1114 建仁元年三月歌合に、遇不逢戀
初瀨川 復見むとこそ 賴めしか 思ふも辛し 二本杉
皇太后宮大夫 藤原俊成
1115 同心を
人ははや 言ひし契も 變る世に 昔ながらの 身こそ辛けれ
尊治親王
1116 【○承前。詠同心。】
心こそ 昔にも非ず 變るとも 契りし事を 忘れず欲得
權大納言 藤原公顯 西園寺公顯
1117 百首歌奉りし時、忘戀
儚くぞ 忘果てじと 賴みける 昔儘の 心習に
前內大臣 藤原實重 三條實重
1118 題知らず
忘れじと 言ひし許の 言葉や 辛きが中の 情為るらむ
佚名 讀人知らず
1119 百首歌奉りし時、忘戀
言葉に 添へても今は 返さばや 忘らるる身に 殘る面影
遊義門院權大納言 二條為子
1120 絕戀之心を
偽の 言葉だにも 無き時ぞ 實に絕果つる 契とは知る
今上御製 後二條帝
1121 建保三年內裏歌合に
等閑に 一度契る 偽も 長恨みの 夕暮空
藤原信實朝臣
1122 題知らず
待慣れし 契は餘所の 夕暮に 獨悲しき 入相鐘
新院御製 後伏見院
1123 弘長元年百首歌奉りける時、忘戀
餘所にだに 思ひも出じ 箸鷹の 野守鏡 影も見えねば
前大納言 藤原為氏 二條為氏
1124 建長三年九月十三夜、十首歌合に、寄月恨戀
忘らるる 我身を秋の 辛さとて 月さへ變る 影ぞ悲しき
兵部卿 藤原隆親
1125 戀歌之中に
賴來し 人心は 變れども 我や忘るる 山端月
安嘉門院甲斐
1126 【○承前。戀歌之中。】
問はずなる 人形見と 慰めむ 變らで宿れ 袖月影
左近中將 藤原冬基 鷹司冬基
1127 【○承前。戀歌之中。】
厭ひしも 今は餘所なる 曉を 變らぬ音にや 鳥は鳴くらむ
正親町院右京大夫
1128 【○承前。戀歌之中。】
身上の 別を知らぬ 曉も 猶鳥音に 濡るる袖哉
從三位源親子
1129 弘安元年百首歌奉りし時
忘れずよ 飽かぬ名殘に 立別れ 見しを限りの 橫雲空
入道前太政大臣 藤原實兼 西園寺實兼
1130 文永二年九月十三夜、五首歌合に、絕戀
後朝の 曉許 憂物と 言ひしも今は 昔也けり
近衛關白左大臣 藤原基平 近衛基平
1131 題知らず
辛かりし 曉每の 別れだに 身に無き物と 今は成りぬる
權中納言 藤原家定 花山院家定
1132 百首歌奉りし時、遇不逢戀
然ても其の 在し許を 限とも 知らで別れし 我や儚き
權大納言 藤原公顯 西園寺公顯
1133 戀歌之中に
面影の 憂身に添はぬ 中為らば 我もや人を 忘果てまし
藤原宗秀
1134 【○承前。戀歌之中。】
忘らるる 習有りとは 知乍ら 軈てと迄は 思はざりしを
前中納言 藤原俊光 日野俊光
1135 【○承前。戀歌之中。】
等閑に 思出ても 何時迄か 問はるる程の 契為るらむ
藤原為綱朝臣
1136 百首歌奉りし時、忘戀
憂きながら 驚かさばや 今更に 思果つべき 契為らねば
藤原為藤朝臣
1137 題知らず
復はよも 思も出でじ 花薄 枯にし中は 仄めかすとも
藤原長經
1138 【○承前。無題。】
宵宵に 通ひし道ぞ 絕えにける 憂身を中の 關守にして
佚名 讀人知らず
1139 【○承前。無題。】
石見潟 我が身餘所に 越す浪の 然のみや永久に 懸けて戀ふべき
