日本書紀私記 【丙本。】

日本書紀 第三【人代】


     神武 神日本磐余彥天皇,諱曰神武。彥波瀲武鸕鶿草葺不合尊第四子也。母玉依姬,海童之大女也。橿原宮治天七十六年。
       神日本磐余彥天皇(かみやまといはれびこのすめらみこと) 第四子也(よばしらにあたりたまふや) 海童(わたつみ) 少女(おほむすめ) 意礭如也(こころかたくつよし) 明達(さかし) 生而(うまれながら) 太子(ひつぎのみこ) 手研耳(たぎしみみ) 子等(みこたち) 天祖(あまつみおや) 天關(あまのいはと) 披雲路(くもぢをおしひらき) 驅拂蹕(みさきはらひおひ)【又云,さきはらひおひて。】 戾止(いたります) ()【世也。】 屬鴻荒(おほきにあれたるつきに)【又云,おほきにあれたるに。】 鍾草昧(くらきにあたれり) (ただしきよちを) 治此西偏(このにしのほとりをおさめたり) 皇祖皇考(おほみおや) 乃神乃聖(かみひじり) 年所(とし)【年也。】 降跡以逮(あまくだりましてよりこのかた) 一百萬歲(ももよろつとせ) 七十(ななよとせ) 九萬(ここのよろつとせ) 二千(ふたちとせ) 四百(よほとせ) 七十餘歲(ななそとしのあまり) 遼𨗿之地(とほくはるかなるつち) 王澤(みうつくしび) 遂使(よしめつ) 凌躒(しのぎきしろふ) 鹽土老翁(しほつちのをぢ) 美地(うましつち) 四周(よもにめぐれり) 天業(あまつひつぎ) 光宅(みちをり) 六合之中心(あめつちのうち)【又云,くにのもなか。】 理實(ことわり) 灼然(いやちこなり) 行之(おこなひたまへ) 速吸之門(はやすひなと) 珍彥(うづひこ) 曲浦(わだのうら) 椎㰏末(しひさをのすゑ) 皇舟(みふね) 海導(わたのみちびき) 直部(あたひべ) 菟狹(うさ) 一柱騰宮(あしひとつあがりのみや) 奉饗(みあへたてまつる) 賜妻(めあはせまふ) 侍臣(おほとまちのきみ) 水門(みなと) 行館(かりみや) 積三年(みとせふる) 皇師(みいくさ) 舳艫(ともへ) 太急(しばやし) (よこなまる) 遡流而上(かはよりさがりのぼる) 膽駒山(いこまのやま) 中洲(うちつくに) 長髓彥(ながすねびこ) 孔舍衛坂(くさゑのさか) 流矢(いたやぐし) (さだめ)(さだめ)也。】 神策(あやしきはかりごと) 且停(しましとどまれ)【暫之留也。】 勿須復進(またなすすめぞ) 雄詰(をたけび) 母木邑(おもきのむら) 茅渟(ちぬの) 矢瘡(いたやぐしのきず) 撫劔(つるぎのたかみとのとりしはる) 慨哉(うれたきかや) 大丈夫(ますらを) 被傷於虜手(いやしきやつはてををひて) 將不報而死耶(むくいせすしてややみなむといふ) 戶畔(とべ) 暴風(あからしまかぜ) 漂蕩(ただよふ) 鋤持神(さひもちのかみ) 浪秀(なみのほ) 往乎常世鄉矣(とこよのくににいでましぬ) 人物(ひと) 聞喧擾之響焉(さやげりなり) (うべなり) 韴靈(ふつのみたま) 曰唯唯(とまうすとみて) 底板(しきいた) 適寐(よくいねませり) 長眠(ながいす) 中毒(あしきくきにあただ) 士卒(いくさびと) 醒起(さめぬ) 棲遑(しじまひ) 不知其所跋涉(そのふまむところをしらず) 頭八咫烏(やたからす) 基業(あまつひつぎ) 督將元戎(いくさのきみおほつはもの) 穿邑(うかちのむら) 兄猾(えうかし) 魁帥(ひとごのかみ) 詣至(まうけり) 軍門(みかど) 為逆狀也(さかさまなるわざをするかたち) 請饗(みあへたてまつる) 誥嘖(たけびころひ) 虜爾所造(いやしきやついかつくれる) (おれ) 案劔(つるぎのたかみとり) 彎弓(ゆみひきまかな) 催入(おひいる) 獲罪於天(つみをあまにえて)【天,君也。】 無所辭(いなぶるところなく)【申去也。】 沒踝(つぶなぎをいる) 菟田血原(うだのちはら) 勞饗(ねぎみあへす) 為御謠之曰(みうたよみしてのたまはく)菟田(うだ)の,高城(たかき)に,鴫羂張(しぎわなは)る,()(まつ)や,(しぎ)(さや)らず,勇細(いすくは)し,鯨障(くぢらさや)り,前妻(こなみ)が,肴乞(なこ)はさば,立柧棱(たちそば)の,實無(みのな)けくを,幾許(こき)()ゑね,後妻(うはなり)が,肴乞(なこ)はさば,(いちさかき)實多(みのおほ)けくを,幾許(こき)()ゑね。】 是謂來目歌(これくめうたといふ) 樂府(うたまひのつかさ) 手量(たはかり) 音聲(うたこゑ) 巡幸焉(まぐりいでます) 井光(ゐひかり) 排別(おしわく) 作梁取魚者(やなうちすなどり) 苞苴擔(にへもつ) 梟帥(たける) 焃炭(おこしずみ) 兄磯城(えしき) 布滿於(にしきいはめり) 磐余邑(いはれむら) 賊虜(あたども) 香山(かぐやま) 天平瓮(あまのひらか) 八十枚(やそて) 嚴瓮(いつへ) 嚴呪詛(いつのかじり) 虜自平伏(やつこしむきしたかひなむ) 將行(おこなひたまふ) 天香山埴(あまのかぐやまのはにつち) 著弊衣服(やれきぬぬらきて) 可來旋矣(かへるべし) 為占(うらなはむ) (おほち) 徃還(かよふ) 群虜(あたども) 大醜乎(あなみにくや) 老父(おほぢ) 老嫗(をうな) 來歸(まうかへる) 甚悅(みさけたまふ) 手抉(たくじり) 水沫(みなわ) 呪著(かじりくる) 造飴(たがねをつくなむ) 鋒刃之威(つはもののゐ) 噞喁(あぎとふ) 顯齋(うつしいはひ) 罔象女(みつはのめ) 嚴稻魂女(いつのうかのめ) (くらひもの) 謠之曰(うたよみしてのたまはく)神風(かむかぜ)の,伊勢海(いせのうみ)の,大石(おほいし)にや,い這迴(はひもとほ)る,細螺(しただみ)の,細螺(しただみ)の,吾子(あご)よ,吾子(あご)よ,細螺(しただみ)の,い這迴(はひもとほ)り,()ちてし()まむ,()ちてし()まむ。】 