仁德
履中
反正
允恭
安康
雄略
清寧
顯宗
仁賢
武烈
繼體
安閑
宣化
欽明
敏達
用明
崇峻
推古
古事記 下卷
天皇御世
仁德天皇 難波高津宮跡
詠葛城襲津彥
萬葉歌碑 2639
日本歷史掛圖 雄略帝后獎勵養蠶
幡梭若郎女,適雄略帝為皇后。
茨田堤碑
仁德帝御世作茨田堤并屯倉、和邇池、依網池,堀難波堀江。
仁徳帝登高臺望炊煙圖
帝登甘檻山,望烟撫民,停課役三年。後國中滿烟,是知人民富足。
一、望烟撫民
大雀命
(
おほさざきのみこと
)
,坐
難波
(
なには
)
之
高津宮
(
たかつみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
仁德天皇
(
にんとくてんわう
)
。】
此
天皇
(
仁德
)
,
娶
(
めとり
)
葛城襲津彥
(
かづらき之曾都毘古
)
之女
石之姬命
(
いはの日賣のみこと
)
。
【
大后
(
おほきさき
)
。
○
襲津彥
(
そつひこ
)
原文
そつひこ
(
曾都毘古
)
以音。
】
生御子,
大兄去來穗別命
(
おほ江之伊耶本和氣のみこと
)
。
【○
履中天皇
(
りちゅうてんわん
)
。
大兄去來穗別
(
おほえのいざほわけ
)
原文
大江之伊耶本和氣
(
おほえのいざほわけ
)
。】
次,
墨江中王
(
すみのえ之なか津みこ
)
。
次,
蝮瑞齒別命
(
たぢひ之水はわけのみこと
)
。
【○
反正天皇
(
はんぜいてんわう
)
。
瑞
(
みづ
)
原文
水
(
みづ
)
。】
次,
男朝津間若子宿禰命
(
を淺つまわくごのすくねのみこと
)
。
【
四柱
(
よはしら
)
。
○
允恭天皇
(
いんぎょうてんわう
)
。
朝
(
あさ
)
原文
淺
(
あさ
)
。
】
又,娶
上云
(
應神記
)
日向
(
ひむか
)
之
諸縣君牛諸
(
もろあがたのきみうしもろ
)
之女
髮長姬
(
かみなが比賣
)
。
生御子,
幡梭大郎子
(
波多毘能おほいらつこ
)
,亦名
大日下王
(
おほくさかのみこ
)
。
【○
幡梭
(
はたび
)
の原文
はたびの
(
波多毘能
)
以音,下效此。】
次,
幡梭若郎女
(
波多毘能わかいらつめ
)
,亦名
長目姬命
(
ながめ比賣のみこと
)
,亦名
若日下部命
(
わかくさかべのみこと
)
。
【
二王
(
ふたはしらのみこ
)
。
○亦名若日下王。
】
又,娶
庶妹
(
ままいも
)
八田若郎女
(
やたのわかいらつめ
)
。
又,娶庶妹
宇治稚郎女
(
宇遲能若いらつめ
)
。此之二柱,無
御子
(
みこ
)
也。
【○
宇治稚
(
うぢのわか
)
原文
宇遲能若
(
うぢのわか
)
。】
凡
(
おほよそ
)
,此
大雀天皇
(
おほきざきのすめらみこと
)
之
御子
(
みこ
)
等,并六王。
【
男王
(
をとこみこ
)
五柱,
女王
(
をみなみこ
)
一柱。】
故,
去來穗別命
(
伊耶本和氣のみこと
)
者,
治
(
しろしめし
)
天下也。
次,
蝮瑞齒別命
(
たぢひ之水はわけのみこと
)
,
亦
(
また
)
治天下。
次,
男朝津間若子宿禰命
(
を淺つまわくごのすくねのみこと
)
,亦治天下也。 此
天皇
(
仁德
)
之
御世
(
みよ
)
,為
大后
(
おほきさき
)
石之姬命
(
いはの日賣のみこと
)
之
御名代
(
みなしろ
)
,定
葛城部
(
かづらきべ
)
。亦為
太子
(
ひづきのみこ
)
去來穗別命
(
伊耶本和氣のみこと
)
之御名代,
定
(
さだめ
)
壬生部
(
みぶべ
)
。亦為
瑞齒別命
(
水はわけのみこと
)
之御名代,定
蝮部
(
たぢひべ
)
。亦為
大日下王
(
おほくさかのみこ
)
之御名代,定
大日下部
(
おほくさかべ
)
。為
若日下部王
(
わかくさかべのみこ
)
之御名代,定
若日下部
(
わかくさかべ
)
。
又,
役
(
えだて
)
秦人
(
はだひと
)
作
茨田堤
(
うまらたのつつみ
)
及
茨田屯倉
(
うまらたの三宅
)
,又作
和邇池
(
丸邇のいけ
)
、
依網池
(
よさみのいけ
)
,
【○
屯倉
(
みやけ
)
原文
三宅
(
みやけ
)
。
和邇
(
わに
)
原文
丸邇
(
わに
)
。】
又
堀
(
ほり
)
難波之堀江
(
なにはのほりえ
)
而
通
(
とほし
)
海,又堀
小椅江
(
をばしのえ
)
,又定
墨江之津
(
すみのえのつ
)
。 於是,
天皇
(
仁德
)
登
(
のぼり
)
高山
(
たかきやま
)
見
四方之國
(
よものくに
)
,詔之:「於
國中
(
くにのうち
)
烟
(
けぶり
)
不發
(
たたず
)
,國皆
貧窮
(
まづし
)
。故,
自今
(
いまより
)
以後,至于
三年
(
みとせ
)
,
悉
(
ことごとく
)
除
(
おけ
)
人民
(
おほみたから
)
之
課役
(
えつき
)
。」是以,
大殿
(
おほとの
)
破壞
(
やぶれこほれ
)
,悉雖
雨漏
(
あまもれ
)
,
都
(
かつて
)
勿
修理
(
つくろふ
)
。唯以
槭
(
はこ
)
受其
漏雨
(
もれるあめ
)
,
遷避
(
うつりさりき
)
于
不漏處
(
もらぬところ
)
。
後
(
のち
)
見國中,於國
滿
(
みちき
)
烟。故
以為
(
おもひ
)
人民
(
おほみたから
)
殷富
(
とめり
)
,今復
科
(
おほせき
)
課役。是以,
百姓
(
おほみたから
)
之
榮
(
さかえ
)
,
不苦
(
くるしびず
)
役使
(
えだち
)
。故
稱
(
たたへ
)
其
御世
(
みよ
)
,
謂
(
いふ
)
聖帝世
(
ひじりのみかどのよ
)
也。
東高津宮 祀仁德帝、石姬皇后
仁德皇后石之姬命,以善妒著稱。
帝望黑姬出船歌
:「
臨高望沖方 小船林立並連綿 濡烏黑鞘之 親愛美兒我妹子 今將歸國發船行
」
仁德帝幸淡道島遙望歌
:「
日光押照矣 出航發自難波崎 吾今發船幸 立淡道島望吾國 見之乎淡島 復見淤能碁呂島 亦見之檳榔 叢生植生島 八十離島悉觀覽
」
吉備國 黑媛塚古墳
傳被葬者即仁德帝所寵愛之黑姬。
帝到採菘處歌
:「
山縣山方地 所蒔種植青菜矣 若得與吉備 佳人孃子共摘者 蓋當心滿樂無窮
」
帝罷歸時黑姬獻歌
其一
:「
今向大和方 西風起兮強吹拂 雲因以離兮 其雲雖因風退居 妾身何忘夫君情
」
其二
:「
今向大和方 啟行伊人誰夫歟 彼是吾夫矣 隱處下延竊通心 逢瀨離兮誰夫歟
」
八田若郎女 宇和奈邊陵墓
仁德帝伺石之姬皇后為豐樂宴幸紀伊時,婚八田若郎女。
仁德帝石之姬皇后平城坂上陵
大后恨天皇迎娶八田若郎女,泝難波堀江而居山城。 仁德帝、石之姬志都歌
其一
:「
苗木繼根生 繼根生兮山代河 今溯其河者 吾躬溯河逆流上 在其河隈隈 茂生繁殖欣向榮 躑躅烏草樹 於彼烏草樹之木 在其木之下 茂生繁殖欣向榮 常綠葉廣兮 齋真椿木海石榴 猶彼椿木花 普耀遍照大八洲 猶彼椿木葉 茂惠廣蔭繁秋津 聖王大君如是哉
」
其二
:「
苗木繼根生 繼根生兮山代河 我溯難波宮 青丹精良兮 奈良那羅山已過 小楯山代國 山城大倭亦過之 何謂寡人欲見國 青柳葛城國高宮 吾家之畔吾宮邊
」
其三
:「
追及山代兮 追兮舍人鳥山君 追及復追及 速速追至吾愛妻 追及令吾得相逢
」
其四
:「
三輪御諸山 位彼山上高城兮 大豬子棲野原矣 顧其大豬子 腹中肝在矣 與肝相對兮 心哉唯有彼心者 豈能忘情不相思
」
其五
:「
苗木繼根生 繼根生兮山代女 彼女持木鍬 掘土鋤壤摘大根 其根素且白 一如佳人腕白晰 若未與之共纏綿 可訴不識然不得
」
山背筒城宮址
大后石之姬命所避筒城宮。天皇遣使口子臣,大不予見,跪于庭中,水潦漬腰,口姬憐兄,流涕獻歌。
口姬憐兄浸衣歌
:「
山城山代國 山代筒木宮之中 伏庭欲申謁 見此吾兄水潦衣 不覺涕泣落淚下
」
日本最初外國蠶飼育舊跡
三色奇蟲,桑蠶是也。匐蟲、殼、飛鳥各指蠶、蛹、蛾。奴理使主獻計,令天皇親臨,與皇后講和。
志都歌 其六
:「
苗木繼根生 繼根生兮山代女 彼女持木鍬 掘土鋤壤摘大根 爽爽音騷然 以承汝言嘖頻頻 大勢從者來 猶若八桑展枝葉 眾來謁見共參迎
」
八田野
傳仁德帝、八田若郎女應歌之地。若郎女亦名八田皇女、矢田皇女。
仁德帝戀八田若郎女歌
:「
八田若郎女 八田地生一本菅 無子無相伴 孤獨伶立至枯荒 惜矣八田彼菅原 今吾贈此言 口言雖訴彼菅原 心實惜甚貞清女
」
答歌
:「
八田若郎女 八田地生一本菅 縱彼孤立至枯荒 若聞大君言 一人獨居亦可者 無子無伴不悔惜
」
其
(
仁德
)
大后
(
おほきさき
)
石之姬命
(
いはの日賣のみこと
)
,
甚多
(
いとおほし
)
嫉妒
(
うはなりねたみ
)
。故天皇
所使
(
つかへる
)
之
妾
(
みめ
)
者,
不得
(
えず
)
臨
(
のぞむ
)
宮中
(
みやのうち
)
。若有
言立者
(
ことだつれば
)
,大后即
頓足跺步而
(
足母阿賀迦邇
)
嫉妒。
【○
頓足跺步
(
足母阿賀迦邇
)
原文
足もあがかに
(
あし母阿賀迦邇
)
,
足
(
あし
)
も
搔
(
あが
)
かに。
言立
(
ことだつ
)
,言及特別之事。】
爾,
天皇
(
仁德
)
聞看
(
きこしめし
)
吉備海部直
(
きびのあまべのあたひ
)
之
女
(
むすめ
)
黑姬
(
くろ日賣
)
,其
容姿
(
かたち
)
端正
(
きらぎらし
)
,
喚上
(
めしあげ
)
而
使也
(
つかひき
)
。然
黑姬
(
くろひめ
)
畏
(
かしこみ
)
其
大后
(
石之姬
)
之
嫉
(
ねたむ
)
,
逃下
(
にげくだりき
)
本國
(
もとつくに
)
。
天皇
(
すめらみこと
)
坐
高臺
(
たかきうてな
)
,
望瞻
(
のぞみみ
)
其
黑姬
(
くろ日賣
)
之
船出
(
ふなのいで
)
浮海
(
うみにうかべる
)
,以歌曰:
沖方
(
おきへ
)
には
小船連
(
をぶねつら
)
らく
黑鞘
(
くろざや
)
の
美兒我妹
(
まさづこわぎも
)
國
(
くに
)
へ
下
(
くだ
)
らす
故
大后
(
石之姬
)
,聞
是
(
こ之
)
御歌
(
みうた
)
,
大忿
(
おほきにいかり
)
。
遣
(
つかはし
)
人於
大浦
(
おほうら
)
,
追下
(
おひおろし
)
而
自步
(
かちより
)
追去
(
おひさりき
)
。於是
天皇
(
仁德
)
,
戀
(
こひ
)
其
黑姬
(
くろ日賣
)
,
欺
(
あざむき
)
大后
(
おほきさき
)
曰:「
欲
(
おもふ
)
見
淡道嶋
(
あはぢのしま
)
。」而
幸行之時
(
いでまししとき
)
,
坐
(
いまし
)
淡道嶋,
遙望
(
はるかにのぞみ
)
歌曰:
押照
(
おして
)
るや
難波崎
(
なにはのさき
)
よ
出立
(
いでた
)
ちて
我
(
わ
)
が
國見
(
くにみ
)
れば
淡島
(
あはしま
)
淤能碁呂島
(
おのごろしま
)
檳榔
(
あぢまさ
)
の
島
(
しま
)
も
見
(
み
)
ゆ
離島見
(
さけつしまみ
)
ゆ
乃自
其島
(
淡道
)
,
繼越
(
傳
)
而
幸行
(
いでましき
)
吉備國
(
きびのくに
)
。
【○繼越原文
島傳
(
しまつたひ
)
,此云自淡道島經由諸多小島輾轉航向目的地。】
爾,
黑姬
(
くろ日賣
)
,令
天皇
(
仁德
)
大坐
(
おほまし
)
其國之
山方地
(
やまがたのところ
)
,而
獻
(
たてまつりき
)
大御飯
(
おほみけ
)
。於是,
黑姬
(
くろひめ
)
為
煮
(
にむ
)
大御羹
(
おほみあつもの
)
而
採
(
とる
)
其地之
菘菜
(
たかな
)
。時
天皇
(
すめらみこと
)
到坐
(
いたりまし
)
其
孃子
(
をとめ
)
之採
菘
(
たかな
)
處,歌曰:
山方
(
やまがた
)
に
蒔
(
ま
)
ける
青菜
(
あをな
)
も
吉備人
(
きびひと
)
と
共
(
とも
)
にし
摘
(
つ
)
めば
樂
(
たのし
)
くもあるか
天皇
(
仁德
)
返京
上幸
(
のぼりいでます
)
之時,
黑姬
(
くろ日賣
)
獻
御歌
(
みうた
)
曰:
倭方
(
やまとへ
)
に
西吹上
(
にしふきあ
)
げて
雲離
(
くもばな
)
れ
退居
(
そきを
)
りとも
我忘
(
われわす
)
れめや
又,
歌曰
(
うたひていはく
)
:
倭方
(
やまとへ
)
に
行
(
ゆ
)
くは
誰
(
た
)
が
夫
(
つま
)
隱處
(
こもりづ
)
の
下
(
した
)
よ
延
(
は
)
へつつ
行
(
ゆ
)
くは
誰
(
た
)
が
夫
(
つま
)
自此
(
これより
)
後時
(
のち
)
,
大后
(
石之姬
)
將催
豐樂宴
(
とよのあかり
)
,幸行
紀國
(
木のくに
)
,採
御綱柏
(
みつながしは
)
為觴。其間,
天皇
(
仁德
)
婚
(
あひき
)
八田若郎女
(
やたのわかいらつめ
)
。
【○
紀國
(
きのくに
)
原文
木國
(
きのくに
)
。】
於是
(
ここに
)
,
大后
(
おほきさき
)
以御綱柏
積盈
(
つみみて
)
御船
(
みふね
)
,
還幸
(
かへりいでます
)
。時所
驅使
(
おひつかはゆる
)
於
水取司
(
もひとりのつかさ
)
吉備國
兒島郡
(
こしまのこほり
)
仕丁
(
よほろ
)
,
是
(
これ
)
退
(
まかる
)
己國
(
おのがくに
)
,
遇
(
あひき
)
所後
(
おくれたる
)
倉人女
(
くらひとめ
)
之船於
難波
(
なには
)
之
大渡
(
おほわたり
)
。乃
語
(
かたり
)
云:「
天皇
(
仁德
)
者,
比日
(
このころ
)
婚八田若郎女而
晝夜
(
ひるよる
)
戲遊
(
たはぶれあそぶ
)
。
若
(
もし
)
大后
不聞看
(
きこめさぬ
)
此事乎?竟
靜遊
(
しづかにあそび
)
幸行?」爾其
婢女
(
倉人女
)
聞此
語言
(
かたること
)
,即
追近
(
おひちかづき
)
大后
御船
(
みふね
)
,
白狀
(
まをすかたち
)
具
(
つぶさに
)
如
仕丁
(
よほろ
)
之
言
(
こと
)
。
【○
倉人女
(
くらひとめ
)
,侍奉皇后近側之婢女。
婢女
(
つかひめ
)
原文
倉人女
(
くらひとめ
)
。】
於是,
大后
(
石之姬
)
大恨怒
(
おほきにうらみいかり
)
,
悉
(
ことごとく
)
投棄
(
なげうてき
)
載
(
のせたる
)
其御船之
御綱柏
(
みつながしは
)
於
海
(
うみ
)
。故
號
(
なづけ
)
其地
(
そこ
)
,謂
御津前
(
みつのさき
)
也。大后即
不入坐
(
いりまざす
)
宮而
引避
(
ひきさり
)
其御船,
泝
(
さかのぼり
)
於
堀江
(
ほりえ
)
,
隨
(
まにまに
)
河
(
山代川
)
而
上幸
(
のぼりいでましき
)
山城
(
山代
)
。此時,歌曰:
【○
山城
(
やましろ
)
原文
山代
(
やましろ
)
。所溯山代川者,今木津川。】
繼根生
(
つぎねふ
)
や
山代河
(
やましろがは
)
を
河溯
(
かはのぼ
)
り
我
(
わ
)
が
溯
(
のぼ
)
れば
河邊
(
かはのへ
)
に
生立
(
おひだ
)
てる
烏草樹
(
さしぶ
)
を
烏草樹木
(
さしぶのき
)
其下
(
しがした
)
に
生立
(
おひだ
)
てる
葉廣
(
はびろ
)
齋
(
ゆ
)
つ
真椿
(
まつばき
)
其花
(
しがはな
)
の
照坐
(
てりいま
)
し
其葉
(
しがは
)
の
廣坐
(
ひろりいま
)
すは
大君
(
おほきみ
)
ろ
哉
(
かも
)
即自
山城
(
山代
)
迴,
到坐
(
いたりまし
)
奈良山口
(
那良のやまぐち
)
,歌曰:
【○
奈良
(
なら
)
原文
那良
(
なら
)
以音。】
繼根生
(
つぎねふ
)
や
山代河
(
やましろがは
)
を
宮溯
(
みやのぼ
)
り
我
(
わ
)
が
溯
(
のぼ
)
れば
青丹良
(
あをによ
)
し
奈良
(
なら
)
を
過
(
す
)
ぎ
小楯
(
をだて
)
倭
(
やまと
)
を
過
(
す
)
ぎ
我
(
わ
)
が
見
(
み
)
が
欲
(
ほ
)
し
國
(
くに
)
は
葛城高宮
(
かづらきたかみや
)
我家
(
わぎへ
)
の
邊
(
あたり
)
大后
(
石之姬
)
如此
(
かく
)
歌而還,
暫
(
しまらく
)
入坐
筒木
(
つつき
)
韓人
(
からひと
)
奴理使主
(
ぬり能美
)
之
家
(
いへ
)
也。
【○
使主
(
のみ
)
原文
能美
(
のみ
)
以音。】
天皇
(
仁德
)
聞看其大后自
山城
(
山代
)
上幸,
使
(
つかはし
)
舍人
(
とねり
)
鳥山
(
とりやま
)
送
(
おくり
)
御歌:
山代
(
やましろ
)
に い
及
(
し
)
け
鳥山
(
とりやま
)
い
及
(
し
)
けい
及
(
し
)
け
吾
(
あ
)
が
愛妻
(
はしづま
)
に い
及
(
し
)
き
逢
(
あ
)
はむかも
又
續
(
つぎ
)
遣
和邇臣口子
(
丸邇のおみくちこ
)
而歌曰:
【○
和邇
(
わに
)
原文
わに
(
丸邇
)
以音。】
御諸
(
みもろ
)
の
其高城
(
そのたかき
)
なる
大豬子
(
おほゐこ
)
が
原
(
はら
)
大豬子
(
おほゐこ
)
が
腹
(
はら
)
に
在
(
あ
)
る
肝向
(
きもむか
)
ふ
心
(
こころ
)
をだにか
相思
(
あひおも
)
はずあらむ
又
(
また
)
,歌曰:
繼根生
(
つぎねふ
)
や
山代女
(
やましろめ
)
の
木鍬持
(
こくはも
)
ち
打
(
うち
)
し
大根
(
おほね
)
根白
(
ねじろ
)
の
白腕
(
しろただむき
)
枕
(
ま
)
かずけばこそ
知
(
し
)
らずとも
言
(
い
)
はめ
故,是
口子臣
(
くちこのおみ
)
白此御歌之時,
大雨
(
おほきあめふりき
)
。爾口子臣
不避
(
さらず
)
其雨,
參伏
(
まゐふせ
)
前殿戶
(
まへのとのと
)
者,大后
違
(
たがひ
)
出
後戶
(
しりへのと
)
。參伏
後殿戶
(
しりへのとのと
)
者,違
出
(
いで
)
前戶
(
まへのと
)
。
爾
(
しかくし
)
,
匍匐
(
はらばひ
)
進赴
(
すすみおもぶき
)
,
跪
(
ひざまづきし
)
于
庭中
(
にはなか
)
時,
水潦
(
にはたづみ
)
至
腰
(
こし
)
。
其臣
(
口子臣
)
服
(
きたり
)
青摺衣
(
あをずりのきぬ
)
、
著
(
つけたる
)
紅紐
(
くれなゐのひも
)
,故水潦
拂
(
ふれ
)
紅紐,
青
(
あをき
)
皆
變
(
かはりき
)
紅色。
其口子臣之
