久安百首 異同歌
0014崇德院 (077)
田子浦の 岩根に掛かる 藤浪は 滿來る潮の 聲をかるらむ
0014
0016崇德院 (077)
暗部山 木下蔭の 岩躑躅 唯茲のみや 光為るらむ
0016
0032崇德院 (077)
天川 安瀨浪も 噎ぶらむ 年待渡る 鵲橋
0032
0034崇德院 (077)
みちもせに たかおりしける にしきそも えそしらすけの まののはきはら
0034
0049崇德院 (077)
たかせふね よしふりたてよ おほゐかは きしのもみちを いかかすくへき
0049
0059崇德院 (077)
はれぬれと えたもとををに しつりしを このしたかけは なほゆきそふる
0059
0071崇德院 (077)
ねはふかく おもひそめてき おくやまの いはもとすけの すけはなけれと
0071
0081崇德院 (077)
やみのうちに にきてをかけし かみあそひ あかほしよりや あけはしめけむ
0081
0082崇德院 (077)
みちのへの ちりにひかりを やはらけて かみもほとけの なのるなりけり
0082
0088崇德院 (077)
ちかひをは ちひろのうみに たとふなり つゆもたのまは かすにいりなむ
0088
0095崇德院 (077)
あまのすむ はまのもくつを とりしきて ここにとまると いもしるらめや
0095
0097崇德院 (077)
まつかねの まくらもなにか あたならむ たまのとことて つねのとことは
0097
0100崇德院 (077)
しきしまや やまとのうたの つたはりを きけははるかに ひさかたの あまつかみよに はしまりて みそもしあまり ひともしは いつものみやの やくもより おこりけるとそ しるすなる それよりのちは ももくさの ことのはしけく ちりちりに かせにつけつつ きこゆれと ちかきためしに ほりかはの なかれをくみて ささなみの よりくるひとに あつらへて つたなきことは はまちとり あとをすゑまて ととめしと おもひなからも つのくにの なにはのうらの なにとなく ふねのさすかに このことを しのひならひし なこりにて よのひとききは はつかしの もりもやせむと おもへとも こころにもあらす かきつらねつる
0100
0133公能 (252)
さよふけて ふしのたかねに すむつきは けふりはかりや くもりなるらむ
0133
0142公能 (252)
いろいろに うつろふきくの うはつゆは むらこにそめる たまかとそみる
0142
0145公能 (252)
しかのなと いふにもしるる こはきはら はなのうちにも こゑきこゆなる
0145
0163公能 (252)
なるみかた しほちにおける あみなれや めにはかかりて あはぬこひする
0163
0173公能 (252)
こひしさに たへぬいのちと きみききて なさけをかけは をしからしかし
0173
0181公能 (252)
いへのかせ たえすそわたれ かみかせや みもすそかはに こころそめてき
0181
0183公能 (252)
このきみに いふなもしるく くれたけの よよへむまても たのみてをみむ
0183
0185公能 (252)
からころも たちこそきたれ さきのよに つみかさなるは みにしあらねは
0185
0189公能 (252)
よのなかは はやせにおつる みつのあわの ほとなくきゆる ためしにそみる
0189
0194公能 (252)
しをりして みえしやまちに ゆふされは なほたとらるる ものにそありける
0194
0207教長 (253)
ゆきのいろも うすくれなゐも 梅花 かをるかにては わきそかねぬる
0207
0209教長 (253)
はるさめの ふりしむままに あをやきの いとにつらぬく たまそかすそふ
0209
0268教長 (253)
こひしさは あふをかきりと ききしかと さてしもいとと おもひそひけり
0268
0272教長 (253)
こひしとは ことのはにこそ いはさらめ なみたのいろを いかかつつまむ
0272
0281教長 (253)
すみよしの かみをかせもや まつるらむ まつにゆふして かくるしらなみ
0281
0285教長 (253)
やくさまて さらぬたるまも みなかみは たたたとはむの なかれなりけり
0285
0289教長 (253)
かへりこむ ほとはそのひと ちきれとも たちわかるるは いかかかなしき
0289
0290教長 (253)
あきかせに あふはせうはの くたけつつ あるにもあらぬ よとはしらすや
0291教長 (253)
みつのおもに うかへるたまの ほともなく きゆるをよその ものとやはみる
0296教長 (253)
