玉葉和歌集 卷第五 秋歌下
0629 題不知
渡海の 豐旗雲に 入日射し 今宵月夜 澄明かくこそ
天智天皇御製
0630 【○承前。無題。】
百敷の 大宮人の 立出て 遊ぶ今宵の 月清けさ
詠人知らず
0631 五十首御歌中に、夕月
未暮れぬ 空光と 見る程に 知られで月の 影に成りける
院御製 伏見院
0632 月歌中に
山端を 出遣らぬより 影見えて 松下照る 十六夜月
從一位 二條良教
0633 【○承前。月歌之中。】
暮るる間の 籬竹を 吹風の 靡くに出る 秋夜月
常盤井入道前太政大臣 西園寺實氏
0634 【○承前。月歌之中。】
窗開けて 山端見ゆる 閨內に 枕側立て 月を待つ哉
藤原信實朝臣
0635 前大納言為家詠ませ侍ける百首歌中に
久堅の 月ぞ清けき 百敷の 大宮人や 在所離れぬらむ
從二位 藤原家隆
0636 秋御歌中に
爪木伐る 遠山人は 歸る也 里迄遲くれ 秋三日月
順德院御製
0637 百首歌詠侍ける時
高砂の 尾上晴たる 夕暮に 松葉昇る 月清けさ
中務卿 宗尊親王
0638 月御歌中に
秋風は 尾上松に 訪れて 夕山を 出る月影
後二條院御製
0639 家にて人人歌詠侍けるに、月漸昇と云事を
秋夜の 長き程をや 賴むらむ 出て急がぬ 山端月
平貞時朝臣
0640 題不知
雲拂ふ 外山峰の 秋風に 槙葉靡き 出る月影
從三位 藤原範宗
0641 【○承前。無題。】
山本の 裾野木蔭 未暗し 我が住む峰を 月出る程
大江貞廣
0642 【○承前。無題。】
澄昇る 高嶺月は 空晴れて 山本白き 夜半秋霧
從三位 藤原宣子
0643 月卅首御歌中に
空清く 月指昇る 山端に 止りて消ゆる 雲一叢
永福門院 西園寺鏱子
0644 古寺月を
初瀨山 檜原が嵐 鐘聲 夜深き月に 澄ましてぞ聞く
從三位藤原為子 二條為子
0645 建保二年九月十三夜、月前秋風と云ふ事を
月影の 出入峰は 松嵐 更くれば野邊に 荻上風
前大僧正慈鎮
0646 千五百番歌合に
思入れぬ 人過行く 野山にも 秋は秋なる 月や澄むらむ
前中納言 藤原定家
0647 建仁元年八月十五夜歌合に、野月露冷と云へる事を
秋野の 頻に露置く 篠庵は 漫ろに月も 濡るる顏為る
後京極攝政前太政大臣 九條良經
0648 秋歌中に
宿るべき 露をば遺せ 宵間の 月待つ程の 野邊秋風
平宣時朝臣
0649 【○承前。秋歌之中。】
風に伏す 荻上葉の 露ながら 月敷く庭の 秋ぞ寂しき
從三位 源親子
0650 【○承前。秋歌之中。】
脆く散る 花籬の 露上に 宿るも惜しき 月影哉
大藏卿 九條隆教
0651 月夜秋と云事を
露を磨く 淺茅が月は 靜かにて 蟲聲のみ 小夜深き宿
院御製 伏見院
0652 深夜月を
蛬 鳴くより外の 音も無し 月影更くる 淺茅生宿
從一位藤原教良女
0653 秋歌中に
今宵こそ 秋と覺ゆれ 月影に 蛬鳴きて 風ぞ身にしむ
前參議 藤原雅有 飛鳥井雅有
0654 寶治百首歌に、湖月を
鳰海や 秋夜渡る 海人小舟 月に乘りてや 浦傳ふらむ
皇太后宮大夫 藤原俊成女
0655 貞永元年八月十五夜、家に歌合し侍けるに、名所月
