日本書紀私記【甲本】 弘仁私記 并序

《日本紀目錄》《卷上》《卷中》《卷下》《弘仁私紀序》

日本紀目錄


弘仁私記序




日本書紀私記 今案,依養老五年私記作之。


卷上 起神代,盡應神天皇。


       埿土瓊(うひぢに) 沙土瓊(すひぢに) 大戶之道(おほとのぢ) 大戶間邊(おほとまべ) 去來鳴(いざなぎ) 葦芽(あしかび) 天浮橋(あまのうきはし) 底下(そこつした) 天之瓊矛(あまのぬぼこ) 是獲滄溟(ここにあをうなはらをえき) 滴瀝(しただる) (しほ) 磤馭慮嶋(おのごろしま) (みはしら) 陽神(をかみ)雄神(をかみ)。】 陰神(めかみ)雌神(めかみ)。】 憙哉(あなうれしゑや) 遇可美少男(うましをとこにあひぬ) 是行(このわざ) 少女(をとめ) () 草野媛(かやのひめ) 大日靈貴(おほひるめのむち) 蛭兒(ひるこ) 素戔嗚(すさのを) 報命(かへりことまをし) 宅日之少宮(ひのわかみやにすみ) 天磐櫲樟舩(あまのいはくすぶね) 亞日(ひにつげり) 青山變枯(あをやまをからやまにかへし) 逐之(やらひき) (とほる) 天柱(あまのみはしら) 溟渤次之皷盪(おほきうみとつぎにとどろきただよひ) 山岳為之鳴呴(やまをかこれがためになりほえき) (うかつ) 八坂瓊(やさかに) 五百箇御統(いほつみすまる) 髻鬘皆(みつなみな) 千箭之與五百箭之靭(ちのりといほのりのゆき) 稜威高鞆(いつのたかとも) 振起弓彇(ゆはずをふきおこし) 急握劍柄(たかみををとりしばり) 蹈堅庭而陷股(かたにはをふみてむかももをおとしい) 蹴散(くゑはららかす) 雄誥(をたけび) 嘖讓(ころひ) 俓誥問焉(ただになじりとひき) 黑心(きたなきこころ) (かへりて) 赤心(きよきこころ) 誓夫誓約之中(うけはむそれうけひのみなか) 索取(もとめとらし) 十握劍(とつかつるぎ) 天真名井(あまのまなゐ) 嚙然咀嚼(さがみにかむ) 吹棄氣賁之狹霧(ふきうつるいふきのさぎり) 田心姬(たこりひめ) 市杵嶋(いちきしま) 正哉吾勝勝速日(まさかあかつかちはやひ) 天穗日命(あまのほひのみこと) 物根(ものざね) () 道主貴(みちぬしのむち) 水沼(みぬま) 遘合(みとのまぐはひ)


     正勝尊(まさかつのみこと)
       正哉吾勝勝速日天忍穗耳尊(まさかあかつかちはやひあまのおしほみみのみこと) 天麛弓(あまのかこゆみ) 思兼神(おもひかねのかみ) 不須也頗傾凶目杵之國(いなしこめききたなきくに) 經津主(ふつぬし) 小汀(をはま) 大己貴(おほあなむち) 碕復命(さきかへりごとまをす) 天津彥火瓊瓊杵尊(あまつひこほのににぎのみこと) 曲玉(まがりたま) 八咫(やた) 草薙(くさなぎ) 太玉(ふとたま) 天鈿女(あまのうずめ) 石凝姥(いしこりどめ) 玉屋(たまのや) 五部(いつとものを) 瑞穗(みづほ) 行矣(さきく) 高皇產靈(たかみむすひ) 栲幡(たくはた) 鍾侫媚(あつむおもねりこび) 比及三年(みとせにいたるまで) 大背飯(おほせひ) 武三熊之大人也(たけみくまのうしなり) 顯國玉(うつしくにたま) 下照媛(したでるひめ) (あぐみ) 顯露之事(あらはなること) 天日隅宮(あまのひすみのみや) 栲繩(たくなは) 手置帆負(たおきほおひ) 天目一箇(あまのめひとつ) 櫛明玉(くしあかるたま) 弱肩(よわかた) 大手繈(ふとたすき) 御手代(みてにかはり) 太占之卜事(ふとまにのうらこと) 祝之曰(ほきてのたまはく) 高天原(たかあまのはら) 所御齋庭(きこしめしゆには) 居於虛天(おほそらにいて) 神祝祝而辨(かむほきほきてそこら) 巧作俳優(たくみにわざをきをなす)


