1052 弘長元年百首歌奉りける時、遇不逢戀
如何に為む 岩間を傳ふ 山水の 淺契りは 末も通らず
衣笠內大臣 藤原家良 衣笠家良
1053 弘安元年百首歌奉りし時
悔しくぞ 結始めける 其儘に さて山井の 淺き契を
院大納言典侍 京極為子
1054 前大納言為家家百首歌に
稀為らむ 事をや兼ねて 契置きし 絕えても賴む 心長さは
藤原信實朝臣
1055 題知らず
七夕の 逢夜稀なる 契だに 流石に年を 隔てやはする
僧正實瑜
1056 【○承前。無題。】
逢事を 復は何時とも 言はざりし 別れよりこそ 變始めけれ
佚名 讀人知らず
1057 【○承前。無題。】
我然らば 人より先に 忘れなむ 變らむ後の 辛さをも見で
佚名 讀人知らず
1058 【○承前。無題。】
逢見ても 復如何樣に 歎けとて 變る辛さの 在る世為るらむ
從三位 藤原忠兼
1059 寳治元年十首歌合に、遇不逢戀
徒に 明けぬ暮ぬと 玉匣 再び逢はぬ 身こそ辛けれ
花山院入道右大臣 藤原定雅 花山院定雅
1060 同心を
憂身には 契りし儘に 賴むべき 人誠も 無き世也けり
前太政大臣 藤原公守 洞院公守
1061 百首歌奉りし時、忘戀
儚くも 人心を 未知らで 問はるべき身と 思ひける哉
權大納言 藤原公顯 西園寺公顯
1062 白河殿七百首歌に、寄莚戀
何時迄か 頻忍ぶべき 其儘に 我が塵拂ふ 床狹莚
後嵯峨院御製
1063 題知らず
變らじと 言ひしは何時の 契にて 夜離るる床に 月を見るらむ
權中納言 藤原公雄 小倉公雄女
1064 【○承前。無題。】
隱すべき 我淚とも 知らでこそ 月を形見と 契置きけめ
今出河院近衛 今出川院近衛 鷹司伊平女
1065 【○承前。無題。】
然ても復 如何なる夜半の 月影に 憂面影を 誘始めけむ
前大納言 藤原基良
1066 千五百番歌合に
思出でよ 誰が衣衣の 曉も 我が復忍ぶ 月ぞ見ゆらむ
前中納言 藤原定家
1067 【○承前。千五百番歌合中。】
如何に為む 慰むやとて 眺むれば 別れし夜半の 有明空
嘉陽門院越前
1068 寳治元年五首歌に、月前戀
思出でて 月も辛さの 增さる哉 見しや別の 有明空
太宰權帥 藤原為經 吉田為經
1069 戀歌之中に
由緣無くぞ 猶面影の 殘りける 復も見ざりし 有明月
源親長朝臣
1070 【○承前。戀歌之中。】
憂きながら 扨も身に添ふ 面影の 忘れぬのみや 形見為るらむ
遊義門院大藏卿
1071 【○承前。戀歌之中。】
忘れずよ 暫しと言ひし 歸途の 袖別に 殘る面影
法眼行濟
1072 【○承前。戀歌之中。】
馴れし夜の 床は變らぬ 思寢に 復見る夢の 面影ぞ無き
源家清女
1073 【○承前。戀歌之中。】
現とて 語る許の 契りかは 徒なる夢の 真間繼橋
從三位藤原宣子
1074 洞院攝政家百首歌に、遇不逢戀
忘れねよ 夢ぞと言ひし 兼言を 何ど其儘に 賴まざりけむ
前大納言 藤原為家
1075 題知らず
更に復 逢ふを限りと 歎く哉 見しは昔の 夢に為しつつ
津守國助
1076 【○承前。無題。】
寢ぬに見し 夢は如何なる 契ぞと 我だに人を 驚かさばや
丹波經長朝臣
1077 【○承前。無題。】
逢見しは 一夜夢の 草枕 結ぶも假りの 契也けり
法印聖勝
1078 【○承前。無題。】
假初の 夢より後は 草枕 復も結ばぬ 契也けり
權大僧都珍覺
1079 後京極攝政家六百番歌合に
如何で猶 夜半衣を 返しても 重ねし程の 夢をだに見む
從二位 藤原家隆
1080 戀歌之中に
覺めぬれば 元辛さの 現にて 中中なりや 思寢夢
左大臣 藤原師教 九條師教
1081 【○承前。戀歌之中。】
思寢の 夢中にも 慰まで 醒むる現は 猶ぞ悲しき
中原師尚
1082 【○承前。戀歌之中。】
