新後撰和歌集 卷十一 戀歌一
0770 弘安元年百首歌奉りし時
人知れず 思ひ入野の 花薄 亂始めける 袖露哉
入道前太政大臣 藤原實兼 西園寺實兼
0771 弘長元年百首歌奉りし時、初戀
入始むる 繁き小笹の 露為らで 先袖濡らす 我が淚哉
前大納言 藤原為氏 二條為氏
0772 後法性寺入道前關白家百首歌に、同心を
然もこそは 未だ見ぬ戀の 道ならめ 思立つより 迷ひぬる哉
藤原隆信朝臣
0773 題知らず
辛からば 如何に為むとか 行末の 心も知らず 思始むらむ
左近中將 源具氏
0774 【○承前。無題。】
知られじな 霞に籠めて 陽炎の 小野若草 下に萌ゆとも
前大納言 藤原為家
0775 【○承前。無題。】
知るや如何に 石田小野の 篠薄 思ふ心は 穗に出でずとも
正三位 藤原知家
0776 【○承前。無題。】
知られじな 露懸かるとも 下荻の 穗に出すべき 思為らねば
藤原重綱
0777 【○承前。無題。】
仄なる 難波蘆火 如何為れば 焚初むるより 身を焦すらむ
藤原為綱朝臣
0778 寄烟忍戀之心を
胸に滿つ 思ひは有れど 富士嶺の 煙為らねば 知る人も無し
鷹司院按察 兵衛督 葉室光親女
0779 戀歌之中に
知るらめや 葛城山に 居る雲の 立居に懸かる 我が心とは
式子內親王
0780 後法性寺入道前關白家百首歌に、忍戀
哀れとも 誰かは戀を 慰めむ 身より外には 知る人も無し
藤原隆信朝臣
0781 題知らず
憂身には 絕えぬ歎きに 面慣れて 物や思ふと 問ふ人も無し
鴨長明
0782 【○承前。無題。】
戀侘びて 歎かば色に 出でぬべし 身にも知られぬ 心と欲得
大炊御門內大臣 藤原冬忠 大炊御門冬忠
0783 【○承前。無題。】
甲斐無しや 知られぬ中に 長らへて 心一つの 賴み許は
從二位 藤原兼行
0784 【○承前。無題。】
人知れず 思ふ心の 苦しさを 色に出てや 知らせ始めまし
後嵯峨院大納言典侍 藤原為子
0785 【○承前。無題。】
淚こそ 忍ばば餘所に 見えずとも 抑ふる袖を 人や咎めむ
平政村朝臣
0786 【○承前。無題。】
堰返し 抑ふる袖に 年經りて 人目に知らぬ 淚と欲得
院大納言典侍 京極為子
0787 【○承前。無題。】
下にのみ 岩間水の 咽歸り 漏さぬ先に 袖ぞ濡れける
前中納言 大江匡房
0788 後京極攝政家六百番歌合に
名に立てる 音羽瀧も 音にのみ 聞くより袖は 濡るる物かは
大藏卿 藤原有家
0789 名所百首歌奉りける時
春霞 霞浦を 行舟の 餘所にも見えぬ 人を戀ひつつ
前中納言 藤原定家
0789b 【○承前。奉名所百首歌時。】
己づから 懸けても袖に 知らす莫よ 岩瀨杜の 秋白露
僧正行意
0790 忍戀之心を
我が戀は 岩瀨森の 下草の 亂れてのみも 過ぐる頃哉
土御門院御製
0791 【○承前。忍戀之趣。】
0792 【○承前。忍戀之趣。】
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