妹
(
いも
)
口姬
(
くち日賣
)
,
仕奉
(
つかへまつれり
)
大后
(
おほきさき
)
。見其兄沾雨,故
是
(
この
)
口姬
(
くち日賣
)
,流涕歌曰:
山代
(
やましろ
)
の
筒木宮
(
つつきのみや
)
に
物申
(
ものまを
)
す
吾兄君
(
あがせのきみ
)
は
淚
(
なみた
)
ぐましも
爾
大后
(
石之姬
)
問
其
(
口姬
)
所由
(
ゆゑ
)
之時,
口姬
(
くちひめ
)
答白:「
僕之兄
(
やつかれがせ
)
,
口子臣
(
くちこのおみ
)
也。」
於是
(
ここに
)
口子臣,亦其妹
口姬
(
くち比賣
)
,及
奴理
(
ぬり
)
使主
(
能美
)
三人
(
みたり
)
議
(
はかり
)
而,令奏
天皇
(
仁德
)
云:「
大后
(
おほきさき
)
所以
(
ゆゑ
)
幸行
(
いでませる
)
者,欲見
奴理使主
(
ぬり能美
)
之所
養蟲
(
かへるむし
)
也。此蟲者,
一度
(
ひとたび
)
為
匐蟲
(
はふむし
)
,一度為
殼
(
かひご
)
,一度為
飛鳥
(
とぶとり
)
,有
變
(
かはる
)
三色
(
みくさ
)
之
奇蟲
(
あやしきむし
)
。大后
看行
(
みそこなはさむ
)
此蟲而
入坐爾
(
いりませらくのみ
)
,
更
(
さらに
)
無
異心
(
けしこころ
)
。」
如此奏
(
かくまをし
)
時,
天皇
(
すめらみこと
)
詔:「
然者
(
しからば
)
,
吾
(
あれ
)
亦思
奇異
(
あやし
)
。故欲
見行
(
みにゆかむ
)
。」
【○
三色奇蟲
(
みくさのあやしきむし
)
,幼蟲、
繭
(
まゆ
)
、
蛾
(
が
)
等三種幻化之蟲,是即
蠶
(
かひこ
)
也。三人見情狀膠著,遂獻計令
天皇
(
仁德
)
親臨。】
天皇自
大宮
(
高津宮
)
上幸行
(
のぼりいでまし
)
,入坐
奴理使主
(
ぬり能美
)
之家。時其
奴理使主
(
ぬり能美
)
獻
(
たてまつりき
)
己
所養
(
かへる
)
之
三種蟲
(
みくさのむし
)
於
大后
(
石之姬
)
。爾
天皇
(
仁德
)
御立
(
みたち
)
其
大后
(
おほきさき
)
所坐
(
いませる
)
殿戶
(
とのと
)
,歌曰:
繼根生
(
つぎねふ
)
山代女
(
やましろめ
)
の
木鍬持
(
こくはも
)
ち
打
(
うち
)
し
大根
(
おほね
)
爽爽
(
さわさわ
)
に
汝
(
な
)
が
言
(
い
)
へせこそ
打渡
(
うちわた
)
す
八桑枝如
(
やがはえな
)
す
來入參來
(
きいりまゐく
)
れ
此
天皇
(
仁德
)
與
大后
(
石之姬
)
所歌
(
うたへる
)
之
六歌
(
むつのうた
)
者,
志都歌
(
しつうた
)
之
歌返
(
うたひかへし
)
也。 於是,
天皇
(
仁德
)
戀
(
こひ
)
八田若郎女
(
やたのわかいらつめ
)
,遂
賜遣
(
たまひやりき
)
御歌。其歌曰:
八田
(
やた
)
の
一本菅
(
ひともとすげ
)
は
子持
(
こも
)
たず
立枯荒
(
たちかあ
)
れなむ
惜
(
あた
)
ら
菅原
(
すがはら
)
言
(
こと
)
をこそ
菅原
(
すげはら
)
と
言
(
い
)
はめ
惜
(
あた
)
ら
清
(
すが
)
し
女
(
め
)
爾,八田若郎女,
答歌
(
こたふるうた
)
曰:
八田
(
やた
)
の
一本菅
(
ひともとすげ
)
は
獨居
(
ひとりを
)
りとも
大君
(
おほきみ
)
し
良
(
よ
)
しと
聞
(
きこ
)
さば
獨居
(
ひとりを
)
りとも
故
(
かれ
)
,為八田若郎女之
御名代
(
みなしろ
)
,
定
(
さだめき
)
八田部
(
やたべ
)
也。
雌鳥皇女、隼別皇子像
仁德帝諱大雀,速總與隼音同。女鳥王之歌,以雀、隼暗指仁德帝、速總別王。天皇聞歌,知有異心。
仁德帝誂女鳥王歌
:「
女鳥侍織女 汝操棚機為夫君 所織御服者 是為孰人襲料哉
」
女鳥王答歌
:「
高飛翔天際 隼別皇子速總別 彼王御襲衣料矣
」
女鳥王見速總別王來歌
:「
縱為雲雀者 亦能翔天渡大空 高飛越天際 隼別猛禽更迅捷 速擒大雀斃彼命
」
宇陀蘇邇 隼別神社
蘇邇,今宇陀郡曾爾村一帶。
速總別王遁倉椅山歌
其一
:「
梯立勢陡峭 倉椅山嶮難登涉 以其險峻者 親親吾妻難懸岩 必取我手同攀越
」
其二
:「
梯立勢陡峭 倉椅山嶮難越涉 彼山雖險峻 然得與妹共登者 吾不復覺何嶮矣
」
古墳出土玉釧
山部大楯取女鳥王玉釧與妻。事發覺,為石之姬皇後處死。皇后雖好嫉妒,仍重義理、臣節。
姬島 姬島神社
姬島昔在淀川河口,今已接陸。 仁德帝、建內宿禰鴈產問答
其一
:「
玉極靈剋兮 內庭建內宿禰臣 汝壽比南山 此世最長瑞耆老 虛空見日本 大和秋津倭國中 可嘗聞鴈生卵哉
」
其二
:「
高光普下照 日御子兮我聖皇 宜諾大哉問 問於吾兮心甚感 此誠大哉問 下問吾兮實宜哉 吾壽秋日長 此世最長耆老人 然在虛空見 大和秋津倭國中 所謂雁生卵 至今前所未曾聞
」
其三
:「
蓋汝胤子孫 代代治國無絕期 故鴈生卵以為徵
」
昭和之森會館 枯野船模型
菟寸,在今大阪府高石市富木。
仁德帝枯野琴歌
:「
今將枯野船 轉作鹽薪燒海鹽 又取其餘燼 作焦尾琴搔彈之 彼琴聲鏗鏘 彼琴聲玲瓏 恰似由良海門中 振立海石上 漬木之藻矣 冴冴爽爽
」
仁德天皇 百舌鳥耳原中陵
亦,
天皇
(
仁德
)
以其
弟
(
おと
)
速總別王
(
はやぶさわけのみこ
)
為
媒
(
なかびと
)
而
乞
(
こひき
)
庶妹
(
ままいも
)
女鳥王
(
めどりのみこ
)
。爾,女鳥王
語
(
かたり
)
速總別王曰:「因
大后
(
石之姬
)
之
強
(
こはき
)
,
不治賜
(
をさめたまはず
)
八田若郎女
(
やたのわかいらつめ
)
。故,思
不仕奉
(
つかへまつらじ
)
。
吾
(
あれ
)
為
汝命
(
ながみこと
)
之
妻
(
め
)
。」即
相婚
(
あひあひき
)
。
是以
(
ここをもちて
)
,速總別王,
不復奏
(
かへりことまをさず
)
。
爾
天皇
(
仁德
)
直
(
ただに
)
幸
(
いでまし
)
女鳥王
(
めどりのみこ
)
之
所坐
(
いますところ
)
,而坐其
殿戶
(
とのと
)
之
閾上
(
しきみのうへ
)
。於是,女鳥王坐
機
(
はた
)
而
織
(
おりき
)
服
(
ころも
)
。
爾
(
しかくし
)
,
天皇
(
すめらみこと
)
歌曰:
女鳥
(
めどり
)
の
我大君
(
わがおほきみ
)
の
織
(
お
)
ろす
服
(
はた
)
誰
(
た
)
が
料
(
たね
)
ろ
哉
(
かも
)
女鳥王,答歌
曰
(
いはく
)
:
高行
(
たかゆ
)
くや
速總別
(
はやぶさわけ
)
の
御襲衣料
(
みおすひがね
)
故
天皇
(
仁德
)
知
其情
(
そのこころ
)
,
還入
(
かへりいりき
)
於
宮
(
みや
)
。此時,
其夫
(
そのを
)
速總別王
到來
(
きたれり
)
。時
女鳥王
(
めどりのみこ
)
歌曰:
雲雀
(
ひばり
)
は
天
(
あめ
)
に
翔
(
か
)
ける
高行
(
たかゆ
)
くや
速總別
(
はやぶさわけ
)
雀獲
(
さざきと
)
らさね
天皇
(
仁德
)
聞此歌,知其異心,即
興軍
(
いくさをおこし
)
欲
(
おもひき
)
殺
(
ころさむ
)
。爾
速總別王
(
はやぶさわけのみこ
)
、
女鳥王
(
めどりのみこ
)
,
共
(
ともに
)
逃退
(
にげそき
)
而
騰
(
のぼりき
)
於
倉椅山
(
くらはしやま
)
。速總別王歌曰:
梯立
(
はしたて
)
の
倉椅山
(
くらはしやま
)
を
嶮
(
さが
)
しみと
岩懸兼
(
いはかきか
)
ねて
我
(
わ
)
が
手取
(
てと
)
らすも
亦
歌
(
うたひ
)
曰:
梯立
(
はしたて
)
の
倉椅山
(
くらはしやま
)
は
嶮
(
さが
)
しけど
妹
(
いも
)
と
登
(
のぼ
)
れば
嶮
(
さが
)
しくも
非
(
あら
)
ず
故二人自
其地
(
そこ
)
逃亡
(
にげうせ
)
,到
宇陀
(
うだ
)
之
蘇邇
(
そに
)
時,
御軍
(
みいくさ
)
追到
(
おひいたり
)
而
殺也
(
ころしき
)
。 其役
將軍
(
いくさのきみ
)
山部大楯連
(
やまべのおほたてのむらじ
)
,取其
女鳥王
(
めどりのみこ
)
所纏
(
まける
)
御手
(
みて
)
之
玉釧
(
たま鈕
)
而與
己妻
(
おのがめ
)
。
【○
玉釧
(
たまくしろ
)
原文
玉鈕
(
たまくしろ
)
。】
此時之後
(
このときののち
)
,將為
豐樂宴
(
とよのあかり
)
之時,
氏氏
(
うぢうぢ
)
之
女等
(
をみなら
)
,皆
朝參
(
みかどまゐりしき
)
。爾
大楯連
(
おほたてのむらじ
)
之
妻
(
め
)
,以
其王
(
女鳥王
)
之
玉釧
(
たま鈕
)
纏
(
まき
)
於
己手
(
おのがて
)
而
參赴
(
まゐおもぶきき
)
。
【○
豐樂
(
とよのあかり
)
,酒宴是也。】
大后
(
おほきさき
)
石之姬命
(
いはの日賣のみこと
)
,
自
(
みづから
)
取
大御酒
(
おほみき
)
柏
(
かしは
)
,
賜
(
たまひき
)
諸氏氏
(
もろもろのうぢうぢ
)
之女等。爾大后
見知
(
みしり
)
其
玉釧
(
たま鈕
)
,
不賜
(
たまはず
)
御酒柏,乃
引退
(
ひきそけき
)
,
召出
(
めしいだし
)
其夫
(
そのを
)
大楯連以
詔之
(
のりたまはく
)
:「
其王等
(
女鳥王
)
,因
無禮
(
ゐやなき
)
而伏誅
退賜
(
しりぞけたまひつ
)
。
是
(
これ
)
者,無
異事
(
けしきこと
)
爾
(
のみ
)
。
夫之奴乎
(
そのおやつこや
)
,竟於
己君
(
おのがきみ
)
膚熅
(
はだもあたたけき
)
尚存之際,
剝
(
はぎ
)
所纏
(
まける
)
御手
(
みて
)
玉釧
(
たま鈕
)
持來
(
もちき
)
,
即
(
すなはち
)
與
(
あたへつ
)
己妻
(
おのがめ
)
!」
乃
(
すなはち
)
給
(
たまひき
)
死刑
(
ころすつみ
)
也。
【○
夫之奴乎
(
そのおやつこや
)
,第二人稱賤稱詞,此云大楯連。以
己君
(
おのがきみ
)
指女鳥王者,蓋大楯連嘗仕之。】
亦
(
また
)
一時
(
あるとき
)
,
天皇
(
仁德
)
為將
豐樂宴
(
とよのあかり
)
,
幸行
(
いでまし
)
姬島
(
日女しま
)
。時
鴈
(
かり
)
生
卵
(
こ
)
於其島。爾,召
武內宿禰命
(
建うちのすくねのおみこと
)
,以歌問鴈
生
(
うみ
)
卵之
狀
(
かたち
)
。其歌曰:
【○
姬島
(
ひめしま
)
原文
日女島
(
ひめしま
)
,
武內
(
たけうち
)
原文
建內
(
たけうち
)
。】
靈剋
(
たまきは
)
る
內朝臣
(
うちのあそ
)
汝
(
な
)
こそは
世長人
(
よのながひと
)
虛空見
(
そらみ
)
つ
倭國
(
やまとのくに
)
に
鴈卵生
(
かりこむ
)
と
聞
(
き
)
く
哉
(
や
)
於是,
武內宿禰命
(
建うちのすくねのおみこと
)
,以歌
語白
(
かたりてまをさく
)
:
高光
(
たかひか
)
る
日御子
(
ひのみこ
)
諾
(
うべ
)
しこそ
問賜
(
とひたま
)
へ
真
(
ま
)
こそに
問賜
(
とひたま
)
へ
吾
(
あれ
)
こそは
世長人
(
よのながひと
)
虛空見
(
そらみ
)
つ
倭國
(
やまとのくに
)
に
鴈卵生
(
かりこむ
)
と
未
(
いま
)
だ
聞
(
き
)
かず
武內宿禰命
(
建うちのすくねのおみこと
)
如此白而,
受賜
(
被給
)
御琴
(
みこと
)
,歌曰:
【○
受賜
(
たまはり
)
原文
被給
(
たまはり
)
。】
汝
(
な
)
が
御子
(
みこ
)
や
遂
(
つひ
)
に
治
(
し
)
らむと
鴈
(
かり
)
は
卵生
(
こむ
)
らし
此者,
壽歌
(
本岐うた
)
之
片歌
(
かたうた
)
也。
【○
壽
(
ほき
)
原文
ほき
(
本岐
)
以音,祝也。】
此之
(
仁德
)
御世
(
みよ
)
,
菟寸河
(
とのきがは
)
之西有一
高樹
(
たかきき
)
。其樹之
影
(
かげ
)
,
當
(
あたれ
)
旦日
(
あさひ
)
者,
逮
(
いたり
)
淡道嶋
(
あはぢのしま
)
;當
夕日
(
ゆふひ
)
者,
越
(
こえき
)
高安山
(
たかやすやま
)
。故,
切
(
きり
)
是樹
以作
(
つくれる
)
船,
甚捷行
(
いとはやくゆく
)
之
船
(
ふね
)
也。
時
(
ときに
)
號
(
なづけ
)
其船謂
枯野
(
からの
)
。故以是船,
旦夕
(
あしたゆふへ
)
酌
(
くみ
)
淡道嶋之
寒泉
(
しみづ
)
,
獻
(
たてまつりき
)
大御水
(
おほみもひ
)
也。茲船
破壞
(
やぶれこほれ
)
後,用以
燒
(
やき
)
鹽
(
しほ
)
,取其
燒遺木
(
やけのこれるき
)
作
琴
(
こと
)
,
其音
(
そのおと
)
響
(
ひびきき
)
七里
(
ななさと
)
。爾,歌曰:
枯野
(
からの
)
を
鹽
(
しほ
)
に
燒
(
や
)
き
其
(
し
)
が
餘
(
あま
)
り
琴
(
こと
)
に
作
(
つく
)
り
搔彈
(
かきひ
)
くや
由良門
(
ゆらのと
)
の
門中海石
(
となかのいくり
)
に
振立
(
ふれた
)
つ
漬木
(
なづのき
)
の
冴冴
(
さやさや
)
此者,
志都歌
(
しつうた
)
之
歌返
(
うたひかへし
)
也。
【○
志都歌
(
しつうた
)
乃歌之詠唱法。宮廷樂府樣式化時,以上述天皇、皇后對歌與此枯野琴詩為範。】
此
天皇
(
仁德
)
之
御年
(
みとし
)
,
捌拾參歲
(
やそあまりみとせ
)
。
【
丁卯年
(
ひのとのうのとし
)
八月
(
はつき
)
十五日
(
とをあまりいつか
)
崩也
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
,在
百舌鳥耳原
(
毛受之みみはら
)
也。
【○
百舌鳥
(
もず
)
原文
もず
(
毛受
)
以音。】
二、輕王子與衣通姬之悲戀
子
(
仁德
)
,
去來穗別王
(
伊耶本和氣のみこ
)
,坐
磐余
(
伊波禮
)
之
若櫻宮
(
わかさくらのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
履中天皇
(
りちゅうてんわう
)
。
去來穗別
(
いざほわけ
)
、
磐余
(
いはれ
)
原文
いざほわけ
(
伊耶本和氣
)
、
いはれ
(
伊波禮
)
以音。】
此
天皇
(
履中
)
,娶
葛城襲津彥
(
かづらき之曾都毘古
)
子
葦田宿禰
(
あしだのすくね
)
之
女
(
むすめ
)
黑姬命
(
くろ比賣のみこと
)
。
【○
襲津彥
(
そつひこ
)
原文
そつひこ
(
曾都毘古
)
以音。】
生御子,
市邊忍齒王
(
いちのへ之おしはのみこ
)
。
次,
御馬王
(
みまのみこ
)
。
次妹,
青海郎女
(
あをみのいらつめ
)
,亦名
飯豐郎女
(
いひどよのいらつめ
)
。
【
三柱
(
みはしら
)
。
○亦名
忍海郎女
(
おしぬみのいらつめ
)
】
天皇
(
すめらみこと
)
本
(
もと
)
坐
難波宮
(
なにはのみや
)
,當
大嘗
(
おほにへ
)
祭而為
豐明
(
とよのあかり
)
宴之時,
酣飲
(
宇良宜
)
大御酒
(
おほみき
)
而
御寢也
(
みねしき
)
。爾其弟
墨江中王
(
すみのえのなかつみこ
)
欲
取
(
とらむ
)
天皇
(
履中
)
,以火
著
(
つけき
)
大殿
(
おほとの
)
。
【○
酣飲
(
うらげ
)
原文
うらげ
(
宇良宜
)
以音,
心揚
(
うらあげ
)
之略。】
於是
(
ここに
)
,
倭漢直
(
やまとのあやのあたひ
)
之祖
阿知直
(
あちのあたひ
)
,
盜
(
ぬすみ
)
攜天皇
出
(
いだし
)
宮,使乘
御馬
(
みま
)
,
令幸
(
いでまさしめき
)
於
倭
(
やまと
)
。
故,
天皇
(
履中
)
到于
丹比野
(
多遲ひの
)
而
寤
(
さめ
)
,
詔
(
のりたまひ
)
:「
此間
(
ここ
)
者
何處
(
いづく
)
?」阿知直
白
(
まをし
)
:「
墨江中王
(
すみのえのなかつみこ
)
火
(
ひ
)
著大殿,故
率
(
ゐて
)
逃
(
にげぐる
)
於
倭
(
やまと
)
。」爾
天皇
(
履中
)
歌曰:
【○
丹比
(
たぢひ
)
原文
たぢひ
(
多遲比
)
。】
丹比野
(
たぢひの
)
に
寢
(
ね
)
むと
知
(
し
)
りせば
立薦
(
たつごも
)
も
持
(
も
)
ちて
來
(
こ
)
ましもの
寢
(
ね
)
むと
知
(
し
)
りせば
到於
埴生坂
(
波邇賦ざか
)
,
望見
(
のぞみみる
)
難波宮
(
なにはのみや
)
。
其火
(
そのひ
)
猶炳
(
なほあかし
)
。爾
天皇
(
履中
)
亦歌曰:
【○
埴生
(
はにふ
)
原文
はにふ
(
波邇賦
)
以音。】
埴生坂
(
はにふざか
)
我
(
わ
)
が
立見
(
たちみ
)
れば
陽炎
(
かぎろひ
)
の
燃
(
も
)
ゆる
家群
(
いへむら
)
妻
(
つま
)
が
家邊
(
いへのあたり
)
故,
到幸
(
いたりいでまし
)
大坂
(
おほさか
)
山口
(
やまぐち
)
之時,
遇
(
あひき
)
一
(
ひとり
)
女人
(
をみな
)
。其女人
白之
(
まをししく
)
:「
持
(
もてる
)
兵
(
つはもの
)
人等
(
ひとども
)
,
多塞
(
あまたにふさげり
)
茲山
(
このやま
)
。
應
(
べし
)
自
(
より
)
當麻道
(
當岐麻ち
)
迴
(
めぐり
)
而
越幸
(
こえいでます
)
。」爾
天皇
(
履中
)
歌曰:
【○
當麻
(
たぎま
)
原文
當岐麻
(
たぎま
)
。】
大坂
(
おほさか
)
に
遇
(
あ
)
ふや
娘子
(
をとめ
)
を
道問
(
みちと
)
へば
直
(
ただ
)
には
告
(
の
)
らず
當藝麻道
(
たぎまち
)
を
告
(
の
)
る
故
天皇
(
履中
)
上幸
(
のぼりいでまし
)
,坐
石上神宮
(
いそのかみのかむみや
)
也。 於是,
其
(
履中
)
胞弟
(
伊呂ど
)
瑞齒別命
(
水はわけのみこと
)
,
參赴
(
まゐおもぶき