須磨浦や 天飛ぶ雲の 跡晴れて 波より出る 秋月影
光明峰寺入道前攝政左大臣 九條道家
0656 家百首歌に
浦遠き 白洲末の 一つ松 復影も無く 澄める月哉
前大納言 藤原為家
0657 月歌中に
月冴ゆる 明石瀨戶に 風吹けば 冰上に 疊む白浪
西行法師 佐藤義清
0658 【○承前。月歌之中。】
海原 波にも月は 隱れけり 都山を 何厭ひけむ
西行法師 佐藤義清
0659 後嵯峨院御時、八月十五夜歌合に
難波潟 浪間を分けて 入月の 猶影殘る 淡路島山
冷泉前太政大臣 西園寺公相
0660 湖邊月
細浪や 浦風吹けて 秋夜の 長柄山に 月ぞ傾く
入道前太政大臣 西園寺實兼
0661 題知らず
紀海や 浪より通ふ 浦風に 遠山晴れて 出る月影
前大僧正道珍 堀川僧正 南瀧院 鷹司基忠子
0662 海邊月と云事を
紀國や 由良湊に 風立ちて 月出潮の 雲拂ふ也
前內大臣 久我通雄
0663 【○承前。詠海邊月。】
藻鹽火も 月夜頃は 燒指して 煙莫立てそ 須磨浦人
權中納言 藤原實衡
0664 月歌中に
漕出る 須磨夜舟の 遠近は 宛ら月の 影白浪
前參議 冷泉為相女
0665 海邊月明
清見潟 富士煙や 消えぬらむ 月影磨く 三保浦浪
後鳥羽院御製
0666 題知らず
月澄めば 谷にぞ雲は 沉むめる 嶺吹拂ふ 風に敷かれて
西行法師 佐藤義清
0667 【○承前。無題。】
浮雲に 速く違ひて 行月の 晴間に成れば 風ぞ靜まる
藤原為守
0668 【○承前。無題。】
橋立や 松吹渡る 浦風に 入海遠く 澄める月影
大江茂重
0669 橋月と云ふ事を
礒上 布留高橋 代代掛けて 月も幾夜か 澄渡るらむ
右兵衛督 飛鳥井雅孝
0670 水鄉月
山本の 遠き邊は 見え分かで 月にぞ白き 宇治川浪
法印憲基
0671 正治百首歌奉りける中に
秋夜は 尋ねぬる宿に 人も無し 誰も月にや 在所離れぬらむ
二條院讚岐 內讚岐 中宮讚岐 源賴政女
0672 永福門院中宮と申ける時、秋頃西園寺に出でさせ給へりけるに、大納言三位內に侍ひけるに遣はしける
何方より 出でし雲居の 月為れば 秋宮をば 餘所に住むらむ
入道前太政大臣 西園寺實兼
0673 返し
住馴るる 秋宮間の 外にては 雲居月も 見る空ぞ無き
從三位藤原為子 二條為子
0674 月歌數多詠ませ給うける中に
風音も 身にしむ夜半の 秋月 更けて光ぞ 猶增さり行く
今上御製 花園天皇
0675 上東門院太皇太后宮と申ける時、八月許御前に前栽植ゑさせ給ひて人人に歌詠ませさせ給ひける時、秋月清か也と云事を詠侍ける
天風 雲吹拂ふ 常よりも 清けさ增さる 秋夜月
權大納言 藤原長家
0676 「夜雲收まり付きて、月行遲。」と云ふ心を詠侍ける
雨雲の 棚引けりとも 見えぬ夜は 行月影ぞ 長閑かりける
紀貫之
0677 法性寺入道前關白家に月三十首歌詠ませ侍けるに
秋風は 夜寒なりとも 月影に 雲衣は 著せじとぞ思ふ
按察使 藤原公通 西園寺公通
0678 月五十首御歌中に
秋風は 軒端松を 撓る夜に 月は雲居を 長閑にぞ行く
永福門院 西園寺鏱子
0679 月前風
