0857 弘安元年百首歌召されし次に
長らへば 然ても逢ふ世の 賴みとて 猶惜しまるる 我が命哉
法皇御製 龜山院
0858 弘長元年百首歌奉りける時、不逢戀
限有る 命程の 由緣無さも 戀死なぬにぞ 思知らるる
前大納言 藤原為氏 二條為氏
0859 同心を
來世には 契有りやと 戀死なむ 逢ふを限の 命惜し迄
太上天皇 後宇多院
0860 百首歌召されし次に
由緣無さの 限を責めて 知りもせば 命を掛けて 物は思はじ
太上天皇 後宇多院
0861 題知らず
戀死なぬ 身難面さを 歎きにて 逢見む迄は 思絕えにき
衣笠內大臣 藤原家良 衣笠家良
0862 【○承前。無題。】
味氣無く 何時迄物を 思へとて 憂きに殘れる 命為るらむ
中務卿 宗尊親王
0863 【○承前。無題。】
逢はでこそ 唯其儘に 戀死なめ 中中後の 辛さ思へば
前中納言 藤原俊定
0864 【○承前。無題。】
有りて憂き 命に換へて 時間も 此世乍らの 逢事欲得
院大納言典侍 京極為子
0865 【○承前。無題。】
永へて 辛き思ひは 無からまし 逢ふに命を 替ふる世為らば
藤原業尹朝臣
0866 【○承前。無題。】
逢ふと見る 程は現に 變らぬを 覺めて夢ぞと 思はず欲得
藤原為實朝臣
0867 百首歌奉りし時、不逢戀
是れも復 誰が偽の 夢為れば 通はぬ中も 逢ふと見ゆらむ
右大臣 藤原冬平 鷹司冬平
0868 夢中逢戀と云へる心を
現には 逢夜も知らず 見る夢を 儚しとては 賴みこそ為め
今上御製 後二條帝
0869 戀歌之中に
逢ふと見し 夢の直路に 關据ゑて 打寢る隙も 無き思哉
靜仁法親王
0870 【○承前。戀歌之中。】
逢事は 唯思寢の 夢路にて 現許さぬ 夜半關守
前中納言 藤原為兼 京極為兼
0871 【○承前。戀歌之中。】
逢ふと見る 我が思寢の 面影を 覺めても賴む 程ぞ儚き
左近大將 藤原道平 二條道平
0872 【○承前。戀歌之中。】
寢るが內も 如何に賴みて 儚くも 契らぬ中の 夢を待つらむ
伊豆盛繼
0873 【○承前。戀歌之中。】
面影の 憂きに變らで 見えもせば 如何に為むとか 夢を待つらむ
法印長舜
0874 建保六年內裏歌合に、戀歌
轉寢に 由緣無く見えし 面影を 夢と知りても 猶や恨みむ
常磐井入道前太政大臣 藤原實氏 西園寺實氏
0875 題知らず
如何に為む 微睡む程の 夢にだに 憂しと見ぬ夜の 慰め欲得
前大納言 藤原基良
0876 光明峯寺入道前攝政家戀十首歌合に、寄衣戀
小夜衣 返す兆の 慰めも 寢られし迄の 夢にぞ有りける
從三位 藤原行能 世尊寺行能
0877 戀歌之中に
思寢の 夜半衣を 返しても 慰む程の 夢をやは見る
大江廣茂
0878 名所百首歌奉りし時
0879 光明峯寺入道前攝政家戀十首歌合に、寄莚戀
岩根の 凝敷く山の 苔莚 寢夜も無しと 歎く頃哉
前大納言 藤原資季
0880 題知らず
知らせばや 人を恨みの 戀衣 淚重ねて 獨寢る夜を
前參議 藤原雅有 飛鳥井雅有
0881 【○承前。無題。】
憂き物と 別れに為して 恨みばや 由緣無き中の 有明月
佚名 讀人知らず
0882 寄弓戀と云へる心を
憂き身には 由緣無かりける 梓弓 如何なる方に 心惹くらむ
院御製 伏見帝
0883 戀歌之中に
縱然らば 唯中中に 強面かれ 憂きに負けてや 思ひ弱ると
前大納言 藤原為氏 二條為氏
0884 【○承前。戀歌之中。】
積れ唯 逢はで月日の 重為らば 暫し忘るる 折も
有りやと
光明峯寺入道前攝政左大臣 藤原道家 九條道家
0885 【○承前。戀歌之中。】
夜と共に 我には物を 思はせて 然のみや人の 知らず顏なる
前大納言 藤原隆房
0886 【○承前。戀歌之中。】
逢ふ迄の 導ぞ今は 辿らるる 心通ふ 道は有れども
平貞時朝臣
0887 弘長元年百首歌奉りける時、不逢戀
後はいさ 逢見ぬ先の 辛さこそ 思較ぶる 方無かりけれ
藤原信實朝臣
0888 題知らず
せめて猶 後は憂くとも 逢見ての 辛さを歎く 我身と欲得
佚名 讀人知らず
0889 【○承前。無題。】
今は唯 色に出てや 恨みまし 憂身を知らぬ 名には立つとも
宮內卿 藤原經尹
0890 【○承前。無題。】
如何に為む 淚川の 淺瀨に 徒浪掛けて 立つ名許を
藤原為實朝臣
0891 弘安元年百首歌奉りし時
浮名をや 猶立て添へむ 錦木の 千束に餘る 人辛さに
花山院內大臣 藤原師繼 花山院師繼
0892 弘長元年百首歌奉りける時、不逢戀
無き名のみ 麻生浦梨 徒に 為らぬ戀する 身こそ辛けれ
常磐井入道前太政大臣 藤原實氏 西園寺實氏
0893 百首歌奉りし時、同心を
浦風の 激しき磯の 松を見よ 由緣無き色も 靡きやはせぬ
津守國冬
0894 題知らず
甲斐無しや 海松布許を 契にて 猶袖濡るる 千賀浦浪
左近中將 藤原師良 一條師良
0895 【○承前。無題。】
伊勢海の 小野湊の 自づから 逢見る程の 浪間欲得
衣笠內大臣 藤原家良 衣笠家良
0896 【○承前。無題。】
藻鹽燒く 海人栲繩 打延へて 苦しとだにも 云ふ方ぞ無き
後鳥羽院御製
0897 寳治百首歌奉りける時、寄衣戀
己づから 逢ふ夜も有らば 須磨海人の 鹽燒衣 間遠也とも
少將內侍 藤原信實女
0898 戀歌之中に
須磨海士の 潮垂衣 浪掛けて 夜こそ袖も 濡れ增さりけれ
平長時
0899 名所百首歌奉りける時
三熊野の 浦濱木綿 幾代經ぬ 逢はぬ淚を 袖に重ねて
從三位 藤原範宗
0900 千五百番歌合に
浪高き 由良湊を 漕ぐ舟の 沈めも敢へぬ 我心哉
小侍從 紀光清女
0901 ○
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