巫女装束の基礎知識
〜りっぱな巫女になる方法〜
はじめに |
巫女になってみたいなと思ったことはありませんか。女性ならさておき、男性に生まれてしまっては、神社巫女のバイトすらできません。また、巫女の絵を描きたいと思ったとき、詳細が判らず、適当に(=間違えたままに)描いてしまったりしたことはありませんか。ここでは、そんなあなたのために、簡単な巫女装束の構造・着方を説明します。 |
▼ 警 告 ▼ |
◆以下の内容を読んで、実際にご自分で試される場合、精神病院に収容されるおそれがありますので、必ずご家庭内でのみお楽しみください。この件について、巫研は一切関知しません。 ◆折しも現代青少年たちの「アイデンティティ危機」を象徴するかの如く、社会的なコスプレ旋風が巻き起こってはいますが、巫研の活動は純粋な研究としておこなっているものであり、彼らの行為とは何等関係ありません。 |
1.必要なもの
巫女装束を着るには、およそ以下に挙げるものが必要になります。
裾除け(すそよけ)
和服用の下着で、蹴出し(けだし)とも言われます。足首までの長さがあり、腰巻きの代用にするか、あるいは腰巻きに重ねてつけます。もしあなたが男性であって、巫女装束を実際に着て遊ぶ…モトイ、着心地を研究するような場合、腰巻きまでつけるのは精神的に非常にヤバいですので、やらないほうが無難です。
蛇足ながら、「和服には下着をつけない」などと言う人がいますけれど、腰巻きが下着になるわけですから、正確な表現ではないですね。
肌襦袢/長襦袢/白衣(はだじゅばん/ながじゅばん/はくい)
白衣は、いわば白い浴衣のような単衣(ひとえ)で、足首まで長さがあります。白衣の下には長襦袢・肌襦袢をつけることになっています。白衣の襟元からは、襦袢の半襟を覗かせるようにします。白衣の色に関しては厳然たる規格がないようで、作成者によって純白からクリーム色まで、色々差異があるようです。
帯(おび)
帯は、白の木綿の半帯。正式には使うようなのですが、腹部が圧迫されて苦しいためか、白衣に腰紐を巻いた上に直接袴をつけている場合もあるようです。
袴(はかま)
袴の形状は、各神社によって様々です。
よく見かけるのは、襠(まち)のない(=スカート状の)行灯袴(あんどんばかま)でしょう。お手洗いの都合などがあり、女性の立場からは行灯袴の着用が好まれているようです。ちなみに、現在一般に言われる女袴(おんなばかま)とは、多くの場合、行灯袴のことを指します。行灯袴に腰板はありません。
襠の付いたものでは、男性神職用差袴(さしこ)の色を変えたようなものから、女官装束を参考にした捻襠(ねじまち)袴などがあります。(いずれも腰板は付きません)
巫女の着用する袴の多様化を懸念する向きもあるようですが、妙に画一化するのも案外つまらないことに思います。 参拝する側としては、各社各様の趣が楽しめます *^-^* し、問題のない程度に、いろいろあっても構わないのではないでしょうか。
結局、女袴は女性の服飾であり、それは長い生活文化の中で変化・多様化してできたものです。歴史的な一時点のものを恣意的に抜き取り、それをもって安易に他を排し・画一化してよいものでもありません。
なお、色に関しても、朱(しゅ)から緋(ひ)、ところにより濃(こき)まで、色々なものが使用されています。これらについても、たとえば濃色は宮廷において未婚の女性の用いる色であったことからなど、首肯しうる様々な理由から選択されているのです。
かつての祭司的・神職的役割から追われ、形骸化して久しい神社巫女ですが、男性神職の装束は規定により定められ、服飾文化としてはフリーズされた状態にあるのに対し、巫女のダイナミズムは装束の多様化という形で、ひっそりと---しかし、したたかに---生き続けているようにも思え、ちょっと胸がすきます。
個人的には、緋の行灯袴が美しさと機能性を兼ね揃えており、現時点でのベストチョイスではないかと。:D
その他
頭髪は、長くなければなりません。後ろの生え際から少し下を檀紙で包み、水引で縛ります。
神楽を舞うときなどは、常衣とはまた別となり、羽衣・花簪・金冠などのオプションを付加します。
2.図解
デジタルカメラ・スキャナのないため不可能。(;_;)
そのうち買います。すみません。
参考文献
1)西本 忍 『〜巫女〜 創刊第一号』, 村上水軍, 1995.
2)吉田真規 『りっぱなカーバンクルになる方法』, Unpublished, 1995.
その他、若泉稲荷神社宮司 稲山家訓氏より有益なご指摘を頂きました。(2003年2月)
参考リンク
女袴普及部 (八條忠基氏)
現代女房装束の基礎知識 (同上)
有職巫女装束 (有職.com)
日本風俗史学会編『日本風俗史事典』より 袴 (前川喜重子)