澄昇る 月邊は 雲晴れて 餘所に時雨るる 松風聲
左近大將 洞院實泰
0680 題知らず
山本の 茂檜原の 下許 光を呼ばぬ 秋夜月
九條左大臣女 二條道良女
0681 平貞時朝臣、三島社にて講し侍ける五首歌中に
世を祈る 我が立つ杣の 峰晴れて 心より澄む 秋夜月
前大僧正源惠
0682 月御歌中に
在所離るる 心は空に 誘はれて 寢る夜少なき 秋夜月
法皇御製 後宇多院
0683 【○承前。月御歌中。】
眺侘び 在所離立ちぬ 我心 秋に悲しき 月の夜な夜な
章義門院 譽子內親王
0684 八月十五夜月、月十五首歌召されけるに
己づから 澄まぬ心も 澄まれけり 月離れても 見るべかりける
從三位 源親子
0685 正治二年百首歌奉りける時、秋歌
眺めても 誰をか待たむ 月夜良し 夜良と告げむ 人し無ければ
小侍從 待宵小侍從 八幡小侍從
0686 題不知
眺侘び 月誘ふに 任すれば 何方に留る 心とも無し
藤原賴氏
0687 百首歌中に
海果て 空限も 秋夜の 月光の 內にぞ有ける
從二位 藤原家隆
0688 月を詠侍ける
人も見ぬ 由無き山の 末迄に 澄むらむ月の 影をこそ思へ
西行法師 佐藤義清
0689 【○承前。侍詠月歌。】
來し方は 皆面影に 浮かびきぬ 行末照らせ 秋夜月
前中納言 藤原定家
0690 院東宮と申侍りし頃、殿上人題を探りて歌合し侍りし時、月前懷舊と云事を
如何為りし 人情けか 思出づる 來し方語れ 秋夜月
前大納言 藤原為兼 京極為兼
0691 月歌中に
秋ぞ變る 月と空とは 昔にて 世世經し影を 宛らぞ見る
前大納言 藤原為兼 京極為兼
0692 順德院御時、杜間月と云事を詠侍ける
染兼ぬる 常磐杜の 梢より 月こそ秋の 色は見えけれ
前參議 中山忠定
0693 月歌中に
秋每に 偲心も 色染へば 都月よ 馴れじとぞ思ふ
大江宗秀
0694 家に十首歌詠侍けるに、月を
世を憂しと 何思ひけむ 秋每に 月は心に 任せてそ見る
皇太后宮大夫 藤原俊成
0695 守覺法親王家五十首歌中に
哀とは 我をも思へ 秋月 幾巡りかは 眺めきぬらむ
皇太后宮大夫 藤原俊成
0696 題知らず
憂身こそ 厭ひながらも 哀為れ 月を眺めて 年經ぬれば
西行法師 佐藤義清
0697 百首歌中に、月
何と無く 過來し秋の 數每に 後見る月の 哀とぞ為る
前中納言 藤原定家
0698 山里にて八月廿日頃、曉方月忌じく哀にて、所樣も心凄く覺侍ければ
哀知る 人に見せばや 山里の 秋夜深き 有明月
菅原孝標朝臣女
0699 山家秋月と云へる心を
柴戶や 指しも寂しき 太山邊の 月吹風に 小男鹿聲
後鳥羽院御製
0700 五十首歌中に
心澄む 限也けり 石上 古都の 有明月
前大僧正慈鎮
0701 權大納言顯朝、中納言に成りて九月十三夜悅び申侍けるに遣はしける
心行く 程迄昇れ 位山 名高き秋の 月導に
後深草院少將內侍
0702 百首歌中に
何方へ 雲居雁の 過ぎぬらむ 月は西にぞ 傾きにける
式子內親王
0703 皇太后宮大夫俊成家に十首歌詠ませ侍ける時
身に積る 我世秋の 更けぬれば 月見てしもぞ 物は悲しき
