齋宮女御集(さいぐうのにょうごしふ)
藤原定家本

徽子女王

001 參給(まゐりたま)又日(またのひ)の御。
002 御返(おほかへ)し。
003 相知(あひし)れりける(ひと)(もの)より()て、(すげ)文越(ふみこ)さして、「(これ)如何(いかがみ)る?」と()へりけるに()める。
004 昇給(のほりたま)へと(あり)ける()(なやま)しと聞給(きこえたま)ひて參給(まゐりたま)はさりければ。御。
005 御返(みかへ)し。
006 諸共(もろども)御事引(おほむことひ)かせ給て、其夜罷(そのよまか)て給ければ、又日(またのひ)。御。
007 御返(みかへ)し。
008 又、五月五日今日(けふ)よりは如何(いか)に。聞給(きこえたま)へりけれは。
009 (また)。御。
010 御返(みかへ)し。
011 六月晦(みなづきつごもり)(たま)へる御文(みふみ)()けて。
012 と聞給(きこえたま)へれば。
013 御返(みかへ)し。
014 七月七日(たなばた)(うち)の。御。
015 御返(みかへ)し。
016 (また)(うち)の御。
017 御返(みかへ)し。
018 如是(かく)參給(まゐりたま)てさるべき事有(ことあ)りて、(まか)(たまひ)にければ、とくたに(まゐ)らせ給へとて、師走晦(しはすのつごもり)(うへ)の御。
019 (かへ)し。
020 年返(としかへ)りて正月(むつき)雪降(ゆきのふ)()
021 (かへ)し。
022 又、子日指(ねのひさ)して(あり)ける(うち)の。
023 (かへ)し。
024 參給(まゐりたま)はむと(あり)ける(ほど)()ぎければ。(うち)の。
025 (かへ)し。
026 參給(まゐりたまへ)けるに渡給(わたりたまへ)如何(いか)なる(こと)(あり)けむ返給(かへりたまひ)て。 【○新古今1421。】
027 (かへ)し。
028 又罷(またまかり)(たまひ)五月迄參給(さつきまでまいりたま)はざりければ。
029 (かへ)し。
030 と聞給(きこえたま)へりしに(うち)()かぬとかありしかはとて。
031 (かへ)し。
032 (ゐん)御服(みぶく)成給(なりたまへ)ての(ころ)(うち)の御。
033 (かへ)し。
034 師走晦日(しはすのつごもりのひ)、「今年(ことし)今日(けふ)()し。」との(たま)はせける。御返に。
035 參給(まゐりたまへ)ての御手習(みてならひ)に。
036 等書給(などかいたま)ふたりけるに、(うへ)()きませさせ(たま)へりける。
037 【○承前。】
038 (うち)の御。
039 【○承前。】
040 又(うち)の御。
041 御返(みかへ)し。
042 (うへ)御返(みかへ)し。
043 (また)
044 御返(みかへ)し。
045 (ただ)にもあらて(まか)(たまへ)ける(ころ)如何(いかが)御訪有(みとぶらひあり)けるに、十月(ばかり)程近(ほどちか)成給(なりたま)心細(こころほそ)(おぼ)されければ。 【後拾遺0901。】
046 (また)餘所(よそ)にて年月經(としつきのふ)るは覺給(おぼえたま)はぬかと申給(まをしたま)ければ。 【○新古今1246。】
047 (また)師走晦(しはすのつごもり)(など)(あれ)たる(ところ)如是(かく)のみ長居(ながゐ)(たまへ)聞給(きこえたまへ)ける。御返(みかへし)御宮(ごみや)御座(おは)せて(のち)なるべし。
048 と(あり)ける御返(みかへし)(ついたち)になむ(あり)ける。
049 (はる)()りて(まゐ)らむと聞給(きこえたまへ)けれど、()()らざりければ、未年(まだとし)(かへ)らぬにやとの(たま)はせたりける御返(みかへ)しを(かえ)ての紅葉(もみぢ)()けて。
050 と(あり)ければ(うへ)御返(みかへ)し。 【○新古今1247。】
051 (かへ)し。
052 ご宮失給(うせたま)()のち、(さと)(ひさ)しく御座(おは)しければ、等如是(などかく)のみ參給(まゐりたま)はぬと(あり)ければ、御返(みかへし)徒然共(つれづれども)心細(こころほそ)覺給(おぼえたまへ)て、書集給(かきあつめたま)へりける(こと)を、取過(とりあやま)ちたる(やう)にで(まゐ)らせ(たま)へりける御返共(みかへしども)さりげ()くて御文(みふみ)(うち)(あり)