宴饗(とよのあかり) 猛卒(たけきいくさ) 一時(もろどもに) 坐定(ゐしづまり) 酒行(さけもる) 徑醉(ほしいままにゑひぬ) 歌曰(うたひたまはく)忍坂(おさか)の,大室屋(おほむろや)に,人多(ひとさは)に,入居(いりを)りとも,人多(ひとさは)に,來入居(きいりを)りとも,瑞瑞(みつみつ)し,來目子等(くめのこら)か,頭椎(くぶつつ)い,石椎(いしつつ)い,()ち,()ちてし()まむ。】 頭椎劍(くぶつちのつるぎ) 噍類(のこるもの) 歌曰(うたひたまはく)(いま)はよ,(いま)はよ,嗚呼(ああ)しやを,(いま)だにも,吾子(あご)よ,(いま)だにも,吾子(あご)よ。】 又歌曰(またうたひたまはく)蝦夷(えみし)を,一人(ひだり)(もも)(ひと)(ひと)()へども,手向(たむか)ひもせず。】 良將之行也(いくさのきみのしわざ) 魁賊(おほいなるあだ) (いひおそりつつ) 十數群(とたむらあまり) 制變(はかりこと) 天壓神(あまのおすかみ) 吾為慨憤時(あれがねたみつつとき) 烏鳥(からす) 若此惡鳴耶(かくあしきねなきするや) 避去(たちさりぬ) 惵然改容(おぢかしこまり) 葉盤(ひらで) 會諸將(もろもろのいくさのきみ) 兵甲(つはもの) 黠賊也(さかしきあたなり) 倉下(くらじ) 利害(よしあし) 計之曰(たばかりて) 炭火(おきび) 儵忽之間(たちまちのあひだ) 不意(おもひほかに) 介胄之士(いくさのひとども) 謠曰(うたひいはく)楯並(たたな)めて,伊那瑳山(いなさのやま)の,木間(このま)ゆも,い行守(ゆきまも)らひ,(たたか)へば,(われ)はや()ぬ,島鳥(しまつとり)鵜飼(うかひ)(とも)今助(います)けに()ね。】 梟帥(ひとこのかみ) 不能取勝(かつことあたはず) 天陰(そらくらく) 雨冰(ひさめふる) 鵄光曄煜(そのとびてりかかやき) 狀如流電(いでかたちいなびかりのごとし) 迷眩(まぎえてまとふて) 力戰(きずめ)【如字。】 憤懟(いきどほりうらむこと) 謠曰(うたひいはく)瑞瑞(みつみつ)し,來目子等(くめのこら)が,垣本(かきもと)に,粟生(あはふ)には,韮一本(かみらひともと)(その)(もと)其根芽繫(そねめつな)ぎて,()ちてし()まむ】 又謠曰(またうたひいはく)瑞瑞(みつみつ)し,來目子等(くめのこら)が,垣本(かきもと)に,()ゑし山椒(はじかみ)口疼(くちびひ)く,(われ)(わす)れず,()ちてし()まむ。】 行人(つかひと) 降止(いでまき) 櫛玉(くしたま) 饒速(にぎはやし) 可美真手(うましまでのみこと) 豈有兩種乎(あにふたはしらあらむや) 未必為信(いつはりならむ) 表物(しるしのもの) 可相示之(あひみよし) 一隻(ひとつ) 步靫(かみちゆき) 奉示(みよたてまつる) 事不虛(まことなりけり) 所御(みやかよる) 天表(あまつしるし) 踧踖(おぢかしこまる) 凶器(つはもの) 稟性(ひととなり) 愎佷(いすかしまにもとりて) 天人(きみたみ) 歸順(まつらふ) 臍見長柄丘岬(ほそみのながらのをかさき) 有豬祝者(ゐのはふりあり) 來庭(まうき) 偏師(かたいくさ) (むくろ) 片居(かたゐ) 片立(かたたち) 屯聚居之(いはみゐたり) 立誥之處(たちたちしところ) 猛田(たけた) 頰枕田(つらまきた) 區宇(あめのした) 皇天之威(あめのかみのいきほひをもて) 凶徒(あた) 就戮(ころされぬ) 風塵(さはぎ) 屯蒙(わかくらし) 民心(おほみたからのこころ)御寶(おほみたから)。】 朴素(すなほなり) 習俗(しわざ) 經營(をさめつくる) 宮室(おほみや)大宮(おほみや)。】 寶位(たかみくら) 元元(おほみたから)御寶(おほみたから)。】 乾靈(あまつかみ) 八紘(あめのした) 畝傍山(うねびやま) 東南(たつみのすみ)巽角(たつみのすみ)。】 墺區乎(もなかのくみしか) 可治之(みやこつくりし) 有司(つかさ) 經始(つくりはしむ) 帝宅(おほみや) 華胄(よきやから) 國色之秀者(かほすぐれたるひと) 正妃(むかめ) 古語(ふること) 太立宮柱於底磐之根(したついはねにみやはしらふとしきたてて) 峻峙搏風於高天之原(たかあまのはらにちぎたかしりて) 始馭天下之天皇(はつくにしろしめすべらみこと) 草創(はしむ) 天基(あまつひつぎ) 密策(しのびのはかりこと) 倒語(さかしまごと) 妖氣(わざはひ) (いさをし) 宅地(いへところ) 主水部(もひとりら) 靈畤(まつりのには) 榛原(はりはら) 皇輿(すめらみこと) 嗛間(ほほま) 妍哉(あなにや) 國之獲矣(くにえつる) 內木綿之真迮國(うつゆふのまさきくに) 猶如蜻蛉之臀呫焉(あきづのとなめせるかなや) 日本(やまと) 浦安國(うらやすのくに) 細戈千足國(くはしほこのちだるくに) 磯輪上秀真國(しわかみのほつまくに) 玉牆內國(たまかきのうちつくに) 太虛也(おほぞら) 虛空見(そらみつ) 明年(くるつとし) 東北(うしとら)丑寅角(うしとら)。】