道因法師
0704 源師光家にて月歌詠侍けるに
秋夜も 我世も甚く 更けぬれば 傾く月を 餘所にやは見る
從三位 源賴政
0705 寬元元年九月十三夜、月十首歌中に
七十に 餘悲しき 眺め哉 入方近き 山端月
西園寺入道前太政大臣 西園寺公經
0706 月歌とて
昔見し 月にも袖は 濡れしかど 老は宛ら 淚也けり
僧正公朝 姉小路實文子
0707 【○承前。詠月歌。】
身は如是て 流石有世の 思出に 復此秋も 月を見る哉
從二位 藤原隆博
0708 三十首歌召されし時、深夜月を
庭白く 冴えたる月も 稍更けて 西垣根ぞ 蔭に成行く
從二位 楊梅兼行
0709 後鳥羽院に五十首歌奉ける中に、月前竹風
伏侘びて 月に浮かるる 道邊の 垣根竹を 拂ふ秋風
前中納言 藤原定家
0710 題知らず
秋夜の 空澄渡る 月見れば 行くとも無くて 傾きにけり
大江嘉言
0711 【○承前。無題。】
更けぬとも 獨置居む 眺捨てて 月より先に 入らじと思へば
前右衛門督 園基顯
0712 月を詠ませ給うける
更けぬれど 行くとも見えぬ 月影の 流石に松の 西に成りぬる
後二條院御製
0713 八月十五夜、月十五首歌人人に詠ませさせ給ひける序に
更けぬとも 眺むる程は 覺えぬに 月より西の 空ぞ少なき
院御製 伏見院
0714 曉月
明けぬるか 分けつる跡に 露白し 月歸途の 野邊道芝
院御製 伏見院
0715 嘉元百首歌奉りけるに、月
雲晴るる 礒山嵐 音更けて 沖鹽瀨に 月ぞ傾く
關白前太政大臣 鷹司冬平
0716 月歌中に
月殘る 礒邊松を 吹分けて 入方見する 秋浦風
權中納言 小倉公雄
0717 【○承前。月歌之中。】
有明は 入る恨無き 山端の 辛さに變る 曉空
前參議 藤原雅有 飛鳥井雅有
0718 廣田社歌合に
曉に 成りやしぬらむ 小倉山 鹿鳴音に 月傾きぬ
藤原基俊
0719 建仁元年八月十五夜歌合に、古寺殘月と云へる事を
復類 嵐山の 麓寺 過庵に 有明月
皇太后宮大夫 藤原俊成
0720 月御歌中に
白み行く 空光に 影消えて 姿許ぞ 有明月
朔平門院 璹子內親王
0721 【○承前。月御歌中。】
小倉山 都空は 明果てて 高梢に 殘る月影
前大納言 藤原為家
0722 曉霧と云ふ事を
空迄は 立昇らて 有明の 月に及ばぬ 峰秋霧
平貞時朝臣
0723 題知らず
霧晴るる 雲間に月は 影見えて 猶降荒ぶ 秋村雨
藤原為顯
0724 【○承前。無題。】
入月の 名殘影は 嶺に見えて 松風暗き 秋山本
藤原定成朝臣
0725 桂なる所へ罷りて侍けるに、小倉山にて月入りにければ詠侍ける
音に聞く 小倉山は 月影の 入りぬる時の 名にこそ有けれ
四條太皇大后宮信濃
0726 秋御歌中に
夕暮の 庭凄まじき 秋風に 梧葉落ちて 村雨ぞ降る
永福門院 西園寺鏱子
0727 秋雨を
雲掛かる 高嶺檜原 音立てて 村雨渡る 秋山本
中務卿 宗尊親王
0728 【○承前。詠秋雨。】
風に行く 峯浮雲 跡晴れて 夕日に殘る 秋の村雨
平時春
0729 【○承前。詠秋雨。】
浮きて渡る 夕空の 雲暮れて 風にぞ競ふ 秋村雨