其儘に 復も問はれぬ 現こそ 然ても夢かと 思為さるれ
從一位九條禖子 二條兼基正室
1083 百首歌召されし次に、遇不逢戀
朽ちね唯 同淚の 袖の色を 復も見すべき 契為らねば
太上天皇 後宇多院
1084 弘長元年百首歌奉りける時、同心を
思川 逢瀨如何に 變りてか 復は淚の 淵と為るらむ
從二位 藤原行家 九條行家
1085 題知らず
浪越ゆる 袖湊の 浮枕 憂きてぞ一人 寢は無かれける
惟宗忠宗
1086 【○承前。無題。】
由緣無さは 有りしに歸る 辛さにて 復も重ねぬ 袖浦浪
高階宗成朝臣
1087 【○承前。無題。】
逢事は 餘所に鳴尾の 沖浪 浮きて海松布の 寄邊だに無し
觀意法師
1088 內裏五首歌合に、欲絕恨戀
踏見ても 恨みぞ深き 濱千鳥 稀に成行く 跡辛さは
昭訓門院大納言
1089 戀歌之中に
如何に為む 雲居雁の 傳にだに 見えず成行く 人玉章
前參議一條長成女
1090 【○承前。戀歌之中。】
假にだに 來ぬ人待つと 然のみやは 秋早稻田の 寢難に為む
權少僧都澄舜
1091 顯絕戀と云ふ事を
絕えぬるか 逢坂山の 真葛 知られぬ程を 何嘆きけむ
源兼康朝臣
1092 題知らず
跡絕ゆる 道笹原 何時迄か 夜を隔てても 人を待ちけむ
大江政國女
1093 百首歌奉りし時、遇不逢戀
逢見てし 後瀨山の 後も何ど 通はぬ道の 苦しかるらむ
前大僧正良覺
1094 戀歌之中に
添へて遣る 心や君に 馴れぬらむ 遠離る身は 隔果つとも
從三位藤原宣子
1095 【○承前。戀歌之中。】
岩橋の 契りは夜半の 昔にて 絕間を遠く 戀渡る哉
法眼源承
1096 【○承前。戀歌之中。】
眺めても 昔に變る 心哉 人訪ふべき 夕為らねば
藤原基任
1097 【○承前。戀歌之中。】
今はとて 思絕えても 有られねば 待たぬ夕も 袖は濡れけり
前大僧正守譽
1098 【○承前。戀歌之中。】
思出でば 復自づから 訪はるやと 流石に絕えぬ 契をぞ待つ
源親教朝臣
1099 絕後逢戀を
其儘に 思ひも懲りば 如何為む 憂きを知らぬぞ 契也ける
前大納言 藤原實教 小倉實教
1100 題知らず
諸共に 忘れじとのみ 契りしは 我身一つの 誠也けり
佚名 讀人知らず
1101 【○承前。無題。】
我をだに 忘る莫とこそ 契りしか 何時より變る 心為るらむ
前中納言 藤原為兼 京極為兼
1102 內裏五首歌合に、欲絕恨戀
思侘び 今一度は 恨みばや 心儘に 忘れもぞする
遊義門院權大納言 二條為子
1103 【○承前。內裏五首歌合,欲絕恨戀。】
生憎に 恨みば猶や 辛からむ 變始めぬる 人心は
藤原為景朝臣
1104 戀歌之中に
逢はぬ夜の 積る辛さは 敷妙の 枕塵ぞ 先知らせける
平時春
1104b 【○承前。無題。】
夜な夜なの 枕の塵に 餘所へても 知らせやせまし 積る恨みを
賀茂重員
1105 【○承前。無題。】
1106 【○承前。無題。】
如何に為む 辛き限りを 見ても復 猶慕はるる 心弱さを
遊義門院 姈子內親王
1107 【○承前。無題。】
疎くなる 契を人に 託ちても 憂きは我身に 猶殘りけり
佚名 讀人知らず
1108 【○承前。無題。】
憂きながら 猶こそ賴め 強面さの さて果てざりし 心習ひに
佚名 讀人知らず
1109 【○承前。無題。】
同世に 生けるを憂しと 思ふ身の 心に似ぬは 命也けり
佚名 讀人知らず
1110 【○承前。無題。】
先立たぬ 身は同世に 永らへて 變るを見るも 憂き命哉
平行氏
1111 中務卿宗尊親王家百首歌に
1112 題知らず
存らへて 生ける命の 強面さを 聞かる許の 人傳て欲得
衣笠內大臣 藤原家良 衣笠家良
1113 【○承前。無題。】
戀戀て 其方に靡く 煙有らば 言ひし契の 果てと眺めよ
式子內親王