本紀 第四【皇代二 綏靖天皇】


     綏靖 神渟名川耳天皇。
       神渟名河耳((かむぬなかはみみ)) 風姿(あやし) 岐嶷(きぎよく) 容貌魁偉(かたちすぐれたはし) 武藝(たけきわざ) 志向(こころざし) 沈毅(おここし) 孝性(ひととなりおやにしたがふ) 悲慕(しのぶ) 喪葬(みはぶり) 庶兄(いろね) 行年已長(としおいて) 朝機(あさまつりごと) 親之(みつからなしむ) (みこ) 立操(こころはへ) 厝懷(こころおきて) 仁義(うつくしびのこころなり) 諒闇(みものおもひみおもひ) 威福(いきほく) 自由(ほしきままなり) 二弟(ふたはしら) 鍛部(かぬちべ) 天津(あまつ) 真浦(まうら) 片丘(かたをか) 大窨(おほむろ) 大牀(おほとこ) 唯吾與爾(ただあれといまし) 戰慄(をののき) 放矢(いること) 一發(ひとさし) 再發(ふたさにし) 中背(そひら) 懣然自服(もだえてしたがひ) 不能致果(いしきなからず) 特挺神武(すぐれてたけく) 元惡(あた) 光臨天位(たかみくらゐにてりて) 承皇祖之業(みおやのつひでにうけて) 即天皇位(あまつひつぎしろしめす) 都葛城(かづらきにみやこつくる) 皇太后(おほきさき) 主大日諸女絲織(おほひもろがむすめいとり) 不豫(みやまひ)


     安寧 天皇 第三【安寧天皇。】 磯城津彥玉手看天皇。
       磯城津彥玉手看(しきつひこたまてみ) 少女也(おとむすめなり) 桃花鳥田(つきた) 片鹽(たかしほ) 浮孔宮(うきあなのみや) 渟名底(ぬなそこ) 大間(おほま) 息石耳(おきそみみ)


     懿德 天皇 第四【懿德天皇。】 大日本彥耜友天皇。
       大日本彥耜友(おほやまとひこすきとも) 御陰井(みほとゐ) 曲峽宮(まがりをのみや) 母弟(はらからおなじはら)


     孝照 天皇 第五【孝昭天皇。】 觀松彥香殖稻天皇。
       觀松彥香殖稻(みまつひこかゑしね) 繊沙(まなご) 天足(あまたらし) 世襲足(よそたらし)


     孝安 天皇 第六【孝安天皇。】 日本足彥國押人天皇。
       瀛津(おきつ) 博多山(はかたのやま)


     孝靈 天皇 第七【孝靈天皇。】 大日本根子彥太瓊天皇。
       大日本根子彥太瓊(おほやまとねこひこふとに) 太瓊(ふとに) 千乳早山香(ちちはややまか) 絙某姊(はへいろね)


     孝元 天皇 第八【孝元天皇。】 大日本根子彥國牽天皇。
       大日本根子彥國牽(おほやまとねこひこくにくる) 境原宮(さかひはらのみや) 青玉繫(あをたまかけ)


     開化 天皇 第九【開化天皇。】 稚日本根子彥大日日天皇。
       稚日本根子彥(わかやまとねこひこ) 大日日(おほびび) 率川宮(いざかはのみや) 劍池嶋上陵(つるぎいけのしまのへのみさざき)





本紀 第五【天皇第十 崇神天皇】


     崇神 天皇 第十【崇神天皇。】 御間城入彥五十瓊殖天皇。
       御間城入彥(みかきいりびこ) 大綜麻杵(おほへそき) 識性(しきせい) 聰敏(そうびん) 雄略(ををしき) 寬博(ひろし) 恒有(つねに) 經綸天業之心焉(あめつちををさめむといふこころ) 活目入彥五十狹茅(いくめいりびこいさち) 五十日(いかつるひ) 荒河戶畔(あらかはとべ) 遠津年魚眼眼妙媛(とほつあゆめまぐはしひめ) 渟名城(ぬなき) 十市(とをち) 瑞籬宮(みづかきのみや) 天皇等光臨(すめらみことらしらしめしし) 宸極(あまつひつぎ) 為一身乎(ひとはしらなりや) 司牧(ととのへ) 玄功(はるかなるいたはり) 奉承大運(あまつひつぎをうけたまはり) 愛育黎元(おほみたからをめぐみやしなふ) 何當(いかしてか) 群卿(まへつきみたち) 忠貞(まこと) 不亦可乎(よからずや) 疾疫(えやみ) 且大半(なかばにすぎなむとす) 百姓流離(おほみたからさすらへ) 或有背叛(あるいはそむくものあり) 請罪(つみをのみたまふ) 神籬(ひもろき) 大國魂(おほくにたま) 體瘦(みやせ) 鴻基(あまつひつぎ) 王風(きみのしり) 命神龜(うらへ) 所由(ことのよし) 卜問(うらとふ) 神明(おほかみ) 祭祀(いはひまつる) 沐浴(ゆかはあみ) 齋戒(ものいみ) 潔淨(きよはまはる) 不享(うけたまはず) 貴人(うまひと) 勿復為愁(またなうれへまうしぞ) 當歸伏(まゐしたがへなむ) 目妙(まぐはし) 大水口(おほみなくち) 昨夜夢之(きぞのゆめに) 諸王卿(もろもろのおほきみまへつきみ) 八十諸部(やそもろとものを) 活玉(いくたま) 奇日方(くしひかた) 當榮樂(さかえむとす) 神班物者(かみのものあかつひと) 八十手所作(やそてつくれる) 祭神之物(かみのまつりもの) 八十萬群神(やそよろづのもろかみたち) 神地(かむところ) 神戶(かむへ) (しづまり) 饒之(にぎはひぬ) 掌酒(さかびと) 舉神酒(みきをささげて) 歌曰(うたひたまはく)此神酒(このみき)は,()神酒(みき)ならず,(やまと)なす,大物主(おほものぬし)の,()みし神酒(みき)幾久(いくひさ)幾久(いくひさ)。】 歌曰(うたひたまはく)味酒(うまさけ)三輪殿(みわのとの)の,朝門(あさと)にも,出行(いでてゆ)かな,三輪殿門(みわのとのと)を。】 天皇歌曰(すめらみことうたひたまはく)味酒(うまさけ)三輪殿(みわのとの)の,朝門(あさと)にも,押開(おしびら)かね,三輪殿門(みわのとのと)を。】 幸行之(いでます)【おほみゆきし。】 有神人(かみあり) 赤盾(あかたて) 八枚(やひら) 在於教化(をしへおもぶくるにあり) 災害皆耗(わざはひみなつきぬ) 遠荒人等(とほきくにひとども) 正朔(のり) 未習王化耳(いまだきみのおもむちをならはざらむらくのみ) 北陸(くぬがのみち) 東海(うみつみち) 印綬(しるし) 少女(をとめ) 童女(をとめ) 歌曰(うたひていはく)御間城入彥(みまきいりびこ)はや,己命(おのがを)を,()せむと,(ぬす)まく()らに,姬遊(ひめなそ)びすも。】 一云(またにいふ)大門(おほきと)より,(うかか)ひて,(ころ)さむと,()らくを()らに,姬遊(ひめなそ)びすも。】 汝言何辭(いましかいひつることはなにことぞ) 勿言也(ものもいはず) 歌耳(うたひつらくのみ) 詠先歌(さきのうたをうたひ) 倭迹迹日百襲姬(やまとととひももそびめ) 叡智(さかしき) 能識未然(ゆくさきのことをしる) 將謀反之表者(みかどかたぶけむとすしるし) 裹領巾頭(ひれのはしにつつみて) 物實(ものしろ) 反逆(みかどかたぶけむ) 帝京(みやこ) 五十狹芹(いさせり) 軍卒(いくさ) 忌瓮(いはひべ) 武鐰(たけすき) 蹢跙(ふみならす) 輪韓河(わからがは) 挑河(いどみがは) 無道(あちきなし) 王室(みかど) 軍眾(いくさのひとども) 脅退(おびえしりぞく) 屍骨(かばね) 羽振苑(はふりその) 不得免(えまぬかるましきこと) 屎漏於褌(はかまよりくそもる) 叩頭(のみ) 夜來矣(よるのみみたす) 不見者(みえたまはねば) 尊顏(みかほ) 明旦(くるつあした) 美麗之威儀(うるはしきみすがた) 無驚(なをとろきましぞ) 衣紐(したひも) 叫啼(さけぶ) 有恥(はぢまして) 令羞(はぢみせつ) 急居(きつう) 以手遞傳(たごしにして) 歌曰(うたひていはく)大坂(おほさか)に,繼登(つぎのぼ)れる,石群(いしむら)を,手遞傳(てごし)()さば,()(かて)むかも。】 畿內(うちつくに) 荒俗(あらぶるひとども) 騷動(とよきさはし) 發路(みちたち) 平戎夷(むけたるひな) 安寧(やすらか) 宗廟(くにのみや) 明有所蔽(ひかりもさはるところあり) 德不能綏(いきほいめぐみやすきことあたはず) 陰陽(めを) 禮神祇(かみをゐやふ) 流行(しきおこなはれ) 眾庶(おもみたから) 異俗(あたしくにのひと) 長幼之次第(このかみおとひとのつぎて) 課役(みつきえだち) 弭調(ゆはずのみつき) 手末調也(たなすゑのみつき) 和享(あまなひ) 稱謂(ほめまうす) 御肇國(はつくにしらす) 要用也(むねつもの) 步運(かちはこび) 諸國(もろもろのくに) 汝等(いましたち) 慈愛(うつくしび) 被命(みことをうけたまはる) 淨沐而(ゆかはあみて) 會明(あけぼの) 八迴弄槍(やたびほこゆけ) 八迴擊刀(やたびたちかき) 相夢(ゆめあはせて) 一片(ひとかた) 向東(あづまにゆき) (あまねし) 不遇矣(あはぬ) 被皇命(おほみことうけたまはる) 甘美(うまし) 鸕濡渟(うかづくぬ) 朝廷(みかど) 數日(しばしば) 當待(またなむ) 何恐之乎(なにをかしこまてか) 止屋淵(やむやのふち) 木刀(きたち) 當時(ときに) 清冷(いさぎよし) 游沐(かはあむ) 歌曰(うたひていはく)八雲立(やくもた)つ,出雲武(いづもたける)が,()ける太刀(たち)黑葛多卷(つづらさはま)き,さ身無(みな)しに,(あは)れ。】 有間(しましあり) 冰香戶邊(ひかとべ) 小兒(わらは) 押羽振(おしはふる) 甘美御神(うましみかみ) 底寶御寶主(そこたからみたからぬし) 池溝(いけうなて) () (なりはひ) 依網(よさみ) 朝貢也(みつきたてまつる) 在雞林之西南(しらきのひつじさるのすみにあり) 踐祚(あまつひつぎしろしめす)





