詞花和歌集卷第五 賀
0161 一條院、上東門院に行幸せさせ賜けるに詠める 【○金葉集三奏本0311。】
君が代に 阿武隈川の 底清み 千年を經つつ 澄むとぞ思ふ
入道前太政大臣 藤原道長
0162 正月一日子產みたる人に襁褓遣はすとて詠める
珍しく 今日立初むる 鶴子は 千代正月を 重ぬべき哉
伊勢大輔
0163 一條左大臣家障子に、住吉の形描きたる所に詠める
過來にし 程をば捨てつ 今年より 千代數積む 住吉松
大中臣能宣朝臣
0164 長元八年宇治前太政大臣家歌合に詠める
君が代は 白雲掛かる 筑波嶺の 峰續の 海と成る迄
能因法師
0165 題不知
榊葉を 手に取持ちて 祈りつる 神代よりも 久しからなむ
赤染衛門
0166 三條太政大臣賀屏風繪に、花見て歸る人描きたる所に詠める
飽かでのみ 歸ると思へば 櫻花 折べき春ぞ 盡為ざりける
中務
0167 或人子三人に冠せさせたりける又日、言遣はしける
松島の 磯に群居る 蘆鶴の 己が樣樣 見えし千代哉
清原元輔
0168 上東門院御屏風に、十二月晦日の形描きたる所に詠める
一年を 暮ぬと何か 惜むべき 盡為ぬ千代の 春を待つには
前大納言 藤原公任
0169 河原院に人人罷りて歌合しけるに、松臨池と云ふ事を詠める
誰にとか 池心も 思ふらむ 底に宿れる 松千年は
惠慶法師
0170 後三條院住吉詣に詠める
君が代の 久しかるべき 為しにや 神も植ゑけむ 住吉松
佚名
0171 俊綱朝臣に具して住吉に詣でて詠める
住吉の 現人神の 久しさに 松も幾度 生替るらむ
大納言 源經信
0501 京極前太政大臣家に、歌合し侍けるに詠める
君が代は 曇も有らじ 三笠山 嶺に朝日の 射さむ限りは
大江匡房