くさまくら おきゐるつゆは きみをのみ いもねてこふる なみたなりけり
0294
0299教長 (253)
あつさゆみ はるたちぬとや みよしのの やまにかすみの たなひけは このめもいまは はりぬらむ いつしかとのみ はなまつと このもかのもに たちましり いへちわするる かひもなく さけはかつちる はかなさを あはれいつまて なけきつつ わかみのうへに なりはてむ ことをはしらて なつくれは しけきこすゑに なくせみの むなしきからと あきはなる かくはつねなき よなれとも くまなきつきを なかむれは ものおもふことも わすられて こころひとつそ ほこらしき さてのつもりは おいらくの みにせめくるも しらつゆの しもとしなれは ふゆののに むらむらみゆる くさのうへは みなしろたへに なりにけり これをはよそと おもひこし わかみなかみも いまはたた くろきすちなき たきのいとの くるくるきみに つかふとて おもひはなれぬ うきよなりけり
0297
0304顯輔 (079)
きみかよを をのへのまつに くらへむに いくよのちよか あはむとすらむ
0302
0308顯輔 (079)
あやしきは をるにおとせぬ さわらひの てをしかけねは ほとろとそなる
0306
0311顯輔 (079)
ふるさとの あらましかはと おもふにも うらやましきは かへるかりかね
0309
0328顯輔 (079)
はるはると たかしのはまに なくせみの こゑはくもゐの ものにそありける
0326
0329顯輔 (079)
いにしへは いさをのかみに なひきにき けふはなこしの みそきとをしれ
0327
0350顯輔 (079)
あさことに あらしのこゑは よわりつつ こすゑさひしき ふゆはきにけり
0348
0355顯輔 (079)
すみかまの くゆるおもひの したむせひ むせふけふりは いつかたくへき
0353
0357顯輔 (079)
なにはかた いりえをめくる あしかもの たまものふねに うきねすらしも
0355
0364顯輔 (079)
こひするは くるしきものを いかにして つれなきひとに おもひしらせむ
0362
0365顯輔 (079)
わかこひと きみかつらさと くらへむに やまにたとへは いつれたかけむ
0363
0366顯輔 (079)
いかてさは よになからへて わひつつは つれなきひとの はてをたにみむ
0364
0367顯輔 (079)
わかこひは かつらきやまの そめかくた こゑはきけとも あふよしもなし
0365
0372顯輔 (079)
あひみては いととこころの ひまもなき はてなきものは こひにそありける
0370
0379顯輔 (079)
としふれと あはれにたへぬ なみたかな こひしきひとの かからましかは
0377
0381顯輔 (079)
とひくたる ななしのきしを いさりせは あまのはこやも なけさらましを
0379
0382顯輔 (079)
きみかへむ としのかすをは いくちよも いさしらくもの はてしなけれは
0380
0388顯輔 (079)
もるひとの こころのうちに すむつきを いかなるつみの くもかくすらむ
0386
0396顯輔 (079)
あつまちの のしまかさきの はまかせに わかひもゆひし いもかかほのみ おもかけにみゆ
0394
0397顯輔 (079)
つらけれと きのふたのめし ことのはに けふまていける みとはしらすや
0396
0398顯輔 (079)
いけのおもの たなひきわたす うきくさに はらはぬにはと みえもするかな
0397
0399顯輔 (079)
うきみには よのふることも たのまれす いつれかいつれ おぼつかな ことわりなれや まきもくの ひはらのやまの そまひとも うきふししけき まかりきと いとひすてたる みなれとも こころにもあらす たちましり かなしきままに かりかねの ひまなくなけと あはれてふ ことのはをたに きかせねは なくもゆかむも かはらぬを たたみのとかに なしはてて このよのことを おもひすて のちのよをたにと おもひつつ うきよのなかを たちいつれと こをおもふみちに まとひつつ ゆくへきかたも おほえねは あまのかはなみ たちかへり そらをあふきて ありあけの つれなきなをも なかしつるかな
0398
0412季通 (255)
こころなき わかみなれとも つのくにの なにはのはるに たへすもあるかな
0411
0435季通 (255)
しなのなる とくさふくてふ あきかせは つたへきくかに そそろさむしも
0434
0436季通 (255)
あきのよは まつをはらはぬ かせたにも かなしきことの ねをなかすやは