本紀 第六【天皇十一代 垂仁天皇】


     垂仁 皇帝 十一代【垂仁天皇。】 活目入彥五十狹茅天皇。
       活目入彥五十狹茅(いくめいりびこいさち) 倜儻大度(すぐれておほいなるみこころます) 率性(ひととなり) 引置左右(もとこにめしおきたまふ) 譽津別(ほむつわけ) 不言(ものいひたまはず) 纏向(まきむく) 珠城(たまき) 勿往他處(あたしところにないにそ) 留連(つたよふ) 速詣之(はやくまうでたらましかば) 甚望(ながはし) 田器(たつはもの) 莫望(なのぞみぞ) 何處去矣(いづちかいむし) 將來(もちきたる) 羽太玉(はふとのたま) 足高玉(あしたかのたま) 鵜鹿鹿赤石玉(うかかのあかしのたま) 一箇(ひとつ) 出石小刀(いづしのかたな) 一口(ひとつ) 出石桙(いづしのほこ) 一枝(ひとつ) 日鏡(ひのかがみ) 一面(ひとつ) 熊神籬(くまのひもろき) 一具(ひとそなへ) 葉細珠(はほそのたま) 任意居之(こころのままにはべれといふ) 從人(つかひびと) 出嶋人(いづしまひと) 太耳女(ふとみみのむすめ) (はらがら) 燕居(わたくしにまします) 所問(とふところ) 佳人(かほよきをみな) 登鴻祚(あまつひつぎしらしむ) 匕首(ひもかたな) 兢戰(おぢわななき) 不知所如(しらぬとほむすべ) 無所藏(いかくすましみ) 思之(おもはす) 帝面(みおもて) 錦色小蛇(にしきのちひさきへみ) 大雨(ひさめ) 發而來之(ふりきて) 曲上(つばひらかにまうしたまふ) 告言(まうす) 喉咽(むせひ) 進退(すすまひて) 血泣(いたくなく) 懷悒(いきどほり) 無所(えまうす) 訴言(うるたへまをす) 一思矣(ひとはしをもつらく) 適遇(まさしに) 應焉(こたへならむ) 眼淚(なみだ) 不降(したかはず) 何以面目(なのおもてよりとか) (また) 不出矣(いでませじ) 懷抱皇子(みこをうたいで) 何得面縛(なぞみづからとらはるることえむ) 勿忘(わすれず) 所掌(つかさとる) 貞潔(いさぎよし) 掖庭(うちつみや) 盈后宮之數(きさいのみやひとかずにつかいたまふ) 左右(もとこひと) 有勇悍士(いさみこはきひとあり) 強力(ちからこは) 眾中(ひとなか) 不期(いやず) 爭力(ちからくらべ) 令捔力(すまひとらしむ) 脇骨(かたはらほね) 渟葉田瓊(ぬばたに) 真砥野(まとの) 鐸石別(ぬてしわけ) 池速別(いけはやわけ) 既三十(すでにみそとせ) 髯鬚(ひげ) 八掬(やつか) 因有司而(ことをほせて) 鳴鵠(なきくくひ) 天湯河板舉(あめのゆかはたな) 謙損(ゆずりすて) 綢繆機衡(すべをさめよろづのまつりごと) 一日(ひとひ) (ささ) 傍國可怜國也(かたくにのうましくに) 大水口(おほみなくち) 大地官(おほつちつかさ) 枝葉(のちのよ) 微細(くはし) 短命(みしかし) 延命(ながし) 分明(わきわき) 屯倉(みやけ) 陵域(みさざきのさかひ) 泣吟(なきいさつ) 爛臰之(くちくさり) 悲傷(いたきわさなり) 非良(よからず) 臨葬(はぶりまつる) 此行(こむたび) 不良也(さかなし) 土師部(はにべ) 更易(かはむ) 綺戶邊(かにはたとべ) 姿形(すがたかたち) 美麗(うるはし) 大龜(かはかめ) 數八百之(かずやそちあまり) 百姓(おほみたから) 裸伴(あかはだがとも) 楯部(たてぬひべ) 倭文部(しとりべ) 神弓削部(かむゆげべ) 神矢作部(かむやはきべ) 泊橿部(はつかしべ) 神刑部(かむおさかべ) 大刀佩部(たちはきべ) 大中臣部(おほなかとみべ) 手弱女人也(たわやめなり) 神庫(みわくら) 隨樹梯之(はしたてのまにまに) 甕襲(みかそ) 足往(あゆき) 八尺瓊勾玉(やさかにのまがたま) 非獻刀子(かたななたてまつらむ) 呈言(あらばしまうさひ) 神府(みくら) 寶府(みくら) 昨夕(きぞ) 勿覓(もとめしはず) 田道間守(たぢまもり) 令求非時香菓(ときじくのかくのみをもとめしむ) 八竿(やほこ) 八縵焉(やかげ) 萬里(とほく) 神仙(ひじり) 秘區(かくれたるくに) 本土(もとつくに) 賴聖帝之神靈(はじりのみかどのみたまのふゆ) 流淚(かなしふ)