     天彥尊(あまつひこのみこと)
       真床追(まとこおふ) 磐座(いはくら) 稜威之道別道別(いつのちわきにちわき) (くし) 天梔弓(あまのはじゆみ) 八目鳴鏑(やつめのなりかぶら) 頭槌襲(かぶつちそ)()。】 槵觸(くしふる) 自天之浮橋(あまのうきはしより) 立於浮渚在平處(うきじまりたひらにたたし) 膂宍(そしし) 空國(むなくに) 自頓丘(ひたをより) 覔國(くにまぎ) 行去(とほる) 到於吾田(あたにいたり) 長屋笠狹之碕(ながやのかささのみさき)矣 事勝國勝長狹(ことかつくにかつながさ) 大山祇(おほやまつみ) 木花開耶姬(このはなのさくやひめ) 持百机飲食詛之(ももとりのつくえものもちてとごひき) 短折(いのちみじかき) 娘乎(はらをとめそや) 國色(かほよし) 無戶室(となしや) (やく) 火闌降命(ほのすそりのみこと) 彥火火出見(ひこほほでみ) 火明命(ほのあかりのみこと) (ほのほ) 可愛()()。】 火酢芹(ほのすせり) 火之戶幡姬(ほのとはたひめ)


     彥火火尊(ひこほほのみこと)
       海幸(うみさち) 欲易幸(さちかへせむ) () 鹽土(しほつち) 老翁(をぢ) 無目籠內(まなしかたまにいれ) 可怜小汀(うましをはま) 海神(わたつみ) 踉䠙痴騃(すすうるけ) 叩頭(ぬかづき) 潮涸瓊(しほふるたま) (わに) 俳優(わざをき) 親昵(むつまし) (のぞみ) 彥波瀲武鸕鶿草葺不合(ひこなぎさたけうかやふきあへず) 甍馭(いらかのり)(のり)。】 從容(おもぶる)


     彥波瀲尊(ひこなぎさおんみこと)
       海童(わたつみ) 磐余彥(いはれびこ) 吾平(あひら) 長髓彥(ながすねびこ) 孔舍衛(くさゑ) 中股(ももにあたる) 水門(みなと) 慨哉(うれたきかや) 戶畔(とべ) 鋤持(さひもち) 波秀(なみのほ)



     神武天皇(じんむてんわう) 【人代第一。】
       少女(おとむすめ) 礭如(かたく) 吾平津(あひらつ) 手研耳(たぎしみみ) 研耳(ぎしみみ) 瑞穗(みづほ) 天祖(あまつみおや) 駈仙蹕而戾止(みさきはらひをはせていたり) 運屬鴻荒(よはこうくわうにあひ)【此云運屬大荒之次也、時當於闇眛也。】 時鐘(ときはあたれり) 故蒙以養正(かれくらくしてただしきをやしなひ)【此云故闇乎以正手養而。】 治此西偏(このしにのほとりをしらす)【此西邊()治也。】 遼遙之(とほくはるかなる)【此云遠遙。】 (そも) 恢弘天業(あまつひつぎをひろめのべ)【此云天業()開創。】 光宅天下(あめのしたにみちをる) 速吸(はやすひ) 漁人(あま) 珍彥(うづひこ) 曲浦(わだのうら) 椎槁(しひさを) 菟狹(うさ) 一柱騰宮(あしひとつあがりのみや() (よこなまる) 膽駒(いこま)【山名。】 壓躡(おそひふまむ) 丹敷戶畔(にしきとべ) 高倉下(たかくらじ) 棲遑(しじまひ) (をえぬ) 韴靈(ふつのみたま() 醒起(さめておく) (ふむ) 頭八咫烏(やたからす) 日臣(ひのおみ) (ふみ) 穿(うかち) 道臣(みちのおみ) 魁帥(ひとごのかみ) 兄猾(えうかし) 勞饗(ねぎみあへす) 井光(ゐひかり) (やな) 苞苴擔(にへもつ) 磯城(しき) 梟師(たける) (とび) (はず) 曄煜(てりかかやき) 行人(つかひ) 饒速日(にぎはやひ) 可美真手(うましまで) 步靭(かちゆき) 愎佷(もとり) 坂下(さかもと) 長柄(ながら) 土蜘蛛(つちぐも) (ひめ) 蹈鞴五十鈴媛(たたらいすずひめ) 橿原(かしはら) 畝傍(うねび) 太立宮柱於底磐之根(そこついはねにみやばしらふとしきたて) 峻峙搏風於高天之原(たかまのはらにちぎたかしり) 始馭天下之天皇(はつくにしらすのすめらみこと) 神日本磐余彥火火出見(かむやまといはれびこほほでみ) 主水部(もひとりら) 主殿(とのもり) 嗛間(ほほま) 妍哉乎(あなにや) 國之獲矣(くにえつる) 雖內木綿之真迮國(うつゆふのまさきくにといふとも) 猶如蜻蛉之臀呫焉(なほしあきづのとなめせるのごとく) 日本者(やまとは) 浦安國(うらやすのくに) 細戈千足國(くはしほこのちだるくに) 磯輪上秀津真國也(しわかみのほつまくに) 大己貴(おほあなむち) 玉牆內國(たまかきのうちつくに) 虛空大分見日本國(そらみつやまとのくに) 大分(おほきた)