)
令謁
(
まをさしめき
)
。爾
天皇
(
履中
)
令詔:「
吾
(
あれ
)
疑
(
うたがへり
)
汝命
(
ながみこと
)
若
(
もし
)
與
墨江中王
(
すみのえのなかつみこ
)
同心
(
おなじこころ
)
乎,故
不相言
(
あひいはじ
)
。」
瑞齒別命
(
みづはわけのみこと
)
答白:「
僕
(
やつかれ
)
者無
穢邪心
(
きたなきあしきこころ
)
,亦
不同
(
おなじくあらず
)
墨江中王。」亦,令詔:「
然者
(
しからば
)
,汝今
還下
(
かへりくだり
)
,
殺
(
ころし
)
墨江中王而
上來
(
のぼりこ
)
。
彼時
(
そのとき
)
,吾
必
(
かならず
)
相言。」
故,
瑞齒別命
(
みづはわけのみこと
)
即還下
難波
(
なには
)
,
欺
(
あざむき
)
墨江中王
(
すみのえのなかつみこ
)
之
近習
(
ちかくつかへ
)
隼人
(
はやと
)
曾婆訶理
(
そば加り
)
云:「
若
(
もし
)
汝
從
(
したがはば
)
吾言
(
あがこと
)
者,
吾
(
あれ
)
為
天皇
(
すめらみこと
)
,
汝
(
なむち
)
作
大臣
(
おもおみ
)
,治
天下
(
あめのした
)
。
奈何
(
那何
)
?」
曾婆訶理
(
そばかり
)
答白:「
隨命
(
みことのまにまに
)
。」爾
瑞齒別命
(
みづはわけのみこと
)
賜
(
給
)
其隼人
多祿
(
あまたのたまひもの
)
曰:「
然者
(
しからば
)
,殺
汝王
(
なむちがきみ
)
也!」於是
曾婆訶理
(
そばかり
)
竊伺
(
ひそかにうかかひ
)
己王
(
墨江中王
)
入
廁
(
かはや
)
,以
矛
(
ほこ
)
刺
(
さし
)
而
殺也
(
ころしき
)
。
【○
曾婆訶理
(
そば加り
)
或書
曾婆加理
(
そばかり
)
,書紀作
刺領巾
(
さしひれ
)
。
奈何
(
いかに
)
原文作
那何
(
いかに
)
。
賜
(
たまひ
)
原文
給
(
たまひ
)
。】
故
率
(
ゐ
)
曾婆訶理
(
そばかり
)
上幸
(
のぼりいでます
)
於
倭
(
やまと
)
之時,到
大坂
(
おほさか
)
山口。
瑞齒別命
(
みづはわけのみこと
)
以為
(
おもひ
)
:「
曾婆訶理
(
そばかり
)
,雖
為
(
ため
)
吾有
大功
(
おほきいさを
)
,輙殺
己君
(
おのがきみ
)
,
既
(
すでに
)
是
不義
(
ことわりならず
)
。然不
褒
(
賽
)
其功,
可謂
(
いひつべし
)
無信
(
まことなし
)
。既
行
(
おこはふ
)
其信,還
惶
(
おそりむ
)
其
情
(
こころ
)
。故,雖
報
(
むくゆ
)
其
功
(
いさを
)
,
滅
(
ほろぼさむ
)
其
正身
(
ただみ
)
。」是以
語
(
かたり
)
曾婆訶理
(
そばかり
)
:「
今日
(
けふ
)
留
此間
(
ここ
)
而先給
大臣位
(
おほおみのくらゐ
)
,
明日
(
あす
)
上幸。」留其
山口
(
やまぐち
)
,即造
假宮
(
かりみや
)
,
忽
(
たちまち
)
為
豐樂宴
(
とよのあかり
)
,乃
賜
(
たまひ
)
大臣位於其
隼人
(
はやと
)
,令
百官
(
もものつかさ
)
拜之
(
おろがましめき
)
。隼人
歡喜
(
よろこび
)
,
以為
(
おもひき
)
遂
(
とげつ
)
志
(
こころざし
)
。
【○
不褒
(
むくいず
)
原文
不賽
(
むくいず
)
。】
爾
王子
(
瑞齒別命
)
詔其
隼人
(
曾婆訶理
)
:「今日與
大臣
(
おほおみ
)
飲
同盞
(
おなじさかづき
)
酒。」
共飲
(
ともにのむ
)
之時,以
隱面
(
おもてをかくす
)
大鋺
(
おほまり
)
,
盛
(
もりき
)
其
進酒
(
すすむるさけ
)
。於是,
王子
(
みこ
)
先飲
(
まづのみ
)
,隼人
後飲
(
のちにのみき
)
。故其
隼人
(
はやと
)
飲時,大鋺
覆
(
おほひき
)
面。
王子
(
瑞齒別命
)
遂
取出
(
とりいだし
)
置
席下
(
むしろのした
)
之
劍
(
つるぎ
)
,斬其隼人之
頸
(
くび
)
。乃
明日
(
あくるひ
)
上幸。故
號
(
なづけ
)
其地,謂
近飛鳥
(
ちかつあすか
)
也。
王子
(
瑞齒別命
)
上到
(
のぼりいたり
)
于
倭
(
やまと
)
,詔之:「今日
留
(
とどまり
)
此間,為
祓禊
(
みそぎ
)
而
明日
(
あす
)
參出
(
まゐいで
)
。
將拜
(
をろがまむ
)
神宮
(
かむみや
)
。」故號
其地
(
そこ
)
,謂
遠飛鳥
(
とほつあすか
)
也。故拜謁之後,
瑞齒別命
(
みづはわけのみこと
)
參出
石上神宮
(
いそのかみのかむみや
)
,
令奏
(
まをさしめし
)
天皇
(
履中
)
:「
政
(
まつりごと
)
既
(
すで
)
平訖
(
たひらげをはり
)
,參上
侍之
(
はべり
)
。」爾
天皇
(
すめらみこと
)
召入
(
めりいれ
)
而
相語也
(
あひかたりき
)
。
天皇
(
履中
)
於是以
阿知直
(
あちのあたひ
)
始任
(
はじめてまけ
)
藏官
(
くらのつかさ
)
,亦
給
(
たまひき
)
糧地
(
たどころ
)
。
亦此
御世
(
履中
)
,於
若櫻部臣
(
わかさくらべのおみ
)
等,
賜
(
たまひ
)
若櫻部
名
(
な
)
。又
姬陀君
(
比賣だのきみ
)
等賜
姓
(
かばね
)
,謂
姬陀
(
比賣だ
)
之
君
(
きみ
)
也。亦
定
(
さだめき
)
磐余部
(
伊波禮べ
)
也。
【○
磐余
(
いはれ
)
原文
いはれ
(
伊波禮
)
以音。】
天皇
(
履中
)
之
御年
(
みとし
)
,
陸拾肆歲
(
むそあまりよとせ
)
。
【
壬申年
(
みづのえさるのとし
)
正月
(
むつき
)
三日
(
みか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
,在
百舌鳥
(
毛受
)
也。
【○
百舌鳥
(
もず
)
原文
もず
(
毛受
)
以音。稱
百舌鳥耳原南陵
(
もずのみみはらのみなみのみささぎ
)
。】
弟
(
履中
)
,
瑞齒別命
(
水はわけのみこと
)
,坐
多治比
(
たぢひ
)
之
柴垣宮
(
しばかきのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
反正天皇
(
はんぜいてんわう
)
。】
此
(
反正
)
天皇
(
すめらみこと
)
,
御身
(
みみ
)
之
長
(
たけ
)
,
九尺
(
ここのさか
)
二寸半
(
ふたきなかば
)
。
御齒
(
みは
)
長
(
ながさ
)
一寸
(
ひとき
)
,
廣
(
ひろさ
)
二分
(
ふたきだ
)
,
上下
(
かみしも
)
等齊
(
ひとしくととのひ
)
,
既
(
すでに
)
如
(
ごとし
)
貫珠
(
たまにぬける
)
。
天皇
(
反正
)
,
娶
(
めとり
)
和邇
(
丸邇
)
之
木事臣
(
許碁登のおみ
)
之
女
(
むすめ
)
都怒郎女
(
つののいらつめ
)
。
【○
和邇
(
わに
)
、
木事
(
こどと
)
原文
わに
(
丸邇
)
、
こどと
(
許碁登
)
以音。】
生御子,
甲斐郎女
(
かひのいらつめ
)
。
次,
圓郎女
(
都夫良のいらつめ
)
。
【二柱。
○
圓
(
つぶら
)
原文
つぶら
(
都夫良
)
以音。
】
又娶
同臣
(
和邇木事
)
之女
弟姬
(
おと比賣
)
。
生御子,
財王
(
たからのみこ
)
。
次,
高部郎女
(
多訶辨のいらつめ
)
。
【○
高部
(
たかべ
)
原文
たかべ
(
多訶辨
)
以音。】
天皇
(
反正
)
御子
(
みこ
)
,
并
(
あはせ
)
四王
(
よはしらのみこ
)
也。
天皇
(
反正
)
御年
(
みとし
)
,
陸拾歲
(
むそとせ
)
。
【
丁丑年
(
ひのとのうしのとし
)
七月
(
ふみづき
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
,在
百舌鳥野
(
毛受の
)
也。
【○
百舌鳥
(
もず
)
原文
もず
(
毛受
)
以音。】
履中天皇 磐余稚櫻宮跡
飯豐天皇 埴口丘陵
飯豐郎女,後於皇位未定之間,坐忍海角刺宮,代治天下。
前期難波高津宮 復原模型
履中帝本坐難波宮,逢墨江中王火著大殿,遂遷磐余。
帝寤醉聞叛歌
:「
多遲比野兮 若知寢在丹比野 當持來立薦 今寤方知寢此野 早知當攜立薦來
」
望難波宮燔燒歌
:「
今立埴生坂 身處波邇賦坂上 顧眄難波宮 所見陽炎燃家群 其是當吾妻家邊
」
大坂山口 飛鳥山
履中帝謝少女歌
:「
河內大和堺 大坂所遇娘子矣 問道彼少女 不告近道訴遠路 諫吾迂當藝麻道
」
山邊道 石上神宮
隼人 大住隼人舞
隼人久為皇室近侍,語見
山海易幸
段。曾婆訶理者,紀作刺領巾。
墨江中王之亂相關經路圖
石上神宮拜殿
阿知直 阿知使主
履中天皇 百舌鳥耳原南陵
反正天皇 丹比柴籬宮跡
百舌鳥古墳群 仁德履中反正陵
反正天皇 百舌鳥耳原北陵
弟
(
反正
)
,
男朝津間若子宿禰王
(
を淺つまわくごのすくねのみこ
)
,坐
遠飛鳥宮
(
とほつあすかのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
允恭天皇
(
いんぎょうてんわう
)
。】
此
天皇
(
允恭
)
,娶
大大迹王
(
意富本杼のみこ
)
之妹
忍坂大中津姬命
(
おしさか之おほなかつ比賣
)
。
【○
大大迹
(
おほほど
)
原文
おほほど
(
意富本杼
)
以音。】
生御子,
木梨之輕王
(
きなしのかるのみこ
)
。
次,
長田大郎女
(
ながたのおほいらつめ
)
。
次,
境之黑彥王
(
さかひのくろ日子のみこ
)
。
次,
穴穗命
(
あなほのみこと
)
。
【○
安康天皇
(
あんかうてんわう
)
。】
次,
輕大郎女
(
かるのおほいらつめ
)
。
亦名
(
またのな
)
,
衣通郎女
(
そとほりのいらつめ
)
。
【
御名
(
みな
)
所以
(
ゆゑ
)
負
(
おふ
)
衣通王
(
そとほりのみこ
)
者,
其身之光
(
そのみのひかり
)
,
自衣
(
そより
)
通出
(
とほりいづれ
)
也。】
次,
八瓜之白彥王
(
やつりのしろ日子のみこ
)
。
次,
大長谷命
(
おほはつせのみこと
)
。
【○
雄略天皇
(
いうりゃくてんわう
)
。】
次,
橘大郎女
(
たちばなのおほいらつめ
)
。
次,
酒見郎女
(
さかみのいらつめ
)
。
【
九柱
(
ここのはしら
)
。】
凡
天皇
(
允恭
)
之御子等,九柱。
【
男王
(
をとこみこ
)
五,
女王
(
をみなみこ
)
四。】
此九王之中,
穴穗命
(
安康
)
者,
治
(
しろしめし
)
天下也。
次,
大長谷命
(
雄略
)
,治天下也。
天皇
(
允恭
)
初
(
はじめ
)
將為所治
(
しらさむ
)
天津日繼
(
あまつひつぎ
)
之時,
天皇
(
すめらみこと
)
辭
(
いなび
)
而
詔之
(
のりたまひ
)
:「我者有一
長病
(
ながきやまひ
)
,
不得
(
えじ
)
所
治
(
知
)
日繼
(
ひつぎ
)
。」然
因
(
より
)
始
大后
(
おほきさき
)
以下,
諸
(
もろもろ
)
卿等
(
まへつきみたち
)
之
堅奏
(
かたくまをす
)
,
乃
(
すなはち
)
治
天下
(
あめのした
)
。
【○
天津日繼
(
あまつひつぎ
)
,皇位。
(
)
。
治
(
しらす
)
原文
知
(
しらす
)
。
長病
(
ながきやまひ
)
即宿疾,又書紀作
篤疾
(
あつきやまひ
)
。】
此時,
新羅
(
新良
)
國主
(
くにぎみ
)
,
貢進
(
たてまつりき
)
御調
(
みつき
)
八十一艘
(
やそあまりひとふね
)
。爾,御調之
大使
(
おほきつかひ
)
金波鎮
(
こむはちに
)
漢紀武
(
かきむ
)
。此人,
深知
(
ふかくしれり
)
藥方
(
くすりのみち
)
,故
治癒
(
をさめ差
)
帝皇
(
すめらみこと
)
之
御病
(
みやまひ
)
。
【○
新羅
(
しらき
)
原文
新良
(
しらき
)
。
金波鎮漢紀武
(
こむはちにかきむ
)
,金、波鎮、漢紀、武,別為姓、爵、王族號、名。
癒
(
いやしき
)
原文
差
(
いやしき
)
。】
於是,
天皇
(
允恭
)
愁
(
うえへ
)
天下
(
あめのした
)
氏氏名名人等
(
うぢうぢななのひとら
)
之
氏姓
(
うぢかばね
)
誤謬
忤過
(
たがひあやまれる
)
,而於
甘白檮
(
味かし
)
丘之
言八十禍津日前
(
ことやそまがつひのさき
)
,
据
(
居
)
盟神探湯瓮
(
玖訶へ
)
,以
定賜
(
さだめたまひき
)
天下之
八十伴緒
(
やそ友のを
)
氏姓
(
うぢかばね
)
也。
【○
忤過
(
たがひあやまれる
)
,誤謬。
甘白檮
(
あまかし
)
,原文
味白檮
(
あまかし
)
,甘樫丘。
据
(
すゑ
)
原文
居
(
すゑ
)
。
言八十禍津日前
(
ことやそまがつひのさき
)
,蓋指行
盟神探湯
(
くかたち
)
之地。言即言語,
八十禍津日
(
やそまがつひ
)
乃禍神。
盟神探湯
(
くか
)
原文
くか
(
玖訶
)
以音。】
又,為
木梨之輕太子
(
きなしのかるのひつぎのみこ
)
御名代
(
みなしろ
)
,定
輕部
(
かるべ
)
。為
大后
(
忍坂大中姬
)
御名代,
定
(
さだめ
)
刑部
(
おしさかべ
)
。為
大后
(
おほきさき
)
之
妹
(
弟
)
田井中姬
(
たゐのなかつひめ
)
御名代,定
河部
(
かはべ
)
也。
天皇
(
允恭
)
御年
(
みとし
)
,
柒拾捌歲
(
ななそあまりやとせ
)
。
【
甲子年
(
きのえうまのとし
)
正月
(
むつき
)
十五日
(
とをあまりいつか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
,在
河內
(
かふち
)
之
惠賀長江
(
ゑがのなが枝
)
也。
【○
長江
(
ながえ
)
原文
長枝
(
ながえ
)
,
惠我長野北陵
(
ゑがのながののきたのみささぎ
)
,與仲哀陵相接。】
天皇
(
允恭
)
崩之
後
(
のち
)
,定
木梨之輕太子
(
きなしのかるのひつぎのみこ
)
所治
(
知らす
)
日繼
(
ひつぎ
)
。然
未即位
(
いまだくらゐにつかぬ
)
之間,
通
(
姦
)
其
胞妹
(
伊呂いも
)
輕大郎女
(
かるのおほいらつめ
)
而
歌曰
(
うたひていはく
)
:
【○
通
(
たはけ
)
原文
姦
(
をかし
)
。
胞
(
いろ
)
原文
いろ妹
(
伊呂
)
以音。】
足引
(
あしひき
)
の
山田
(
やまだ
)
を
作
(
つく
)
り
山高
(
やまだか
)
み
下樋
(
したび
)
を
走
(
わし
)
せ
下訪
(
したど
)
ひに
我
(
わ
)
が
訪妹
(
とふいも
)
を
下泣
(
したなき
)
に
我
(
わ
)
が
泣妻
(
なくつま
)
を
今夜
(
こぞ
)
こそは
安
(
やす
)
く
膚觸
(
はだふ
)
れ
此者,
尻舉歌
(
志良宜うた
)
也。
【○
尻舉
(
しらげ
)
原文
しらげ
(
志良宜
)
以音,
尻舉
(
しりあげ
)
之略。末句高揚之曲種。】
輕王
又
(
また
)
歌曰:
笹葉
(
ささば
)
に
打
(
う
)
つや
霰
(
あられ
)
の たしだしに
率寢
(
ゐね
)
てむ
後
(
のち
)
は
人
(
ひと
)
は
離
(
か
)
ゆとも
愛
(
うるは
)
しと
小寢
(
さね
)
し
小寢
(
さね
)
てば
刈薦
(
かりこも
)
の
亂
(
みだ
)
れば
亂
(
みだ
)
れ
小寢
(
さね
)
し
小寢
(
さね
)
てば
此者,
夷振
(
ひなぶり
)
之
上歌
(
あげうた
)
也。故兄妹相姧之事,露顯。
是以,
百官
(
もものつかさ
)
及
天下人等
(
あめのしたのひとら
)
,咸
背
(
そむき
)
輕太子
(
かるのひつぎのみこ
)
而
歸
(
よりき
)
穴穗御子
(
あなほのみこ
)
。爾輕太子
畏
(
かしこみ
)
而
逃入
(
にげいり
)
物部
(
もののべ
)
大前小前宿禰
(
おほまへをまへのすくね
)
大臣
(
おほおみ
)
之
家
(
いへ
)
而
備作
(
ととのへつくりき
)
兵器
(
つはもの
)
。
【
爾時
(
そのとき
)
所作
(
つくれる
)
矢
(
や
)
者,
銅
(
あかかね
)
其
箭鋒
(
箭內
)
,故
號
(
なづけ
)
其矢謂
輕箭
(
かるや
)
也。
○
箭鋒
(
やのさき
)
原文
箭內
(
やのうち
)
,古事記傳以為訛。銅鏃。
】
穴穗御子
(
あなほのみこ
)
,
亦
(
なた
)
作兵器。
【此
王子
(
みこ
)
所作之矢者,即
今時
(
いま
)
之矢者也。是
謂
(
いふ
)
穴穗箭
(
あなほや
)
也。
○鐵鏃。
】
於是穴穗御子
興
(
おこし
)
軍
(
いくさ
)
,
圍
(
かくみき
)
大前小前宿禰之家。爾到
其
(
大臣
)
門
(
かど
)
時,
零
(
ふりき
)
大冰雨
(
おほひさめ
)
。故,歌曰:
大前
(
おほまへ
)
小前宿禰
(
をまへすくね
)
が
金門蔭
(
かなとかげ
)
斯
(
か
)
く
寄來
(
よりこ
)
ね
雨立止
(
あめたちや
)
めむ
爾,其
大前小前宿禰
(
おほまへをまへのすくね
)
,
舉手
(
てをあげ
)
打膝
(
ひざをうち
)
,
儛奏
(
まひ訶那傳
)
詠歌
參來
(
まゐきたり
)
。其歌曰:
【○
奏
(
かなで
)
原文
かなで
(
訶那傳
)
以音。】
宮人
(
みやひと
)
の
足結小鈴
(
あゆひのこすず
)
落
(
おち
)
にきと
宮人響
(
みやひととよ
)
む
里人
(
さとびと
)
も
慎
(
ゆ
)
め
此歌者,
宮人振
(
みやひとぶり
)
也。 大臣
如此
(
かく
)
歌而
參歸
(
まゐより
)
白之:「
我天皇
(
あがすめらみこと
)
之
御子
(
穴穗命
)
,於
胞兄王
(
伊呂ねのみこ
)
者
莫
(
無
)
及
(
やる
)
兵
(
いくさ
)
。
若
(
もし
)
及
干戈
(
兵
)
相向者,
必
(
かならず
)
為人
咲
(
わらはむ
)
。
僕
(
やつかれ
)
,
捕
(
とらへ
)
以
貢進
(
たてまつらむ
)
。」
【○
干戈
(
つはもの
)
原文
兵
(
いくさ
)
。】
爾穴穗命
解兵
(