053 女御殿(にょうごどの)
054 (つゆ)(ひさ)しき。
055 內御(うちのご)
056 ()()へとか。
057 御返(みかへ)し。
058 【承前。】
059 (また)
060 御返(みかへ)し。
061 (また)
062 (うち)御返(みかへ)し。
063 (また)
064 (うち)の。
065 (また)
066 (また)
067 (うち)御返(みかへ)し。
068 (また)
069 (うち)の御。
070 (ひさ)しとあるたに度度(たびたび)()れば、女御殿。
071 (うち)の御。
072 (また)
073 (また)
074 如何(いか)なる(こと)(あり)けむ。
075 すけなりが(むすめ)東宮(はるのみや)(まゐ)らせむと()きて、(をとこ)につきたりと()きて。
076 近程(ちかきほど)(わた)らせ給ひて、音連(おとづ)(きこえ)させ(たま)はざりければ、女三宮より。
077 御返(おほかへ)し女御殿四宮。 【○後拾遺1093。】
078 (うへ)(わた)らせ給ひに、村雨(むらさめ)(おどろ)かされて、(いそ)(かへ)らせ(たま)ひに。
079 女御()(たま)ひて、齋院(さいゐん)より(とぶら)ひの御返(みかへ)りに。
080 ある御返(みかへり)に。
081 參上(まうのぼ)らせ給へるに、上御殿籠(うへのみとのごも)らせ給へる(ほど)なれば、(ただ)(おり)させ(たま)ひて又日(またのひ) 【後拾遺0871。】
082 (うへ)より間遠(まどほ)()れやと(きこ)え給へる、御返(みかへ)りに。 【新古今1210。】
083 ()
084 (また)
085 (まか)てて(ひさ)しく(まゐ)らぬに。 【○新古今1411。】
086 女御殿御返(みかへ)し。 【○新古今1412。】
087 (うへ久度(ひさしくわた)らせ(たま)はぬ秋の夕暮(ゆふぐれに、(きん)甚妙(いとおかし彈給(ひきたま)ふに、急度(いそぎわたらせ給ひて、御側(おんかたはら(させ給へど、人御座(おは)しますとも(らせ給はぬ景色(けしきにて(こと)()かせ給へを(かせ給へば。
088 雨降(あめのふ)るに、三條宮(さんでうのみや)にて。
089 三條御院(さんでうのごゐん)にて。
090 (うち)にて御前(みまへ)(ふぢ)をなむよるよる(しの)びて人扱(ひとこ)くと()かせ(たま)ひて。
091 父宮(重明親王)御座(おは)しける(とき)に、母上(ははうへ)御形等(みかたちなど)を、(いま)北方(きたのかた)語聞(きたりきこ)(たま)ひて、御櫛(みぐし)()でたかりしは復有(またあ)らむやとて、()りに奉給(たてまつりたま)ければ。
092 とて(たてまつ)らせ給はず、(みや)失給(うせたま)ひて(のち)正月一日(むつきのついたち)に。
093 雪降日(ゆきのふるひ)心細(こころぼそ)きに。
094 繼母(ままはは)北方(きたのかた)
095 其兄弟(そのはらから)の少將宮使(みやづか)へすべしと()かせ(たま)ひて、さて過暮(すぎくれ)のとの給へ()せたりければ少將。
096 御返(みかへ)し。
097 前代御祖父(まへのだいのみそふ)親手(てづから)()かせ給へる(もの)を、馬內侍(むまのないし)に見せに(たま)はせたれば、(うへ)の見せむとの給はせに、(かく)れさせ給ひにしかば、口惜(くちをし)かりしを(うれ)しくとて。 【○新古今0806。】
098 とて中に入れて、御文(みふみ)には。
099 (した)陸奧國守(みちのくにかみ)のあるに書付(かきつ)
100 (かへ)し。 【○新古今0807。】
101 【○承前。】
102 (かへ)し。
103 宣耀殿女御(せえうでんのにょうご)御許(みもと)より。
104 御返(みかへ)し。
105 野宮(ののみや)御座(おは)しける(ころ)三條宮(さんでうのみや)真弓紅葉(まゆみのもみぢ)一葉有(ひとはあ)るに()して。
106 野宮(ののみや)にて(こと)風音(かぜのおと)(かよ)ふと()(だい)を。 【拾遺0451。】
107 【承前。拾遺0452。】
108 伊勢(いせ)下給(くだりたま)ひて、同宮(おなじみや)御幣使(みてぐらづかひ)に、(くだ)りたりけるに、御文無(みふみのな)かりければ。