     綏靖天皇(すいぜいてんわう) 【第二】
       神渟名川耳(かむぬなかはみみ) 大女(えむすめ) 風姿岐嶷(すがたきぎよく) 魁偉(すぐれたたはし) 志向(ししゃう) 沈毅(しんき) 委事(ことをゆだね) 天津(あまつ) 真浦(まうら) (やさき) 大窨(おほむろ) 大床(おほとこ) 突開其戶(そのとをつきひらき) 懣然(もだえ) 孝照天皇(かうせうてんわう) 桃花鳥(ときとり) 懦弱(をぢなく) 磯城津彥玉手看(しきつひこたまてみ) 中酒(ゑひて)


     安寧天皇(あんねいてんわう) 【第三】
       浮孔(うきあな) 渟名底(ぬなそこ) 葉江(はえ) 息石耳(おきそみみ) 其兄(いろね) 御陰(みほと)


     懿德天皇(いとくてんわう) 【第四】
       飯日(いひひ) 曲峽(まがりを) 觀松彥香殖稻(みまつひこかゑしね) 武石彥奇友背(たけしひこくすともせ) 纖沙谿上(まなごたにのへ)


     孝昭天皇(かうせうてんわう) 【第五】
       世襲足媛(よそたらしひめ) 姥津(ははつ) 彥稚蕤


     孝安天皇(かうあんてんわう) 【第六】
       日本足彥國押人(やまとたらしひこくにおしひと) 瀛津(をきつ) 博多山(はかたのやま)


     孝靈天皇(かうれいてんわう) 【第七】
       大日本(おほやまと) 根子(ねこ) 彥太瓊(ひこふとに) 千乳(ちち) 早山香(はややまか) 國牽(くにくる) 絙某姊(はへいろね)


     孝元天皇(かうげんてんわう) 【第八】
       志譴(しこめ) 彥太忍信命(ひこふつおしのまことのみこと) 武埴安彥命(たけはにやすびこのみこと) 彥屋西六獵(ひこやにしむつかり) (いは) 鹿六贗湯槻(かむつかりゆつき) 男篠(をささ) 舌班左木兔(したまだらひだりきく) 武鈴鋺苐(たけすずまきを) 凡國臣(おほくにを) 國手別(くにたわけ)


     開化天皇(かいくわてんわう) 【第九】
       率川宮(いざかはのみや) 五十瓊殖(いにゑ) 彥湯彥隅命(ひこゆひこのみこと)【○書紀作(むすみ)。】 彥坐(ひこいます) 色媛(いろひめ) 甚麗(みづほ) 瑞之穗(みづのほ)


     崇神天皇(すうじんてんわう) 【第十】
       大綜麻杵(おほへそき) 遠津年魚眼眼妙媛(とほつあゆめまぐはしひめ) 大海宿禰(おほあまのすくね) 瑞籬(みづかき) 神明憑(かみかかり) (くし) 茅渟(ちぬ) (つみ) 蹢跙(ふみならす) 輪韓(わから) 挑河(いどみがは) 溢苑(はふりその) 甘美韓日狹(うましからひさ) 鸕濡渟(うかづくぬ) 百樔鹿別(ももすかわけ)


     垂仁天皇(すいにんてんわう) 【第十一】
       天日槍(あめのひほこ) 羽太(はふと)【如字。】 足高(あしたか)【如字。】 鵜鹿鹿赤石(うかかのあかしのたま)【如字。】 蹶速(くゑはや)蹶折(くゑをり)蹈折(ふみをり) 鐸石別(ぬてしわけ) 荕綺戶畔(かにはたとべ) 天湯河板舉(あめのゆかはたな) 以生(いけるときながら) 非時(ときじく) 香菓(かくのみ) 日楢杵(ひならき)