本紀 第七【天皇十二代 景行天皇】


     景行 皇帝 十二代【景行天皇。】 大足彥忍代別天皇。
       大足彥忍代別(おほたらしひこおしろわけ) 日葉洲媛(ひばすひめ) 改元(はじめのとし) 郎姬(いらつめ) 雙生(ふたこにあれませり) 二王(ふたはしら) 童男(をぐな) 身長(みたけ) 一丈(いとつゑ) 車駕(みゆき) 止之(やみぬ) 泳宮(くくりのみや) 臨視而(みそなはして) 不便(もやもやあらず) 交接(とつぎ) 納帷(おほととのうちに) 幕之中(まゐる) 形姿穢陋(かたちきたなし) 渟熨斗皇女(ぬのしのひめみこ) 八十子(やそぢのみこ) 七十餘子(ななそあまりのみこ) 別王(わけみこ) 苗裔焉(みあなすゑ) 有國色(かほよし) 烟氣(けぶり) 徒眾(やから) 甚多(にへさく) 無下兵(つはものをなつかわしぞ) 屬類(やからともがら) 將歸德矣(まうでしたがひなむ) 居於御木(みけにをり) 徒黨(ともがら) 眷屬(やから) 勿失(なうしなひたまひぞ) 參來(まうけり) 碩田(おほきた) 石窟(いはや) 進行(いでます) 兵眾(いくさども) (つきよう) 海石榴樹(つばきのき) 血流(ちながるる) 至踝(つぶなぎにいたる) 賊虜(あだ) 水上(かはへ) 謂不可勝(えかちたてまつるましとおもって) 一尺五寸(ひとさかあまりいてき/rt> 蹈石(くゑし) 三神(みはしらのかみをはします) 鋒刃(つはもの) 市乾鹿文(いちふかや)【下字賊。】 示重幣(おもきまひみよたはひて) 消息(あるかたち) 可也(ゆるされぬ) 醇酒(からきさけ) 御刀(みはかし) 歌曰(うたひたまはく)()しきよし,我家方(わぎへのかた)ゆ,雲居立來(くもゐたちく)(やまと)は,(くに)真秀(まほらま)(たた)なづく,青垣(あをかき)山籠(やまこも)れる,(やまと)(うるは)し。(いのち)の,(まそ)けむ(ひと)は,疊薦(たたみこも)平群山(へぐりのやま)の,白橿枝(しらかしがえ)を,髻華(うず)()せ,此子(このこ)。】 思邦歌(くにしのひうた) 夷守(ひなもり) 人眾(ひと) 聚集(あつまりて) 大御食(おほみあへ) 冷水(さむきみもひ) 寒泉(しみづ) 發舩(ふなたち) 日沒(ひくれぬ) 挾杪(かぢとり) 玉杵名邑(たまきなのむら) 遊詣之(いたりて) 歌曰(うたひいはく)朝霜(あさしも)の,御木(みけ)のさ小橋(をばし)群臣(まへつきみ),い(わた)らすも,御木(みけ)のさ小橋(をばし)。】 歷木(くぬぎ) 的邑(いくはのむら) 浮羽(うきは) 東方諸國之地形(あつまのくにくにのくにかた) 還之奏言(かへりまありてまうさく) 椎結(かみをあけて) 勇悍(いさみこばし) 蝦夷(えみし) 土地沃壤(つちこえて) 曠之(つちくれひろし) 邊境(めぐり) 弟彥公(おとひこのきみ) 嶮易(あがりかたし) 取石鹿文(とりいしかや) 宴室(かちむろ) 女人(をむなども) 令飲而(さけのむて) 戲弄(たはぶれまさくる) 更深(よふけ) 人闌(ひとうすらぎぬ) 被酒(ゆひぬ) 未及之死(まだしなぬに) 有所言(ものまうさむ) 日本童男也(やまとをぐなといふ) 強力者也(ちからひと) 威力(ちから) 無不從者(したがわぬひとなし) 遇武力矣(ちからひとにあひぬ) 尊號(たふときな) 無餘噍(のこれるものなし) 柏濟(かしはのわたり) 路人(みちゆきひと) 封地(ことうさくに) 身毛津君(むげつのきみ) 何日(いつか) 持斧鉞(まさかりをもて) 識性(たましひ) 封堺(さかひ) 相盜略(かすむ) 昆弟(えおと) 頭髻(たきふさ) 農桑(なりあひとし) 身體長大(むくろかたし) 雷電(いなびかり) 無前(かたきなし) 不平(みだれたふ) 經綸(あまた) 令臣順(まゐしたがはしめ) 暴神(あらぶるかみ) 未經浹辰(またいくはくもへず) 賊首(ひとこのかみ) 七掬脛(ななつかはぎ) 枉道(よぎりて) 莫怠也(なおこたりそ) 茂林(しもとはら) 應狩(かりたまふ) 覓獸(かりしたまふ) 放火燒(ひつく) 藂雲(むらくも) 薙攘(なぎはらふ) 賊眾(あたども) 高言(ことあげ) 賤妾(やつこ) 馳水(はしりみづ) 秀於人倫(ひとにすぐれたまへり) 欲知姓名(みなをけままはらむ) 現人神(あらひとがみ) 服罪(したがふ) 令從身也(みともづかへしむ) 侍者(さふらひと) 歌曰(うたひていはく)新治(にひばり)筑波(つくは)()ぎて,幾夜(いくよ)()つる。】 不能答言(こたへまうさず) 有秉燭者(ひともしひとあり) 歌曰(うたひていはく)日日並(かがな)べて,()には九夜(ここのよ)()には十日(とをか)を。】 以靫部(ゆけひのとものをもて) 凶首(ひとこのかみ) 嬬者耶(づまはや) 萬重(よろつへ) 順不(まつろひまつろはぬ) 倚杖而(つちとかひして) 數千(つつみあまり) 馬頓轡而(うまなたつみて) 大山(みやま) 一箇蒜(ひとつのひる) 徒行之(かちよりいでます) 零冰(ひふらしむ) 不知其所跋涉(そのふみわたるところをしらず) 失意(こころまとひ) 痛身(なやみ) 歌曰(うたひていはく)尾張(をはり)に,(ただ)(むか)へる,一松哀(ひとつまつあは)れ,一松(ひとつまつ)(ひと)にありせば,衣著(きぬき)せましを,太刀佩(たちは)けましを。】 能褒野(のぼの) 自調(みづからにきびぬ) 愷悌(いくさとまて) 天命(いのちのいきり) 臥曠野(あらのにふひて) 不安席(あまきやすからず) 未及總角(いまだあげまきあらぬに) 征伐(たたかひ) 左右(かたはら) 進退(さまよふ) (たたず) 不意之間(ゆくりもなく) 倐亡我子(あからためずるほとにわがこをうしなひて) 開其棺櫬(そのみひつきをあけ) 明衣(みそ) 屍骨(みかばね) 欲錄功名(いさをしきみなをしるし) 武部(たけるべ) 數日矣(つきひへる) 在戲遊(あそびにおいて) 有狂生而伺墻閤之隙乎(くるへるひとあてみかきのひまをうかかはしむ) 侍門下(みかどにさぶらひて) 灼然(いやちこ) 棟梁之臣(むねはりのまへつきみ) 橫刀(たち) 喧譁(なりとよき) 無禮(ゐやなし) 令班邦畿之外(とつくにのほかにまはつかはさむ) 兩道入姬(ふたぢいりびめ) 覺賀鳥(かくがのとり) 白蛤(うむぎ) 盤鹿六鴈(いはかむつかり) 令安置(はむへらしむ) 十五都督(あまたふかみ) 不得向任所而(ことよさししところにまかることえずして) 不服(まつろはざる)