0435
0467季通 (255)
きみこふる なみたにくたす ころもてを やすきままには かたみとそみる
0466
0479季通 (255)
あふことを いのちにかへし しるしにや けさはいくへき ここちせさらむ
0478
0492季通 (255)
みさふらひ みかさのめしそ あさかやま このしたつゆも いまはひぬらむ
0491
0495季通 (255)
さをのをさ なほなすすめそ たかせふね われはみやこに させるみならす
0494
0496季通 (255)
おぼつかな このしたかける たけくまの まつをよきとそ みてすきにける
0495
0497季通 (255)
けふすきぬ あすはこむとそ いひしかと こはいつしやうの ことのすまひか
0496
0499季通 (255)
おほきみの みことかしこみ かしこみて かすにもいらぬ みなれとも このももうたを たてまつる はこやのやまに すみわたる あらきけものを おしなへて おとろきはしる こともなく むなしきふねを うかへたる うみにたたよふ うをもみな みなきることも なしとかや かかるときには あひなから わかみひとつは いつとなく かしらのしもは あさことに はらひもあへす おきなくさ ひとりかれのに たてれとも これをしのふる こともなみ なみたのあめは つゆはかり ととまるひとも ななくりの いてゆしほとし おほゆれは いつれのかたへ いなむしろ しかしやいまは あらしふく みねのこのはと もろともに ちりなむのちも おもひおく ことはさすかに おほそらを はるかにひとり なかむれは かすみのうちに かりかねの きえみきえすみ さためなく みなみにさりて かへりこむ ほとをまたてや いかならむ くものたえまに いるつきの かたふくかけに さしそへて こころをにしに やりてこそ のちのよをとも いとなまめ それもちきりに よりけれは なにともなくて ゆくみつの あはれあはれと いひなから すきのいたとの いたつらに あけくれものそ なけかしき いまはわかみに いくはくの はるあきとかは とはるへき たとひひさしく なからへて へぬるつきひを かさぬとも ゆめにゆめみし からひとの さめてののちに そのことく わくこともなき まとゐをは いかはかりかは おもふとはしる
0498
0507隆季 (256)
うつろへは たえぬやなきの えたにゐる ももさへつりの うぐひすのこゑ
0506
0518隆季 (256)
さかつきは たれともささて めくりゆく なみのこころに まかせたらなむ
0517
0521隆季 (256)
ものいはは のこれるはるに とひてまし きのふかへりし はるのゆくへを
0520
0533隆季 (256)
たなはたの あまつひれふく あきかせに やそのふなつを みふねいつらし
0532
0544隆季 (256)
こゑたてて つまよふしかも おのつから ちとせのあきに あふとこそきけ
0543
0553隆季 (256)
ちりかかる このはものきの しつくあらは しくれするよを いかてわかまし
0552
0560隆季 (256)
こよひねて おくるあしたや わかせこか ふたななえたの まつもをるへき
0559
0566隆季 (256)
つつむへき あしてのあとも わすられて またいひそめぬ ひとにみせつる
0565
0572隆季 (256)
きますらむ ひとをまつほとの てすさひに わかたまとこを うちはらひつる
0571
0578隆季 (256)
たちさらす あひみるひとや うきものと あけゆくそらを おもはさるらむ
0577
0586隆季 (256)
なにとてか むなしからぬと おもふこそ まことはのりの こころなりけれ
0585
0587隆季 (256)
いさきよく おもふこころの ふかからは むねのはちすも ひらけさらめや
0586
0594隆季 (256)
いさなみに しはをりかくる かりのいほの のきにひきほす たひのころもか
0593
0600隆季 (256)
そさのをの みことのをりに あしひきの やまとことはは あらかねの つちにもさらに おこりつつ みそもしあまり ひともしに よみならはして くれたけの よよにもたえぬ ものなれは はなさくはるの あさなあさな つきすむあきの よなよなも なさけをしれる ひとはみな わかきもいはす おいぬるも これにつけてそ なつむしの おもふおもひも あらはるる ことのはしとは なりにける かかるわかよの かせなれは いまもむかしも これにまた しくものそなき こけむしろ みとりのいろの ふりにける ふるきみことの をりをりは このことのはを かきあつめ なにはのうらの なにつけて かたかたにこそ わかるめれ いまわかきみの このみちを もてあそはるる ころなれは かしこきおほせ くたりつつ いへにさまさま さためなく もものうたをそ たてまつる そのひとかすに ましれとも よにうみすくる われなれは つたのほそえの つたなくて ことはのはなも にほひなく おいおとろふる ここちこそすれ