109 宇治(うぢ)御座為(おはせ)(とき)雛遊(ひひなあそび)神御許(かみのみもと)(まう)でたる(をみな)に、男詣逢(をとこまうであ)ひて物言交(ものいひかは)す。
110 (をみな)(かへ)
111 (おな)雛社前(ひなのやしろのまへ)紅葉散(もみぢち)(ところ)にて。
112 馬內侍(むまのないし)山吹(やまぶき)()して。
113 御返(みかへ)
114 (ひさ)しく(さと)御座(おは)しける(ころ)同內侍許(おなじないしのもと)に。 【後拾遺0879。】
115 伊勢(いせ)(のち)(みくだ)りの(たび)(むかし)覺出(おぼいで)て。
116 (みや)御返(みかへ)し。
117 大王宮(たいわうのみや)に。 【○後拾遺1002。】
118 御返(みかへ)し。 【○後拾遺1003。】
119 一品宮より(かみ)()きて(これ)物書(ものか)かせたま()ひてと()こえ(たま)へれば、琴頭(ことがみ)()ぎて()かせ(たま)ひて。宮。
120 御返(みかへ)し。
121 伊勢(いせ)御下(みくだ)りに齋院(さいゐん)より。
122 御返(おほむかへ)し。
123 桃園宮(ももぞののみや)(こと)をかり(きこ)えて、(かへ)(たてまつ)らせ(たま)ふに。
124 御返(みかへ)し。あい宮。
125 伊勢(いせ)より。
126 御返(みかへ)し。
127 峰君失(みねのきみう)(たま)ひての(ころ)
128 御返(みかへ)し。(おな)じ。
129 一品宮より、伊勢御下(いせのみくだりに。
130 (おな)(をり)に女御殿より。
131 御返(みかへ)し。
132 (しの)びて下給(くだりたま)へれば、なるべし(あま)にならせ(たま)ひぬと()きて土御門(つちみかど)
133 御返(みかへ)し。宮。
134 兵部卿宮(ひゃうぶきゃうのみや)入道にふだう()し給へりしに伊勢(いせ)より。
135 女三宮の御草紙書(みさうしか)かせ奉給(たてまつりたま)ひけるに、(あし)長歌等書(なかうたなどか)かせ給ひて同心(おなじこころ) 【○新古今1796。】
136 伊勢(いせ)大淀浦(おほよどのうら)云所(いふところ)松甚多(まついとおほ)かりける御祓(みはら)へに。 【○新古今1606。】
137 七月七日(たなばた)に。
138 同日片脇(おなじひかたわき)前栽合(せんざいあは)せせさせ(たま)けるを、雨甚降(あめいたうふ)りて、方人心元無(かたひとこころもとな)かりけれは。女御殿。
139 為恭(ためちか)同胞(はらから)(ため)くに、五月五日(まゐ)りて、宮御前(みやのおまへ)遣水(やりみづ)參河池(みかはのいけ)となむ()ふなる台盤所(だいばんどころ)にて。
140 (かへ)し。女御殿(どの)
141 (しの)びて下給(くだりたま)(なり)とて、女御殿より。
142 下給心(くだりたまひこころ)ばへなるべし、御返(みかへ)伊勢(いせ)より。
143 又御返(またみかへ)し。
144 女三宮の御服拔給(みぶくぬきたま)へる(ころ)、一品宮に伊勢(いせ)より。
145 伊勢(いせ)より麗景殿(れいけいでん)齋宮(さいぐう)にとて
146 御返(みかへ)し。
147 (うち)にて何折(なにのおり)にか(あり)けむ。
148 (ひさし)參給(まゐりたま)はざりければ。(うへ)(ゆめ)()えさせ(たま)ひける。 【○新古今1384。】
149 又事折(またことをり)に。
150 女御殿(にょうごどの)御方(みかた)花有(はなのあり)けるを御覽為(ごらむせ)むと(おほ)せられければ、梅枝(むめのえだ)(をり)て。
151 御返(みかへ)し。
152 (はる)まかて給ひて(あき)とや聞給(きこえたま)ひけむ。 【○新古今1417。】
153 御返(みかへ)し。
154 (なや)ませ(たまひ)ける(ころ)上。
155 如何(いか)なる(をり)にか(あり)けむ。
156 兵部卿宮(ひゃうぶきゃうのみや)四君。
157 御返(みかへ)し。女御殿。
158 御兄人(みせうと)通給(かよひたま)(ひと)絕給(たえたま)へる。
159 女御殿(にょうごどの)の御返し。
160 (いけ)藤掛(ふぢかか)りたるを女御殿。 【後拾遺0153。】
161 (また)如何(いか)なる(おり)にか。
162 【○承前。】
163 (また)

底本:藤原定家加筆『齋宮女御集
參考:『齋宮女御集



【再臨ノ詔】 【久遠の絆】