     景行天皇(けいかうてんわう) 【第十二】
       木事(こごと) 長峽(ながを) 碩田國(おほきたのくに) 來田見(くたみ) 鼠窟(ねずみのいはや) 土蜘蛛(つちぐも) 厚鹿文(あつかや) 迮鹿文(さかや) 取石鹿文(とろしかや) 童男(をぐな) 日本武(やまとたける) 薙攘(なぎはらふ) 高言(ことあげ) 立跳(たちはしり) 蝦夷(えみし) 濿吾嬬者耶(あづまはや) (ひる) 宮簀媛(みやずひめ) 膽吹(いぶき) 主神(かむざね) 武部(たけるべ) 喧譁(なりとよき) 覺賀鳥(かくがのとり) 白蛤(うむぎ)


     成務天皇(せいむてんわう) 【第十三】
       日縱(ひのたたさ) 日橫(ひのよこさ) 影面(かげとも) 背面(そとも) 首列(たなみ)


     仲哀天皇(ちうあいてんわう) 【第十四】
       麛坂(かごさか) 來熊田(くくまた) 行宮(かりみや) 屯倉(みやけ) 穴門(あなと) 渟田門(ぬたのと) 海鯽魚(たひ) 橿日(かしひ) 熊襲(くまそ) 膂宍之空國(そししのむなくに) 栲衾(たくぶすま) (あざむく) 如天津水(あまつみづはごとく) 影押伏(かげのおしふせ) 有胎(はらみ)


     神功皇后(じんぐうくわうごう) 【第十五】
       齋宮(いはひのみや) 為審神者(さにはとしたまふ) 神風(かみかぜ) 伊勢國之百傳(いせのくにのももづたふ) 度逢縣之折鈴五十鈴宮(わたらひのあがたのさくすずいすずのみや) 所居神(ますかみ) 撞賢木嚴之御魂(つきさかきいつのみたま) 天疏向津媛命(あまざかるむかつひめのみこと) 幡荻穗出吾也(はたすすきほにでしあれなり) 於尾田(をたに) 吾田節之安房郡(あがたふしのあはのこほり) 於天事代(あめにことしろ) 於虛事代(そらにことしろ) 玉籤(たまくし) 入彥嚴之事代神(いりびこいつのことしろのかみ) 於日向國橘小門之水底筒男神(ひむかのくにのたちばなのをどのみなそこのをのかみ)【云曰,日向國橘()小門之水底(みなそこ)坐而水表筒男(美奈宇波都都乃乎)中筒男(那加都都乃乎)底筒男(曾已都都乃乎)葉稚に坐る(波母和可夜爾ます流)神名。】 未經浹辰(せふしんもへなくに) 荷持(のとり) 田邑(たのふれ) 山門縣(やまとのあがた) () (いひぼ) () (いとすぢ) 細鱗魚(あゆ) (みづら) 飛廉(かぜのかみ)【風神。】 陽侯(うみのかみ)【海神。】 帆舶(ほつむ) 櫨檝(かぢかい) (うしほ) 波沙寐錦(はさむきむ)【王名。】 微叱己知波珍干岐(みしこちはとりかんき)【人名。】 (わたれり) 祈狩(うけひがり) 假庪(さずき) (あざむく) 被欺(あざむかれぬ) 汙禮斯(うれし)【人名。】 伐旱(つかん)【冠名。】 襲津彥(そつびこ) 鉏海水門(さひのうみのみなと) 蒭靈(くさひとかた) (とらふ) 檻中(ひとや) 久氐(くて)莫古(まこ)蜜州流(みつる)【三人名。】 七枝刀(ななさやのたち) 七子鏡(ななこのかがみ) 荒魂(あらみたま) 和魂(にきみたま) 渟名倉(ぬなくら)


     應神天皇(おうじんてんわう) 【第十六】
       (あえ) (ほむ)【上古俗呼(とも)ほむた(保牟田)。】 澇來田(こむくた) 日觸(ひふれ) 小甂(をなべ) 河派仲彥(かはまたなかつひこ) 稚渟毛二派(わかぬけふたまた) 男鉏(をさひ) 泉長媛(いづみのながひめ) 海人部(あまべ) 大山守(おほやまもり) 去來真稚(いざのまわか) 秦公(はたのきみ) 弓月(ゆづき) 水手(かこ) 阿知使主(あちのおみ) 新齊都媛(しせつひめ) 明宮(あきらのみや) 大穗迹(おほと)