いくさをとき
)
退坐
(
しりぞきましき
)
。
故
(
かれ
)
大前小前宿禰,捕其輕
太子
(
ひつぎのみこ
)
,
率參出
(
ゐでまゐいで
)
以
貢進
(
たてまつりき
)
。其輕太子,
被捕
(
とらへらえ
)
歌曰:
天迴
(
あまだ
)
む
輕孃子
(
かるのをとめ
)
甚泣
(
いたな
)
かば
人知
(
ひとしり
)
ぬべし
幡舍山
(
はさのやま
)
の
鳩
(
はと
)
の
下泣
(
したなき
)
に
泣
(
な
)
く
又
歌
(
うたひ
)
曰:
天迴
(
あまだ
)
む
輕孃子
(
かるをとめ
)
確確
(
しただ
)
にも
寄寢
(
よりね
)
て
通
(
とほ
)
れ
輕孃子共
(
かるをとめども
故,其
輕太子
(
かるのひつぎのみこ
)
者,
流
(
ながしき
)
於
伊豫湯
(
い余のゆ
)
也。亦
將流
(
ながさむとせし
)
之時,歌曰:
【○
伊豫
(
いよ
)
原文
伊余
(
いよ
)
。】
天飛
(
あまと
)
ぶ
鳥
(
とり
)
も
使
(
つかひ
)
そ
鶴音
(
たづがね
)
の
聞得
(
きこえ
)
む
時
(
とき
)
は
我
(
わ
)
が
名問
(
なと
)
はさね
此
三歌
(
みつのうた
)
者,
天田振
(
あまだぶり
)
也。 輕太子
又
(
また
)
歌曰:
大君
(
おほきみ
)
を
島
(
しま
)
に
放
(
はぶ
)
らば
船餘
(
ふなあま
)
り い
歸來
(
がへりこ
)
むぞ
我
(
わ
)
が
疊
(
たたみ
)
ゆめ
言
(
こと
)
をこそ
疊
(
たたみ
)
と
言
(
い
)
はめ
我
(
わ
)
が
妻
(
つま
)
はゆめ
此歌者,
夷振
(
ひなぶり
)
之
片下
(
かたおろし
)
也。 其妹
衣通王
(
そとほりのみこ
)
,
獻
(
たてまつりき
)
歌。其歌曰:
夏草
(
なつくさ
)
の
相寢濱
(
あひねのはま
)
の
搔貝
(
かきがひ
)
に
足踏
(
あしふ
)
ます
莫
(
な
)
明
(
あか
)
して
通
(
とほ
)
れ
故,衣通姬
後亦
(
のちにまた
)
不堪
(
たへず
)
戀慕
(
こひしのふ
)
而
追往
(
おひゆき
)
。時歌曰:
君
(
きみ
)
が
往
(
ゆき
)
日長
(
けなが
)
く
成
(
な
)
りぬ
造木
(
やまたづ
)
の
迎
(
むか
)
へを
行
(
ゆ
)
かむ
待
(
まつ
)
には
待
(
ま
)
たじ
【此云山
たづ
(
多豆
)
者,是今造木者也。】
故,衣通姬
追到
(
おひいたり
)
之時,輕太子
待懷
(
まちむだき
)
而歌曰:
隱處
(
こもりく
)
の
泊瀨山
(
はつせのやま
)
の
大峰
(
おほを
)
には
幡張立
(
はたはりだ
)
て
狹小峰
(
さをを
)
には
幡張立
(
はたはりだ
)
て
大小良
(
おほをよ
)
し
仲定
(
なかさだ
)
める
思妻憐
(
おもひづまあは
)
れ
槻弓
(
つくゆみ
)
の
臥
(
こや
)
る
臥
(
こや
)
りも
梓弓
(
あづさゆみ
)
立
(
た
)
てり
立
(
た
)
てりも
後
(
のち
)
も
取見
(
とりみ
)
る
思妻憐
(
おもひづまあは
)
れ
又歌
曰
(
いはく
)
:
隱處
(
こもりく
)
の
泊瀨河
(
はつせのかは
)
の
上瀨
(
かみつせ
)
に
齋杙
(
いくひ
)
を
打
(
う
)
ち
下瀨
(
しもつせ
)
に
真杙
(
まくひ
)
を
打
(
う
)
ち
齋杙
(
いくひ
)
には
鏡
(
かがみ
)
を
懸
(
か
)
け
真杙
(
まくひ
)
には
真玉
(
またま
)
を
懸
(
か
)
け
真玉如
(
またまな
)
す
吾
(
あ
)
が
思妹
(
もふいも
)
鏡如
(
かがみな
)
す
吾
(
あ
)
が
思妻
(
もふつま
)
有
(
あり
)
と
言
(
い
)
はばこそよ
家
(
いへ
)
にも
行
(
ゆ
)
かめ
國
(
くに
)
をも
偲
(
しの
)
はめ
如此歌
(
かくうたひ
)
,
即
(
すなはち
)
共
(
ともに
)
自死
(
みづからしにき
)
殉情。故此二歌者,
讀歌
(
よみうた
)
也。
允恭天皇 遠飛鳥
允恭天皇遠飛鳥宮,所在未詳。
傳忍坂大中姬忍坂宮跡
衣通姬誕生地 玉津島明神
新羅使、百濟使、高麗使
允恭帝本以宿疾欲辭帝位,因皇后等固奏而登極。後新羅進調使金武深知藥方,癒其痼疾。
甘樫坐神社 盟神探湯神事
允恭帝憂天下氏姓誤謬,行盟神探湯於甘樫丘,以正姓氏。
允恭天皇 惠我長野北陵 木梨輕太子戀衣通姬歌
其一
:「
足引勢險峻 陡峭山間作山田 以此山高聳 遂牽下樋引水流 下樋潺地底 吾避人目訪妹妻 竊泣不能止 吾啜泣兮戀吾妻 直至今夜者 方得心安觸汝膚
」
其二
:「
小竹笹葉間 霰雨零落擊笹葉 滴噠響確確 若在切率相寢後 佳人雖離吾不悔 若心仍愛戀 相寢纏綿相枕者 縱如刈薦之 亂離亂散隔兩地 若切率寢吾不悔
」
衣通姬像 容姿絕妙艷色徹衣
穗穴命冰雨歌
:「
石上物部氏 大前小前宿禰者 今立金門蔭 如斯當速參來矣 切莫徒然待雨歇
」
大前小前宿禰答歌
:「
百敷大宮人 足結小鈴落地響 太子竄出宮 宮人騷響圍此里 里人亦慎莫輕舉
」
衣通姬繪姿
輕王被捕
一
:「
雁翔天高迴 輕孃子兮吾妹妻 汝若甚泣者 此事將為天下知 宜若幡舍山 彼山鳩低鳴 暗自隱忍啜泣矣
」
二
:「
雁翔天高迴 輕孃子兮吾妹妻 確確參來之 寄通吾處相率寢 輕孃子兮吾妹妻
」
三
:「
高飛翔天際 飛鳥亦是通言使 若聞鶴高鳴 蓋是寄訊鳥使至 冀舉吾名尋吾事
」
四
:「
今將大君之 吾人流放僻島者 一猶船餘返 終將歸來臨此地 吾疊此間必不變 言雖訴疊者 心指愛妻我妹矣 冀汝莫變如往昔
」
伊豫溫湯 道後溫泉
輕太子被捕,配流伊豫溫湯。
衣通姬戀慕獻歌
其一
:「
夏草萎靡合 阿比泥濱相寢濱 濱上搔貝在 莫誤踏兮以傷足 當待夜明晨後通
」
其二
:「
君往日已久 妾守空閨待日長 造木接骨木 故妾今出參迎矣 久待徒然不堪待
」
輕之神社 輕太子與衣通姬共死 輕太子待懷衣通姬歌
其一
:「
幽奧隱所兮 奈良長谷泊瀨山 於其大高峰 張立幡旗豎禮幡 亦於小低峰 張立幡旗豎禮幡 大小并備矣 欲定我倆仲睦和 親親思妻甚愛憐 手執槻弓而 橫置臥兮敬臥置 手執梓弓而 直置立兮敬立置 吾後亦欲善相待 親親思妻甚愛憐
」
其二
:「
幽奧隱所兮 奈良長谷泊瀨河 於河上流瀨 稜威齋杙打立豎 於河下流瀨 嚴壯真杙打立豎 亦於彼齋杙 澄明真鏡懸杙上 復於彼真杙 高貴真玉懸杙上 吾所思妹猶真玉 吾所思妻猶明鏡 愛屋及烏戀汝所 汝在家者欲訪家 汝在國者欲偲國 然汝今日身在此 故吾不復慕家國
」
輕之神社 比翼塚、歌碑
安康天皇 石上穴穗宮跡
押木珠縵 新羅金冠
傳押木玉縵,即新羅金冠之疇。
安康帝信根臣讒言,誅大日下王,奪其妻長田大郎女為后。皇后先子目弱王知之,逆弒復讎。
安康天皇 菅原伏見西陵
坂合黑彥皇子墓
傳八釣白彥皇子墓
小治田 明日鄉村
白彥王為大長谷王引率至小治田活埋,埋至腰時,雙目飛迸而死。
葛城氏居館跡
經考古調查,其建物趾有燒失痕跡,或為葛城圓使主之宅。
來田綿蚊屋野 蚊屋野神社
磐坂市邊押磐皇子墓
志染石室 縮見山石室
市邊忍齒王之子億計、弘計王子聞難,遁隱播磨國縮見石室。
三、皇胤流離與顯宗日繼
御子
(
允恭
)
,
穴穗御子
(
あなほのみこ
)
,坐
石上
(
いそのかみ
)
之
穴穗宮
(
あなほのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
安康天皇
(
あんかうてんわう
)
。】
天皇
(
すめらみこと
)
,為
胞弟
(
伊呂ど
)
大長谷王子
(
おほはつせのみこ
)
,而
遣
(
つかはし
)
坂本臣
(
さかもとののおみ
)
等之
祖
(
おや
)
根臣
(
ねのおみ
)
,至
大日下王
(
おほくさかのみこ
)
之
許
(
もと
)
,
令詔者
(
のりたまはしめしく
)
:「朕
欲
(
おもふ
)
以
汝命之妹
(
ながみことのいも
)
若日下王
(
わかくさかのみこ
)
,
婚
(
あはせむ
)
大長谷王子。故期
可貢
(
たてまつるべし
)
。」
爾
(
しかくし
)
大日下王
四拜
(
よたびをろがみ
)
白之:「吾不意
若
(
もし
)
疑
(
うたがへり
)
有
如此
(
かくある
)
大命
(
おほみこと
)
。故
不出外
(
とにいださず
)
以
置
(
おけり
)
吾妹於家也。
是
(
これ
)
,惶
恐
(
かしこし
)
。必
隨
(
まにまに
)
大命
奉進
(
たてまつらむ
)
。」
然
(
しかれども
)
思,僅
言以
(
こともち
)
白事
(
まをすこと
)
,
其
(
それ
)
為
無禮
(
ゐやなし
)
,即
令持
(
もたしめ
)
押木玉縵
(
おしき之たまかづら
)
,為
其妹
(
そのいも
)
之
禮物
(
ゐやしろ
)
而
貢獻
(
たてまつりき
)
。
根臣
(
ねのおみ
)
,即
盜取
(
ぬすみとり
)
其禮物之玉縵,誣大日下王而
讒
(
よこし
)
於
天皇
(
安康
)
曰:「
若日下王
(
わかくさかのみこ
)
者,
不受
(
うけず
)
敕命
(
おほみこと
)
曰:『
己
(
おのが
)
妹
(
いも
)
豈為
等族
(
ひとしきうがら
)
之
下席
(
したむしろ
)
!』而取
橫刀
(
たち
)
之
柄
(
手上
)
而
怒歟
(
いかりつるか
)
。」
【○
等族
(
ひとしきうがら
)
,同格之族。
下席
(
したむしろ
)
,此云以己妹為同格者之妻為恥。
柄
(
つか
)
原文
手上
(
たかみ
)
。
歟
(
か
)
,此為報告之際,仍未能置信之表現。】
故
天皇
(
安康
)
大怒
(
おほきにいかり
)
,
殺
(
ころし
)
大日下王而
奪
(
取持來
)
其王
(
そのみこ
)
之
嫡妻
(
むかひめ
)
長田大郎女
(
ながたのおほいらつめ
)
,為
皇后
(
おほきさき
)
。
【○
奪
(
奪ひ
)
原文
取持來
(
とりもちき
)
。】
自此以後
(
これよりのち
)
,
天皇
(
安康
)
為求夢諭,坐
神牀
(
かむどこ
)
而
晝寢
(
ひるね
)
。爾,語
其后
(
長田大郎女
)
曰:「
汝
(
なむち
)
有所思乎
(
おもふところありや
)
?」答曰:「
被
(
かかぶれ
)
天皇
(
すめらみこと
)
之
敦澤
(
あつきめぐみ
)
,
何
(
なにか
)
有所思。」
於是,其
大后
(
長田大郎女
)
之
先子
(
さきのこ
)
目弱王
(
まよわのみこ
)
,
是年
(
これとし
)
七歲
(
ななとせ
)
。
是王
(
このみこ
)
,
當
(
あたり
)
于
其時
(
そのとき
)
,
遊
(
あそべり
)
其
殿下
(
とののした
)
。爾,
天皇
(
安康
)
不知其
少王
(
わかきみこ
)
遊殿下,以詔
大后
(
おほきさき
)
言:「
吾
(
あれ
)
,
恒
(
つね
)
有所思。
何者
(
なにとなれば
)
,
汝之子
(
なむちがこ
)
目弱王
成人之時
(
ひととなりたらむとき
)
,知吾殺其
父王
(
ちちのみこ
)
者,
還
(
かへり
)
為有
邪心
(
あしきこころ
)
乎。」
於是
(
ここに
)
,所遊其殿下
目弱王
(
まよわのみこ
)
,
聞取
(
ききとり
)
此言,
便
(
すなはち
)
竊伺
(
ひそかにうかがひ
)
天皇
(
すめらみこと
)
之
御寢
(
みね
)
,乃取
其傍大刀
(
そのかたはらのたち
)
,
打斬
(
うちきり
)
其
天皇
(
安康
)
之
頸
(
くび
)
,
逃入
(
にげいりき
)
圓使主
(
都夫良意富美
)
之
家
(
いへ
)
也。
【○
圓使主
(
つぶらのおみ
)
原文
つぶらおほみ
(
都夫良意富美
)
。】
天皇
(
安康
)
御年
(
みとし
)
,
伍拾陸歲
(
いあまりむとせ
)
。
御陵
(
みささき
)
,在
菅原
(
すがはら
)
之
伏見岡
(
ふしみのをか
)
也。 爾天皇胞弟
大長谷王子
(
おほはつせのみこ
)
,
當時
(
そのかみ
)
童男
(
をぐな
)
。
即
(
すなはち
)
聞此事,以
慷愾怨怒
(
うれたみうらみいかり
)
。乃
到
(
いたり
)
其兄
(
そのえ
)
黑彥王
(
くろ日子のみこ
)
之
許
(
もと
)
,曰:「人
取
(
とりつ
)
天皇
(
すめらみこと
)
,
為
(
せむ
)
奈何
(
那何
)
?」
然
(
しかれども
)
其
黑彥王
(
くろ日子のみこ
)
不驚
(
おどろかず
)
而有
怠緩之心
(
おこたりゆるへるこころ
)
。於是,
大長谷王
(
おほはつせのみこ
)
,
詈
(
のり
)
其兄
(
黑彥王
)
言:「
一
(
ひとつ
)
為
(
とあり
)
天皇,一
為
(
とある
)
兄弟
(
はらから
)
,
何
(
なにか
)
無
恃心
(
たのもしきこころ
)
?聞
其兄
(
その
)
遭
弒
(
殺
)
,竟
不驚
(
おどろかず
)
而
怠乎
(
おこたれる
)
!」即
握
(
とり
)
其
衿
(
ころものくび
)
控出
(
ひきいだし
)
,
拔刀
(
たちをぬき
)
打殺
(
うちころしき
)
。
【○
奈何
(
いかにか
)
原文
那何
(
いかにか
)
。
弒
(
ころす
)
原文
殺
(
ころす
)
。】
亦到其兄
白彥王
(
しろ日子のみこ
)
許而
告狀
(
かたちをつぐる
)
如前
(
さきのごとし
)
。
白彥王
(
しろひこのみこ
)
亦怠
緩
(
ゆるへる
)
如
黑彥王
(
くろ日子のみこ
)
。大長谷王即握其
衿
(
ころものくび
)
以
引率來
(
ひきゐてき
)
,到
小治田
(
をはりだ
)
,
堀
(
ほり
)
穴而
隨立
(
たてながら
)
活
埋
(
うづみ
)
。至埋
腰
(
こし
)
時,
白彥王
(
しろひこのみこ
)
兩目
(
ふたつのめ
)
走拔
(
はしりぬけ
)
而
死
(
しにき
)
。 大長谷王亦
興軍
(
いくさをおこし
)
,
圍
(
かくみき
)
圓使主
(
都夫良意美
)
之
家
(
いへ
)
。爾
圓使主
(
つぶらおみ
)
興軍
待戰
(
まちたたかひ
)
,
射出之矢
(
いいだすや
)
,如
葦
(
あし
)
來散
(
きちりき
)
。於是,大長谷王以
矛
(
ほこ
)
為
杖
(
つゑ
)
,
臨
(
のぞみ
)
其內
(
そのうち
)
詔:「我
所相言之孃子
(
あひいへるをとめ
)
者,
若
(
もし
)
在
(
有
)
此家乎?」
【○
圓使主
(
つぶらおみ
)
原文
つぶらおみ
(
都夫良意美
)
以音。
在
(
あり
)
原文
有
(
あり
)
。】
爾
圓使主
(
都夫良意美
)
聞此
詔命
(
おほみこと
)
,
自
(
みづから
)
參而出
(
まゐいで
)
,
解
(
とき
)
所佩
(
はける
)
兵
(
つはもの
)
而
八度拜
(
やたびをろがみ
)
白者:「
先日
(
さきのひ
)
所問賜之女子
(
とひたまへるをとめ
)
,
韓姬
(
訶良比賣
)
者,奉
侍
(
はべらむ
)
。亦
副
(
そへ
)
五處屯倉
(
いつところ之屯宅
)
,以
獻
(
たてまつらむ
)
。
【
所謂
(
いはゆる
)
五村
(
いつむら
)
屯宅
(
みやけ
)
者,今
葛城
(
かづらき
)
之
五村苑人
(
いつむらのそのひと
)
也。
○
韓姬
(
からひめ
)
原文
からひめ
(
訶良比賣
)
以音。
屯倉
(
みやけ
)
原文
屯宅
(
みやけ
)
。
】
然其
正身
(
ただみ
)
所以
(
ゆゑ
)
不參向
(
まゐむかはぬ
)
者,自
往古
(
いにしへ
)
至
今時
(
いま
)
,
聞
(
きけ
)
臣
(
おみ
)
、
連
(
むらじ
)
隱
(
かくりし
)
於
王宮
(
みこのみや
)
,
未聞
(
きかず
)
王子
(
みこ
)
隱於
臣家
(
おもがいへ
)
。
是以
(
ここをもち
)
思
(
おもふに
)
,
賤奴
(
いやしきやつこ
)
使主
(
意富美
)
者,雖
竭力
(
ちからをつくし
)
戰
(
たたかふ
)
,
更
(
さらに
)
無可勝
(
かつべきことなけむ
)
。
然
(
しかれども
)
恃己
(
おのれをたのみ
)
入坐
(
いりませる
)
于
陋家
(
いやしきいへ
)
之
王子
(
目弱王
)
者,
死而不棄
(
しぬともすてじ
)
。」
如此白
(
かくまをし
)
而亦
取
(
とり
)
其
兵
(
つはもの
)
,
還入
(
かへりいり
)
以
戰
(
たたかひき
)
。
爾
圓使主
(
つぶらおみ
)
力窮
(
ちからつき
)
矢盡
(
やつきぬ
)
,
白
(
まをし
)
其
王子
(
目弱王
)
:「
僕
(
やつかれ
)
者,手
悉傷
(
ことごとくおひつ
)
,矢亦
盡
(
つきぬ
)
。今
不得戰
(
たたかふことえず
)
,
何如
(
いかに
)
?」其
王子
(
目弱王
)
答詔:「
然者
(
しからば
)
,更
無可為
(
すべきことなし
)
。汝今
殺
(
ころせ
)
吾。」故
圓使主
(
つぶらおみ
)
以刀
刺殺
(
さしころし
)
其
王子
(
みこ
)
,乃
刎
(
切
)
己頸
(
おのがくび
)
以
死也
(
しにき
)
。
【○
刎
(
はね
)
原文
切
(
きり
)
。】
自茲以後
(
これよりのち
)
,
近江
(
淡海
)
之
狹狹城山君
(
佐佐紀やまのきみ
)
之
祖
(
おや
)
韓帒
(
からふくろ
)
白:「
近江
(
淡海
)
來田綿
(
久多綿
)
之
蚊屋野
(
かやの
)
,
豬鹿
(
しし
)
多在
(
あまたあり
)
。其
立足
(
たてるあし
)
者如
莪原
(
うはぎのはら
)
,
指舉角
(
さしあげるつの
)
者如
枯松
(
からまつ
)
。」此時,大長谷王
相率
(
あひゐて
)
市邊之忍齒王
(
いちのへのおしはのみこ
)
,
幸行
(
いでまし
)
近江
(
淡海
)
。到其野者,
各
(
おのおの
)
異
(
ことに
)
作
假宮
(
かりみや
)
而
宿
(
やどりき
)
。
【○
近江
(
あふみ
)
原文
淡海
(
あふみ
)
。
狹狹城
(
ささき
)
原文
ささき
(
佐佐紀
)
以音。
來田綿
(
くたわた
)
原文
久多綿
(
くたわた
)
。】
爾
明旦
(
あくるあした
)
,日
未出之時
(
いまだいでぬとき
)
,
忍齒王
(
おしはのみこ
)
以
平心
(
たひらけきこころ
)
,
隨乘
(
のりながら
)
御馬
(
みま
)
,
到立
(
いたりたち
)
大長谷王
假宮
(
かりみや
)
之
傍
(
かたはら
)
,而詔其大長谷王子之
御伴人
(
みともひと
)
:「
未寤
(
いまださめず
)
坐?