津守國助
1140 【○承前。無題。】
白浪の 懸けても人に 契りきや 異浦にのみ 海松布離れとは
衣笠內大臣 藤原家良 衣笠家良
1141 弘安元年百首歌奉りし時
忘行く 人契は 苅菰の 思はぬ方に 何亂れけむ
前中納言 藤原為兼 京極為兼
1142 寄草戀を
其上に 立歸りてや 祈らまし 復も逢日の 名を賴みつつ
賀茂久宗
1143 【○承前。詠寄草戀。】
懸けて猶 賴む甲斐無し 葵草 今は餘所なる 其名許に
平親清女
1144 花徒なる由申し侍りける人の返事に、人に代りて
徒也と 花名立てに 言為して 移ろふ人の 心をぞ見る
京極 藤原基良女
1145 久しく音連れざりける人許に、花鈴を櫻枝に付けて遣はすとて
巡逢ふ 月日を空に 數へても 花にぞ掛かる 命長さば
入道前太政大臣 藤原實兼 西園寺實兼
1146 返し
巡逢ふ 憂身に春は 變れども 花には掛かる 色も見えけり
民部卿 藤原資宣女
1147 遇不逢戀心を詠ませ給ひける
月草の 花心や 移るらむ 昨日にも似ぬ 袖色哉
土御門院御製
1148 寄夢戀を
月草の 花摺衣 翻す夜は 移ろふ人ぞ 夢に見えける
前僧正公朝
1149 建保二年內大臣家百首歌に、名所戀
形見こそ 阿太大野の 萩の露 移ろふ色は 言ふ甲斐も無し
前中納言 藤原定家
1150 題知らず
移行く 心色の 秋ぞとも いさ白菅の 真野萩原
行念法師
1151 後京極攝政家六百番歌合に
秋風に 靡く淺茅の 色よりも 變るは人の 心也けり
從二位 藤原家隆
1152 千五百番歌合に
1153 里に侍りける時、紅葉を賜はせたりける御返事に
中中に 思ひも入れぬ 身秋を 紅葉よ何の 色に見すらむ
宰相典侍
1154 戀歌之中に
憂身には 如何に契りて 言葉の 時雨も堪へず 色變るらむ
藤原實秀
1155 【○承前。戀歌之中。】
契置きし 心木葉に 非ねども 秋風吹けば 色變りけり
法師賴舜
1156 【○承前。戀歌之中。】
結ばずよ 霜置迷ふ 冬草の 枯るるを人の 契為れとは
權少僧都房嚴
1157 【○承前。戀歌之中。】
是も復 世習ひぞと 思はずば 變る辛さに 永らへも為じ
藤原經清朝臣
1158 【○承前。戀歌之中。】
變らじと 契りし儘の 中為らば 命後や 人に別れむ
行蓮法師
1159 寳治百首歌奉りし時、寄衣戀
悔しきに 濡るる袂の 小夜衣 思返すも 甲斐無かりけり
源俊平
1160 題知らず
今は唯 慣れて過ぎにし 月日さへ 思出ては 悔しかりけり
權中納言 藤原家定 花山院家定
1161 【○承前。無題。】
年月の 積ればとても 戀しさの 何ど忘られぬ 心為るらむ
侍從實遠
1162 【○承前。無題。】
今ぞ知る 忘られざりし 年月は 何辛さに 物思ひけむ
佚名 讀人知らず
1163 【○承前。無題。】
逢はぬ間を 恨みし頃の 戀しきは 如何に成りぬる 中契ぞ
內大臣 藤原內實 一條內實
1164 【○承前。無題。】
今は然は 何に命を 懸けよとて 夢にも人の 見えずなるらむ
二條院讚岐 內讚岐 中宮讚岐 源賴政女
1165 百首歌奉りし時、遇不逢戀
思寢の 心中を 導にて 昔儘に 見る夢欲得
前關白太政大臣 藤原基忠 鷹司基忠