卷中 起仁德天皇,盡敏達天皇。


     仁德天皇(にんとくてんわう) 【第十七】
       檝櫓(かぢ) 度子(わたりもり) 考羅(かわら) 乃樂(なら) 海人(あま) 鮮魚(あざらけきうな) 苞苴(にへ) (あされぬ) 因己物(おのがものから) 摽擗(みむねうち) 高津宮(高津宮) 仲皇子(なかつみこ) 瑞齒別(みづはわけ) 去來穗別(いざほわけ) 磐之媛命(いはのひめのみこと) 大兄(おほえ) 雄朝津間稚子宿禰(をあさつまわくごのすくね) 髮長(かみなが) 黼衣(おほみそ) 絓屨(おほみくつ) 不弊盡(やれつきず)【朝廷之御衣、御履不破辟。】 酸餒(すえくさ) 大兄去來穗別(おほえのいざほわけ) 壬生部(みぶべ) 堀江(ほりえ) 栗隈(くるくま) (みさき) 御綱葉(みつなかしは) 嶋鳥(しまどり) 隼鳥別(はやぶさわけ) 孰捷(いづれとき) 隼鳥(はやぶさ) 昇天兮(あめにのぼり) 飛翔(とびかけり) 衡槫兮(いつきがうへ) 鷦鷯所摯焉(さざきとらさね) 雄鯽(をふな) 歷木(くぬぎ) (よほろくぼ) (くひひす) 武振熊(たけふるくま) (きず) 百舌鳥(もず) 百舌鳥耳原(もずのみみはら)


     履中天皇(りちゅうてんわん) 【第十八】
       襲津彥(そつびこ) 納采(あとふること) 木菟(つく) 大前(おほまへ) 宜迴自(めぐりたまへ) 當麻徑踰(やぎまちよりこえ) 吾子籠(あごこ) 攪食(かきはみ) 栗林(くるす) 日之媛(ひのひめ) 振神宮(ふるのかむみや) 瑞齒別(みづはわけ) 刺領巾(さしひれ) 復命(かへりごとまをす) 黥之(めさききざましむ) 蔣代(こもしろ) 市邊押羽(いちのへのおしは) 幡媛(はたひめ) 兩枝舩(ふたまたぶね) 市磯(いちしの) 余磯(あれし) (ひたふる) 凶祓(あしはらへ) 長渚崎(ながすさき) (かはや) 伊和須(いわす)【人名。】 飛跳之(とびをとる) 虎大野質(たちひのまて) 宜給丹部


     反正天皇(はんぜいてんわう) 【第十九】
       (あむし) (くみ) 木事(こごと) 香火姬(かひひめ) 圓皇女(つぶらのひめみこ) 詛咒(のろひ) 醜雄(しこを) 真清鏡(ますみかがみ) 八坂瓊(やさかに)


     允恭天皇(いんぎょうてんわう) 【第廿】
       久離(ひさしくかかり) 洗手水(おみてみづ) 木梨輕皇子(きなしのかるのみこ) 八釣白彥(やつりのしろひこ) 或帝王之裔(あるいはみかどのみあなすゑ) 或異之天降(あるいはあやしくしてあまくだれり) 盟神探湯(くかたち) 甘檮丘之(あまかしのをかの) 辭禍戶岬(ことまがとのさき) 坐探湯瓮(くかへをすゑ) 木綿(ゆふ) 手繈(たすき) 吾襲(あそ) 奉娘子(をみなたてまつらむ)【進也。】 (とほし) (てれり) 衣通姬(そとほしひめ) 勇斡(いさをつよし) 烏賊津使主(いかつのおみ) 赤石海(あかしのうみ) 白水郎(あま) 男狹磯(をさし) (すぐれ) (あはび) (もがり) (なほ) 有鳥之巢(とりのすあり)


     安康天皇(あんかうてんわう) 【第廿一】
       稚渟毛二派(わかぬけふたまた) 穴穗括箭(あなほや) 大前(おほまへ) 根使主(ねのおみ) 不嫌(いとひたまはず) 押木珠縵(おしきのたまかづら) 中蒂姬(なかしひめ) 眉輪(まよわ) 企同宅可二人(可云枳渡宅) 百敵(ももなひ) 誥曰(たけび) 苅蓇【帝王紀文蓇。】 草香香(くさか)【日下之宮()草枕()。】血醉而哉,今將如切田きとくしこゆるひかは(基等久枳許由流比加者)。】 鯰之頸田香香之首宮如草忦【血醉而南西流かわなまずのく(加和奈摩豆能久)しる(支流)基等文比かかく(加加久)しらむ(支良牟)。】婦所聞香香螳蜋,匹夫便挽仰其頥之嚙頸下【侃之頸下干咋()()。】而殺馬之