可早白也
(
はやくまをすべし
)
。夜既
曙訖
(
あけをはりぬ
)
,可幸
獦庭
(
かりには
)
。」乃
進
(
すすめ
)
馬
出行
(
いでゆきき
)
。
爾
侍
(
はべる
)
其大長谷王之
御所
(
みもと
)
人等
白
(
まをさく
)
:「
此王子
(
忍齒王
)
,多
云
(
いふ
)
不快
別樣
(
宇多弖
)
事
(
物
)
矣。
故
(
かれ
)
,
應慎
(
つつしむべし
)
。亦
宜堅
(
かたむべし
)
御身
(
みみ
)
。」大長谷王子即
衣中
(
きぬのうち
)
服
(
き
)
甲
(
よろひ
)
,
取佩
(
とりはき
)
弓矢
(
ゆみや
)
,
乘
(
のり
)
馬出行。
儵忽之間
(
たちまちのあひだ
)
,
自馬
(
うまより
)
往並
(
ゆき雙
)
,
拔
(
ぬき
)
矢
射落
(
いおとし
)
其忍齒王。乃亦
切
(
きり
)
其身,
入
(
いれ
)
於
馬樎
(
うまふね
)
,與
土
(
つち
)
等埋
(
ひとしくうづみき
)
。
【○
別樣
(
うたて
)
原文
うたて
(
宇多弖
)
以音,特別不快之意。
並
(
ならび
)
原文
雙
(
ならび
)
。】
於是,
市邊忍齒王
(
いちのへのおしはのみこ
)
之
王子
(
みこ
)
億計王
(
意祁のみこ
)
、
弘計王
(
袁祁のみこ
)
等,
【二柱。
○
億計
(
おけ
)
、
弘計
(
をけ
)
原文
おけ
(
意祁
)
、
をけ
(
袁祁
)
以音。
】
聞
此亂
(
このみだれ
)
而
逃去
(
にげさりき
)
。故到
山城
(
山代
)
苅羽井
(
かりはゐ
)
,
食
(
はむ
)
御糧
(
みかりて
)
之時,
面黥老人
(
おもてさけるおきな
)
來,
奪
(
うばひき
)
其糧。爾其
二王
(
ふたはしらのみこ
)
言:「
不惜
(
をしまず
)
糧。然,
汝
(
なむち
)
者
誰人
(
たれ
)
?」答曰:「我者,
山城
(
山代
)
之
豬飼
(
ゐ甘
)
也。」故,
逃渡
(
にげわたり
)
楠葉河
(
玖須婆之かは
)
,至
播磨國
(
針間のくに
)
,
入
(
いり
)
其
國人
(
くにひと
)
縮
(
志自牟
)
之
家
(
いへ
)
,
隱身
(
みをかくし
)
,
役
(
えだちき
)
於
馬飼
(
うま甘
)
、
牛飼
(
うし甘
)
也。
【○
山城
(
やましろ
)
、
播磨
(
はりま
)
原文
山代
(
やましろ
)
、
針間
(
はりま
)
。
飼
(
かひ
)
原文
甘
(
かひ
)
。
楠葉
(
くすば
)
、
縮
(
しじむ
)
原文
くすば
(
玖須婆
)
、
しじむ
(
志自牟
)
以音。原文。】
雄略天皇 泊瀨朝倉宮傳承地
吳原 栗原 吳津彥神社
鰹木 元伊勢阿紀神社
鰹木或稱勝男木,筒狀,與千木並為神社、宮殿屋頂之代表性裝飾。
白山神社 萬葉集發燿讚仰碑
日本最古和歌集萬葉集,以雄略帝之歌為發端。此御世,詩歌多作。
贈若日下部王御歌
:「
草壁日下部 河內日下此方山 真菰重疊薦 生駒矢田平群山 此方彼方之 諸山群山峽谷間 繁茂植立榮 葉廣熊樫熊白檮 於彼樫根本 茂竹密生竹叢生 於彼樫末梢 繁竹多生竹叢生 茂竹也隱籠 不欲隱匿竊相寢 繁竹也切確 雖不確供率寢者 其後欲籠相寢兮 如此所思吾愛妻 嗚呼天晴矣
」
三輪川 大和川
引田部赤豬子傳說地 秉田神社
雄略帝賜赤豬子歌
其一
:「
三輪御諸山 稜威聖嚴白檮下 聖樫甚難近 猶彼聖樫忌忌哉 樫原童女甚難近
」
其二
:「
辟田引田之 若栗栖原稚栗林 於彼年稚時 若得率寢則益矣 惜兮吾今已老哉
」
引田部赤豬子歌碑
其處有池,植有原始蓮群生。
赤豬子答歌
其一
:「
三輪御諸山 三輪社所築玉垣 妾身付大神 今日當依誰得恃 侍奉不離神宮人
」
其二
:「
日下入江之 入江之蓮生茂茂 猶彼繁花蓮 身盛體壯猶稚人 令人稱羨亦妒哉
」
吉野離宮、蜻蛉野 宮瀧遺跡
譽童女善儛御歌
:「
鎮居坐胡床 神之御手持奏曲 合彈琴瑟聲 童女起儛姿翩翩 願留此姿永常世
」
帝讚蜻蛉歌
:「
偉哉御吉野 小室鳴武羅岳上 豬鹿雌伏矣 誰人孰者將此事 告諸大前奏上乎 八方治天下 八紘御宇我大君 靜待豬與鹿 立於胡床坐其上 白栲素織服 身著白袖具素織 吾人手腓上 虻蝱搔付噆吾臂 其噆吾臂虻 蜻蛉速來咋將去 如斯欲厥忠 欲負汝名留後世 今命虛空見 秀真日本大倭國 謂之秋津蜻蛉島
」
雄略帝與大豬
雄略帝畏大豬,登榛而歌
:「
八方治天下 八紘御宇我大君 田獵遊射兮 狩豬嗔豬怒威暴 以畏其豬嗔呻聲 我故逃登竄樹上 在丘高岡上 高聳榛木堯枝矣
」
葛城山
葛城坐一言主神社
天皇巡狩葛城山,御行伍恰如天皇行列,服儀無異、人眾無差。後知葛城一言主之大神是也。
春日 奈良公園
平城以東。金鉏岡所在未詳。
雄略帝見袁杼姬逃隱岡金鉏岡歌
:「
媛女袁杼姬 逃隱岡間匿其姿 若有金鉏鋤 若有金鉏五百箇 便得鉏撥掘土起
」
葵祭 采女
三重婇求赦歌
:「
纏向日代宮 先帝景行坐宮者 彼是朝日日照宮 亦是夕日日光宮 竹根根足宮 復為木根根延宮 八百良兮杵築宮 真木榮兮檜御門 在其新嘗屋殿旁 百足生立槻枝者 高槻上枝覆高天 中枝覆吾嬬東國 下枝覆畿外夷鄙 上枝枝末葉 零落飄盪觸中枝 中枝枝末葉 零落飄盪觸下枝 下枝末葉落何處 華美晴在衣 三重采女所奉捧 精雕細琢瑞玉盞 下枝末葉如浮脂 漂落盞上若浮嶋 水鳴滾滾若凝嶋 潮沫凝成磤馭慮 如是誠惶甚畏恐 高光普下照 日御子兮我大君 冀將此事矣 願將吾述言語者 流傳延末世
」
大后見婇得赦歌
:「
大和大倭國 在其高處此高市 小高市高處 位彼市之高丘上 在其新嘗屋殿旁 繁生茂植立 葉廣聖兮齋真椿 猶彼葉兮蔭廣坐 若其花兮遍照坐 高光普下照 日御子兮我大君 願飲酩醴豐御酒 今獻御酒奉杜康 冀將此事矣 願將吾述言語者 流傳延末世
」
雄略帝答歌
:「
百敷百石城 殿上顯貴大宮人 彼等猶鶉鳥 懸取領巾披領巾 彼亦猶鶺鴒 長袖振尾相交行 彼亦猶庭雀 群集眾聚居一堂 今日亦饗宴 酒水漬之慶豐明 高光普下照 日之百敷大宮人 冀將此事矣 願將吾述言語者 流傳延末世
」 帝與袁杼姬唱和
一
:「
水濯水勢大 吾臣袁杼姬孃子 手取秀罇奉執矣 手執秀酒甕 堅執秀罇奉執之 確執堅執矣 確確彌堅持秀罇 手執秀罇美孃子
」
二
:「
八方治天下 八紘御宇我大君 每在朝日時 寄身倚立幸妾傍 每在朝暮時 寄身倚立幸妾傍 還願身化脇机下 机下板者永侍傍 麗壯吾兄君
」
雄略天皇 丹比高鷲原陵
宮內廳合島泉丸山、島泉平塚古墳,治定為雄略天皇陵。
大長谷若武命
(
おほはつせのわか建のみこと
)
,坐
長谷朝倉宮
(
はつせのあさくらのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
雄略天皇
(
いうりゃくてんわう
)
。】
天皇
(
すめらみこと
)
娶
(
めとり
)
大日下王
(
おほくさかのみこ
)
之
妹
(
いも
)
若日下部王
(
わかくさかべのみこ
)
。
【
無子
(
こなし
)
。】
又娶
圓使主
(
都夫良意富美
)
之
女
(
むすめ
)
韓姬
(
から比賣
)
。
【○
圓使主
(
つぶらおほみ
)
原文
つぶらおほみ
(
都夫良意富美
)
以音。】
生御子,
白髮命
(
しらかのみこと
)
。
【○
清寧天皇
(
せいねいてんわう
)
。】
次妹,
稚足姬命
(
わかたらし比賣のみこと
)
。
【二柱。
○
稚足姬
(
わかたらし
)
原文
若帶比賣
(
わかたらし
)
,為
伊勢齋宮
(
いせのいつきのみや
)
。
】
故為
白髮太子
(
しらかのひつぎのみこ
)
之
御名代
(
みなしろ
)
,
定
(
さだめ
)
白髮部
(
しらかべ
)
。又定
長谷部舍人
(
はつせべのとねり
)
,又定
河瀨舍人
(
かはせのとねり
)
也。
此時,
吳人
(
くれひと
)
參渡來
(
まゐわたりきたり
)
朝。遂
安置
(
おきき
)
其吳人於
吳原
(
くれはら
)
,故
號
(
なづけ
)
其地
(
そこ
)
謂
(
いふ
)
吳原也。 初
大后
(
若日下王
)
坐
日下
(
くさか
)
之時,
天皇
(
雄略
)
自日下之
直越道
(
ただこえのみち
)
,
幸行
(
いでましき
)
河內
(
かふち
)
。爾
登
(
のぼり
)
山上
(
やまのうへ
)
望
(
のぞみ
)
國內
(
くにのうち
)
者,有
舍屋
(
や
)
上
(
あげ
)
作
(
つくれる
)
鰹木
(
堅魚ぎ
)
之
家
(
いへ
)
。
天皇
(
雄略
)
令問
(
とはしめ
)
其家云:「其上
鰹木
(
堅魚ぎ
)
作舍者,
誰家
(
たがいへ
)
?」答白:「
磯城
(
志幾
)
之
大縣主
(
おほあがたぬし
)
家。」
【○
鰹木
(
かつをぎ
)
原文
堅魚木
(
かつをぎ
)
,神社、宮殿屋上之裝飾。
磯城
(
しき
)
原文
しき
(
志幾
)
以音。】
爾
天皇
(
雄略
)
詔者:「
奴乎
(
やつこや
)
!
造
(
つくれり
)
己家
(
おのがいへ
)
似
(
にせて
)
天皇之御舍
(
すめらみことのみあらか
)
!」即
遣
(
つかはし
)
人,
令燒
(
やかしめむ
)
其家。時其
大縣主
(
おほあがたぬし
)
,
懼畏
(
おぢかしこみ
)
稽首
(
ぬかつき
)
白:「
奴有者
(
やつこにしあれば
)
,
隨奴
(
やつこながら
)
不覺
(
さとらず
)
而僭禮
過作
(
あやまちつくれる
)
。
甚畏
(
いとかしこし
)
。故
獻
(
たてまつらむ
)
祈
(
能美
)
之
御幣物
(
みまひもの
)
。
【○
祈
(
のみ
)
原文
のみ
(
能美
)
以音。】
」
布
(
ぬの
)
縶
(
かけ
)
白犬
(
しろきいぬ
)
著鈴
(
すずをつけ
)
而遣
己族
(
おのがうがら
)
,名謂
腰佩
(
こしはき
)
,令取
犬繩
(
いぬのなは
)
以
獻上
(
たてまつりき
)
。故
令止
(
やめしめき
)
其
著火
(
ひをつくる
)
。
即,
幸行
(
いでまし
)
其
若日下部王
(
わかくさかべのみこ
)
之
許
(
もと
)
,
賜入
(
たまひいれ
)
其犬,
令詔
(
のりたまはしむ
)
:「
是物
(
このもの
)
者,
今日
(
けふ
)
得
道
(
みち
)
之
奇物
(
あやしきもの
)
。故,以為
娉物
(
都麻杼比之もの
)
。」
於是
(
ここに
)
,若日下部王,
令奏
(
まをさしめ
)
天皇
(
雄略
)
:「君貴日神之裔,
背
(
そむき
)
日
幸行之事
(
いでましつること
)
,
甚恐
(
いとかしこし
)
。故,
己
(
おのれ
)
直參上
(
ただにまゐのぼり
)
而
仕奉
(
つかへまつらむ
)
。」
【○
娉
(
つまどひ
)
原文
つまどひ
(
都麻杼比
)
以音,
妻問
(
つまどひ
)
。背日幸行,此云嚮西而來。】
是以,
天皇
(
雄略
)
還上坐
(
かへりのぼります
)
於
宮
(
みや
)
之時,
行立
(
ゆきたち
)
其山之
坂上
(
さかのうへ
)
,歌曰:
日下部
(
くさかべ
)
の
此方
(
こち
)
の
山
(
やま
)
と
疊薦
(
たたみこも
)
平群山
(
へぐりのやま
)
の
此方彼方
(
こちごち
)
の
山峽
(
やまのかひ
)
に
立榮
(
たちざか
)
ゆる
葉廣熊白檮
(
はびろくまかし
)
本
(
もと
)
には い
茂竹生
(
くみだけお
)
ひ
末邊
(
すゑへ
)
には
多繁竹生
(
たしみだけお
)
ひ い
茂竹
(
くみだけ
)
い
隱
(
く
)
みは
寢
(
ね
)
ず
多繁竹
(
たしみだけ
)
確
(
たし
)
には
率寢
(
ゐね
)
ず
後
(
のち
)
も
隱寢
(
くみね
)
む
其思妻
(
そのおもひづま
)
天晴
(
あは
)
れ
亦
一時
(
あるとき
)
,
天皇
(
雄略
)
遊行
(
あそびありき
)
,到於
三輪河
(
美和がは
)
時,
河邊
(
かはのへ
)
有
洗衣
(
きぬをあらふ
)
童女
(
をとめ
)
,其
容姿
(
かたち
)
甚麗
(
いとうるはし
)
。
天皇
(
すめらみこと
)
問其童女:「
汝
(
なむち
)
者
誰子
(
たがこ
)
?」答白:「
已名
(
おのがな
)
謂
(
いふ
)
引田部赤豬子
(
ひけたべのあかゐこ
)
。」爾,
令詔
(
のりたまはしむ
)
者:「汝
勿
(
不
)
嫁
夫
(
を
)
,今
將喚矣
(
めしてむ
)
。」而
還坐
(
かへりましき
)
於
宮
(
みや
)
。
【○
三輪
(
みわ
)
原文
美和
(
みわ
)
。
勿嫁
(
あふな
)
原文
不嫁
(
あはず
)
,此詔赤豬子莫嫁他男,必喚入宮內。】
故其
赤豬子
(
あかゐこ
)
,
仰待
(
あふぎまち
)
天皇之
命
(
みこと
)
,既經
八十歲
(
やそとせ
)
。於是,赤豬子
以為
(
おもはく
)
:「
望命之間
(
みことをねがひつるあひだ
)
,已
經
(
へぬ
)
多年
(
あまたのとし
)
。
姿體
(
かたち
)
瘦萎
(
やせしなえ
)
,更無
所恃
(
たのむところ
)
。然,非
顯
(
あらはす
)
待情
(
まちつるこころ
)
,
不忍
(
たへじ
)
於
悒
(
いふせき
)
。」而令持
百取机代物
(
ももとり之つくえしろのもの
)
,
參出
(
まゐいで
)
貢獻
(
たてまつりき
)
。
然,
天皇
(
雄略
)
既忘先
所命之事
(
おほせたまへること
)
,問其
赤豬子
(
あかゐこ
)
曰:「汝者
誰老女
(
たがをみな
)
?