     成務 天皇 第十三【成務天皇。】 稚足彥天皇。
       稚足彥(わかたらしひこ) 神武(たけくして) 造化(なして) 普天(あめのした) 率土(そつと) 稟氣(よろづの) 懷靈(もかの) 何非得處(いつれかやすからざらむ) 寶祚(あまつひつぎ) 蠢爾(むくめくむしの) 君長(をさ) 幹了者(をさをさしひと) 造長(みやつこ) 稻置(いなき) 阡陌(たださのおほち) 日縱(ひのたたさ) 日橫(ひのよこさ) 曰影面(かげともにいふ) 背面(そとも)





本紀 第八【天皇第十四 仲哀天皇】


     仲哀 皇帝 十四代【仲哀天皇。】 足仲彥天皇。
       足仲彥(たらしなかつひこ) 盾列(たたなみ) 未逮于弱冠而(いまだかがふりにあたらずして) 神靈(みたましひ) 仰望之情(しのひたてまつるこころ) 四隻(よつ) 蘆髮蒲見別王(あしかみのかまみわけのみこ) 何處(いつち) 將去(もてくる) 白鳥(しらとりぞ) 養狎(かひなつく) 異母弟(ことはらのおと) 叔父(おとおぢ) 麛坂(かごさか) 忍熊(おしくま) 來熊田(くくまた) 大酒主(おほさかぬし) 興行宮(かりみやをたてて) 笥飯宮(けひのみや) 巡狩(めぐりみそなはす) 卿大夫(まへつきみたち) 輕行之(とくいてこ) 居于德勒津宮(ところつのみやにおり) 穴門(あなと) 渟田門(ぬたのと) 海鯽魚(たひ) 白銅鏡(ますみのかがみ) 魚鹽地(なしほのち) 向津野(むかつの) 沒利嶋(もとりしま) 御筥(みはこ) 御甂(みなへ) 熊鰐(くまわに) (くき) 罡津(をかのつ) 五十迹手(いとて) 曲妙御宇(たへにあめのしたをさめたまへ) 分明(あきらかに) 看行(みそなはせ) 橿日宮(しひのみや) 膂宍之空國也(そししのむなくになり) 如處女之睩(をとめのまよびきのごとく) 眼炎(まかかやく) 為服(まつろひなむ) 天津水影(あまつみづかげ) 汝王(いましみ) 如此言而遂不信者(ことかくのたまてうけたまはすば) 有胎(はらみ) 烏賊津(いかつ) 无火殯斂(ほなしあがり)