     雄略天皇(いうりゃくてんわう) 【第廿二】
       大泊瀨幼武(おほはつせわかたける) (うたがひ) 白彥(しろひこ) 默坐(もだます) 圓大臣(つぶらのおほおみ) 賣輪(うるわ) 白髮(しらか) 栲幡(たくはた) 朝倉(あさくら) 菟田(うだ) 御戶部(みとべ) 真鋒田(まさきた) 高天(たかま) 丹谷(たにかひ) 來目水(くめのかは) 蜾蠃(すがる) 少子部(ちひさこべ) 其雷虺虺(そのかみなりひびき) 目精赫赫(まなこかかやく) 虛空(おほそら) 距禿雞(つぶれなるにはつとりをすゑ) 身狹(むさ) 手末(たなすゑ) 新漢(いまきのあや) 檜隈(ひのくま) 白鸕鶿(しろきう)【白鶫。】 八十聯綿(やそのつつき) 為負囊者(ふくろかつぎびと)興登【己期登。】


     清寧天皇(せいねいてんわう) 【第廿三】
       鏁閇外門(ほかとをさしとぢ) 式備于難(もちてわざはひにそなへ) 東漢掬(やまとのあやのつか) 靭帶(ゆきおび) 縮見(しじみ) 新室(にひむろ)


     顯宗天皇(けんぞうてんわう) 【第廿四】
       荑蟻(はえあり) 吾田彥(あたひこ) 田疾來(たとく) 石室(いはや) 縮見屯倉(しじみのみやけ) (おびと) 新嘗供物(にひなへのそなへもの) 適會(たまたまあふ) 縮見屯倉首(しじみのみやけのおびと) 縱賞(あそび) 新室奉(にひむろあそびするとし) 踰數紀(あまたをこえたり) 困事於人(ひとにたしなみつかへ) 豈若顯名(あになをあらはし) 被殺也歟(ころされむにしかむや) 居于下風(くらしりにまします) 酒酣(さけたけなは) 秉燭(ひともし) 室壽(むろほき) 起儛(たちてまへ)立出舞(たちでまへ)、乍坐乍立舞也、東舞多舞豆舞也。養老云東舞多舞豆舞也、舞狀乍居乍起而舞也。】 誥之曰(たけびてのたまはく) 使唱之(うたはしむ) 石上振之神椙(いそのかみのふるのかむすぎ)石上布留の神(いそのかみのふる乃かみ)。】 伐本截末(もときりすゑおしはらひ) 御裔(みあなすゑ) 僕是也(やつこらまこれなり) 率屬(やからをひきゐて) 欽伏(つつしみつかへまつる) 不日(ひもへず) 飯豐青尊(ひどよのあをのみこと) 埴口(はにくち) 耆宿(ふるおきな) 老嫗(おみな) 置目(おきめ) 仲子(なかちこ) 韓帒(からふくろ) (おなじく) 因妹功(いもがいさをしにより)


     仁賢天皇(にんけんてんわう) 【第廿五】
       手白香(たしらか) 朝嬬(あさづま) 恐宿不敬(もとよりゐやなかりしをおそり) 自死(みづからみうせましぬ) () 弱草(わかくさ)【弱草、謂以弱草喻夫婦(をひとめ)。故以弱草云夫婦。】 吾夫可怜矣(あがつまはや) 菱城邑人鹿父(ひしきのむらのひとかかぞ)【古(よのひと)呼父為かそ(賀曾)。】 秋蔥之轉雙納(あききのいやふたごもり) 可思惟矣(おもふべし) ()


     武烈天皇(ぶれつてんわう) 【第廿六】
       觸事(ことごと) 麁鹿火(あらかひ) (しび) (ちたま) 歌場(うたがき) 躑躅(たちやすらひ) 從容(いざなふ) (おしはなち) (はじめ) (かつて) 根太子(ひつぎのみこ)之 咒詛(とごふ) 解人指甲(ひとのつめをぬき)