何由
(
なにのゆゑ
)
以
參來
(
まゐきつる
)
?」赤豬子
答白
(
こたへまをし
)
:「
其年其月
(
それのとしそれのつき
)
,
被
(
かがふり
)
天皇之命
(
すめらみことのみこと
)
,仰待
大命
(
おおみこと
)
以喚禁中,至於
今日
(
けふ
)
,
經
(
へぬ
)
八十歲。今
容姿
(
かたち
)
既耆
(
すでにおい
)
,
更
(
さらに
)
無所恃,蒙幸無望。然
欲顯白
(
あらはしまをさむ
)
己志
(
おのれがこころざし
)
,以參出
耳
(
のみ
)
。」於是,
天皇
(
雄略
)
大驚
(
おほきにおどろき
)
詔曰:「吾既
忘
(
わすれたり
)
先事
(
さきのこと
)
。
然
(
しかれども
)
汝
守
(
まもり
)
志待命,
徒
(
いたづら
)
過
盛年
(
さかりのとし
)
,是
甚愛悲
(
いとうつくしくかなし
)
。」
心裏
(
こころのうち
)
欲
婚
(
あはむ
)
,
悼
(
いたみ
)
其
亟老
(
きはめておい
)
,不得
成婚
(
あひをなす
)
,而
賜
(
たまひき
)
御歌
(
みうた
)
。其歌曰:
三諸
(
みもろ
)
の
嚴白檮
(
いつかし
)
が
下
(
もと
)
白檮
(
かし
)
が
下
(
もと
)
忌忌
(
ゆゆ
)
しき
哉
(
かも
)
白檮原童女
(
かしはらをとめ
)
天皇
(
雄略
)
又歌曰:
引田
(
ひけた
)
の
若栗栖原
(
わかくるすばら
)
若邊
(
わかくへ
)
に
率寢
(
ゐね
)
て
益物
(
ましもの
)
老
(
お
)
いにける
哉
(
かも
)
爾
(
しかくし
)
赤豬子
(
あかゐこ
)
之
泣淚
(
なくなみた
)
,
悉
(
ことごとく
)
濕
(
ぬらしき
)
其
所服
(
きたる
)
之
丹摺袖
(
にずりのそで
)
。遂答其
大御歌
(
おほみうた
)
而歌曰:
三諸
(
みもろ
)
に
築
(
つ
)
くや
玉垣
(
たまかき
)
付餘
(
つきあま
)
し
誰
(
た
)
にかも
依
(
よ
)
らむ
神
(
かみ
)
の
宮人
(
みやひと
)
赤豬子
(
あかゐこ
)
又歌曰:
日下江
(
くさかえ
)
の
入江蓮
(
いりえのはちす
)
花蓮
(
はなばちす
)
身
(
み
)
の
盛人
(
さかりびと
)
羨
(
とも
)
しきろ
哉
(
かも
)
爾,
賜
(
給
)
其
老女
(
をみな
)
多祿
(
あまたのたまひもの
)
,以
返遣也
(
かへりやりき
)
。故此
四歌
(
よつのうた
)
者,
志都歌
(
しつうた
)
也。
天皇
(
雄略
)
幸行
(
いでまし
)
吉野宮
(
よしののみや
)
。時
吉野川
(
よしののかは
)
之
濱
(
ほとり
)
,有
童女
(
をとめ
)
。其
形姿
(
かたち
)
美麗
(
うるはし
)
,故
婚
(
あひ
)
是童女而
還坐
(
かへりましき
)
於
宮
(
長谷朝倉
)
。
後
更亦
(
さらにまた
)
幸行
吉野
(
よしの
)
之時,
留
(
とどめ
)
所遇
(
あへる
)
其
童女
(
をとめ
)
之處,豎
立
(
たて
)
大御吳床
(
おほみあぐら
)
。
天皇
(
雄略
)
坐其御吳床而
彈
(
ひき
)
御琴
(
みこと
)
,令其
孃子
(
をとめ
)
為
儛
(
まひ
)
。爾,因其孃子之
善儛
(
好まひし
)
,作御歌。其歌曰:
【○
吳床
(
あぐら
)
,付足之台座,高貴者之座席。
善儛
(
よくまひ
)
原文
好儛
(
よくまひ
)
。】
吳床居
(
あぐらゐ
)
の
神御手持
(
かみのみても
)
ち
彈琴
(
ひくこと
)
に
儛
(
まひ
)
する
女
(
をみな
)
常世
(
とこよ
)
にも
哉
(
かも
)
即
(
すなはち
)
天皇
(
雄略
)
幸
蜻蛉野
(
阿岐豆の
)
而
御獦之時
(
みかりせしとき
)
,
天皇
(
すめらみこと
)
坐
御吳床
(
みあぐら
)
。爾
𧉫
(
あむ
)
咋
御腕
(
みただむき
)
,即有
蜻蛉
(
あづき
)
來,
咋
(
くひ
)
其𧉫而
飛
(
とびき
)
。
【訓蜻蛉云
あづき
(
阿岐豆
)
也。
○
𧉫
(
あむ
)
,
虻
(
あむ
)
之古形。
】
於是,
天皇
(
雄略
)
作御歌。其歌曰:
御吉野
(
みえしの
)
の
小室
(
をむろ
)
が
岳
(
たけ
)
に
豬鹿伏
(
ししふ
)
すと
誰
(
たれ
)
そ
大前
(
おほまへ
)
に
奏
(
まを
)
す
八隅治
(
やすみし
)
し
我
(
わ
)
が
大君
(
おほきみ
)
の
豬鹿待
(
ししまつ
)
と
吳床
(
あぐら
)
に
坐
(
いま
)
し
白栲
(
しろたへ
)
の
袖著具
(
そてきそな
)
ふ
手腓
(
たこむら
)
に
虻搔
(
あむかきつ
)
き
其虻
(
そのあむ
)
を
蜻蛉速咋
(
あきづはやぐ
)
ひ
如斯
(
かくのごと
)
名
(
な
)
に
負
(
お
)
はむと
虛空見
(
そらみ
)
つ
倭國
(
やまとのくに
)
を
蜻蛉島
(
あきづしま
)
とふ
故
自
(
より
)
其時,
號
(
なづけ
)
其野謂
蜻蛉野
(
阿岐豆の
)
也。
又
(
また
)
一時,
天皇
(
雄略
)
登幸
(
のぼりいでましき
)
葛城之山上
(
かづらきのやまのうへ
)
。爾
大豬
(
おほきゐ
)
,
出
(
いでき
)
。
天皇
(
雄略
)
即以
鳴鏑
(
かぶら
)
射
(
い
)
其豬。時其豬
怒
(
いかり
)
而
嗔吟
(
宇多岐
)
依來
(
よりきたり
)
。
【
嗔吟
(
うたき
)
原文
うたき
(
宇多岐
)
以音,
唸
(
うた
)
き。】
故
天皇
(
すめらみこと
)
畏其
嗔吟
(
宇多岐
)
,竄
登
(
のぼり
)
榛
(
はり
)
上。爾,歌曰:
八隅治
(
やすみし
)
し
我大君
(
わがおほきみ
)
の
遊
(
あそ
)
ばしし
豬
(
しし
)
の
病豬
(
やみしし
)
の
唸畏
(
うたきかしこ
)
み
我
(
わ
)
が
逃登
(
にげのぼ
)
りし
在丘
(
ありを
)
の
榛木枝
(
はりのきのえだ
)
又一時,
天皇
(
雄略
)
登幸
葛城山
(
かだらきのやま
)
。時
百官人等
(
もものつかさのひとら
)
,
悉
(
ことごとく
)
賜
(
給
)
服
(
きたり
)
著
(
つけたる
)
紅紐
(
くれなゐのひも
)
之
青摺衣
(
あをずりのころも
)
。
其時,有人自其
所向
(
むかへる
)
之
山尾
(
やまのを
)
登
山上
(
やまのうへ
)
。
既
(
すでに
)
等
(
ひとしく
)
天皇
(
すめらみこと
)
之
鹵簿
(
みゆきのつら
)
,亦其
束裝之狀
(
よそひのかたち
)
及
人眾
(
ひとかず
)
,
相似
(
あひに
)
天皇之
行列
(
みゆきのつら
)
而
不傾
(
かたぶかず
)
。爾
天皇
(
雄略
)
望
(
のぞみ
)
,令問曰:「於
茲
(
この
)
倭國
(
やまとのくに
)
,
除
(
おき
)
吾亦無
王
(
きみ
)
。今
誰人
(
たれ
)
如此而行
(
かくてゆく
)
?」即
答曰之狀
(
こたへいふかたち
)
,
亦
(
また
)
如
(
ごとし
)
天皇之命
(
すめらみことのみこと
)
。於是,
天皇
(
雄略
)
大忿
(
おほきにいかり
)
而
搆矢
(
矢刺
)
,百官人等悉
搆矢
(
矢刺
)
張弦。其人等,亦皆
搆矢
(
矢刺
)
。故天皇亦
問
(
とひ
)
曰:「願
告
(
のれ
)
其名
(
そのな
)
。爾,
各
(
おのおの
)
告名而
彈
(
はなたむ
)
矢。」於是答曰:「吾先
見問
(
とはえつ
)
,故吾
先
(
まづ
)
為
名告
(
なのり
)
。
吾
(
あれ
)
者,
雖
(
とも
)
惡事
(
あしきこと
)
而
一言
(
ひとこと
)
,雖
善事
(
よきこと
)
而一言,訴斷
言離之神
(
いひはなつかみ
)
,
葛城
(
かづらき
)
一言主之大神
(
ひとことぬしのおほかみ
)
者也!」
【○
山尾
(
やまのを
)
,山裾延伸之處。
鹵簿
(
みゆきのつら
)
,
行列
(
みゆきのつら
)
是也。
搆矢
(
やさし
)
原文
矢刺
(
やさし
)
,張弓上矢指之之狀。】
天皇
(
雄略
)
於是
惶畏
(
おそりかしこみ
)
而白:「惶
恐
(
かしこし
)
,
我大神
(
わがおほかみ
)
。
是
(
有
)
顯臣
(
宇都志意美
)
者,
不覺
(
さとらず
)
冒犯。」如此白而
始
(
はじめ
)
收
大御刀
(
おほみたち
)
及
弓矢
(
ゆみや
)
,令百官人等
褪
(
脫
)
所服
(
きたる
)
之
衣
(
ころも
)
以
拜獻
(
をろがみたてまつりき
)
。爾其
一言主大神
(
ひとことぬしのおほかみ
)
,
擊掌
(
手打
)
受其
奉物
(
まつりもの
)
。故
天皇
(
すめらみこと
)
之
還幸
(
かへりいでます
)
時,
其大神
(
一言主
)
之人眾,
滿
(
みて
)
山末
(
やまのすゑ
)
於
長谷山口
(
はつせのやまぐち
)
,
送奉
(
おくりまつりき
)
。故是一言主之大神者,
彼時
(
そのとき
)
所顯
(
あらはれたる
)
也。
【○
顯臣
(
うつしおみ
)
原文
うつしおみ
(
宇都志意美
)
以音,顯世之人臣。天皇雖為
顯人神
(
あらひとがみ
)
,然以肉身,不識大神。
令褪
(
ぬかし
)
原文
令脫
(
ぬかし
)
。
擊掌
(
てうち
)
原文
手打
(
てうち
)
。
滿
(
みて
)
或云
渡
(
わたり
)
之訛,未詳。】
又
天皇
(
雄略
)
欲婚
(
あはむ
)
和邇
(
丸邇
)
之
皐月臣
(
佐都紀のおみ
)
之女
袁杼姬
(
おど比賣
)
,而
幸行
(
いでまし
)
于
春日
(
かすが
)
之時,
道逢
(
みちにあひき
)
媛女
(
をとめ
)
。媛女即見幸行而
逃隱
(
にげかくりき
)
岡邊
(
をかへ
)
。故
天皇
(
雄略
)
作御歌。其歌曰:
【○
和邇
(
わに
)
、
皐月
(
さつき
)
原文
わに
(
丸邇
)
、
さつき
(
佐都紀
)
以音,書紀作
和珥臣深目
(
わにのおみふかめ
)
。
袁杼姬
(
おどひめ
)
紀作
童女君
(
わらはきみ
)
。】
媛女
(
をとめ
)
の い
隱
(
かく
)
る
岡
(
をか
)
を
金鉏
(
かなすき
)
も
五百箇
(
いほち
)
もがも
鉏撥
(
すきば
)
ぬる
物
(
もの
)
故,
號
(
なづけ
)
其岡謂
金鉏岡
(
かなすきのをか
)
也. 又
天皇
(
雄略
)
坐
長谷
(
はつせ
)
之
百枝槻下
(
ももえつきのした
)
,為
豐樂
(
とよのあかり
)
宴時,
伊勢國
(
いせのくに
)
之
三重婇
(
みへのうねめ
)
,
奉
(
指舉
)
大御盞
(
おほみさかづき
)
以
獻
(
たてまつりき
)
。爾其百枝槻
葉
(
は
)
,
落浮
(
おちうきき
)
於大御盞。其
婇
(
うねめ
)
不知
落葉
(
おちば
)
浮盞
(
さかづきにうける
)
,
猶
(
なほ
)
獻大御酒。
天皇
(
すめらみこと
)
看行
(
みそこなはし
)
其浮盞之葉,
打伏
(
うちふせ
)
其婇,以
刀
(
たち
)
刺當
(
さし充
)
其
頸
(
くび
)
。
將斬
(
きらむ
)
之時,其婇
白
(
まをし
)
天皇曰:「
莫殺
(
ころすことなかれ
)
吾身
(
あがみ
)
,有
應白事
(
まをすべきこと
)
。」即歌曰:
【○
豐樂
(
とよのあかり
)
,酒宴。
婇
(
うねめ
)
,
采女
(
うねめ
)
。
奉
(
さしあげ
)
原文
指舉
(
さしあげ
)
,奉觴。
刺當
(
さしあて
)
原文
刺充
(
さしあて
)
。】
纏向
(
まきむく
)
の
日代宮
(
ひしろのみや
)
は
朝日
(
あさひ
)
の
日照宮
(
ひでるみや
)
夕日
(
ゆふひ
)
の
日光宮
(
ひがけるみや
)
竹根
(
たけのね
)
の
根足宮
(
ねだるみや
)
木根
(
このね
)
の
根延宮
(
ねばふみや
)
八百良
(
やほによ
)
し い
杵築宮
(
きづきのみや
)
真木榮
(
まきさ
)
く
檜御門
(
ひのみかど
)
新嘗屋
(
にひなへや
)
に
生立
(
おひだ
)
てる
百足
(
ももだ
)
る
槻枝
(
つきがえ
)
は
上枝
(
ほつえ
)
は
天
(
あめ
)
を
覆
(
おへ
)
り
中枝
(
なかつえ
)
は
東
(
あづま
)
を
覆
(
おへ
)
り
下枝
(
しづえ
)
は
鄙
(
ひな
)
を
覆
(
おへ
)
り
上枝
(
ほつえ
)
の
枝末葉
(
えのうらば
)
は
中枝
(
なかつえ
)
に
落觸
(
おちふ
)
らばへ
中枝
(
なかつえ
)
の
枝末葉
(
えのうらば
)
は
下枝
(
しもつえ
)
に
落觸
(
おちふ
)
らばへ
下枝
(
しづえ
)
の
枝末葉
(
えのうらば
)
は
在衣
(
ありきぬ
)
の
三重子
(
みへのこ
)
が
捧
(
ささ
)
がせる
瑞玉盞
(
みづたまうき
)
に
浮
(
うき
)
し
脂
(
あぶら
)
落漂
(
おちなづさ
)
ひ
水滾滾
(
みなこをろこをろ
)
に
是
(
こ
)
しも
文
(
あや
)
に
畏
(
かしこ
)
し
高光
(
たかひか
)
る
日御子
(
ひのみこ
)
事
(
こと
)
の
語言
(
かたりごと
)
も
是
(
こ
)
をば
故獻此歌者,
赦
(
ゆるしき
)
其罪
(
そのつみ
)
也。爾
大后
(
若日下王
)
,歌。其歌曰:
倭
(
やまと
)
の
此高市
(
このたけち
)
に
小高
(
こだか
)
る
市
(
いち
)
の
高處
(
つかさ
)
新嘗屋
(
にひなへや
)
に
生立
(
おひだ
)
てる
葉廣
(
はびろ
)
齋真椿
(
ゆつまつばき
)
其葉
(
そがは
)
の
廣坐
(
ひろりいま
)
し
其花
(
そのはな
)
の
照坐
(
てりいま
)
す
高光
(
たかひか
)
る
日御子
(
ひのみこ
)
に
豐御酒
(
とよみ
)
き
獻
(
たてまつ
)
らせ
事
(
こと
)
の
語言
(
かたりごと
)
も
是
(
こ
)
をば
即,
天皇
(
すめらみこと
)
歌曰:
百石城
(
ももしき
)
の
大宮人
(
おほみやひと
)
は
鶉鳥
(
うづらとり
)
領巾取懸
(
ひれとりか
)
けて
鶺鴒
(
まなばしら
)
尾行合
(
をゆきあ
)
へ
庭雀
(
にはすずめ
)
群集居
(
うずすまりゐ
)
て
今日
(
けふ
)
もかも
酒水漬
(
さかみづ
)
くらし
高光
(
たかひか
)
る
日宮人
(
ひのみやひと
)
事
(
こと
)
の
語言
(
かたりごと
)
も
是
(
こ
)
をば
此
三歌
(
みつのうた
)
者,
天語歌
(
あまがたりうた
)
也。故於此豐樂宴,
譽
(
ほめ
)
其
三重婇
(
みへのうねめ
)
而
賜
(
給
)
多祿
(
あまたのたまひもの
)
也。 是
豐樂
(
とよのあかり
)
之日,
春日之袁杼姬
(
かすがのおど比賣
)
亦獻
大御酒
(
おほみき
)
之時,
天皇
(
雄略
)
歌曰:
水濯
(
みなそそ
)
く
臣孃子
(
おみのをとめ
)
秀罇取
(
ほだりと
)
らすも
秀罇取
(
ほだりと
)
り
堅
(
かた
)
く
取
(
と
)
らせ
確堅
(
したがた
)
く
彌堅
(
やがた
)
く
取
(
と
)
らせ
秀罇取
(
ほだりと
)
らす
子
(
こ
)
此者,
盞歌
(
宇岐のうた
)
也。爾
袁杼姬
(
おど比賣
)
獻歌,其歌曰:
【○
盞
(
うき
)
原文
うき
(
宇岐
)
以音,
浮
(
う
)
き。】
八隅治
(
やすみし
)
し
我大君
(
わがおほきみ
)
の
朝處
(
あさと
)
には い
倚立
(
よりだ
)
たし
夕處
(
ゆふと
)
には い
倚立
(
よりだ
)
たす
脇机
(
わきづき
)
が
下
(
した
)
の
板
(
いた
)
にもが
吾兄
(
あせ
)
を
此者,
志都歌
(
しつうた
)
也。
天皇
(
雄略
)
御年
(
みとし
)
,
壹佰貳拾肆歲
(
ももあまりはたあまりよとせ
)
。
【
己巳年
(
つちのとのみのとし
)
八月
(
はつき
)
九日
(
ここぬか
)
崩也
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
,在
河內
(
かふち
)
之
丹比高鸇
(
多治比たかわし
)
也。
【○
丹比
(
たぢひ
)
原文
多治比
(
たぢひ
)
。】
清寧天皇 磐余甕栗宮跡
清寧天皇 河內坂門原陵
志染石室 縮見山石室
顯宗帝彰宗歌
:「
物部武人之 我君夫子之 所取佩腰間 砥研大刀柄之上 赤土丹畫著 又於其緒者 載有軍旗朱赤幡 立赤幡見者 重重五十隱 山之三尾御峰上 竹矣搔刈連根拔 梢末押撓縻魚簀 如此奏調八絃琴 所治八紘知天下 去來穗別履中帝 伊邪本和氣天皇 其御子兮市邊之 忍齒王之奴末者 市邊末裔吾是矣
」
飯豐青尊 忍海角刺宮跡 鏡池 顯宗帝、鮪臣歌垣應答
其一
:「
巍峨大宮之 皇居彼方端手處 軒隅壞傾居不安
」
其二
:「
大宮若壞傾 蓋為棟樑匠拙劣 方致軒隅傾不安
」
其三
:「
大君日御子 彼心怠慢方寸緩 故臣子之家 八重柴垣層層圍 大君無術入其間
」
其四
:「
潮瀨流且速 今見波折重幾重 游遊潮瀨間 鮪之鰭手鰭傍處 竟見吾契妻立兮
」
其五
:「
大君日御子 御子之宅圍柴垣 雖以八節縛 八節縛兮層層迴 終將綱斷彼柴垣 終將燔燼彼柴垣
」
其六
:「
嗚呼大魚矣 突銛刺鮪海人哉 其女若離者 汝當思慕衷戀歟 突銛刺鮪鮪臣哉
」
海柘榴市 傳歌垣相闘之處
大伴金村征討平群真鳥
大伴金村征討平群真鳥、鮪父子。
億計、弘計王 王子儛
億計命以弘計命顯宗,堅讓天位。
御子
(
雄略
)
,
白髮大倭根子命
(
しらかのおほやまとねこのみこと
)
,坐
磐余
(
伊波禮
)
之
甕栗宮
(
みかくりのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
清寧天皇
(
せいねいてんわう
)
。】
此
天皇
(
清寧
)
無
皇后
(
おほきさき
)
,亦無
御子
(
みこ
)
。故為
御名代
(
みなしろ
)
,
定
(
さだめ
)
白髮部
(
しらかべ
)
。故
天皇
(
すめらみこと
)
崩後
(
かむあがりしのち
)
,無
可治
(
しろしめすべき
)
天下
(
あめのした
)
之
王
(
みこ
)
也。於是,
問
(
とひ
)
所治
(
知らさむ
)
日繼
(
ひつぎ
)
之
王
(
みこ
)
。
市邊忍齒別王
(
いちのへのおしはわけのみこ
)
之
妹
(
いも
)
忍海郎女
(
おしぬみのいらつめ
)
,亦名
飯豐王
(
いひどよのみこ
)
臨朝秉政,
坐
(
いませき
)
葛城
(
かづらき
)
忍海之高木角刺宮
(
おしぬみのたかぎさしのみや
)
也。
【○
治
(
し
)
原文
知
(
し
)
。按清寧崩時,記紀有別。
御陵
(
みささぎ
)
在
河內坂門原
(
かふちのさかとのはら
)
。】
爾
山部連小楯
(
やまべのむらじをだて
)
,任
播磨國
(
針間のくに
)
之
宰
(
みこともち
)
時,到其國之
人民
(
おほみたから
)
縮
(
志自牟
)
之
新室樂宴
(
にひむろのあそび
)
。
【○
播磨
(
はりま
)
原文
針間
(
はりま
)
。
縮
(
しじむ
)
原文
しじむ
(
志自牟
)
以音。】
於是,
盛樂
(
さかりにあそび
)
酒酣
(
さけたけなは
)
,
以
(
もちて
)
次第
(
つぎて
)
皆儛
(
みなまひき
)
。故
燒火
(
ひをやく
)
少子
(
わらは
)
二口
(
ふたり
)
,居
竈傍
(
かまのかたはら
)
,令其少子
等
(
ども
)
儛。
爾
其一
(
そのひとり
)
少子曰:「
汝兄
(
なね
)
,
先儛
(
まづまへ
)
。」
其兄
(
そのえ
)
亦曰:「
汝弟
(
なおと
)
,先儛。」
如此相讓之時
(
かくあひゆづりしとき
)
,
其會
(
そのつどへる
)
人等
咲
(
わらひき
)
其相讓之
狀
(
かたち
)
。爾,
兄
(
億計
)
遂
(
つひに
)
儛訖
(
まひをはり
)
,
弟
(
弘計
)
次
將儛
(
まはむ
)
時,
為詠
(
うたとみし
)
曰:
物部
(
もののふ
)
の
我夫子
(
わがせこ
)
が
取佩
(
とりは
)
ける
大刀
(
たち
)
の
手上
(
たかみ
)
に
丹畫著
(
にがきつ
)
け
其緒
(
そのを
)
は
赤幡
(
あかはた
)
を
載
(
の
)
せ
赤幡
(
あかはた
)
を
立見
(
たててみ
)
れば
五十隱
(
いかく
)
る
山三尾
(
やまのみを
)
の
竹
(
たけ
)
を
搔き刈
(
訶岐か
)
り
末押縻魚簀
(
すゑおしなぶるなす
)
八絃琴
(
やつをのこと
)
を
調
(
しら