今出川院權中納言
0730 「晴後青山臨牖近」と云ふ心を詠ませ給うける
窗近き 向山に 霧晴れて 顯渡る 檜原槙原
土御門院御製
0731 關霧
強てやは 猶過行かむ 逢坂の 關藁屋の 秋夕霧
常盤井入道前太政大臣 西園寺實氏
0732 題不知
嶺雲 麓霧も 色暮れて 空も心も 秋松風
前中納言 藤原定家
0733 延喜二年中宮月次屏風に
山路には 人や惑はむ 河霧の 立來ぬ先に 去來渡りなむ
紀貫之
0734 千五百番歌合に
朝朗け 槙尾山は 霧籠めて 宇治河をさ 舟喚ばふ也
土御門內大臣 源通親
0735 題不知
槙葉の 雫ぞ墮る 朝霧の 晴行く山の 嶺秋風
藤原景綱
0736 霧を詠める
分侘びて 何方里とも 白菅の 真野萱原 霧籠めてけり
藤原秀長
0737 【○承前。詠霧。】
外面為る 楢葉萎れ 露落ちて 霧晴昇る 秋山本
前參議 藤原雅有 飛鳥井雅有
0738 秋歌中に
朝日射す 伊駒岳は 現れて 霧立籠むる 秋篠里
前參議 西園寺實俊
0739 【○承前。秋歌之中。】
清見潟 浪路霧は 晴にけり 夕日に殘る 三保浦松
平宗宣朝臣
0740 建保元年八月、撰歌合に
明石潟 浦路晴行く 朝凪に 霧に漕入る 海人釣舟
後鳥羽院御製
0741 長月頃、伏見殿に參りけるが、前大納言時繼、深草山庄に一夜留りて歸るとて詠侍ける
假りに來て 立つ秋霧の 曙に 歸る名殘も 深草里
前關白太政大臣 鷹司基忠
0742 題知らず
先立ちて 渡る人だに 見えぬ迄 夕霧深し 勢田長橋
左近大將 洞院實泰
0743 嘉元百首歌奉けるに、霧を
立籠むる 朝明霧の 其儘に 曇りて暮るる 秋空哉
前中納言 日野俊光
0744 遠山霧
霧深み 其處と見えねど 影薄き 月昇るや 秋山際
入道前太政大臣 西園寺實兼
0745 秋歌中に
秋霧の 絕間を見れば 朝附日 向岡は 色付きにけり
後一條入道前關白左大臣 一條實經
0746 【○承前。秋歌之中。】
其處としも 麓は見えぬ 朝霧に 殘るも薄き 秋山端
權大納言 一條內經
0747 萬葉集歌一句を題にて人人歌仕奉けるに、「隱れぬ程に」
花色は 隱れぬ程に 髣髴為る 霧夕の 野邊遠方
從三位藤原為子 二條為子
0748 題知らず
夕日射す 山端許 現れて 霧に鎮める 秋川浪
平政長
0749 寶治二年百首歌に、秋田
穗に出る 伏見小田を 見渡せば 稻葉に續く 宇治川浪
冷泉前太政大臣 西園寺公相
0750 【○承前。寶治二年百首歌,秋田。】
暮懸かる 伏見門田 打靡き 穗浪を渡る 宇治河舟
前右兵衛督 京極為教
0751 亭子院御屏風に
白露の 晚生稻も 苅りてけり 秋果難に 成りやしぬらむ
大中臣賴基朝臣
0752 百番歌合に
秋をだに 何時かと思ひし 荒小田に 苅干す程に 成りぞしにける
順德院御製
0753 秋夜之心を
庭蟲 餘所砧の 聲聲に 秋夜深き 哀をぞ聞く
前參議 冷泉為相
0754 承久三年內裏歌合に、聞擣衣と云事を
更けぬるか 此里人は 音もせで 遠山本に 衣擣つ也
光明峰寺入道前攝政左大臣 九條道家
0755 霧中擣衣を
夕霧に 道は惑ひぬ 衣擣つ 音に付きてや 宿を借らまし
