綿 掛幕も 畏き御代の 例とぞ見る
前中納言 藤原資實
0760 仁治三年大嘗會悠紀方風俗歌、朝日山
明らけき 御代始の 朝日山 天照神の 光射添ふ
前參議 菅原為長 高辻為長
0761 嘉禎元年大嘗會悠紀方巳日樂破、近江國真木村
常磐為る 影は變らじ 真木村 天露霜 幾世經るとも
前中納言 藤原家光
0762 文應元年大嘗會悠紀方御屏風歌、玉井
涼しさに 千歲を豫て 結ぶ哉 玉井水の 松下蔭
民部卿 藤原經光