)
ぶる
如
(
ごと
)
く
天下
(
あめのした
)
を
治賜
(
をさめたま
)
へる
伊邪本和氣
(
いざはわけ
)
天皇
(
すめらみこと
)
の
御子市邊之
(
みこいちのへの
)
忍齒王
(
おしはのみこ
)
の
奴末
(
やつこすゑ
)
爾即
小楯連
(
をだてのむらじ
)
聞驚
(
ききおどろき
)
,
自床
(
とこより
)
墮跌
(
おち轉
)
而
逐出
(
追ひだし
)
其
室人等
(
むろのひとども
)
。令
二柱王子
(
ふたはしらのみこ
)
坐其
左右膝上
(
ひだりみぎのひざのうへ
)
,
泣悲
(
なきかなしび
)
。故
集
(
あつめ
)
人民
(
おほみたから
)
作
假宮
(
かりみや
)
,使王子等
坐置
(
いませおき
)
其假宮而
貢上
(
たてまつりき
)
驛使
(
はゆまづかひ
)
。於是,其
姨
(
をば
)
飯豐王
(
いひどよのみこ
)
,
聞歡
(
ききよろこび
)
而
令上
(
のぼらしめき
)
於
宮
(
角刺
)
。
【○
墮跌
(
おちつまづく
)
原文
墮轉
(
おちまろび
)
。
逐出
(
おひだし
)
原文
追出
(
おひだし
)
。】
故,
將治
(
いろしめさむ
)
天下
(
あめのした
)
之間,
平群臣
(
へぐりのおみ
)
之
祖
(
おや
)
鮪臣
(
志毘のおみ
)
立于
歌垣
(
うたがき
)
,
執
(
取
)
其
弘計命
(
袁祁のみこと
)
將婚
(
あはむ
)
之
美人
(
をとめ
)
手。其
娘子
(
をとめ
)
者,
菟田首等
(
うだのおびとひとし
)
之
女
(
むすめ
)
大魚
(
おふを
)
也。爾
弘計命
(
袁祁のみこと
)
亦
立
(
たちき
)
歌垣。於是,
鮪臣
(
志毘のおみ
)
歌曰:
【○
鮪
(
しび
)
、
弘計
(
をけ
)
原文
しび
(
志毘
)
、
をけ
(
袁祁
)
以音。
執
(
とりき
)
原文
取
(
とりき
)
。】
大宮
(
おほみや
)
の
彼方端手
(
をとつはたで
)
隅傾
(
すみかたぶ
)
けり
如此
(
かく
)
歌而,
乞
(
こひ
)
其
歌末
(
うたのすゑ
)
之時,
弘計命
(
袁祁のみこと
)
歌曰:
大匠
(
おほたくみ
)
劣
(
をぢな
)
みこそ
隅傾
(
すみかたぶ
)
けれ
爾
鮪臣
(
志毘のおみ
)
,亦歌曰:
大君
(
おほきみ
)
の
心
(
こころ
)
を
緩
(
ゆら
)
み
臣子
(
おみのこ
)
の
八重柴垣
(
やへのしばかき
)
入立
(
いりた
)
たずあり
於是,
王子
(
弘計
)
亦歌曰:
潮瀨
(
しほせ
)
の
波折
(
なをり
)
を
見
(
み
)
れば
遊來
(
あそびく
)
る
鮪
(
しび
)
が
鰭手
(
はたで
)
に
妻立
(
つまた
)
てり
見
(
み
)
ゆ
爾
鮪臣
(
志毘のおみ
)
,
愈怒
(
いよよいかり
)
歌曰:
大君
(
おほきみ
)
の
御子
(
みこ
)
の
柴垣
(
しばかき
)
八節縛
(
やふじま
)
り
縛迴
(
しまりもとほ
)
し
切
(
き
)
れむ
柴垣
(
しばかき
)
燒
(
や
)
けむ
柴垣
(
しばかき
爾
王子
(
弘計
)
,亦歌曰:
大魚良
(
おふをよ
)
し
鮪突
(
しびつ
)
く
海人
(
あま
)
よ
其
(
し
)
が
離
(
あ
)
れば
心戀
(
うらごほ
)
しけむ
鮪突
(
しびつ
)
く
鮪
(
しび
)
如此歌而,
闘明
(
たたかひあかし
)
各退
(
おのおのしりぞきき
)
。
明旦
(
あくるあした
)
之時,
億計命
(
意祁のみこと
)
、
弘計命
(
袁祁のみこと
)
二柱
議
(
はかり
)
云:「
凡
(
おほよそ
)
朝廷人等
(
みかどのひとら
)
者,
旦
(
あした
)
參赴
(
まゐおもぶき
)
於
朝廷
(
みかど
)
,
晝
(
ひる
)
集
(
つどへり
)
於
鮪門
(
志毘がかど
)
。亦今者
鮪
(
志毘
)
,
必寢
(
かならずいねたらむ
)
。亦其門
無人
(
ひとなけむ
)
。故非今者,
難
(
かたけむ
)
可謀
(
はかるべき
)
。」即
興軍
(
くさをおこし
)
圍
(
かくみ
)
鮪臣
(
志毘のおみ
)
家,
乃
(
すなはち
)
殺也
(
ころしき
)
。
【○
億計
(
おけ
)
原文
おけ
(
意祁
)
以音。晝集於鮪門,此云
阿附
(
おもねる
)
權勢。】
於是,
二柱
(
ふたはしら
)
王子等
(
みこたち
)
,各
相讓
(
あひゆづり
)
天下
(
あめのした
)
。兄
億計命
(
意富祁のみこと
)
讓其弟
弘計命
(
袁祁のみこと
)
曰:「
住
(
すみし
)
於
播磨
(
針間
)
縮
(
志自牟
)
家時,若
汝命
(
ながみこと
)
不顯
(
あらはさず
)
名者,
更
(
さらに
)
非
(
あらず
)
臨
(
のぞむ
)
天下之
君
(
きみ
)
。是
既
(
すでに
)
為汝命之
功
(
いさを
)
。故
吾
(
あれ
)
雖
兄
(
え
)
,
猶
(
なほ
)
汝命
先
(
まづ
)
治
(
しろしめよ
)
天下。」而
堅讓
(
かたくゆづりき
)
。
弘計命
(
袁祁のみこと
)
故
不得
(
えず
)
辭
(
いなぶる
)
而先治
天下
(
あめのした
)
也。
顯宗天皇 近飛鳥八釣宮跡
磐坂市邊押磐皇子墓
傳市邊忍齒王、佐伯部仲子同被害,屍骨交橫,雖置目相別髑髏,四肢竟不能辨,故造雙陵葬之。
村井御前社 祀置目老媼
顯宗帝聞鐸聲歌
:「
荒蔓淺茅原 小谷瘠地亦過兮 百傳驛鈴遠 鐸響鏗鏘遙可聞 置目來歟吾心欣
」
帝悲置目還歌
:「
倭帒置目兮 近江置目老嫗婦 明日過之後 致仕歸隱還深山 不得復見吾心悲
」
河內 飛鳥川
顯宗帝斬豬飼老人於飛鳥河原,亦斷其族膝筋,以報當年奪糧之仇。
雄略天皇 丹比高鷲原陵
顯宗帝為人孝直,有仇報仇,有恩報恩。故厚待置目,斬殺飼豬,而欲毀雄略帝陵。仁賢帝止之。
顯宗天皇 傍丘磐坏丘南陵
顯宗帝崩,其兄仁賢帝繼天皇位。
仁賢天皇 石上廣高宮傳稱地
手白香皇女衾田陵 西殿塚古墳
手白髮郎女適繼體帝為皇后。
仁賢天皇 埴生坂本陵
仁賢帝治天下七年,壽五十而崩。
去來穗別王
(
伊奘本わけのみこ
)
御子
(
履中
)
,
市邊忍齒王
(
いちのへのおしはのみこ
)
御子,
弘計之石巢別命
(
袁祁のいはすわけのみこと
)
坐
近飛鳥宮
(
ちかつあすかのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
捌歲
(
やとせ
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
顯宗天皇
(
けんぞうてんわう
)
。】
天皇
(
顯宗
)
娶
磐城王
(
石木のみこ
)
之
女
(
むすめ
)
難波王
(
なにはのみこ
)
,
無子
(
こなし
)
也。
【○
磐城
(
いはき
)
原文
石木
(
いはき
)
。難波王,書紀作磐城王孫
難波小野王
(
なにはのをののみこ
)
。】
此
天皇
(
顯宗
)
,求其
父王
(
ちちみこ
)
市邊王
(
いちのへのみこ
)
之
御骨
(
みかばね
)
時,在
近江國
(
淡海のくに
)
賤老媼
(
いやしきをみな
)
參出
(
まゐいで
)
白:「
王子
(
市邊忍齒
)
御骨
所埋
(
うづみしところ
)
者,
專
(
もはら
)
吾
能知
(
よくしれり
)
。亦以其
御齒
(
みは
)
可知
(
しるべし
)
。
【御齒者,如
三技忍齒
(
さきくさ押は
)
也。
○
御骨
(
みかばね
)
,
屍
(
かばね
)
也。
忍齒
(
おしは
)
原文
押齒
(
おしは
)
,多層牙。
】
」
爾
起民
(
たみをおこし
)
堀土
(
つちをほり
)
,
求
(
もとめき
)
其
御骨
(
みかばね
)
,即
獲
(
え
)
其御骨,而於其
蚊屋野
(
かやの
)
之
東山
(
ひむかしのやま
)
,作
御陵
(
みさざき
)
葬
(
はぶり
)
。以
韓帒
(
からぶくろ
)
之
子等
(
こら
)
,
令守
(
まもらしめき
)
其陵,
然後
(
しかくしてのち
)
持上
(
もちのぼりき
)
其御骨也。
故
還上
(
かへりのぼり
)
坐而
召
(
めし
)
其
老媼
(
をみな
)
,
譽
(
ほめ
)
其
不失
(
わすれず
)
見,
貞
(
さだかに
)
知
(
しれる
)
其
地
(
ところ
)
,以
賜名
(
なをたまひ
)
號
(
なづけき
)
置目老媼
(
おきめのおみな
)
。
仍
(
すなはち
)
召入
(
めしいれ
)
宮內
(
みやのうち
)
,
敦廣
(
あつくひろく
)
慈賜
(
うつくしびたまひき
)
。故其老媼
所住屋
(
すめるや
)
者,
近作
(
ちかくつくり
)
宮邊
(
みやのへ
)
,
每日
(
ひごと
)
必召
(
かならずめしき
)
。故
懸
(
かけ
)
鐸
(
ぬりて
)
大殿戶
(
おほとののと
)
,
欲
(
おもひし
)
召其老媼之時,必
引鳴
(
ひきなしき
)
其鐸。爾
天皇
(
顯宗
)
作
御歌
(
みうた
)
,其歌曰:
淺茅原
(
あさぢはら
)
小谷
(
をだに
)
を
過
(
す
)
ぎて
百傳
(
ももづた
)
ふ
鐸響
(
ぬてゆら
)
くも
置目來
(
おきめく
)
らしも
於是
(
ここに
)
置目老媼
白
(
まをし
)
:「
僕
(
やつかれ
)
甚
(
はなはだ
)
耆老
(
おいたり
)
,欲
退
(
まからむ
)
本國
(
もとつくに
)
。」故
隨白
(
まをすまにまに
)
退時,
天皇
(
顯宗
)
見送
(
みおくり
)
歌曰:
置目
(
おきめ
)
もや
近江置目
(
あふみのおきめ
)
明日
(
あす
)
よりは
深山隱
(
みやまがく
)
りて
見
(
み
)
えずかもあらむ
天皇
(
顯宗
)
,
求
(
もとめき
)
其
初
(
はじめ
)
逢難
(
わざはひにあひ
)
逃時
(
にげしとき
)
,
奪
(
うばひし
)
其
御粮
(
みかりて
)
豬飼
(
ゐ甘
)
老人
(
おきな
)
。是得
求
(
もとむる
)
喚上
(
めしあげ
)
,
斬
(
きり
)
於
飛鳥河
(
あすかがは
)
之
河原
(
かはら
)
,亦
皆
(
みな
)
斷
(
たちき
)
其族
(
そのうがら
)
之
膝筋
(
ひざのすぢ
)
。
【○
豬飼
(
ゐかひ
)
原文
豬甘
(
ゐかひ
)
。】
是以
(
これをもちて
)
至
(
いたる
)
于今,其
子孫
(
あなすゑ
)
上
(
のぼる
)
於
倭
(
やまと
)
之
日
(
ひ
)
,
必
(
かならず
)
自
(
おのづから
)
跛也
(
あしなへぐ
)
。故以能
標見
(
見志米岐
)
其老
所在
(
ありしところ
)
,謂其地曰
標
(
志米須
)
也。
【○
標見
(
みしめき
)
原文
見しめき
(
み志米岐
)
,
占
(
しめ
)
き、
標
(
しめ
)
き也。
標
(
しめす
)
原文
しめす
(
志米須
)
以音。】
天皇
(
顯宗
)
深怨
(
ふかくうらみ
)
殺其
父王
(
ちちみこ
)
之
大長谷
(
雄略
)
天皇
(
すめらみこと
)
,欲
報
(
むくいむ
)
其靈
(
そのたま
)
。故
欲
(
おもひき
)
毀
(
こほたむ
)
其
大長谷
(
雄略
)
天皇之
御陵
(
みさざき
)
而
遣
(
つかはす
)
人之時,其
胞兄
(
伊呂ね
)
億計命
(
意富祁のみこと
)
奏
(
まをし
)
言:「
破壞
(
やぶりこほたむ
)
是御陵,
不可遣
(
つかはすべくあらず
)
他人
(
あたしひと
)
。
專
(
もはら
)
僕
(
やつかれ
)
自行
(
みづからゆき
)
。如
天皇
(
すめらみこと
)
之
御心
(
みこころ
)
,破壞以
參出
(
まゐいでむ
)
。」爾
天皇
(
顯宗
)
詔:「
然
(
しからば
)
宜
隨命
(
みことのまにまに
)
幸行
(
いでまし
)
。」是以
億計命
(
意富祁のみこと
)
自
下
(
くだり
)
幸而,
少掘
(
すこしほり
)
其
御陵
(
みさざき
)
之
傍
(
かたはら
)
,
還上
(
かへりのぼり
)
復奏
(
かへりことまをし
)
言:「
既
(
すでに
)
堀壞也
(
ほりこほちつ
)
。」
【○
胞
(
いろ
)
原文
いろ
(
伊呂
)
以音。】
爾
天皇
(
顯宗
)
異
(
あやしび
)
其
早還上
(
はやくかへりのぼり
)
而詔:「
如何
(
いかにか
)
破壞
(
やぶりほりこほちつる
)
?」答白:「少掘其陵之
傍土
(
かたはらのつち
)
。」
天皇
(
すめらみこと
)
詔之:「欲
報
(
むくいむ
)
父王之
仇
(
あた
)
,
必
(
かならず
)
悉
(
ことごとく
)
破壞其陵。
何
(
なにぞ
)
僅少掘乎?」兄曰:「
所以
(
ゆゑ
)
為然
(
しかしつる
)
者,
父王
(
ちちみこ
)
之
怨
(
あた
)
,
欲
(
おもふ
)
報其
靈
(
たま
)
,是
誠
(
まこと
)
理
(
ことわり
)
也。然其
大長谷
(
雄略
)
天皇
(
すめらみこと
)
者,雖為
父之怨
(
ちちのあた
)
,
還
(
かへり
)
為我之
從父
(
をぢ
)
,亦
治
(
しろしめし
)
天下
(
あめのした
)
之
天皇
(
すめらみこと
)
。是今
單
(
ひとへ
)
取
父仇
(
ちちのあた
)
之
志
(
こころざし
)
,
悉破
(
ことごとくやぶらば
)
治天下之天皇
陵
(
みさざき
)
者,
後人
(
のちのひと
)
必
誹謗
(
そしらむ
)
。
唯
(
ただ
)
父王之仇,
非報
(
むくいずる
)
不可,故
少掘
(
すこしほりつ
)
其
陵邊
(
はかのへ
)
,既以
是恥
(
このはづかし
)
,
足
(
たれり
)
示
(
しめす
)
後世
(
のちのよ
)
。」
如此
(
かく
)
奏者
(
まをせば
)
,
天皇
(
顯宗
)
答詔之:「
是亦
(
これもまた
)
大理
(
おほきにことわり
)
。
如命
(
みことのごとく
)
可也
(
よし
)
。」故
天皇
(
顯宗
)
崩
(
かむあがりき
)
,即以
億計命
(
意富祁のみこと
)
治
(
知
)
天津日繼
(
あまつひつぎ
)
。
【○
治
(
し
)
原文
知
(
し
)
。
天津日繼
(
あまつひつぎ
)
,皇統之謂也。】
天皇
(
顯宗
)
御年
(
みとし
)
者,
參拾捌歲
(
みそあまりやとせ
)
。治
天下
(
あめのした
)
八歲
(
やとせ
)
。
御陵
(
みさざき
)
,在
片岡
(
かたをか
)
之
石坏岡上
(
いはつきのをかのうへ
)
也。
弘計王
(
袁祁のみこ
)
兄
億計王
(
意富祁のみこ
)
,坐
石上廣高宮
(
いそのかみのひろたかのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
仁賢天皇
(
にんけんてんわう
)
。】
天皇
(
仁賢
)
娶
(
めとり
)
大長谷若武
(
おほはつせのわか建
)
天皇
(
雄略
)
之
御子
(
みこ
)
春日大郎女
(
かすがのおほいらつめ
)
。
生御子,
高木郎女
(
たかぎのいらつめ
)
。
次,
財郎女
(
たからのいらつめ
)
。
次,
樟冰郎女
(
久須毘のいらつめ
)
。
【○
樟冰
(
くすび
)
原文
くすび
(
久須毘
)
以音。】
次,
手白髮郎女
(
たしらかのいらつめ
)
。
次,
小長谷若雀命
(
をはつせのわかさざきのみこと
)
。
【○
武烈天皇
(
ぶれつてんわう
)
。】
次,
真若王
(
まわかのみこ
)
。
又娶
和邇日爪臣
(
丸邇のひつめのおみ
)
之
女
(
むすめ
)
糠若子郎女
(
ぬかのわくごのいらつめ
)
。
【○
和邇
(
わに
)
原文
丸邇
(
わに
)
。】
生御子,
春日山田郎女
(
かすがのやまだのいらつめ
)
。
【○
山田
(
やまだ
)
,或本作
小田
(
をだ
)
、
少田
(
をだ
)
。】
此
天皇
(
仁賢
)
之
御子
(
みこ
)
并
(
あはせ
)
七柱
(
ななはしら
)
。
此之中
(
このなかに
)
,
小長谷若雀命
(
をはつせのわかさざきのみこと
)
者,
治
(
しろしめす
)
天下
(
あめのした
)
也。
四、皇統斷絕與繼體持統
小長谷若雀命
(
をはつせのわかさざきのみこと
)
,坐
長谷
(
はつせ
)
之
列木宮
(
なみきのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
捌歲
(
やとせ
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
武烈天皇
(
ぶれつてんわう
)
。】
此
天皇
(
武烈
)
無
太子
(
ひつぎのみこ
)
。故為
御子代
(
みこしろ
)
,
定
(
さだめき
)
小長谷部
(
をはつせべ
)
也。
御陵
(
みさざき
)
,在
片岡
(
かたをか
)
之
石坏岡
(
いはつきのをか
)
也。
天皇
(
武烈
)
既
崩
(
かむあがりき
)
,無
可治
(
知らすべき
)
日續
(
ひづき
)
之
王
(
みこ
)
。故令
譽田
(
品太
)
天皇
(
すめらみこと
)
五世之孫
(
いつつぎのうまご
)
男大迹命
(
袁本杼のみこと
)
,自
近江國
(
近淡海のくに
)
上坐
(
のぼりいまさし
)
,
合
(
あはせ
)
婚於
手白髮命
(
たしらかのみこと
)
,
授奉
(
さづけまつりき
)
天下
(
あめのした
)
也。
【○
治
(
し
)
原文
知
(
し
)
。
譽田
(
ほむだ
)
原文
品太
(
ほむだ
)
。
男大迹
(
をほど
)
原文
をほど
(
袁本杼
)
以音。
近江
(
ちかつあふみ
)
原文
近淡海
(
ちかつあふみ
)
。武烈天皇無嗣,故招應神帝五世孫繼體與仁賢皇女
手白髮命
(
たしらかのみこと
)
通婚,而承天位。】
譽田
(
品太
)
天皇
(
應神
)
五世孫
男大迹命
(
袁本杼のみこと
)
,坐
磐余
(
伊波禮
)
之
玉穗宮
(
たまほのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
繼體天皇
(
けいたいてんわう
)
。
男大迹
(
をほど
)
、
磐余
(
いはれ
)
原文
をほど
(
袁本杼
)
、
いはれ
(
伊波禮
)
以音。】
天皇
(
繼體
)
娶
(
めとり
)
三尾君
(
みをのきみ
)
等
祖
(
おや
)
若姬
(
わか比賣
)
。
生
御子
(
みこ
)
,
大郎子
(
おほいらつこ
)
。
次,
出雲郎女
(
いづものいらつめ
)
。
【
二柱
(
ふたはしら
)
。】
又娶
尾張連
(
をはりのむらじ
)
等之祖
凡連
(
おほしのむらじ
)
之
妹
(
いも
)
目子郎女
(
めのこのいらつめ
)
。
生御子,
廣國押武金日命
(
ひろくにおし建かなひのみこと
)
。
【○
安閑天皇
(
あんかんてんわう
)
。
武
(
たけ
)
原文
建
(
たけ
)
。】
次,
武小廣國押楯命
(
建をひろくにおしたてのみこと
)
。
【二柱。○
宣化天皇
(
せんくわてんわう
)
。
】
又娶
億計天皇
(
意富祁のすめらみこと
)
之
御女
(
御子
)
手白髮命
(
たしらかのみこと
)
。
【
是
(
これ
)
,
大后
(
おほきさき
)
。】
生
(
うみし
)
御子,
天國排開廣庭命
(
あめくに押波流岐ひろにはのみこと
)
。
【
排開
(
おしはるき
)
原文
おしはるき
(
押波流岐
)
以音。
一柱
(
ひとはしら
)
。
○
欽明天皇
(
きんめいてんわう
)
。
】
又娶
息長真手王
(
おきながのまてのみこ
)
之女
麻組郎女
(
をくみのいらつめ
)
。
生御子,
荳角郎女
(
佐佐宜のいらつめ
)
。
【一柱。
○
荳角
(
ささげ
)
原文
ささげ
(
佐佐宜
)
以音。
伊勢齋宮
(
いせのいつきのみや
)
。
】
又娶
坂田大俣王
(
さかたのおほまたのみこ
)
之女
黑姬
(
くろ比賣
)
生御子,
神前郎女
(
かむさきのいらつめ
)
。
次,
茨田郎女
(
うまらたのいらつめ
)
。
次,
馬來田郎女
(
うまぐたのいらつめ
)
。
【
三柱
(
みはしら
)
。】
又娶
茨田連小望
(
うまらたのむらじをもち
)
之女
關姬
(
せき比賣
)
。
生御子,
茨田大郎女
(
うまらたのおほいらつめ
)
。
次,
白坂活日郎女
(
しらさかのいくひのいらつめ
)
。
次,
小野郎女
(
をののいらつめ
)
,
亦名
(
またのな
)
長目姬
(
ながめ比賣
)
。
【三柱。
○
小野郎女
(
をののいらつめ
)
原文
野郎女
(
ののいらつめ
)
,此依書紀校之。
】
又娶
三尾君堅楲
(
みをのきみ加多夫
)
之妹
倭姬
(
やまと比賣
)
。
【○
堅楲
(
かたぶ
)
原文
かたぶ
(
加多夫
)