     繼體天皇(けいたいてんわう) 【第廿七】
       彥主人(ひこうし) 男大迹(をほど) 足仲彥(たらしなかつひこ) 遁山壑(やまたにににげ) 天國(あめくに) 排開(おしはらき) 角折(つのをり) 大跨(おほまた) 荳角(ささげ) 堅楲(かたひ) 勿使修職(つかへまつむせしめず) 椀子(まろこ) 誘致(わかつりいたし)


     安閑天皇(あんかんてんわう) 【第廿八】
       伊甚(いじみ) 味張(あぢはり) 雌雉田(きぎした) 飯粒(いひぼ) 輕背(かろみしそむけり) 使(つかひ)乎 宣旨(みことのり) 钁丁(くはよほろ) 尾輿(をこし) 瓔珞(くびたま) 安藝國過戶あぎのくにのあまるべ() 山部膽狹(いさやまべ) 多冰(おほひ) 腠碕(みさき) 肝等(かと) 我賀(あか) 後城(しりつき) 來履(くくつ) 河音(かはと) 經湍(ふせ) 稚贅(わかにへ)【日本紀作稚熟。】 蘇色(そしき) 皇子代之屯倉(みこしろのみやけ)


     宣化天皇(せんくわてんわう) 【第廿九】
       武小廣國押楯(たけをひろくにおしたて) 石姬(いしひめ) 上殖葉(かみゑは) 火焰(ほのほ) 那津(なのつ) 身狹(むさ) 桃花鳥(つき) 椎田(しひた)


     欽明天皇(きんめいてんわう) 【第三十】
       箭田珠勝大兄(やたのたまかつのおほえ) 渟中倉太珠敷(ぬなくらのふとたましき) 堅鹽(きたし) 臘嘴鳥(あとり) 豐御食炊屋姬(とよみけかしきやひめ) 橘本稚皇子(たちばなのもとのわかみこ) 泥部穴穗部(はしひとのあなほべ) 達率(だちそち)【冠名。】 相貌端嚴(かたちきらぎらし)全向 原樟木(くすのき) 玲瓏(てりかかやく) 瑞子(みづこ) 田令(たつかひ) 久禮叱及伐干(くれしきふばつかん)【叱可作土也。】【冠名。】 ()埴廬瞻津


     敏達天皇(びだつてんわう) 【第三十一】
       磯津貝(しつかひ) 貝鮹(かひたこ) 大派(おほまた) 菟名子(うなこ) 幸玉(さきたま) 奈末(なま)【冠名。】 太姬(ふとひめ) 鞍部(くらつくり) 村主(すぐり) 司馬達等(しまのたちと)【人名。】 齋食(いもひ) 如中獵箭之雀鳥焉(ししやおへるすずめのごとし) 手腳搖震(てあしわななきふるひ) 息長足日廣額(おきながたらしひひろぬか) 天豐財重日足姬(あめとよたからいかしひたらしひめ) 小粒王(をいひつ)【備。】




卷下 起用明天皇,盡持統天皇。


     用明天皇(ようめいてんわう) 【第三十二代】
       雙槻(なみつき) 廄戶豐聰耳(うまやととよみみ) 石寸名(いしきな) (しひ) 殯宮(もがりのみや) 璅鏁(さしかた) 新嘗(にひなへ) 毛屎(けくそ) 磯長(しなが)


     崇峻天皇(すしゆんてんわう) 【第三十三】
       三度驚駭(みたびとよもす) 三迴(みたび) 忖度(はかり) 白膠木(ぬりで) 斮取(きりとり) 赤檮(いちひ) 錦代(にしきて) 所嫌(いとはしみする)


     推古天皇(すいこてんわう) 【第三十四】
       豐浦(とゆら) (しきみ) 斑鳩(いかるが) 壬生部(みぶべ) 御田鍬(みたすき)


     舒明天皇(じよめいてんわう) 【第三十五】
       蝦夷(えみし) 大海(おほしあま) 法提(ほて) 珠敷(たましき)


     皇極天皇(くわうぎよくてんわう) 【第三十六】
       膽駒(いこま) 御大極殿(おほあんどのにおはし) 網田(あみた) 努力努力(ゆめゆめ) 送飯(いひすき) 叩頭(のみ) 滑谷(なめだに) 板蓋(いたぶき)