藤原隆信朝臣
0756 秋歌中に
秋風は 更けに蓋しな 里遠き 砧音の 澄增さり行く
二品法親王覺助
0757 【○承前。秋歌中。】
更行けば 所所に 聞こえつる 砧音ぞ 稀に成行く
前右近大將 花山院家教
0758 擣衣を詠める
小夜更けて 衣擣つ也 我為らで 亦寢ぬ人は 有らじと思ふに
小辨
0759 百首御歌中に
今よりは 衣擣つ也 秋風の 寒夕の 岡邊里
後二條院御製
0760 賀茂社へ奉ける百首歌中に、擣衣を
月清み 千里外に 雲付きて 都方に 衣擣つ也
皇太后宮大夫 藤原俊成
0761 同心を
久方の 月も夜寒に 成儘に 秋は更けぬと 衣擣つ也
平長時
0762 【○承前。詠同心。】
暮方の 秋去り衣 緯を薄み 絕えぬ夜寒に 今ぞ擣つなる
源家清
0763 【○承前。詠同心。】
入方の 月空さへ 響く迄 遠路村は 衣擣つ也
入道前太政大臣 西園寺實兼
0764 千五百番歌合に
衣擣つ 賤が伏屋の 板間麤み 砧上に 月漏りにけり
醍醐入道前太政大臣 九條良平
0765 百首歌中に
時雨行く 櫨立枝に 風越えて 心色付く 秋山本
前中納言 藤原定家
0766 杜紅葉
移行く 景色杜の 下紅葉 秋來にけりと 見ゆる色哉
兵部卿 源有教
0767 龜山院より召されける秋十首歌中に
小倉山 秋と許の 薄紅葉 時雨後の 色ぞゆかしき
延政門院新大納言 藤原為氏女
0768 建保四年內裏百番歌合に
誰か染めし 外山峰の 薄紅葉 時雨ぬ先の 秋一入
西園寺入道前太政大臣 西園寺公經
0769 秋歌に
片山の 柞梢 色付きて 秋風寒み 雁ぞ鳴くなる
前大納言 藤原為氏 二條為氏
0770 水無瀨殿にて秋歌詠侍けるに
夕附日 向岡の 薄紅葉 夙寂しき 秋色哉
前中納言 藤原定家
0771 九月十三夜、人許に罷りて、徹夜物語して侍ける勤めて、「明かざりし、君が名殘に、久堅の、月を入る迄、眺めつる哉。」と言遣せて侍ける返事に
我も然 飽かで返りし 月影の 山端辛き 眺めをぞせし
藤原基俊
0772 題知らず
秋深き 寢覺時雨 聞詫びて 置出てみれば 叢雲月
院新宰相 伏見院新宰相
0773 秋雨を
秋雨の 止方寒き 山風に 歸途雲も 時雨れてぞ行く
前大納言 藤原為家
0774 御前に菊を多植ゑさせ給へりけるを、辨乳母申けるを賜はせざりければ、「星とのみ、見てや止なむ、雲上に、咲連なれる、白菊花。」と申して侍ければ
色色に 移ふ菊を 雲上の 星とは如何で 人言ふらむ
後三條院御製
0775 寶治二年百首歌奉りける時、重陽宴
紫に 貫ぬる袖や 移るらむ 雲上迄 匂ふ白菊
常盤井入道前太政大臣 西園寺實氏
0776 【○承前。寶治二年奉百首歌時,重陽宴。】
百敷の 大宮人の 今日と言へば 髻首にさせる 千代白菊
兵部卿 四條隆親
0777 ○
0778 ○
0779 ○
0780 ○
0781 ○
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0800 ○
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