以音。】
生御子,
大郎女
(
おほいらつめ
)
。
次,
丸高王
(
まろたかのみこ
)
。
次,
耳王
(
みみのみこ
)
。
次,
赤姬郎女
(
あか比賣のいらつめ
)
。
【
四柱
(
よはしら
)
。】
又娶
阿倍荑姬
(
あへ之波延比賣
)
。
【○
荑
(
はえ
)
原文
はえ
(
波延
)
以音。】
生御子,
若屋郎女
(
わかやのいらつめ
)
。
次,
圓郎女
(
都夫良のいらつめ
)
。
【○
圓
(
つぶら
)
原文
つぶら
(
都夫良
)
以音。】
次,
阿豆王
(
あづのみこ
)
。
【三柱。】
此
天皇
(
すめらみこと
)
之御子等,
并
(
あはせ
)
十九王
(
とあまりここのはしらのみこ
)
。
【
男
(
をとこ
)
七,
女
(
をみな
)
十二。】
此之中
(
このなか
)
,
天國排開廣庭命
(
あめくに押波流岐ひろにはのみこと
)
者,
治
(
しろしめす
)
天下
(
欽明
)
。
次,
廣國押武金日命
(
ひろくにおし建かなひのみこと
)
,治
天下
(
安閑
)
也。
次,
武小廣國押楯命
(
建をひろくにおしたてのみこと
)
,治
天下
(
宣化
)
。
次,
荳角王
(
佐佐宜のみこ
)
者,
拜
(
をろがみき
)
伊勢神宮
(
いせのかむみや
)
也。
此之
(
繼體
)
御世
(
みよ
)
,
竺紫君磐井
(
つくしのきみ石ゐ
)
,
不從
(
したがはず
)
天皇之命
(
すめらみことのみこと
)
,而多
無禮
(
ゐやなき
)
。故
遣
(
つかはし
)
物部麤鹿火大連
(
もののべの荒甲のおほむらじ
)
、
大伴金村
(
おほとも之かなむら
)
連
(
むらじ
)
二人,而
殺
(
ころしき
)
磐井
(
石ゐ
)
也。
【○
磐井
(
いはゐ
)
原文
石井
(
いはゐ
)
。】
天皇
(
繼體
)
御年
(
みとし
)
,
肆拾參歲
(
よそあまりみとせ
)
。
【
丁未年
(
ひのとのひつじのとし
)
四月
(
うづき
)
九日
(
ここぬか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
者,
三嶋之藍陵
(
みしまのあゐのみさざき
)
也。
武烈天皇 泊瀨列城宮趾
武烈天皇 傍丘磐坏丘北陵
武烈帝歿,仁德天皇系子嗣斷絕。以故,日本書紀以暴君誌之。
繼體天皇 泊瀨列城宮傳承地
繼體帝母后振媛 高向宮跡
繼體帝父彥主人王薨後,振媛歸寧越前高向,奉養天皇。
荳角郎女 茨田真手御宿所跡
息長真手王孫荳角皇女時,始為齋宮任滿退下禊祓往還之宿所。
足羽山繼體天皇像 系圖
岡太神社 繼體天皇潛龍聖迹碑
繼體天皇即位以前所居越前宮跡。
物部麤鹿火、大伴金村
筑紫君磐井像 磐井墓
繼體天皇 三嶋藍野陵
御子
(
繼體
)
廣國押武金日命
(
ひろくにおし建かなひのみこと
)
,坐
勾之金箸宮
(
まがりのかなばしのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
安閑天皇
(
あんかんてんわう
)
。】
此
天皇
(
安閑
)
,無
御子
(
みこ
)
也。
【
乙卯年
(
きのとのうのとし
)
三月
(
やよひ
)
十三日
(
とをあまりみか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。
○此
天皇
(
安閑
)
,立
億計
(
おけ
)
天皇女
春日山田郎女
(
かすがのやまだのいらつめ
)
為
皇后
(
きさき
)
。又立
許勢男人
(
こせのをひと
)
女
紗手姬
(
さてひめ
)
、紗手姬弟
香香有姬
(
かかりひめ
)
、
物部木蓮子
(
もののべいたび
)
女
宅姬
(
やかひめ
)
為妃。並無嗣。遂立
屯倉
(
みやけ
)
,留名後代。故,
小墾田屯倉
(
をはりだのみやけ
)
,給紗手姬。
櫻井
(
さくらゐ
)
屯倉,給香香有姬。
難波
(
なには
)
屯倉,給宅姬。○
此之
(
安閑
)
御世,廣設
屯倉
(
みやけ
)
。置筑紫
穗波
(
ほなみ
)
屯倉、
鎌
(
かま
)
屯倉,豐國
腠碕
(
みさき
)
屯倉、
桑原
(
くははら
)
屯倉、
肝等
(
かと
)
屯倉、
大拔
(
おほぬく
)
屯倉、
我鹿
(
あか
)
屯倉,肥國
春日部
(
かすがべ
)
屯倉,播磨國
越部
(
こしべ
)
屯倉、
牛鹿
(
うしか
)
屯倉,備後國
後城
(
しつき
)
屯倉,
多禰
(
たね
)
屯倉、
來履
(
くくつ
)
屯倉、
葉稚
(
はわか
)
屯倉、
河音
(
かはと
)
屯倉,婀娜國
膽殖
(
いにゑ
)
屯倉、
膽年部
(
いとしべ
)
屯倉,阿波國春日部屯倉,紀國
經湍
(
ふせ
)
屯倉、
河邊
(
かはへ
)
屯倉,丹波國
蘇斯岐屯倉
(
そしきのみやけ
)
,近江國
葦浦
(
あしうら
)
屯倉,尾張國
間敷
(
ましき
)
屯倉、
入鹿
(
いるか
)
屯倉,上毛野國
綠野
(
みどの
)
屯倉,駿河國
稚贄
(
わかにへ
)
屯倉。
】
御陵
(
みさざき
)
,在
河內
(
かふち
)
之
古市高屋村
(
ふるいちのたかやのむら
)
也。
弟
(
安閑
)
武小廣國押楯命
(
建をひろくにおしたてのみこと
)
,坐
檜坰
(
ひのくま
)
之
廬入野宮
(
いほりのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
宣化天皇
(
せんくわてんわう
)
。】
天皇
(
宣化
)
娶
億計
(
意祁
)
天皇
(
仁賢
)
之
御子
(
みこ
)
橘中姬命
(
たちばな之なかつ比賣のみこと
)
。
【○
億計
(
おけ
)
原文
おけ
(
意祁
)
以音。】
生御子,
石姬命
(
いは比賣のみこと
)
。
次,
小石姬命
(
をいは比賣のみこと
)
。
次,
倉若江王
(
くら之わかえのみこ
)
。
又
娶
(
めとり
)
川內若子姬
(
かふち之わくご比賣
)
。
生御子,
火穗王
(
ほのほのみこ
)
。
次,
惠波王
(
ゑはのみこ
)
。
此
天皇
(
宣化
)
之
御子
(
みこ
)
等,
并
(
あはせ
)
五王
(
いつはしらのみこ
)
。
【
男
(
をとこ
)
三,
女
(
をみな
)
二。】
故,火穗王者,
椎田君
(
志比陀のきみ
)
之祖。
【○
椎田
(
しひだ
)
原文
しひだ
(
志比陀
)
以音。】
惠波王者,
豬名君
(
韋那のきみ
)
、
丹比君
(
多治比のきみ
)
之祖也。
【○
豬名
(
ゐな
)
、
たぢひ
(
多治比
)
原文
ゐな
(
韋那
)
、
たぢひ
(
多治比
)
以音。】
【○
天皇
(
宣化
)
御年
(
みとし
)
,柒拾參歲。
御陵
(
みさざき
)
,在
身狹桃花鳥坂上
(
むさのつきさかのへ
)
也。】
弟
(
宣化
)
天國排開廣庭天皇
(
あめくに押波流岐ひろにはのすめらみこと
)
,坐
磯城嶋大宮
(
師木しまのおおほみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
欽明天皇
(
きんめいてんわう
)
。】
天皇
(
欽明
)
娶
檜坰
(
ひのくま
)
天皇
(
宣化
)
之御子
石姬命
(
いは比賣のみこと
)
。
【○
檜坰天皇
(
ひのくまのすめらみこと
)
者,宣化帝也。坐檜坰之廬入野宮,故名。】
生御子,
八田王
(
やたのみこ
)
。
次,
沼名倉太玉敷命
(
ぬなくらのふとたましきのみこと
)
。
【○
敏達天皇
(
びだつてんわう
)
。】
次,
笠縫王
(
かさぬひのみこ
)
。
【三柱。】
又
娶
(
めとり
)
其妹
(
石姬
)
小石姬命
(
をいは比賣のみこと
)
。
【○
其妹
(
そのいも
)
原文
其弟
(
そのおと
)
。】
生御子,
上王
(
かみのみこ
)
。
【一柱。】
又娶
春日之日爪臣
(
かすがのひつめのおみ
)
之
女
(
むすめ
)
糠子郎女
(
ぬかこのいらつめ
)
。
生御子,
春日山田郎女
(
かすがのやまだのいらつめ
)
。
次,
椀子王
(
麻呂古のみこ
)
。
【三柱。】
次,
蘇我倉王
(
宗賀之くらのみこ
)
。
【○
蘇我
(
そが
)
原文
そが
(
宗賀
)
以音。】
又娶
蘇我稻目宿禰大臣
(
宗賀之いなめのすくねのおほおみ
)
之女
堅鹽姬
(
岐多斯比賣
)
。
【○
蘇我
(
そが
)
、
堅鹽
(
きたし
)
原文
そが
(
宗賀
)
、
きたし
(
岐多斯
)
以音。】
生御子,
橘豐日命
(
たちばな之とよひのみこと
)
。
【○
用明天皇
(
ようめいてんわう
)
。】
次
妹
(
いも
)
,
石坰王
(
いはくまのみこ
)
。
【
石坰王
(
いはくまのみこ
)
,書紀作
磐隈皇女
(
いはくまのひめみこ
)
,為
伊勢齋宮
(
いせのいつきのみや
)
。】
次,
足取王
(
あとりのみこ
)
。
次,
豐御食炊屋姬命
(
とよみ氣かしきや比賣のみこと
)
。
【○
推古天皇
(
すいこてんわう
)
。
食
(
け
)
原文
け
(
氣
)
以音。】
次
亦
(
また
)
,
椀子王
(
麻呂古のみこ
)
。
次,
大宅王
(
おほやけのみこ
)
。
次,
伊美賀古王
(
いみがこのみこ
)
。
【○書紀作
石上部皇子
(
いそのかみべのみこ
)
。】
次,
山代王
(
やましろのみこ
)
。
次妹,
大伴王
(
おほとものみこ
)
。
次,
櫻井玄王
(
さくらゐ之ゆみはりのみこ
)
。
【○
玄
(
ゆみはり
)
乃
弦
(
ゆみはり
)
之略也。】
次,
麻怒王
(
まののみこ
)
。
【○書紀作
肩野皇女
(
かたののひめみこ
)
。】
次,
橘本若子王
(
たちばなもと之わくごのみこ
)
。
次,
泥杼王
(
ねどのみこ
)
。
【十三柱。
○書紀作
舍人皇女
(
とねりのひめみこ
)
。
】
又娶
堅鹽姬
(
岐多斯毘賣
)
之
姨
(
をば
)
小兄姬
(
をえ比賣
)
。
生御子,
馬木王
(
うまきのみこ
)
。
次,
葛城王
(
かづらきのみこ
)
。
次,
間人穴太部王
(
はしひとのあなほべのみこ
)
。
【○
穴穗部間人皇后
(
あなほべのはしひとのきさき
)
。】
次,
三枝部穴太部王
(
さきくさべのあなほべのみこ
)
。
亦名
(
またのな
)
,
皇弟
(
須賣伊呂杼
)
。
【○
皇弟
(
すめいろど
)
原文
すめいろど
(
須賣伊呂杼
)
以音。】
次,
長谷部若雀命
(
はつせべのわかさざきのみこと
)
。
【○
崇峻天皇
(
すしゆんてんわう
)
。】
【五柱。】
凡此
天皇
(
欽明
)
之
御子
(
みこ
)
等,
并
(
あはせ
)
廿五王
(
はたあまりいつはしらのみこ
)
。
此之中
(
このなか
)
,
沼名倉太玉敷命
(
ぬなくらのふとたましきのみこと
)
者,
治
(
しろしめす
)
天下
(
敏達
)
。
次,
橘豐日命
(
たちばな之とよひのみこと
)
,治
天下
(
用明
)
。
次,
豐御食炊屋姬命
(
とよみ氣かしきや比賣のみこと
)
,治
天下
(
推古
)
。
次,
長谷部若雀命
(
はつせべ之わかさざきのみこと
)
,治
天下
(
崇峻
)
也。并四王,治
天下
(
あめのした
)
也。
【○
天皇
(
欽明
)
御陵
(
みさざき
)
,在
檜隈坂合
(
ひのくまのさかひ
)
也。】
安閑天皇 勾金橋宮趾
安閑天皇 古市高屋丘陵
宣化天皇 檜隈廬入野宮趾
岡太神社 皇子池
傳安閑、宣化二帝生誕時之產湯。
宣化天皇 身狹桃花鳥坂上陵
宣化帝、橘仲皇后,合葬於此陵。
欽明天皇 磯城嶋金刺宮址
佛教傳來之地碑
欽明朝,百濟聖明王獻釋迦佛金銅像、幡蓋、經論。佛教公傳。
善光寺緣起繪卷 蘇我稻目
欽明帝詔群臣議禮佛,遂以釋迦佛金銅像付蘇我稻目,祀於向原寺。
豐御食炊屋姬命 推古天皇像
推古天皇,史上首位女帝。以前雖有神功皇后、飯豐青尊臨朝稱制之事,而登極者實以推古帝為濫觴。
都塚古墳
特殊金字塔狀階梯式方墳。被葬者或云蘇我稻目,或云蘇我堅鹽姬。
穴穗部間人皇后與聖德太子像
間人穴太部王,適用明帝為后,生聖德太子。太子為推古朝攝政。
欽明天皇 檜隈坂合陵
御子
(
欽明
)
沼名倉太玉敷命
(
ぬなくらのふとたましきのみこと
)
,坐
譯語田宮
(
他田のみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
拾肆歲
(
とあまりよとせ
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
敏達天皇
(
びだつてんわう
)
。】
此
天皇
(
敏達
)
,
娶
(
めとり
)
庶妹
(
ままいも
)
豐御食炊屋姬命
(
とよみけかしきや比賣のみこと
)
。
生御子,
靜貝王
(
しづかひのみこ
)
。
亦名
(
またのな
)
,
貝鮹王
(
かひたこのみこ
)
。
次,
竹田王
(
たけだのみこ
)
。亦名,
小貝王
(
をかひのみこ
)
。
次,
小治田王
(
をはりたのみこ
)
。
次,
葛城王
(
かづらきのみこ
)
。
次,
鵜守王
(
宇毛理のみこ
)
。
【○
鵜守
(
うもり
)
原文
うもり
(
宇毛理
)
以音。】
次,
尾張王
(
小張のみこ
)
。
【○
尾張
(
をはり
)
原文
小張
(
をはり
)
以音。】
次,
田眼王
(
多米のみこ
)
。
【○
田眼
(
ため
)
原文
ため
(
多米
)
以音。】
次,
櫻井玄王
(
さくらゐのゆみはりのみこ
)
。
【
八柱
(
やはしら
)
。】
又娶
伊勢大鹿首
(
いせのおほかのおびと
)
之
女
(
むすめ
)
小熊子郎女
(
をぐまこのいらつめ
)
。
生御子,
太姬命
(
布斗比賣のみこと
)
。
【○
太
(
ふと
)
原文
ふと
(
布斗
)
以音。】
次,
寶王
(
たからのみこ
)
。亦名,
糠代姬王
(
ぬかしろ比賣のみこ
)
。
【二柱。】
又娶
息長真手王
(
おきながのまてのみこ
)
之女
廣姬命
(
比呂比賣のみこと
)
。
【○
廣
(
ひろ
)
原文
ひろ
(
比呂
)
以音。】
生御子,
押坂彥人太子
(
忍さか日子ひとのひつぎのみこ
)
。亦名,
椀子王
(
麻呂古のみこ
)
。
【○
押坂彥人
(
おしさかひこひと
)
原文
忍坂日子人
(
おしさかひこひと
)
。】
次,
坂騰王
(
さかのぼりのみこ
)
。
次,
宇治王
(
宇遲のみこ
)
。
【三柱。
○
宇治
(
うぢ
)
原文
宇遲
(
うぢ
)
。
】
又娶
春日中若子
(
かすがのなかつわくご
)
之女
老女子郎女
(
をみなこのいらつめ
)
。
生御子,
難波王
(
なにはのみこ
)
。
次,
桑田王
(
くはたのみこ
)
。
次,
春日王
(
かすがのみこ
)
。
次,
大俣王
(
おほまたのみこ
)
。
【四柱。】
此
天皇
(
すめらみこと
)
之
御子
(
みこ
)
等,
并
(
あはせ
)
十七王中,
彥人太子
(
日子ひとのひつぎのみこ
)
,娶
庶妹
(
ままいも
)
田村王
(
たむらのみこ
)
,亦名
糠代姬命
(
ぬかしろ比賣のみこと
)
。
生御子,
坐
(
いまし
)
岡本宮
(
をかもとのみや
)
治
(
しろしめす
)
天下
(
あめのした
)
之
天皇
(
舒明
)
。
【○
息長足日廣額命
(
おきながたらしひひろぬかのみこと
)
,漢謚
舒明天皇
(
じよめいてんわう
)
。】
次,
中津王
(
なかつみこ
)
。
次,
多良王
(
たらのみこ
)
。
【三柱。】
彥人太子
(
日子ひとのひつぎのみこ
)
又娶
漢王
(
あやのみこ
)
之妹
大俣王
(
おほまたのみこ
)
。
生御子,
茅渟王
(
智奴のみこ
)
。
【○
茅渟
(
ちぬ
)
原文
智奴
(
ちぬ
)
。】
次妹,
桑田王
(
くはたのみこ
)
。
【二柱。】
彥人太子
(
日子ひとのひつぎのみこ
)
又娶庶妹
玄王
(
ゆみはりのみこ
)
。
生御子,
山代王
(
やましろのみこ
)
。
次,
笠縫王
(
かさぬひのみこ
)
。
【二柱。】
并
七王
(
ななはしらのみこ
)
。
天皇
(
敏達
)
,
【
甲辰年
(
きのえたつのとし
)
四月
(
うづき
)
六日
(
むゆか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵在
河內科長
(
川ふちのしなが
)
也。
【○
河內
(
かふち
)
原文
川內
(
かふち
)
。】
弟
(
敏達
)
橘豐日命
(
たちばなのとよひのみこと
)
,坐
池邊宮
(
いけへのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
三歲
(
みとせ
)
也。
【○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
用明天皇
(
ようめいてんわう
)
。】
此
天皇
(
すめらみこと
)
,
娶
(
めとり
)
稻目宿禰大臣
(
いなめのすくねのおほおみ
)
之女
大堅鹽姬
(
意富藝多志比賣
)
。
【○
大堅鹽
(
おほぎたし
)
原文
意富藝多志
(
おほぎたし
)
以音。】
生御子,
田目王
(
多米のみこ
)
。
【一柱。
○
田目
(
ため
)
原文
ため
(
多米
)
以音。
】
又娶
庶妹
(
ままいも
)
間人穴太部王
(
はしひとのあなほべのみこ
)
。
生御子,
上宮廄戶豐聰耳命
(
かみつみや之うまやとのとよとみみのみこと
)
。
【○
聖德太子
(
しゃうとくたいし
)
。】
次,
久米王
(
くめのみこ
)
。
次,
植栗王
(
うゑくりのみこ
)
。
次,
茨田王
(
うまらたのみこ
)
。
【四柱。】
又娶
當麻倉首廣
(
だきま之くらのおびと比呂
)
之
女
(
むすめ
)
飯之子
(
いひのこ
)
。
【○
廣
(
ひろ
)
原文
ひろ
(
比呂
)
以音。】
生御子,
當麻王
(
だきまのみこ
)
。
次妹,
酢香代子郎女
(
須加志呂古のいらつめ
)
。
【○二柱。
酢香代子
(
すかしろこ
)
原文
酢香代子
(
すかしろこ
)
以音。書紀作
酢香手姬
(
すかてひめ
)
,為
伊勢齋宮
(
いせのいつきのみや
)
。】
此
天皇
(
用明
)
,
【
丁未年
(
ひのとのひつじのとし
)
四月
(
うづき
)
十五日
(
とをあまりいつか
)
,
崩
(
かむあがりき
)
。】
御陵
(
みさざき
)
在
磐余掖上
(
石寸のわきがみ
)
,
後
(
のち
)
遷
(
うつしき
)
科長中陵
(
しながのなかのみさざき
)
也。
弟
(
用明
)
長谷部若雀天皇
(
はつせべのわかさざきのすめらみこと
)
,坐
倉椅柴垣宮
(
くらはしのしばかきのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
四歲
(
よとせ
)
。
【
壬子年
(
みづのえのねのとし
)
十一月
(
しもつき
)
十三日
(
とをあまりみか
)
,
崩也
(
かみあがりき
)
。
○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
崇峻天皇
(
すしゆんてんわう
)
。
】
御陵
(
みさざき
)
,在
倉椅岡上
(
くらはしのをかのうへ
)
也。
妹
(
崇峻
)
豐御食炊屋姬命
(
とよみけかしきや比賣のみこと
)
,坐
小治田宮
(
をはりだのみや
)
,治
天下
(
あめのした
)
,
卅柒歲
(
みそあまりななとせ
)
。
【
戊子年
(
つちのえねのとし
)
三月
(
やよひ
)
十五日
(
とをあまりいつか
)
癸丑
(
みづのとのうし
)
,
崩
(
かみあがりき
)
。
○
漢謚
(
からのおくりな
)
,
推古天皇
(
すいこてんわう
)
。
】
御陵
(
みさざき
)
,在
大野岡上
(
おほののをかのうへ
)
,後
遷
(
うつしき
)
科長大陵
(
しながのおほみさざき
)
也。
敏達天皇 譯語田幸玉宮傳承地
敏達帝,欽明帝第二皇子。其性不信佛法,而愛文史。
等彌神社末社 櫻井弓張神社
櫻井玄王,書紀作櫻井弓張皇女。
伊勢國分寺跡
伊勢國氏族大鹿氏,蓋以鈴鹿與多氣郡相可一帶為其本貫。按大鹿氏與中臣氏同族,並天兒屋命裔。
牧野古墳 傳押坂彥人太子墓
敏達帝第一皇子,為不含蘇我系血統之敏達王統第一人選。然以蘇我勢力抬頭之故,未即天位。舒明、天智、天武帝等,皆其子孫。
飛鳥岡本宮跡
舒明帝飛鳥岡本宮,營於飛鳥岡
【雷丘。】
之麓。遇灾燒失之後,齊明帝又築後飛鳥岡本宮。皇極帝飛鳥板蓋宮者,亦在同處。
傳茅渟王墓 平野塚穴山古墳
敏達天皇 河內磯長中尾陵
用明天皇 磐余池邊雙槻宮傳承地
聖德太子像與救世觀音像
用明天皇 河內磯長原陵
磐余掖上陵,所在未詳。
崇峻天皇 倉梯柴垣宮傳承地
蘇我馬子使東漢直駒,逆弒天皇。
推古天皇 小墾田宮跡
此天皇以聖德太錄攝政,頒憲法。
【古事記下卷 始仁德天皇,聖帝之世。迄推古帝治世,飛鳥朝濫觴。 終】
[古事記中卷]
[久遠の絆]
[再臨詔]