本紀 第九【天王第十五 神功皇后】


     神功 天王 第十五【神功皇后。】 氣長足姬皇后。
       氣長足姬尊(おきながたらしひめのみこと) 曾孫(ひひこ) 高顙媛(たかぬかひめ) 叡智(さかしくまします) 壯麗(はなはだうるはし) 所祟(たたれる) 更造齋宮於小山田邑(まだいつきのみやををやまだのむらにつくる) 令撫琴(みことひかしむ) 琴頭尾(ことのかみしり) 誰神也(いづれのかみぞ) 神風伊勢國之(かむかぜのいせのくにの) 百傳度逢縣之(ももづたふわたらひのあがたの) 拆鈴五十鈴宮(さくすずいすずのみや) 所居神(ましますかみ) 撞賢木嚴之御魂(つきさかきいつのみたま) 天疎向津媛命(あまざかるむかつひめのみこと) 幡荻穗出吾也(はたすすきほにでてわれをや) 於尾田吾田節之淡郡(をたのあがたふしのあはのこほりに) 於天事代(あめにことしろ) 於虛事代(そらにことしろ) 玉籤入彥嚴之事代神(たまくしいりびこいつのことしろのかみ) 於日向國橘小門之水底(ひむかのくにのたちばなのをどのみなそこに) 水葉稚之(みなはもわかやけく) 表筒男(うはつつのを) 荷持田村(のとりたのふれ) 羽白熊鷲(はしろくまわし) 松峽宮(まつをのみや) 飄風(つむしかぜ) 御笠(みかさ) 墮風(ふけおとされぬ) 層增岐野(そそきの) 投鉤(なげてち) 山門縣(やまとのあがた) 田油津媛(たぶらつひめ) 到火前國(ひのみちのくちのくにいたり) 松浦縣(まつらのあがた) 玉嶋里小河(たましまのさとのをかは) 飲鉤(ちをのむ) 細鱗魚(あゆ) 希見(めづらし) 上旬(かみのとをか) 神田(みとしろ) 引儺河水(なのかはのみづをまうせて) 迹驚岡(とどろきのをか) 當時雷電霹靂(ときにかむとききして) 浮涉滄海(あをうなはらをわたりて) 頭滌海水(かしらをすすぐしほに) 加以不肖(またをさなし) 藉群臣之助(まへつきみたちのたすけをよりき) 艫船(ふね) 吾瓮海人烏摩呂(あへのあまをまろ) 西海(にしのみち) 西北有山(いぬいのかたにやまあり) 帶雲橫絙(くもゐにしてよこさにわたれり) 無節(いためなく) 所虜(とりこはななむ) 勿輕(なあなづり) 敵強(おほ) 而無屈(なおぢ) 勿聽(なゆるしぞ) 勿殺(なころしぞ) 和魂(にきみたま) 荒魂(あらみたま) 拜禮(をろがみ) 以依網吾彥男垂見(よさみのあびこをたるみをもて) 開胎(うみづき) 伊都縣道(いとのあがたのみち) 飛廉(かぜのかみ) 陽侯(うみのかみ) 順吹(おひかぜにふきて) 帆舶(ほつむ) 㯭楫(かぢかい) 隨船潮浪(ふなのなみにしたがふ) 戰戰慄慄(おぢわななき) 厝身無所(せむすべなし) 天運(よのかぎり) 素旆(しらはた) 素組(しろきくみ) 封圖籍(しるしへふみたをゆびかためて) 伏為飼部(したがひてみまかひたらむ) 星辰(あまつほし) 不祥(さがなし) 重寶府庫(たからのくら) 波沙寐錦(はさむきむ) 微叱己知(みしこち) 波珍干岐(はとりかんき) (あやきぬ) (うすきぬ) 縑絹(かとりのきぬ) 貢于日本國(やまとのくにたてまつる) 來于營外(いほりのそとにきたり) 內官家(うちみつやけ) 向匱男(むかひつを) 聞襲大歷(もおそほふいつ) 速狹騰尊(はやさあがり) 宇流(うる) 助富利智干(そほりちか) 發震忿(いかりたまひて) 田裳見(たもみ) 祈狩(うけひがり) 居假庪(さずきにおり) 皇居(おほさと) 活田長峽(いくたのながさ) 大津渟中倉之長峽(おほつのぬなくらのながさ) 小竹宮(しののみや) 常夜行之也(とこよゆくなり) 舊老(ふるおきな) 阿豆那比之罪(あづなひのづみ) 善友(うるはしきとも) 逢病而(やまひして) 為交友(ともたりき) 日暉(ひのひかり) 炳爃(てりかかやき) 有別(わきためあり) 熊之凝(くまのこり)【熊之凝者,葛野城首之祖也。一云,多吳吉師之遠祖也。】 先鋒(さき) 高唱(たかこゑ) 歌曰(うたひいふ)彼方(をちかた)の,粗粗松原(あららまつばら)松原(まつばら)に,渡行(わたりゆ)きて,槻弓(つくゆみ)に,圓矢(まりや)(たぐ)へ,貴人(うまひと)は,貴人(うまひと)どちや,親友(いとこ)はも,親友(いとこ)どち,去來鬥(いざあ)はな,(われ)は,靈剋(たまきは)る,內朝臣(うちのあそ)が,腹內(はらぬち)は,砂在(いさごあ)れや,去來鬥(いざあ)はな,(われ)は。】 椎結(かみあけしむ) 儲弦(うさゆづる) 勿貪(むさぼるな) 連和焉(うるはしからす) 解刀投河水(かたなをぬいてかはになけうづ) 狹狹浪(ささなみ) 逃無所入(かくるるところなし) 歌曰(うたひいふ)去來吾君(いざあぎ)五十狹茅宿禰(いさちすくね)靈剋(たまきは)る,內朝臣(うちのあそ)が,頭槌(くぶつち)の,痛手負(いたてお)はずは,鳰鳥(にほどり)の,(かづき)せな。】 又曰(またにいふ)淡海海(あふみのみ)瀨田濟(せたのわたり)に,潛鳥(かづくとり)()にし()えねば,(いきどほろ)しも。】 又曰(またにいふ)淡海海(あふみのみ)瀨田濟(せたのわたり)に,潛鳥(かづくとり)田上過(たなかみす)ぎて,宇治(うぢ)(とら)へつ。】 攝政(まつりごとふさねをさむ) (あとらふ) 虛實(いつはりまこと) 水手(ふなて) 蒭靈(くさひとかた) 納檻中(うなやのうちにこめて) 草羅城(さわらのさし) 俘人(とりこ) 忍海(おしぬみ) 歌曰(うたひいふ)此御酒(このみき)は,()御酒(みき)ならず,神酒司(くしのかみ)常世(とこよ)(いま)す,岩立(いはた)たす,少御神(すくなみかみ)の,豐壽(とよほ)き,壽迴(ほきもと)ほし,神壽(かむほ)き,壽狂(ほきくる)ほし,獻來(まつりこ)し,御酒(みき)そ,()さず()せ,然然(ささ)。】 答曰(かへしにいはく)此御酒(このみき)を,()みけむ(ひと)は,其鼓(そのつづみ)(うす)()てて,(うた)ひつつ,()みけめ(かも)此御酒(このみき)の,(あや)に,轉樂(うただの)し ,然然(ささ)。】 卅九年(みそあまりここのとし) 是年也(ことし) 太歲己未(たいさいきび) 四十年(よそよし) 卌三年(よそあまりみつのとし) 未曾有通(いまだかつてかよふことあらず) 路津(わたり) 即當今(すなはちただいまは) 備船舶而(ふなをよそひて) 仍曰(またにいふ) 如此(かくいひ) 傔人(したがへるひと) 爾波移(にはや) 慰勞(ねぎらふ) 一疋(ひとむら) 五色綵絹(いつくさのしみのきぬ) 鐵鋌四十枚(ねりかねよそちり) 珍異(めづらしきもの) 璽寶(たからもの) 臣等(やつかれ) 禁囹圄(ひとやにからむ) 千熊長彥(ちくまながひこ) 木羅斤資(もくらこんし) 沙沙奴跪(ささなく) 領精兵(ときいくさをひきゐて) 比自㶱(ひしほ) 南加羅(ありひしのから) 㖨國(とくのくに) 安羅(あら) 多羅(たら) 卓淳(とくじゅ) 加羅(から) 是謂七國也(これななつのくにといふ) 比利(ひり) 辟中(へちう) 布彌支(ほむき) 半古(はんこ) 是謂四邑也(これよつのむらといふ) 自然(をのづから) 降服(したがひつきぬ) 意流村(おるすき) 欣感(おもがしみ) 辟支山(へきのむれ) 都下(みやこ) 鴻澤(うるほひ) 弊邑(いやしくに) 踊躍不任于心(ほとこしてこころにもえあかせず) 交親(むつましみ) 所致(たまへるなり) 存時(いけらむとや) 所驗(あらきれたまふ) 寵賞(あがめたまふ) 鴻恩(うづくしひ) 七枝刀(ななさやのたち) 七子鏡(ななこのかがみ) 以西(にしのかた) 鐵山(かねのむれ) 天恩(みうつくしび) 和好(よしび) 聚斂土物(くにつものをあつめをさめて) 皇宮(みかど) 狹城盾列陵(さきのたたなみのみさざき) 石穴(いはあな) 為流沈(すらへむ)