0599
0601親隆 (257)
いつしかと ふたみのうらの かすめるは あけゆくままに はるやきぬらむ
0600
0612親隆 (257)
くちにける みのうもれきは はるくれて はなをはよその ものとこそみれ
0611
0613親隆 (257)
やはきかは うへのにたてる かはさくら いつかはきはに ならむとすらむ
0612
0634親隆 (257)
えそかすむ つかほののへの はきさかり こやにしききの たてるなるらむ
0633
0651親隆 (257)
けさよりや さしひとりもち はかたなる まつはかきつめ ふゆこもるらむ
0650
0652親隆 (257)
かれたてる はしのくひせの わかたちに いろつくとみし はさへちりぬる
0651
0653親隆 (257)
かみなつき くもらはそらと みしほとに やかてひくるる みやまへのさと
0652
0725実清 (258)
ほととぎす きなくやまたの さなへこそ よるとはすれと とりもやられね
0724
0734実清 (258)
たをりつる こはきかえたの つゆしけみ しののにそての ぬれにけるかな
0733
0738実清 (258)
のへみれと いつらはおける あきもなし こゑにてむしの はかるなりけり
0737
0744実清 (258)
くれのあき つきはこよひの せきなれは こころととめて たれかみさらむ
0743
0748実清 (258)
けさみれは しつはたやまの こすゑより もみちのにしき おりそそめつる
0747
0772実清 (258)
ゆふされに そよとおとする をきのはの つれなきひとの こころなりせは
0771
0780実清 (258)
わきもこか くもかくれする つきなれや しはしみぬにも ゆかしかりけり
0779
0785実清 (258)
いせのあまよ そこのかつきに おもひしれ さこそはつみも ふかくなるらめ
0784
0795実清 (258)
いもこふる なみたもかかる たひころも のはらのつゆに ぬるるのみかは
0794
0800実清 (258)
うはたまの くろかみやまに ふるゆきの しろしくろしも しらすとて わかのうらわの もろひとと ひとなみなみに たちましり むなしきなのみ おとはかは おとはかりには きこゆとも まことはさらに なつこたち ことのはしまり かきつめて ももくさまても なりにけり そのあさけりは ははかりの せきやりかたく おもへとも きみかみことの すゑなれは いなはのつゆも いなひけと おもひあまりに つのくにの なにはのことも わすられて よきふしもなき しをれあしの したにはよとむ みつのあわの もらしてのちも よとともに なほきえかへり はつとしらすや
0799
0806俊成 (083)
あはれにも おもひたつかな かへるかり さすかにみゆる はるのにしきを
0805
0810俊成 (083)
いかはかり はなをははるも をしむらむ かつはわかみの かさりとおもひて
0809
0832俊成 (083)
をきのはも ちきりありてや あきかせの おとつれそむる つまとなりけむ
0831
0835俊成 (083)
なにことも おもひすつれと あきはなほ のへのけしきの ねたくもあるかな
0834
0846俊成 (083)
ゆめさめむ のちのよまての おもひいてに かたるはかりも すめるつきかな
0845
0853俊成 (083)
かせさやく さよのねさめの さひしきに はたれしもふり たつさはになく
0852
0858俊成 (083)
ふゆのよの ゆきとつきとを みるほとに はなのときさへ おもかけそたつ
0857
0861俊成 (083)
おもふより やかてこころそ うつりぬる こひはいろなる ものにそありける
0860
0876俊成 (083)
いかはかり われをおもはぬ わかこころ わかためつらき ひとをこふらし
0875
0883俊成 (083)
おもふこと みわのやしろに いのりみむ すきはたつぬる しるしのみかは
0882
0896俊成 (083)
しはつやま ならのしたはを をりしきて こよひはさねむ みやここひしみ
0895
0901俊成 (083)