     孝德天皇(かうとくてんわう) 【第三十七】
       阿倍倉梯麻呂臣(あへのくらはしまろのいみ)【舒明天皇紀曰,畏群臣不從,則與阿倍麻呂臣識之。】 蘇我倉山田石川麻呂臣(そがのくらのやまだのいしかわまろのおみ)【皇極天皇紀云,中大兄王子密謂倉山田麻呂臣,作曰三韓進調之曰:「汝持使綿,讀唱其表。」遂陳欲斬入鹿之謀等。許焉。又曰:「何讒?」曰:「僕之異母兄麻呂之。」】 垂川堀(たるかはほり) 菟田朴室古(うだのえむろのふる) 高麗宮知(こまのみやしり) 討古人市皇子(ふるひとのおほいちのみこをうたむ)王子紀云,大市王子(おほいちのみこ)。】 長柄(ながら) 二田(ふつた) 兄田(せのた) 興志(ごし) 造姬(あやつこひめ) 醜經(しこふ) 長兄(ながえ) 薩麻之曲(さつまのくま) 竹島之門(たかしまのと) ()大伯 吐火羅(とくわら)


     齊明天皇(さいめいてんわう) 【第三十八】
       (みあひ)【今曰,嫁。】 頰垂(つらたり) 鯯魚(このしろ) 吉祥(きさ) 都躭羅人(とくわらひと)墮羅人(たらひと)。】 乾豆波斯達阿(けんづはしだちあ)【人名。】 噍類(かくむもの)【噍,此云かくむ(可九牟)。漢書如俘注曰:「無有活而准食。」】 恩率(おんそちて)【冠名。】 達率(だちそち)【冠名。】


     天智天皇(てんちてんわう) 【第三十九】
       天命開別(あめみことひらかすわけ) (また)多臣蔣敷之妹(おほのおみこもしきのいも)妻焉(めにあはす)【日本書紀曰,多臣蔣敷妹也,妻也。】 檳榔(あぢまさ) 田來津(たくつ) (ゆだね) (かきなで) (うたがひ) 德執得(とくしふとく)【人名。】 (つはきはきかけ) 腐狗(くちいぬ) 癡奴(かたくなやつこ) 醢首(かうべをすしにす) 州柔(つぬ) 遠智(をち) 健兒(ちからひと) 色夫古(しこぶこ) 沙飡(ささん)【冠名。】 薩野馬(さつやま)


     天武天皇(てんむてんわう) 【第四十】
       天渟中原瀛真人(あまのぬなはらおきのまひと) (うかみ) 君手(きみて)【人名。】 身毛君廣(むげつのきみひろ) 津振(つふり) 跡太川(とほかは) 大分(おほきだ) 惠尺(ゑさか) 鉏鉤(さひち) 和蹔(わざみ) 鳥籠(とこ) 社戶(こそへ) 若臣(わかおみ) 重擐甲(よろきかさねき) 馬來田(まくた) 吹負(ふけひ) 大來(おほく) 五百重(いほへ) 大蕤(おほぬ)【以音。】 德善(とくぜん)【人名。】 (つかへ) 名倉(なくら) 得許(とくこ)【人名。】 朱鳥(あかみとり)


     持統天皇(ぢとうてんわう) 【第四十一】
       高天原廣野姬(たかあまのはらひろのひめ) 鸕野讚良(うののさらら) 遠智(をち) 猜忌(うたがひ) 鞠旅(いくさにつげ)【鞠,養也。旅,眾也。】 所詿誤(あざむかえたる) 音橿(おとかし) 礪杵(とき) 多益須(たやす) 徒跣(すあし) (ともにみまかる)【死。】 容止墻岸(みかほたかくさがしく) 音辭俊明(みことばすぐれあきらか) 負債者(もののかひおへるもの) 此曰御青飯(あをきおものあてまつる) 級飡(きふさん)【冠名。】 大舍(だいさ)【冠名。】 楯節舞(たたふしのまひ) (しま) (まさる) (かね) 本實(ほんじつ) 羽衝(はつき) 百濟(くだら) 土羅羅女(つららめ)人 白蝙蝠(しろかはぼり) 薩飡(さつさん)【冠名。】 韓奈末(かんなま)【冠名。】 原放(ゆるしたまふ) 行獄徒繫(とらはれるつみびと) 後皇子尊(のちのみこのみこと)


      以上四十一代




日本書紀私記 甲本 跋

 時也,閹茂之歲,功曹之侯。白霜埋瓦,寒嵐過窗。于茲,之老骨,之病眼,雖懶微細之事,強逐讎校之功者也。凡此書,日本第一之秘書也,無左右難感得者也。而慮外寫得天之與之歟。神之授之歟。喜悅無限,萬悅千幸。

入宋落魄隱士 守方【有判。】

[久遠の絆] [再臨ノ詔]