本紀 第十【天皇十六代 應神天皇】


     應神 皇帝 第十六【應神天皇。】 譽田天皇。
       蚊田(かだ) 譽田(ほむた) 聰達(さとくいます) 玄監(はるかにみそなはす) 動容進止(みふるまひみふるまひ) 在孕而(はらまれたまひて) (しし) 相易(あひかへたまふ) 根鳥皇子(ねとりのみこ) 澇來田(こむくた) 宅媛(やかひめ) 小甂(をなべ) 河派(かはまた) 隼總(はやぶさ) 大葉枝(おほはえ) 土形君(ひぢかたのきみ) 榛原(はりはら) 東蝦夷(あづまのえみし) 役蝦夷而(えひすをつかひて) 訕哤(さばめき) 嘖讓(こはしむ) 枯野(からの) 輕野(かるの) 歌之曰(うたひていはく)千葉(ちば)の,葛野(かづの)()れば,百千足(ももちだ)る,家庭(やには)()ゆ,國秀(くにのほ)()ゆ。】 監察(みさしむ) 以忠(つとめをもて) 真根子(まねこ) (たうはれり) 黑心(きたなきこころ) (やつかれ) (かたち) 丹心(きよきこころ) 浮海(ふねより) 是非(まこといつはり) 探湯(くかたち) 毆仆(うちたふし) 孃子(をとめ) 國色之秀(かほすぐれたるひと) 專使(もはらのつかひ) 上坐(はむへらしむ) 歌曰(うたひいはく)去來吾君(いざあぎ)()蒜摘(ひるつ)みに,蒜摘(ひるつ)みに,()行道(ゆくみち)に,(かぐは)し,花橘(はなたちばな)下枝(しづえ)らは,人皆取(ひとみなと)り,上枝(ほつえ)は,鳥居枯(とりゐが)らし,三栗(みつぐり)の,中枝(なかつえ)の,含隱(ふほごもり)(あか)れる孃子(をとめ)去來榮映(いざさかば)えな。】 報歌曰(かへしうたひていはく)水渟(みづたま)る,依網池(よさみのいけ)に,蓴繰(ぬなはく)り,()へけく()らに,堰杙築(ゐぐひつ)く,川俣江(かはまたえ)の,菱莖(ひしがら)の,()しけく()らに,吾心(あがこころ)し,彌愚(いやうこ)にして。】 又曰(またにいふ)道後(みちのしり)古波陀孃子(こはだをとめ)を,(かみ)(ごと)(きこ)えしかど,相枕枕(あひまくらま)く。】 又曰(またにいふ)道後(みちのしり)古波陀孃子(こはだをとめ)(あらそ)はず,()しくをしぞ,(うるは)しみ()ふ。】 致仕(まかりさり) 著岸(きしにつく) 縫衣工女(きぬぬひのをみな) 真毛津(まけつ) 歸化(まゐけり) 東韓()【東韓者,甘羅城、高難城、爾林城是也。】 醴酒(こさけ) 歌曰(うたひていはく)橿生(かしのふ)に,橫臼(よくす)(つく)り,橫臼(よくす)に,()める大御酒(おほみき)(うま)らに,(きこ)持食(もちを)せ,麿(まろ)()。】 淳朴也(すなほなり) 兄媛(えひめ)【兄媛者,吉備臣祖御友別之妹也。】 溫凊之情(おやおもふこころ) 二親(がそいろ) 欲定省(とぶらはむとおもふ) 歌曰(うたひたまはく)淡路島(あはぢしま),いや二並(ふたなら)び,小豆島(あづきしま),いや二並(ふたなら)び,(よろし)島島(しましま)()かた去離散(されあら)ちし,吉備(きび)なる(いも)を,相見(あひみ)つる(もの)。】 紛錯(まがらぬみよにましはりて) 薈蔚(しけくもくて) 潺湲(そそぎながる) 移居(うつりまします) 葉田(はだ) 謹惶(かしこまり) 侍奉(つかうまつる) 長子(このかみ) 中子(なかつこ) 仲彥(なかつひこ) 浦凝別(うらこりわけ) 織部(はとりべ) 行無禮(ゐやなきわさす) 上表(ふみたてまつる) 官舩(みやけのふね) 失火(ひつき) 鏗鏘而(さやかみし) 木滿致(もくまんち)【木滿致,『百濟記』曰:木滿致者,是木羅斤資討新羅時,娶其國婦而所生也。以其父功,專於任那。來入我國,往還貴國。承制天朝,執我國政。權重當世。然天朝聞其暴,召之。】 歌曰(うたひいはく)枯野(からの)を,(しほ)()き,()(あま)り,(こと)(つく)り,搔彈(かきひ)くや,由良門(ゆらのと)の,門中海石(となかのいくり)に,振立(ふれた)つ,漬木(なづのき)の,冴冴(さやさや)。】 吳織(くれはとり) 穴織(あなはとり) 新齊都媛(しせつひめ) 明宮(あきらのみや) 女人等之後(をむなどもののち)


      日本書紀私記【以上十六代。】


         右,日本書紀私記一冊,延寶戊午歲,佐佐宗淳等奉命造京師借淂日野家所藏入宋隱士守方真跡本所寫云。

           文久二年壬戌三月 彰考館識

[久遠の絆] [再臨ノ詔]