しきしまや やまとしまねの かせとして ふきつたへたる ことのはは かみのみよより かはたけの よよになかれて たえせねは いまもはこやの やまかせの えたもならさす しつけきに むかしのあとを たつぬれは みねのこすゑも かけしけく よつのうみにも なみたたす わかのうらひと かすそひて もしほのけふり たちまさり ゆくすゑまての ためしとそ しまのほかにも きこゆなる これをおもへは きみかよに あふくまかはは うれしきを みわたにかかる うもれきの しつめることは からひとの みよまてあかぬ なけきにも かはらさりける みのほとを おもへはかなし かすかやま みねのつつきの まつかえの いかにさしける すゑなれや きたのふちなみ かけてたに いふにもたらぬ しつえにて したゆくみつに こされつつ いつつのしなに としふかく とをとてみつも へにしより よもきのかとに さしこもり みちのしはくさ おひはてて はるのひかりは こととほく あきはわかみの うへとのみ つゆけきそてを いかかとも とふひともなき まきのとに なほありあけの つきかけを まつことかほに なかめても おもふこころは おほそらの むなしきなをは おのつから のこさむことも あやなさに なにはのことも つのくにの あしのしをれの かりすてて さすかにのみそ なりにしを きしうつなみの たちかへり かかるみことの かしこさに いりえのもくつ かきつめて とまらむあとは みちのくの しのふもちすり みたれつつ しのふはかりの ふしやなからむ
0900
0902俊成 (083)
やまかはの せせのうたかた きえさらは しられむすゑの なこそをしけれ
0901
0916清輔 (084)
をしむみそ けふともしらす あたにちる はなはいつれの はるにたへせし
0915
0929清輔 (084)
なつののを ゆつゑふりたて こまなへて あさふませゆく ひとやたかこそ
0928
0934清輔 (084)
おもひやる こころもすすし ひこほしの つままつよひの あまのはころも
0933
0963清輔 (084)
わかこひを いはてしらする よしもかな もらさはなへて よにもこそちれ
0962
0974清輔 (084)
うらめしと おもひねにのみ ねらるれは ゆめにさへこそ つらくみえけれ
0973
0999清輔 (084)
たひつとに もたるかれいひの ほろほろと なみたそおつる みやこおもへは
0998
1002清輔 (084)
あしねはふ うきみのほとを つれもなく おもひもしらす すくしつつ ありへけるこそ うれしけれ よにもあらしの やまかせに たくふこのはの ゆくへなく ありなましかは まつかえに ちよにひとたひ さくはなの まれなることに いかてかは けふはあふみに ありといふ くちきのそまに くちゐたる たにのうもれき なにことを おもひいてにて くれたけの すゑのよまても しられまし うらみをのこす ことはたた とわたるふねの とりかちの とりもあへねは おくあみの しつみおもへる こともなく このしたかくれ ゆくふねの あさきこころに まかせつつ かきあつめたる くちはには よしもあらぬを いせのうみの あまのたくなは なかきよに ととめむことそ やさしかるへき
1001
1004待賢門院堀河 (080)
ゆきふかき いはのかけみち あとたゆる よしののさとも はるはきにけり
1003
1010待賢門院堀河 (080)
はるさめに かをるしつえも なつかしく きてみまほしき 梅花かさ
1014待賢門院堀河 (080)
はなさかぬ こすゑははるの いろなから さくらをわけて ふれるしらゆき
1012
1029待賢門院堀河 (080)
まこもくさ たかせのよとに しけれとも すゑはもみえす さみたれのころ
1027
1040待賢門院堀河 (080)
あふさかの せきのすきはら きりこめて たちともみえぬ ゆふかけのこま
1038
1049待賢門院堀河 (080)
のこりなく わかよふけぬと おもふにも かたふくつきに すむこころかな
1047
1069待賢門院堀河 (080)
ゆめのこと みしはひとにも かたらぬに いかにちかへて あはぬなるらむ
1067
1072待賢門院堀河 (080)
あはぬまは うらのはまゆふ うらみつつ かくことのはを ゆめにたにみよ
1070
1077待賢門院堀河 (080)
ひとにのみ すみつつそてを かさねつつ こふるしるしも きみはしらしな
1075
1080待賢門院堀河 (080)
あふこなき なけきのつもる くるしさを とへかしひとの こりはつるまて
1078
1087待賢門院堀河 (080)
みなひとの みちひかるなる はすのいとを たたひとすちに たよりてそふる
1085
1098待賢門院堀河 (080)
はかなくも これをたひねと おもふかな いつくもかりの やととこそきけ
1096
1104上西門院兵衛 (262)
なにことを はるのしるしに いてつらむ くもきえやらぬ たにのうぐひす
1102
1111上西門院兵衛 (262)
ことならは はなのさかりを みてかへれ こしちもおなし かりのやとりそ
1109
1121上西門院兵衛 (262)
ちるはなの かすみのうらに なみよるを くれゆくはるの とまりとやみむ
1119
1128上西門院兵衛 (262)
とりとりに やまたのさなへ いそくなり ほにいてむあきも しらぬいのちに
1126
1133上西門院兵衛 (262)
まちわたる つきひをおほく すくしきて あふせほとなき あまのかはなみ
1131
1137上西門院兵衛 (262)
よそめには たましくのへと みつれとも わきてきたれは みちしはのつゆ
1135
1186上西門院兵衛 (262)
なかきよの ねふりをいかに さましてか いまよりやみに まよはさるへき
1184
1187上西門院兵衛 (262)
つゆしもに たとふるつみを けつものは つとめていへる ひかりなりけり
1185
1190上西門院兵衛 (262)
ふたつなき のりにあはすと かけはなれ いつつのくもも はれすやあらまし
1188
1214郁芳門院安藝 (263)
やまかせに さけるつつしは さほひめに たかぬきかけし ゆるしいろめも
1212
1226郁芳門院安藝 (263)
さみたれは あまのもしほき くちにけり うらへにけふり たえてほとへぬ
1224
1231郁芳門院安藝 (263)
たたりなす かみもなこしの はらへすと ゆふかけてこそ すすしかりけれ
1229
1236郁芳門院安藝 (263)
さらてたに いろめきたりと いはれのに かせにをれふす をみなへしかな
1234
1238郁芳門院安藝 (263)
しらつゆの とちめもせぬか ふちはかま あきののことに ほころひにけり
1236
1239郁芳門院安藝 (263)
なにとなく こころほそきは かるかやの はすゑみたるる かせにはありける
1237
1243郁芳門院安藝 (263)
さやかなる そらにこころそ とまりぬる こよひやつきの せきにはあるらむ
1241
1251郁芳門院安藝 (263)
ふゆきぬと いかてしらまし やまさとは よはのしくれの おとせさりせは
1249
1256郁芳門院安藝 (263)
うちかはに ひをはくらしつ かたしきの あしろによりや たひねしなまし
1254
1257郁芳門院安藝 (263)
ひとりのみ ふせやのうへに しもおきて そのはらはらと ふるしくれかな
1255
1259郁芳門院安藝 (263)
ふゆふかく かれゆくひとを われはたた くさかきかとや とふへかるらむ
1257
1263郁芳門院安藝 (263)
そなれきの そなれそなれて ふすこけの まほならすとも あひみてしかな
1261
1299郁芳門院安藝 (263)
くるはるは かつらきやまや こえつらむ ふもとのかすみ たなひきて なとかすかのに けしきたつ ゆきのしたくさ むすほほれ とくるこほりの ひまひまに さしいつるわかな おいぬれは おほくのとしそ つみてける ちとせをまつの きみかよに いのちをのへに ねのひして うめもさくらも あをやきも ときはににほふ ここちして すきゆくはるも をしからす なつのころもを たちかへて ひとへにきみを たのめとも みをうのはなの かきねのみ なきこそわたれ ほととぎす くちなしいろの やまふきの えもいはぬまの あやめくさ もろともになと ひかさらむ たたとこなつに わかみこそ からなてしこの いろいろに おもへはうけし みなつきの つこもりにさへ なりにけり ゆふくれかたに みそきして あらふるかみも なこしとか ほしあひのそらに ゆきかよふ そらすすしさの ゆふまくれ くすのうらふく かせのおとも わかみにしめて いろもなき こころをそむる そめくさに あはれしらする をきのはの そよやいかにと とふひとも なきふるさとに しくれつつ あきしもきみに わかれにし こころつくしそ つきもせぬ なかきよすから すすむしの こゑふりたてて なきあかし よはにおきゐて しらつゆの そてうちぬらし しくれきて よのさかのとは おもへとも ためしもよもの あらしやま しつえのこのは ちりしより をしからぬみの ふるさとは なみたのしくれ くれなゐに ふかくそそむる ことのはを にしにかけつつ たのめとも なほなくさます いにしへの をはすてやまの つきのみそ かけになりつつ みをすてて いととすかたの いけらしと おもふものから つきひのみ あけくれたけの ふしことに さるはよさむに なりにけり まきのうすふき めもあはて あかつきかねの つくつくと おつるなみたを かきやれは しきのはねかき かすならす をさまるそての うすこほり われはぬれとも おもほえす こひにはきえぬ ものなれは さえゆくよはに こるつゆの おくとはなけき ぬれはまた ねられさりけり さよちとり ももこゑなけと かひもなし いまははちすの なかにゐて もろともにさは うまれはや なとかうきよに ふるならむ きえもやられす はかなくて ゆきつもりぬる ふゆくさの はつかにたにも みぬゆめの おほめかれゆく うはたまや くろかみやまの いたたきし いまはしらふに なりぬへし そらはそらはや はしたかの すすろにすくる よはひかな あはれうきよを すてやらて とやかへりぬる をきのはの たたひとすちに きみをのみ たのむこころに なくさみて をしからさりし みのはても ゆかしかりけり いまはたた いのちなからの せきすゑて すきゆくとしを ととめてしかな
1297
1315花園左大臣家小大進 (264)
かとたには いさらをかはを まかせつつ みつもやむらの たねまきてけり
1313
1316花園左大臣家小大進 (264)
もものはな ものいはすとか ききしかは たれすきあふと たはれしもせし
1314
1317花園左大臣家小大進 (264)
かきつはた へたてなはてそ むらさきの ねすりのきぬの いろもむつまし
1315
1324花園左大臣家小大進 (264)
かたらへは えそすきやらぬ ほととぎす こゑにもせきは すゑしとおもふに
1322
1334花園左大臣家小大進 (264)
しのひかね つみしらするそ をみなへし たよせにをると おもひうとむな
1332
1336花園左大臣家小大進 (264)
さらぬたに しとろにみたる かるかやの をれはにすかる ささかにのいと
1334
1339花園左大臣家小大進 (264)
こまこまと かくたまつさに ことよせて くるはつかりの かすそみなるる
1337
1346花園左大臣家小大進 (264)
からころも さゆるしもよに うちわひて まとろむまにや おとたゆむらむ
1344
1359花園左大臣家小大進 (264)
はかなしや おいもしらふの たかかひか ゆきもかさして みかりのへゆく
1357
1364花園左大臣家小大進 (264)
われこそは いひはしめしか はしむらこ あらぬかたにや あひそめにけり
1362
1395花園左大臣家小大進 (264)
あやむまて みねよりくたす しはくるま のりにこころや そみかくたなる
1393
1397花園左大臣家小大進 (264)
しもさゆる ふゆのにやとる このたひは くさひきむすふ まくらたになし
1395
1398花園左大臣家小大進 (264)
しもふれは なへてかれぬる ふゆくさも いはほかかけの はこそしをれね
1396
1400花園左大臣家小大進 (264)
きみかよは ゆくすゑまつに はなさきて とかへりいろを みつかきの ひさしかるへき しるしには ときはのやまに なみたてる しらたまつはき やちかへり はかへするまて みとりなる さかきのえたの たちさかえ しきみかはらを つみはやし いのるいのりの しるしあれは ねかふねかひも みつしほに のふるいのちは なかはまの まさこをちよの ありかすに とれともたえす おほゐかは よろつよをへて すむかめの よはひゆつると むれたりし あしまのたつの さしなから ともはくもゐに たちのほり われはさはへに ひとりゐて なくこゑそらに きこえねは つもるうれへも おほかれと こころのうちに うちしのひ おもひなけきて すくるまに かかるおほせの かしこさを わかみのはるに いはひつつ よよをふれとも いろかへぬ たけのこともの すゑのよを みかきのうちに うつしうゑて にほふときくの はなならは しもをいたたく おいのみも ときにあひたる ここちこそせめ
1398
s001季通 (255)
ひまもなく うゑへたつれと かきつはた こえてやなつの きなむとすらむ
s002郁芳門院安藝 (263)
そらはれて つきすみわたる あきのよは よるともみえす あまのかはなみ
s003待賢門院堀河 (080)
みかりのの とたちもみえす ゆきふれと くさとるたかは たとらさりけり
s004公能 (252)
しなはやと こひせしひとの ことくさに いひしはわれか みになりにけり
s005郁芳門院安藝 (263)
みにかへて しのひかたきを しのふくさ うきよをのきに おひにけるかな